第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール 予選と審査

クライバーン・コンクールの予選も終わりに近づいている。オンデマンド・ビデオにはまってしまった。ヘッドフォンで極めて良い音質が楽しめ、映像つきなのでピアニストの手の動きが見れて退屈しないで鑑賞できる。今まで偶にYouTubeで短い曲を聴いてもヘッドフォンは使っていなかった。次のKitaraでのコンサートまで2週間近くも空いていたこともあってThe Cliburnに夢中になったのである。
 
これまで30名のうち10名余りのリサイタルを聴いた。どのピアニストも素晴らしくて聴きごたえがある。

前回触れたフランスのフランソワ・デュモン(Francois Dumont)は第1ステージで、≪モーツアルト:ソナタ イ短調k310、ラヴェル:夜のガスパール、ショパン:スケルツォ第3番≫を弾いた。極めて味わい深い豊かな演奏で大人の雰囲気を醸し出した。

ウクライナのヴァディム・ホロデンコ(Vadym Kholodenko)の演奏も素晴らしかった。 第1ステージでのラフマニノフの「ソナタ・第1番」がとても良い曲で新鮮だった。(ラフマニノフのソナタは第2番が有名で1番は聴いたことが無かった。) 第2ステージではベートーヴェンの「ソナタ第30番」に続いて、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカよりの3楽章」を演奏したが、これが圧巻であった。

アメリカのSteven Lin, Alex McDonald は経験を積んだピアニストで地元とあって物凄い会場からの声援を受けての演奏。リンはハイドン、メンデルスゾーン、VINE(豪州の作曲家)を第1ステージで、第2ステージではハイドン、ショパン、リストを組み合わせて自信満々の様子。アメリカでも評判の人気の高いピアニストらしい。
マクドナルドはクライバーンに似た風貌で気品のある30歳のピアニスト。第1ステージでハイドンの「ソナタ第32番」、武満の「雨の樹素描Ⅱ」、リストの「ソナタ・ロ短調」を重厚感のある演奏。第2ステージではラヴェル、リスト、ショパンの後にストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」を演奏してセミファイナル進出への意気込みを見せた。

イタリアのベアトリチェ・ラナ(Beatrice Rana)は第1ステージではクレメンティとシューマンを力強くとても明るく演奏した。第2ステージではシューマンの「アベッグ変奏曲」、ラヴェルの「夜のガスパール」、バルトークの「Out of Doors」。第1ステージとは様相をがらりと変えて落ち着いた深みのある演奏で強い印象を残した。

その他で印象に残った出演者は、ポーランドのMarcin Koziac、ロシアのAlexey Chernov、中国のFei-Fei Dong。

いくら時間があっても足りないくらい。こんなに夢中になって聴いたとは自分でも意外だった。10名のピアニストの演奏をアト・ランダムに選んで聴いただけだが果して何名が次のステージに進めるか興味深くもある。

審査の方法ですが、審査委員13名は各出演者に今回は点数は付けません。2回のリサイタルでそれぞれ「もっと聴きたい」出演者には“YES”、「もっと聴きたいとは思わない」出演者には“NO”と記入します。“YES”の数の多かった12名が第2次予選(Semifinal Round)に進出するわけです。

審査員の一人は日本の野島 稔さんです。彼は1969年の第3回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで第2位になったピアニストで、81、85、89年に続いて今回が4回目の審査委員となります。彼は戦後生まれ世代の日本を代表するピアニストで、私も札幌で札響・N響公演で89、92,94年と3回演奏を聴く機会がありました。「野島稔よこすか・ピアノコンクール」を創設して審査委員長として活躍し、現在でも演奏と教育の両方の分野で活動している。

つい2週間前のKitaraでピアノ・リサイタルを開催して、19日にも東京で演奏活動を行なったミシェル・べロフさんも昨年に続いて今年も審査委員に名を連ねているのも注目されます。

*2009年辻井伸行が優勝したことで一気に世間の注目を浴びたが、同じく優勝を飾ったハオチェン・チャン(Haochen Zhang)にも日本の音楽界はもっと注目してほしい。ラン・ランやユンディ・リに継ぐ中国出身の有望なピアニストである。

*クライバーン・コンクールが世界の3大コンクールと4年前に報じられていたが、ショパン・コンクール、チャイコフスキー・コンクールは異論がないとしても、ヨーロッパにはエリーザべト、ミュンヘン、ジュネーヴ、ロン・ティボー、リ―ズなど有名なコンクールが沢山ある。アメリカで一番有名なコンクールは1939年創設のレーヴェントリット国際コンクールだった。ピアニストとヴァイオリニストのための国際的に権威のあるクラシック音楽コンクールとしてニューヨークで始まった。過去の有名な優勝者はユージン・イストミン(p. 1943)、ヴァン・クライバーン(p. 1954)、イツアーク・パールマン(vn. 1963)、チョン・キョンファ、ピンカス・ズ―カ―マン(vn. 1967)。内田光子は1976年第2位(優勝者該当なし)。残念ながら1981年以降このコンクールは開催されなくなった。アメリカでは現在はクライバーン・コンクールが最大のコンクールとなっているのは確かであろう。近年、アメリカの演奏家は日本やヨーロッパの国々ほどコンクールへの依存度は高くない、個人的にはむしろ低いのではないかと思っている。

追記:12 semifinalists が決まった。ロシア勢が断然強い。ホジャイノフを初め4名もセミファイナル進出。このことは2010年のショパン・コンクール以来から予想されていた。阪田の第2ステージも良かった。
ホロデンコ、ラナ、ドン、チェルノフも入った。ホジャイノフ、ホロデンコは優勝候補のような気がする。これからが本番なのだろうが何となく素人としての感触である。(May 31)

追記:第2次予選(60分以内のソロ・リサイタルとピアノ五重奏曲)を通過して本選(Final Round)に進める6名のピアニスト。チェン(米国)、ドン(中国)、ラナ(イタリア)、ムンドヤンツ(ロシア)、阪田(日本)とホロデンコ(ロシア)。優勝候補のホジャイノフは選に漏れた。本選ではコンチェルトを2曲弾くことになっている。(June 5)



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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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