New Kitara ホールカルテット 7th Concert with 伊藤恵

〈Kitara弦楽四重奏シリーズ〉は年2回開催のNew Kitara ホールカルテットの公演のほかに、海外の弦楽四重奏団を招いての公演も小ホールを会場にして毎年開催されている。

《New Kitara ホールカルテット》の第7回公演となる今回はピアニストの伊藤恵を迎えて、≪ピアノ五重奏曲≫のコンサート。

[出演]  ヴァイオリン/伊藤亮太郎、大森潤子、 ヴィオラ/廣狩 亮、 チェロ/石川祐支
    ピアノ/伊藤 恵

[プログラム]  シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調
        ブラームス:ピアノ五重奏曲 ヘ短調
 
伊藤恵は1979年のエピナール国際コンクール第1位、80年のバッハ国際コンクール第2位、81年のロン=ティボー国際コンクール第3位および特別賞と活躍の後、83年のミュンヘン国際音楽コンクール第1位。第1位がめったに出なくて難関と言われるこのコンクールで日本人ピアニストとして初めての優勝。このコンクールの褒賞としてヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管との共演でミュンヘン・デビュー。84年にはN響と共演して日本デビュー。札響とは84年5月に渡辺暁雄指揮で「ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番」、85年には岩城宏之指揮で「グリーグのピアノ協奏曲」を演奏した記録が残っている。
シューマンのピアノ独奏作品全曲録音を07年に完成し、これは≪シューマニアーナ≫として知られている。彼女は幅広いレパートリーを持っているが、08年からはシューベルトを中心としたリサイタルを開いているそうである。

私が彼女の演奏を聴いたのは今迄に4回。最初は99年のKitaraレクチヤーコンサート~ショパンの音楽と生涯。黒川武のレクチャーで小ホールで入門講座のようなコンサートであった。2回目は01年9月、当時93歳の朝比奈隆指揮大阪フィルとの共演で「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》」を弾いた。3回目は03年11月、ジャン・フルネ指揮チェコ・フィルと「ラヴェルのピアノ協奏曲」。ジャン・フルネはソリストに伊藤恵を起用することが多かったと記憶している。4回目は08年4月の札響定期、ラドミル・エリシュカ指揮で「モーツァルトのピアノ協奏曲第24番」。

New Kitara ホールカルテット全員にとっても5年ぶりの共演で、オーケストラの時とは全く違った経験を積むことになるのではないか。聴衆としても何かワクワクするものがあって、期待大である。

シューマン(1810~56)は、40年にクララ・ヴィークとの結婚が転機となりこれまでのピアノ音楽の世界から更に広い範囲へと彼の創造力を伸ばし、「ミルテの花」などの多数の歌曲を作曲し始めた。40年はシューマンにとっての「歌曲の年」と呼ばれている。41年は更に、大規模な形式の楽曲の創作に移り「交響曲の年」、42年は「室内楽曲の年」と呼ばれるように、これまでにない分野で曲を作った。メンデルスゾーンに「3つの弦楽四重奏曲」を献呈し、「ピアノ五重奏曲」、「ピアノ四重奏曲」もこの年に作曲された。
「ピアノ五重奏曲」のCDが2枚手元にあった。そのうちの1枚がレナード・バーンスタイン(ピアノ)とジュリアード弦楽四重奏団による珍しい組み合わせ。録音が64年、LPが84年、CDが07年に制作された輸入版で、今夜のコンサート前に聴いてみる気になった。

第1楽章はピアノが奏でる美しい旋律がテーマとなって展開するのがとても印象的。第2楽章ではヴァイオリンが葬送行進曲風の旋律を提示して、何処となく悲しげな不安な表情。第3楽章はスケルツォで活発な楽章。第4楽章は第1楽章とフィナーレのメインテーマの変化が対照的に表現されて印象深い最終楽章。ピアノの華やかさがこの曲を一段と惹きたさせたと思った。クララを意識してピアノ・パートを作っており、メンデルゾーンの助言もあって初演から大好評だったと言われている。数回しか聴いていないが素晴らしい曲で、シューベルトの「ます」のほかにピアノ五重奏曲の気に入りの曲になりそう。

ブラームス(1833~97)は交響曲は少ないが、室内楽曲の数がかなり多いのを今回初めて確認することになった。モーツアルト、ベートーヴェン、シューベルトなどと比べると弦楽四重奏曲は少ないが、様々な楽器編成による多様な室内楽曲を生涯にわたって作曲したことが判った。ブラームス自身がピアノの名手だったこともあってピアノとの三重奏、四重奏、五重奏が多いのも特徴的。本日の演奏曲目のCDを所有しているのを今朝まで気付いていなかった。アンドレ・プレヴィン(ピアノ)とキュッヒル率いるウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団が1984年に録音したCDが出てきた。5年前に購入していたものだったが、久し振りに聴いてみた。何となくベートーヴェンの曲に似ている感じがした。

第1楽章は少し重々しい感じ。第2楽章では曲調が抒情的。第3楽章はスケルツォで生き生きとした楽章。第4楽章は素朴で力強い。喜びに満ちてフィナーレへと向かう。
ブラームスの室内楽曲には慣れていないので、よく解らないがハイドン的なところもあった。交響曲の時と同じように、室内楽曲を作る面でもベートーヴェンをかなり意識したのではないかと勝手に想像した。ただ、弦楽四重奏より重量感のある弦楽六重奏やピアノとの室内楽曲で彼の特徴を出そうとしたとも思われる。

弦楽四重奏曲に少し親しんだ後でピアノ四重奏曲やピアノ五重奏曲を聴くと、ピアノが目立って華やかな印象を強く受ける。今日のプログラムではシューマンの演奏が特に心に響いた。

演奏終了後、ゲストのピアニストが3日間のリハーサルと今夜のコンサートを通して札響のカルテットのメンバーの音楽への情熱に刺激を受けながら、室内楽の楽しさを味わって感動した様子を語った。伊藤恵は現在、東京藝術大学教授、桐朋学園大学特任教授として後進の指導に当たっている。日本を代表するピアニストが久しぶりの室内楽で北海道の第一線で活躍している若い演奏家との交流が持てたことは彼女にとっても素晴らしい体験になったようである。室内楽の演奏を通して音楽を一緒に作り上げた感動が最後の挨拶に良く表現されていて、彼女の気持ちが伝わってきた。

アンコール曲にショスタコーヴィチ/ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57 から第3楽章「スケルツォ」。
5分程度の〈勢いのある〉短い楽章。ショスタコーヴィチの曲としては印象がいつもと違った明るい楽章であった。







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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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