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トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ-ン 2018 札幌公演

毎年恒例の音楽の都、ウィ-ンからの贈り物となっている室内楽オーケストラの公演。公演開始前に先日のタローのピアノリサイタルの帰路で出会った元Kitaraボランテイアの友人2人と打ち合わせて、本日の公演前にKitaraテラスレストランでランチを一緒にしながら久しぶりの交流を図った。

ウィ-ン・プレミアム・コンサート(WIEN PREMIUM CONCERT)

2018年3月31日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
 〈出演〉フォルクハルト・シュトイデ(Toyota Master Players, Wien芸術監督)、ウィ-ン・フィルメンバー、ウィ-ン国立歌劇場メンバー、ウィ-ン響メンバーを含む管弦楽with安藤赴美子(ソプラノ)。
 〈プログラム〉
  第1部 モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲 K.492、 ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216(ヴァイオリン/Volkhard Steude)、歌劇{フィガロの結婚」より “愛の神よ、安らぎをお与えください”、 “楽しい思い出はどこへ”、 歌劇「ドン・ジョバンニ」より “あの恩知らずは私を裏切り”(ソプラノ/Fumiko Ando)
  第2部 J.シュトラウスⅡ:喜歌劇「くるまば草」序曲 Op.468、 喜歌劇「こうもり」より “侯爵様、あなたのようなお方は”(ソプラノ/Fumiko Ando)、ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ「女心」 Op.166、 J.シュトラウスⅡ:喜歌劇「こうもり」より チャルダッシュ“ふるさとの調べよ”(ソプラノ/Fumiko Ando)、ワルツ「南国のバラ」 Op.388、レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より “ヴィリアの歌”(ソプラノ/Fumiko Ando)、ヨーゼフ:シュトラウス:ポルカ:シュネル「憂いもなく」 Op.271
 
コンサートの開幕かアンコールの曲として聴く機会が極めて多い馴染みの歌劇の序曲「フィガロの結婚」でスタート。前半はモーツァルト・プログラム。モーツァルトが書いたヴァイオリン協奏曲5曲の中で、「第3番」は明るい第1・3楽章のアレグロと対照的にアダージョの第2楽章は幻想的な調べ。ヴァイオリン独奏はウィ-ン・フィルのコンサートマスター のフォルクハルト・シュトイデ。彼は2000年トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ-ンの日本公演以来、来日を重ねている。今年の《Kitara のニューイヤー》 には弾き振りで初登場して、「ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲」のほかに、ウィ-ンの音楽をプログラムに組んで華やかな新年の雰囲気を演出した。
今日は久しぶりに「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番」を聴いたが、馴染みの旋律が奏でられて心地よい音楽に浸った。

前半の最後のプログラムはソプラノ独唱。安藤赴美子は札幌出身のソプラノ歌手で、この数年の日本での活躍ぶりが顕著である。2014年、2015年と連続して札響定期に登場。昨年2月の新国立劇場「蝶々夫人」 のタイトルコール役で大絶賛を浴びた。
前半3曲は馴染みのオペラだが、3つのアリアはどれも耳慣れた旋律というわけでもなかった。ただ、安藤の歌声はホールの3階にも響き渡るような堂々たる歌唱で大型ソプラノ歌手の実力を感じさせた。

後半のプログラムはウィ-ン・フィル・ニューイヤーコンサートで演奏されるような曲がずらりと並んだ。ただし、7曲のうちで、馴染みの曲は「侯爵様・・・」、「南国のバラ」、「ヴィリアの歌」の3曲だけ。3曲のアリアでは特に聴衆を感動させるような見事な歌唱で歓声も起こり一段と拍手も大きくて長く続いた。
初めて耳にするような曲も適度に入っていて、結果的には良いプログラムに思えた。チャルダッシュというハンガリーの舞曲が一瞬、意外だと思ったが、オーストリア・ハンガリー帝国の時代を考えれば当たり前と気づいた。何となくウィ-ンの音楽とは違う趣の曲で興味深かった。コンサートはテンポの速い陽気な感じの曲で締められた。

