アンネ=ゾフィ・ムター ヴァイオリン・リサイタル

2011年5月に予定されていたムターの公演が東日本大震災の影響で中止となり極めて残念な思いをしていたが、本日、2013年5月31日にやっと夢が叶った。 30年ほど前に若きヴァイオリンの巨匠と言われる2人のヴァイオリニストが音楽界で話題になっていた。もう一人のヴィクトリア・ムロ―ヴァは2003年の日本公演で札幌コンサートホールKitaraに「エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団」を率いて指揮者&ソリストとして登場した。オール・モーツァルト・プログラムでムロ―ヴァはヴァイオリン協奏曲第1番と第4番を演奏した。
それだけに、今やヴァイオリン界の女王と呼ばれるムターのKitara初登場を心待ちにしていた。今年の4月にムロ―ヴァは11年ぶりに来日してN響と共演してリサイタルを行なった。

ムターは札幌の他に兵庫と東京オペラシティとサントリーホールでの公演が予定されている。
ピアノ:ランバート・オルキス(Rambert Orkis)
 
PROGRAM
 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.379
 シューベルト:幻想曲 ハ長調 D.934
 ルトスワフスキ:パルティ―タ
 サン=サ―ンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ短調 Op.75

コンサートが始まる前にステージの下手には大きな豪華な花が飾られていた。深紅のドレスに身を包んだ気品のある美しい容姿のムターが一段と輝きを放って、ピアニストと共に登場した。割れんばかりの拍手の中、モーツァルトのソナタが奏でられた。何と美しい音色か。今日の演奏曲目で唯一持っているアッカルドのCDを予め何回か聴いてきたが実演でムターから発せられる音の響きが格段と違うのは言うまでもない。明るい聴き慣れたメロディがいろいろな変奏曲となって展開される。何とも鮮やかで変化に富んだ演奏。ピッチカート奏法がかなり使用されるが、CDを漫然と聴いているだけでは気が付かないほど多用されていた。

シューベルトのヴァイオリン・ソナタの作品はほとんど無いと思うので、今日の「幻想曲」はとても興味津々であった。ピアノ用の有名な「さすらい人幻想曲」も連想しながら聴いたが、演奏時間も25分ぐらいと長く、ピッチカート奏法の場面も結構あって変化を引き出すためだろうが、音の響きが低音すぎていささか短調な感じになるのが気になった。今日の演奏でただ一つ気になった点だが、楽譜通りだから鑑賞する者の好みの問題なのだろう。弓を使っての美音の演奏が断然、気持ちが満たされる。

後半の“ルトスワフスキ”はポーランドの現代作曲家で今年は彼の生誕100周年に当たる。今迄もクリスティアン・ツィメルマンのピアノ演奏でも紹介されてきたが、今年は特に記念年とあってその作品が取り上げられることが多いようである。ルトスワフスキは1984年にヴァイオリンとピアノのための「パルティータ」を作曲した。その後この作品はムターのためにルトスワフスキ自身が独奏ヴァイオリンとオーケストラのための新しい版を作った。今日、演奏されたのは1984年版であった。現代曲とあって前半の作品とは趣がガラッと変わったが、それなりに聴き慣れない曲を楽しめた。

年輩のピアニストのオルキス故ロストロポーヴィチと11年以上にわたって共演し、88年からムターのリサイタルで共演している。(ロストロポーヴィチが92年に札幌公演を行った折のピアニストをプログラムで確認してみたら同じピアニストだった。)オルキスは室内楽奏者、現代音楽の表現者、ピリオド楽器奏者として国際的な名声を勝ち得ているピアニストだそうです。
今日のピアノ伴奏で共演者と呼吸を整えながら演奏に気を遣っていた様子が経歴からも判った。しかし、ルトスワフスキでは対等のピアニストとしての技量を示していたのでその意気込みが一層伝わった。

サン=サーンスはいろんなジャンルで多くの作品を残している。ヴァイオリン・ソナタ第1番はフランス近代音楽の特徴が良く表現されていると言われる。フランス音楽らしい豊かなメロディが心を弾まさせてくれる。情熱的なヴァイオリンとピアノのかけあいが楽しめ、フィナーレは文字通り曲を閉じるのに相応しい壮麗な終結。

今日の客の入りは思ったほどではなく3階は売りに出されずに2階も空席があったが、ヴァイオリン界の女王と言っても若い世代ではムターの存在は知られていないのが残念ではあった。前半は客も静かにムターの音楽に集中していたが、後半は“Bravo”の掛け声も飛び、アンコールの披露に至っては普段より以上の興奮の入り混じった歓声とどよめきが湧き上がった。会場の雰囲気に応えてアンコール曲が4曲もあった。2曲で終わりかと思った聴衆もこれには大喜び。多くの人がスタンディング・オヴェーションで感謝の意を示した。私もめったに無いことに仲間入りをして立ち上がって拍手を送った。

アンコール曲:クライスラー「美しきロスマリン」、ブラームス「ハンガリー舞曲第1番」、
(第2曲目から、ムター本人が曲名を英語で言って、第3、第4は“Happy New World”,“Maurice Ravel , Habanera”と聞こえたが、会場出口の曲名が違っていた。打ち合わせと変更した曲目が書かれたのか、私の耳の聞き違えかは定かでない。

サイン会があると知って、彼女のコンチェルトは81年頃のレコーディングの曲を何枚も所有しているが、ソナタは無かったので、記念に「ブラームスのソナタ全集」を買ってサインしてもらった。多くの人が行列を作る中、久しぶりに並んでムターの前で「Kitaraでの初登場を心待ちにしてました。素晴らしい演奏でした。有難うございました。」と英語で言うと顔を上げて頷いてくれた。流れ作業のようなサイン会であったが、コミュニケーションをとれて大満足であった。

ムターは今回の日本ツアーのなかの出演料の一部を被災した子どもたちへすぐ届けたいと「セーブ・ザ・チルドレン」に寄付した。今日の演奏会を通して彼女の気取らない明るい人柄に接することができたのも収穫であった。彼女くらいの大物になるとサイン会は予想していなかった。今後は好感度が増して彼女のCDへの親近感も増幅することになると思う。

昨夜から体調が余り思わしくなかったが、何時ものごとくKitaraでのコンサートが元気回復の素になるから嬉しい。それにしてもここ数年心待ちにしていたムターを聴けて何か心に気にかかっていたものが解消して晴れ晴れとした気分になれたことが何よりだ。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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