PMFオーケストラ演奏会(指揮:準・メルクル)〈プログラムB〉(2013.7.20)

PMFオーケストラ演奏会(プログラムB)

出演: 準・メルクル(指揮)
    ダニエル・フォスター(ヴィオラ)
    PMFアメリカ、 PMFオーケストラ
演奏曲目:
    武満徹:ア・ストリング・アラウンド・オータム
        ヴィオラとオーケストラのための
        (A String Around Autumn for viola and orchestra)
    マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調

PMFの後期のプログラムが昨夜の苫小牧公演から始まった。

首席指揮者に準・メルクルを迎え、14人の教授陣はアメリカの名門オーケストラ奏者たち。彼らの多くはここ数年連続して参加して指導に当たっている。PMF初参加は5人。

PMFオーケストラのメンバーは今年は108人。6割はアメリカと日本(アメリカ35%、日本25%)。毎年ほぼ10倍の競争率でアカデミー生が選ばれている。ポーランド人が毎年のように参加して過去の統計でもヨローッパ出身では意外と多い(今年は3人、昨年は4人)。韓国からは今年はわずか1人で日韓関係の悪化がこんなところにも表れているのかと危惧する状況。(一時的な状況であってほしい)。

準・メルクルはドイツ人であるが、15年ほど前からN響に客演する機会が増え、水戸室内管弦楽団とも共演を重ねていることは前回のプログにも書いた。
新情報が入ったので記しておく。3.11の東日本大震災後に彼自身は日本のために何か出来ることはないかと考え、昨年、音楽家であった亡き父親が遺したヴァイオリン4挺を水戸芸術館の財団に寄贈した。財団では茨城でヴァイオリンを学んでいる若者を対象に希望者を募った結果、4人に2年間ヴァイオリンを貸与している。今年、財団は更にヴィオラ2挺の寄贈を受けたということである。
7月6~8日、マエストロは水戸室内管第87回定演&東京公演で指揮を務め、札幌のPMFに出演する直前の14日には国立音楽大学第119回オーケストラ定期演奏会で指揮をした。宮田まゆみ(笙)や久保田巧(vn)がソリストで出演するオーケストラなのでアマチュアでもレヴェルの高いオーケストラなのだろうが、世界的な指揮者が日本の音楽家志望の学生に寄せる並々ならぬ想いを感じ取った次第である。

武満 徹(1930~96)は海外で演奏される機会の最も多い日本人作曲家。1989年11月の「パリの秋」芸術祭の委嘱作品で、今井信子のヴィオラ独奏とケント・ナガノ指揮パリ管弦楽団によって初演。
武満と親交のあった詩人大岡信による詩の一節にもとづく作品で「弦」(String)と「秋」(autumn)をキーワードにして作曲。とても透明感に溢れた曲。様々な旋律が混ざりあって静かに響き合い、美しい秋景色を織りなしていく情景を心に描けた。

ダニエル・フォスター(Daniel Foster)はワシントン・ナショナル交響楽団首席奏者。PMFには06年以降8回目の参加。ヴィオラの持つ楽器の特徴が広がりを見せていた。

マーラー(1860~1911)の「交響曲第1番」が私にとっては今迄は彼の交響曲の中で一番親しみの持てる曲であった。「第5番」は最も親しまれている作品の1つとされているが、有名な〈第4楽章のアダ―ジェット〉に焦点を合わせすぎて全体の良さが把握できていなかった。今日の午後は「マーラーの第5番」の醍醐味をたっぷり味わえた。一挙にお気に入りの曲の仲間入り。
PMFアメリカの教授陣を中心とするPMFオーケストラの迫力は圧巻であった。RA席の左側の最前列から管楽器奏者の演奏を視覚的な面からも堪能した。
楽器編成:フルート4、オーボエ3、クラリネット3、ファゴット4(コントラファゴット1)、ホルン7、トランペット5、トロンボーン4、チューバ1、ハープ2、ティンパニほか打楽器5、弦楽5部。フルートでピッコロ持ち替えや、バス・クラリネット持ち替えも、その様子をしっかり確認できた。
 
第1楽章の葬送行進曲。葬送を告げるトランペットのファンファーレが印象的。強烈な悲壮感が漂う演奏が始まる。テーマの旋律が繰り返し奏でられる。第2楽章も嵐のように激しく、力強い演奏が続く。第3楽章に入ってホルンの音が響き、木管が舞曲のような旋律を奏で、ヴァイオリンが田園風景を描く。第1・2楽章での主題の旋律も現れる。第4楽章は弦楽合奏とハープのみの演奏。映画に使われたこともあって《アダージェット》として有名になった。透明な抒情と悲しみに満ちた音楽で、しばしば単独で演奏される。第5楽章では、楽章を越えての主題の再登場と変容。〈ロンド、フィナーレ〉。ファゴット、オーボエ、ホルン、クラリネットが主題の断片を奏でる。ホルン・ソロの活躍が目立った。

全体的に木管・金管のファカルティ(=教授陣)のソロが今日の演奏レヴェルを引き上げ、素晴らしい演奏を繰り広げたと言える。マエストロ・メルクルのエネルギッシュで的確な指揮ぶりもあって極めて感動的な演奏会となった。マーラーの曲にしては大ホールの客席が9割ほども埋まったのはPMFならではの関心の高さだったのかも知れない。演奏終了後も聴衆の拍手が鳴り止まずに、マエストロは何度もステージに登場。儀礼的な拍手ではなく心からの表現と読み取れる聴衆の反応は心地良かった。会場を後にする人々の歩く姿も、土曜日の午後とあってゆったりとして満足げであった。




   
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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