外山啓介ピアノ・リサイタル2013

外山啓介(Keisuke Toyama)は1984年札幌生まれ。04年、第73回日本音楽コンクールのピアノ部門第1位。06年、東京藝術大学卒業。08年、ドイツ(ハノーファー音楽演劇大学)留学を経て、11年東京藝術大学大学院修了。
07年CDデビュー。サントリーホール(大ホール)でのデビュー・リサイタルが完売となって、全国各地で大型新人ピアニストとして評判になった。これまでに日本の多くのオーケストラと共演。13年3月、ベルギーのフランダース交響楽団定期演奏会(金聖響指揮)に出演してヨーロッパ・デビュー。今後、海外での活躍も一層期待される。
 
外山啓介は07年に東京デビュー前に、05年11月、≪Kitaraのオータム・コンサート~日本音楽コンクール優勝者によるコンサート≫と銘打たれた毎日新聞社と札幌コンサートホール主催のコンサートに出演している。札幌出身で第65回日本音楽コンクール・ピアノ部門優勝者、橘高昌男とのジョイント・リサイタルと言ってもいいコンサートであった。
外山は「モーツァルトのピアノ・ソナタ第9番」と「ラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番」を弾いた。緊張した表情ではあったが、聴き応えのある演奏であった。

07年2月にはオール・ショパン・プログラムで全国公演を開催して、札幌公演は最終回の4月25日であった。プログラムは「ワルツ第1番」、「バラード第1番」、「ポロネーズ第6番」、「ポロネーズ第7番」、「夜想曲第17番」、「夜想曲第18番」、「ピアノ・ソナタ第3番」。サントリーホール・デビューで全国的に話題になった外山が故郷で自分の名が付いた《外山啓介デビュー・ピアノリサイタル》を開いた。良く親しまれている名曲ばかりで、気分も高揚して充分にショパンの曲に酔いしれた。6年も経つが、この日の大ホールの雰囲気が何となく蘇ってくる感じがする。

時を於かずに9月には札幌コンサートホール主催の≪Kitaraランチタイムコンサート≫として《外山啓介ピアノリサイタル》が小ホールで開催された。4月のリサイタルを聴き逃した人が駆け付けた感じも受けた。この時に弾いた曲は「モーツァルト:ロンド イ短調、フォーレ:ノクターン第5番、ドビュッシー:映像第2集、ショパン:ノクターン第8番、バラード第1番、ポロネーズ第6番」。繊細で色彩豊かな音色が魅力的であった。

08年は夏休み時期の国内リサイタル・ツアー13公演、“KEISUKE TOYAMA Piano Recital”。札幌公演は8月8日で大ホール。曲目は発売した2枚のCDに収録された「サティ、ラヴェル、フォーレ、ドビュッシー、ショパンの名曲」。フランス音楽独特のハーモニーや響き。ショパンの人生の変遷が伝わる音楽の魅力に溢れた曲。この年も各地での驚異的な動員力を記録してスターとしての地位を得たようだった。

09年6月は初めてのコンチェルト。アントニオ・ヴィット指揮ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団との共演で「ショパンのピアノ協奏曲第1番」。ショパン生誕200年プレ・イヤーのプログラム。

ワルシャワ・フィルとの共演の後、直に国内リサイタル・ツアー15公演。札幌は14公演目で8月28日。ショパンとラフマニノフのプログラム。ラフマニノフは「ソナタ第2番」や「ヴォカリーズ」の他に「音の絵」を弾いた。とても魅力的な演奏に惹かれて、会場で彼の“New Album”のラフマニノフのCDを買うつもりだったが、サインを貰う人の列が凄かったので、止めにするほど熱狂的な人々が押し寄せていたことを記憶している。結局、その後レコード店で彼のCDを購入した。

7回目は10年8月8日(日)の≪オール・ショパン・ピアノ・リサイタル≫。「ワルツ第2番」から始まって、「練習曲第1・4・12・13・23番」、「スケルツォ第4番」、「バラード第4番」。後半は「ノクターン第15・16番」で、最後は「ソナタ第3番」。 ショパン生誕200年を記念するプログラム。ショパンの繊細でロマンティックな数々の楽曲、快活で勇壮な曲想を持つ曲などを外山啓介は真摯で情熱的な演奏で色彩感豊かで抒情味あふれる音楽を作りだした。背が高く細身で、このピアニストが持つ繊細な雰囲気がショパンの曲によく似合う。