アンコール曲は「ヨハン・シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ」 。今年のKitaraのニューイヤーでも演奏され“おしゃべりポルカ” で作曲家の妻が飼っていたプードルの名前に由来するとも言われる曲名。楽しい曲で幕となった。
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札幌北高等学校吹奏楽部第29回定期演奏会

札幌北高合唱部の定期演奏会は何度か聴いているが、札幌北高等学校吹奏楽部の定期演奏会を聴くのは今回が初めてであった。音楽は全般的に好きであるがコンサートに出かけるのは専らクラシック音楽である。10年ほど前にシェナ・ウインド・オーケストラの演奏は聴いたことがあり、クラシック音楽とは違う魅力もある。近年では中高生を中心に若い人々の吹奏楽人気は年々高まっているようである。2・3月のKitara Newsで札幌北高吹奏楽部定期演奏会の演奏曲目「パガニーニの主題による狂詩曲」と「三角帽子」に鑑賞意欲をそそられていた。
札幌北高創立110周年記念演奏会で合唱部や吹奏楽部の演奏は耳にしているが、生徒自身が手作りした定期演奏会は別物である。今回の定期演奏会は音楽が大好きな生徒が心を一つにして演奏に取り組み、彼ら自身も楽しみ、聴衆もその楽しさを共有できる素晴らしいコンサートになった。

2018年3月27日(火) 18:30開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演〉 指揮/ 笠原 禎(顧問) 、篠原 彪我(生徒)
      吹奏楽/札幌北高吹奏楽部1年、2年生(約50名) 3年卒業生(約20名)
      司会/ 玉谷 朋佳(OG)
〈PROGRAM〉
 【第1部】 
  真島俊夫:ナヴァル・ブルー、  田村文生:アルプスの少女
  ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」より
 【第2部】
  ストレイホーン:A列車で行こう、  ガレスピ&パパレリ:チュニジアの夜
  メリーロ:ゴッドスピード!
  ディーズニー映画名曲メドレー(ヒギンズ編):DISNEY AT THE MOVIES
  サルトーリ(笠原禎編):Time To Say Goodbye
  ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

「ナヴァル・ブルー」はフランス語で“ネイビー・ブルー”の意味。陸上自衛隊音楽隊のための音楽でテンポの速い軽快なマーチ。金管のファンファーレが入って華やかに展開される開幕に相応しい曲。
「アルプスの少女」の作曲家の作品は変拍子、不協和音の連続で楽器の特殊奏法も続く、コンクール向きの曲と思われた。猛練習が必要な高度な演奏で音楽の専門家でないと鑑賞が難しそうであった。演奏者は曲の中でいろいろな表情を表現できる楽しさも味わっているのだろうと推量した。
スペインの作曲家ファリャの「三角帽子」は小澤指揮ボストン響のCDを所有していて、コンサートでも一部は聴いたことがあり、親しまれているメロディもある。ロシア・バレエ団を率いるディアギレフの依頼で作曲され、1919年にロンドンで初演。指揮がアンセルメ、舞台装置と衣装がピカソだったという。スペインのアンダルシア地方の代官(*代官がかぶる三角帽子が権力の象徴)と美しい粉屋の女房をめぐる騒動を喜劇的に描いた2幕のバレエ。演奏曲目は第2幕から3曲、「粉屋の隣人たちの踊り」、「粉屋の踊り」、「終幕の踊り」。他愛もないストーリーだが、スペインの民俗舞踊に乗って、楽しい音楽が繰り広げられた。

前半3曲はそれぞれ趣の違う曲で、吹奏楽部顧問の札幌北高教諭の優れた芸術性が生徒の演奏に伝わっているのが実感できた。

司会担当の卒業生が、極めて巧みな司会ぶりで進行を担当。後半のプログラムは完全に生徒が主体性を持って運営している様子がうかがえた。定期演奏会実行委員長が2年生で、3年生や卒業生の協力も得ながら、実質的に吹奏楽部部員の手で演奏会に臨んでいるようであった。

