札幌交響楽団第562回定期演奏会

ブリテン生誕100年記念

ブリテン:戦争レクイエム

英国が他のヨーロッパ諸国と比べて芸術の分野で優れた作曲家があまり排出しなかったことは不思議である。ヘンリー・パーセル(1659~95)以来の偉大な英国の作曲家はエドワード・エルガー(1857~1934)とベンジャミン・ブリテン(1913~76)である。札響の尾高忠明音楽監督はエルガーとブリテンの音楽を日本に紹介している第一人者と言える。
Britten は「青少年のための管弦楽入門」の作品が最も良く知られていた。マエストロ尾高は08年9月の札響定期でオペラ「ピーター・グライムズ」を演奏会形式で上演し大成功を収め、日本の音楽界でも話題を集めた。今回はブリテン生誕百年記念年に満を持しての「戦争レクイエム」。

正直言ってブリテンの「戦争レクイエム」について知識はなかった。ブリテンは1939年に兵役を拒否してアメリカに渡った。日本政府から紀元二千六百年(西暦1940年)奉祝曲の委嘱を受けて作曲した作品が日本での初演を拒否されたことは知っていた。「シンフォニア・ダ・レクイエム」という作品が祝典の曲に相応しくないという理由だったようである。平和主義者であったブリテンの曲が当時の日本政府の意に添わなかったことが今では容易に想像できる。
小澤征爾が10年12月にニューヨークのカーネギー・ホールでサイトウ・キネン・オーケストラと収録した“War Requiem”のCDを購入して2回ほど聴いてみたが、あまり良く曲が解らなかった。レクイエムの歌詞が解らずに聴いていても、漠然とした印象しか受けなかったのである。
実際にライブで聴いて見ないとこの大曲の感動は伝わってこない。

指揮:尾高忠明
独唱:サビーナ・ツヴィラク(Sabina Cvilak)(ソプラノ)
   ティモシー・ロビンソン(Timothy Robinson)(テノール)
   シュテファン・ローゲス(Stephan Loges)(バリトン)
コンサートマスター:大平まゆみ
          伊藤亮太郎(室内オーケストラ)
合唱:札響合唱団、札幌アカデミー合唱団、札幌放送合唱団
児童合唱:HBC少年少女合唱団 

3人のソロ歌手はいずれも外国の一流歌手で、この作品の初演当時と同じく英国人テノール、ドイツ人バリトンが歌う「戦争」はブリテン作曲当時の時代背景を強く想い起こすことになった。この2人の男性歌手は10年7月に尾高忠明指揮のメルンボルン響で共演しているとのことで、気心もお互いに知れての札響共演に繋がったようである。

曲はラテン語で歌われる典礼文の部分は、大オーケストラと混声合唱、ソプラノ独唱。オルガンつき児童合唱がホールの外の廊下から天上の声のように歌われる。一方、戦争のおぞましさを歌うオーウェンの英詩部分は別の1管編成室内オーケストラと、テノール独唱、バリトン独唱が担当する。
音響的にも視覚的にもはっきりと対比されるので、ステージを観ていると理解しやすかった。

独唱者3名の重みのある説得力に満ちた歌、150名の合唱団の堂々たる歌の迫力、児童合唱団40名のジュニア部員の清らかな歌声はそれぞれ素晴らしかった。私の座席から近いところに陣取った室内オーケストラは首席奏者が中心に構成されていたが、各パートの演奏には聴き惚れてしまった。特にオーボエの金子亜未の巧みな演奏ぶりをたっぷり聴かせてもらった。歌詞の内容は別にしても、室内オーケストラと歌手の演奏場面の曲の美しさが心に響いた。

休憩なしで90分近い演奏。今演奏会が札響初演。楽団員も終了後お互いに健闘を称えあっていた。

帰りにホアイエで大学時代の恩師ご夫妻にあった。思いがけない場所で感激の再会。とはいっても、10名足らずで毎年6月にご夫妻を囲んでホテルで会合を開いていて20年以上になる。居合わせた旧友と4人で暫く語らい、91歳になる恩師の提案でコーヒーでも飲みながら歓談しようとしたがKitaraレストランもパークホテルでも喫茶室は満員。中島公園内をゆっくり歩きながら渡り鳥のカモの話題をとりあげたり、7月のキュッヒル夫妻の公園内での様子のことを話したりしてホテルのロビーの椅子に腰をおろして暫し歓談。定例の会合とは違った雰囲気に包まれてコンサート後のひと時を楽しんだ。

こんな時間や空間を持てるのもKitaraがもたらしてくれる楽しみなのだろうと改めて思った。戦争のない平和な世界は日本では当たり前になっているが、今も戦争の脅威におびえながら暮らしている人々や子どもたちがいることに想いを馳せる瞬間も必要であろう。

            



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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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