10年12月はランチ付きで≪クリスマス・コンサート≫として京王プラザホテル札幌を会場として開かれた。8月からチケット売り出しで満席。ボランティァ仲間を誘って出かけたが、結構おいしいランチが出されて普段のKitaraでのコンサートとは違った鑑賞の仕方でそれなりに楽しめた。初めて彼が弾いた曲は「バッハ(ブゾーニ編)のシャコンヌ」、後はすべてショパンの曲で今迄聞いたことがある曲が中心。

11年8月はリサイタルで≪ベートーヴェン4大ソナタを弾く≫。「ソナタ 第14番《月光》」、「ソナタ 第21番《ワルトシュタイン》、「ソナタ第8番《悲愴》」、「ソナタ第23番《熱情》」。レパートリーの拡充が期待されていたが、11年はベートーヴェン・プログラムで全国ツアー。それなりの重厚な演奏を披露した。

12年1月は≪Kitaraのニューイヤー≫でクリストファー・ウォレン=グリーン指揮札幌交響楽団と共演。モーツァルト:ピアノ協奏曲 第25番。札幌コンサートホール15周年のKitara主催のプログラムとしては05、07年に続いての出演。これまで企業が支援するコンサートで札響との共演はあったようだが、地元のオーケストラとの一般公開の公演は初めてだった。やはり地元の期待は大きい。

12年の全国ツアーはムソルグスキー「展覧会の絵」をメインに据えたプログラム。札幌では丁度1年前の8月2日。当日のプログラムの前半はモーツァルト:幻想曲K.397、ショパン:幻想即興曲、幻想曲ヘ短調、リスト:ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」。〈幻想〉と名が付いた曲を4曲並べた面白いプログラミング。リストの曲だけは趣の全く異なった曲調。ダンテが書いた「神曲」の中の「地獄篇」に霊感を受けて作曲したと言われている。先日のPMFガラ・コンサートで小山実稚恵が圧倒的な迫力で演奏した印象が脳裏から離れない。昨年の外山の演奏はそれほどの強烈な印象は残っていない。
後半の「展覧会の絵」は01年のキーシン、05年のアファナシエフ、08年のファジル・サイ、12年の紗良・オットなどの演奏が目に浮かぶ。それぞれ個性的な演奏でオット以外は1回しか聴いていないので印象が鮮明で記憶に残っているのかも知れない。外山の演奏は肌理細やかで、繊細で、且つ色彩感は豊かなのだが大胆さに欠ける印象が拭えない。綺麗な曲として受け取る私自身の思い込みが強いのかも知れない。

外山啓介のステージでの振る舞いはアーティストの中で最高であると思う。45度の角度でのお辞儀の仕方は私の気に入っているところである。背が高く、すらっとした細身で舞台での仕草が様になっている。あれほどの角度で堂に入ったお辞儀の出来る人は他にいない。演奏とは関係がないとは言え、いつも好感が持てる。

小山実稚恵、及川浩治に次いで3番目に聴く機会の多いピアニストであり、自分の記録としてブログにまとめているので、今回も長いブログになっている。
外山啓介のリサイタル・ツアーは毎年7・8月の時期に開催されてきた。
“Keisuke Toyama Piano Recital 2013" が今日8月1日札幌での開催となった。

PROGRAM
 J.S.バッハ(ブゾーニ編曲):シャコンヌ 

 シューマン(リスト編曲):献呈
 シューベルト(リスト編曲):アヴェ・マリア
 ラヴェル:亡き王女のためのパヴァ―ヌ、 ラ・ヴァルス
 ショパン:3つのワルツ 第6番「子犬のワルツ」、第7番、第8番
      英雄ポロネーズ(ポロネーズ第6番)
      ピアノ・ソナタ第2番「葬送」

「今回は、とにかく皆さんに楽しんでいただける曲、華やかで心が躍るような曲を選びました」と外山は語っている。前半はピアノ独奏曲に編曲された作品を中心に構成。後半は得意なショパン作品。
 
「バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番第5楽章シャコンヌ」をブゾーニがピアノ曲に編曲したもの。雄渾にして壮大な力作で約20分にも及ぶ楽章。壮麗な主題とそれに基づく30の変奏から構成されている。今日のピアノ演奏は約25分もかかったが、ヴァイオリン曲とはかなり違った印象を受けた。3年前のホテルでのコンサートの演奏曲目にこの曲名が載っていたが、時間は長くなかったと思う。変奏が半分くらいだったのではないか。ヴァイオリン曲として親しんでいるが、ピアノ曲としては聴き慣れないので何とも言えない感じ。
シューマンはクララと結婚した年(1840年)に歌曲集「ミルテの花」を彼女に贈った。その第1曲目が「献呈」。このピアノ曲は演奏会でしばしば取り上げられている。「アヴェ・マリア」はシューベルトの有名な歌曲をリストがピアノ独奏用に編曲したもの。
ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァ―ヌ」は典雅な趣の旋律を持つ美しい曲で、外山の持ち味である多彩な音色を繊細に操り、悲しみの表現力が心に響く音を紡いだ。パヴァ―ヌはスペインに起源をもつ古典舞踊のひとつ。
「ラ・ヴァルス」はワルツのこと。管弦楽曲をピアノ独奏用に編曲したもので15分ほどの曲。この曲は「舞踊詩」である。ラヴェルは〈ウインナ・ワルツを神格化して構想し、幻想的で宿命的な旋回の印象が結びついている〉と述べている。前2曲は静寂の世界を描いたが、この曲はオーケストラ曲を編曲したので、他楽器の表現も必要な凄いテクニックを使わなければならない難曲。外山は凄い技巧を発揮して力強い演奏で新しい魅力を聴衆に披露した。

前半の1曲目が長過ぎて今日の大方の聴衆の心に今ひとつ響かないようだった。2曲目は有名曲だが短くて曲が終っても次の楽章に続くと思った人が大部分で、拍手するタイミングを失って、演奏者も次の曲に移った。外山のステージでの仕草もお辞儀の角度や時間も従来の彼のマナーと変わったように見えた。何となく会場が盛り上がらない感じ。P席、3階席は売れずに2階席も埋まっていず、外山のコンサートでは今までにない空席の多い状況。(12月に毎年クリスマスコンサートのホテルでの開催が恒例になっていて、曲目もほぼ同じなので客が選択する事情があるのかも知れない)。最近は他のピアニストでも同じ状況になっている。とにかく、「ラ・ヴァルス」で少し盛り上がって“Bravo”の声援もあった。前半の選曲は必ずしも客の好みと合わなかったのかも知れない。

後半のショパンは聴き慣れたワルツで始まった。「英雄ポロネーズ」に入ると、スケールの大きい序奏とポーランド舞曲、ポロネーズ独特の勇壮な3拍子のリズムに乗って力強い演奏で聴衆の反応もうなぎ上り。
「ピアノ・ソナタ第2番」では振幅の大きい表情の豊かさが外山特有の透き通った音色で比類のない技巧で表現された。第3楽章の「葬送行進曲」が聴きものだが、第1楽章から聴衆の心を掴み、外山のピアノの世界に引き込んだ。第4楽章は75小節という変則的な感じの楽章で2分足らずでフィナーレになるが、最後の音できちんとまとまるのが不思議である。とにかく名曲である。

予定のプログラムが終ると、前半は淡泊であった聴衆も大拍手で感動を表し、アンコールを求めた。外山も最後はかなり深い角度のお辞儀で、従来の礼儀正しい印象。
ショパンの持つエネルギ―はやはり凄い。ショパンが聴衆を動かす印象が極めて大。

ところで「音楽の友」2011年8月号の「私の好きなショパン・ベスト5」の特集記事で外山啓介は次の曲を上げていたので、参考までに記しておく。
 1.ピアノ・ソナタ第3番   2.ポロネーズ第7番《幻想》  3.バラード第4番
 4.ノクターン第17番     5.スケルツォ第4番

本日のアンコール曲はブラームス:「間奏曲op117-1」
          ムソルグスキー:「展覧会の絵」より《キエフの大門》

ムソルグスキーは圧巻で聴衆も感動。ダイナミックな演奏にすっかり心を奪われた様子。私自身も昨年の消えかかった印象を取り戻す曲で心を揺り動かされた。アンコール曲として大曲であった。CDを購入してもらうための選曲だったと思うが、今日のコンサートの最後を飾る素晴らしい演奏曲となったのは間違いない。終了後のホアイエにも聴衆の興奮ぶりが広がっていた。












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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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