前橋汀子 アフタヌーン・コンサート 2013

昨年9月30日(日)に続いて、今年も前橋汀子のアフタヌーン・コンサートが札幌コンサートホールKitaraの大ホールで開かれた。
日曜の午後、暖かな日差しを浴びながら緑豊かな中島公園の中をKitaraに向かう人々の姿は美しく見えた。いつもよりゆっくりとした足取りで余裕を持って歩きながらも、ホールに近づくと人々のコンサートへの期待感が広がっていた。久し振りで名ヴァイオリニストを聴く人が多いような感じがした。P席と3階席は販売していなかったが、客席はかなり埋まっていた。ウィ―クディの午後なら聴きに来れない若い人の姿も見られた。1階、2階の正面の席は満席、1,200人程度の入りで、最近では大入りの方。開演前から聴衆の熱気が感じられた。

昨年と同じような企画のコンサートではあったが、今回演奏されるヴァイオリンの小品が人々の耳に馴染んだ親しみ易い曲ばかりだったので、普段クラシック音楽にそれほど興味がない人も聴きに来ていたように思われた。

前半のプログラム;
 クライスラー:美しきロスマリン
 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第24番 ハ長調 K.296
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 「春」

モーツァルトやベートーヴェンの時代のヴァイオリン・ソナタはピアノとヴァイオリンが対等に演奏される。ピアノが伴奏の役割ではないということである。
ピアニストの松本和将(Kazumasa Matsumoto)は1979年岡山生まれ。全日本学生音楽コンクール中学生の部で優勝して初リサイタルを開催。98年、東京芸大1年生の時、第67回日本音楽コンクールに優勝。ホロヴィッツ国際第3位、ブゾーニ国際第4位、エリーザべト王妃国際第5位入賞など海外のコンクールでも顕著な成績を収め、国内外のオーケストラと共演。前橋汀子、趙静、漆原啓子、渡辺玲子などと共演。09年にはデビュー10周年としてオール・ショパン・プログラムで全国ツアーを行ない、10年のショパン・イヤーにはショパン・アルバムをリリースした。東京芸術大学、くらしき作陽大学で後進の指導にもあたっている。 今回は昨年に続いて前橋との共演。

モーツァルトは22歳の時、当時ピアノを教えていた少女のために3楽章から成るヴァイオリン・ソナタを作曲した。快活で明るい溌剌とした曲。

ベートーヴェンは全部で10曲のヴァイオリン・ソナタを書いているが、第5番と第9番がその中で最も広く親しまれている。前回は第9番「クロイツェル」を弾いたが、今回は「第5番」。第1番~第4番までは3楽章構成であったが、第5番で4楽章制へ拡げ、このジャンルで「スケルツォ」を初めて登場させた。ハイドンやモーツァルトの影響から脱して、ヴァイオリン・ソナタに新しい境地を開いたといえる作品。
この曲は全編にわたって明るい。当時ベートーヴェンは恋をしていて明るい気分に満ちていたからと言われている。
(第1楽章が力強く終ったところで拍手が起こったが、余り気にはならなかった。楽章間の拍手は偶にあっても、いちいち気にしないようにしている。)
前半が終わって、“Bravo”の声もあがり演奏者も満足した様子。

後半のプログラム;
 パガニーニ(クライスラー編):ラ・カンパネラ
 クライスラー:愛の喜び
 マスネ:タイスの瞑想曲
 サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
 ドヴォルザーク(クライスラー編):ユーモレスク
 シューベルト(ヴィルへルミ編):アヴェ・マリア
 モンティ:チャールダッシュ
 ブラームス(ヨアヒム編):ハンガリ舞曲第1番、第5番

「ラ・カンパネラ」はピアノ曲で聴き慣れているためか、今日の演奏曲の中でヴァイオリンの音が今一つ心地よく響いてこなかった。金属的な高い音を出そうとする鐘の音色に感心しなかったせいかも知れない。
「タイスの瞑想曲」はオペラの間奏曲だが、単独でヴァイオリン独奏とオーケストラ、またはヴァイオリンとピアノで演奏されることが多い名曲。心休まる美しく綺麗な曲。
「序奏とロンド・カプリチオーソ」はヴァイオリンの名手サラサーテに献呈された。ヴァイオリンの華麗なテクニックとスペイン風の哀愁を帯びたメロディが魅力的な曲。後半のプログラムは各曲5分程度でアンコール・ピースであるが、この曲だけは10分近くかかるのでアンコール曲には長過ぎるようである。
「ユーモレスク」はピアノ曲集《8つのユーモレスク》の第7番。ボヘミアンの5音階が用いられているので、日本人がより親しみ易い曲なのかも知れない。
「アヴェ・マリア」は原曲は歌曲。ドイツのヴァイオリニストがヴァイオリン独奏用に編曲。
モンティの「チャールダッシュ」はハンガリー・ジプシーの民俗舞曲。フィギュア・スケートの浅田真央が使用した曲で有名になった。
「ハンガリー舞曲」は原曲はピアノ連弾用の作品。オーケストラ曲に編曲されて、オーケストラでアンコール曲として使われることが多い。全部で21曲。ハンガリー舞曲と呼ばれているが、内容的にはハンガリー・ジプシーの民俗舞曲で4分の2拍子のチャールダッシュに準拠している。ブラームスの親友で有名なヴァイオリニストのヨアヒムがヴァイオリン曲に編曲。情熱的で哀愁を帯び、静と動が織りなすジプシーの独特な旋律が特徴。

後半のプログラムはすべてポピュラーな曲で誰でもどこかで耳にしたことがあるメロディ。こんなに気持ちを楽にして聴いたのも久しぶり。勿論、そういうつもりで今日のコンサートを聴きに来たのだが、、、。

アンコールに3曲。エルガー:愛の挨拶、シャミナーデ:スペインのセレナーデ、ファリャ:スペイン舞曲。
シャミナーデは初めて聞く名前だったが、曲は魅力的であった。ステージから下がらずに続けて2曲を演奏。拍手に応えて、気持ちよく3曲目を演奏してくれた。「愛の挨拶」は別にして、あまり良く知らない曲を弾いてもらって却って新鮮な感じもした。

前半は白、後半は赤のドレスに身を包んで登場。年齢を感じさせないエネルギッシュな演奏で1年ぶりのコンサートを締めくくった。渡されたチラシによると、来年4月に「バッハ無伴奏ソナタ&パルティ―タ全曲演奏会」と銘打ってKitaraのステージに再び立つことになる。次回が今から楽しみである。



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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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