後半プログラムはジャズ研究会部員20数名による演奏で始まった。主に金管楽器を使用しての演奏で、サクソフォン、トランペット、トロンボーンなど楽器の数も多くて、ソロも交代で入る本格的なジャズ。先日、弦楽四重奏で聴いたばかりの「A列車で行こう」だが、やはり、ジャズはニューヨークの場面を描いたジャズ・サウンドが圧倒的に素晴らしい。一気にジャズの楽しい雰囲気に浸った。「チュニジアの夜」は初めて耳にしたが、アフロと4ビートのリズム感あふれる曲で何となくエギゾチックな感じがした。
演奏者が楽しんでいる様子が伝わって、聴衆も引き込まれて楽しむ状況は何と素晴らしいことか!
私が同校を定年退職した後に生まれた子たちが、高価な楽器を手にして、短い期間で楽器を鮮やかに扱って演奏している様子は信じがたいものがある。学業との両立を図りながら、こんなに音楽を楽しんで演奏している様子に彼らの才能の素晴らしさと将来性に明るさを感じ取った。(*2曲の演奏では指揮者ナシ)。

司会者はジャズ研究会の代表や吹奏楽部部長にもインタヴューをして、音楽に取り組む姿勢を訊き、彼らは音楽だけでなく仲間の協力を通して人間性を養っている様子も語っていた。それぞれの賢い応答にも知性も表れていて嬉しく思った。話は飛ぶが、最近、文化やスポーツ面で注目された若者がインタビューで答える話の内容は適切で充実している(一方、それに反して大人の社会、特に政治家の発言の稚拙さが目立つのは極めて残念である)。

後半の吹奏楽4曲の指揮者は生徒が担当。“God speed!”は成功を祈る曲で管楽器のファンファーレと疾走感の溢れるメロディが第2部最初の勇ましい吹奏楽曲だった。
続いてライオンキング、美女と野獣など映画で馴染みのメロディが入った14曲がメドレーで演奏された。何となく雰囲気は分かっても、私自身は知らない曲が多かったが、ディズニー映画音楽の雰囲気は出ていた。グループで振付をしながら起立して演奏したり、体を動かしながらリズムをとって演奏したり、いろいろな工夫を伴った演奏で楽しめた人々が多かったようである。

“Time To Say Goodbye”はヨーロッパで大ヒットした曲で、タイトルもメロディも耳慣れたもの。ただ、タイトルから別れの曲を連想しがちだが、オリジナルのイタリア語は“君と共に旅立つ”の意で、結婚式でも歌われる曲だそうである。

最後の曲の原曲は「パガニーニ:24のカプリース」。ヴァイオリン曲の第24番のメロディを主題に大作曲家ラフマニノフがピアノ協奏曲にした。そのラフマニノフの名曲を吹奏楽曲にした曲が今回の最後の演奏曲。主題、序奏と24回の変奏とコーダ。ラフマニノフのピアノの技法とオーケストレーションを生かした協奏曲を吹奏楽曲として、極めて色彩感豊かに壮大に描いた。聖歌「怒りの日」の旋律も独特な形で取り入れ、原曲の良さを生かしながら吹奏楽曲として輝かしい壮大な管楽器の音が際立つダイナミックな曲としてクラシック曲とは違う魅力が味わえた。

指揮を務めた生徒の篠原はサクソフォン奏者として活動しているというが、個性的な指揮ぶりも堂に入ったものであった。演奏終了後に1300名ほどの聴衆から大拍手と歓声を浴び、“音楽をこれからも続けていく”という力強い言葉を述べ、アンコール曲に恒例の曲のようだったが、「Crazy For You」(あなたに夢中)を演奏した。感動した聴衆の拍手が結構長く続いていた。

演奏終了後、演奏者全員がホワイエに出てきて、友人や知人と和気あいあいに交流していた。出演者の友人、知人、家族などの姿も多く目にしたのは当然と思うが、演奏者が楽しんで演奏し、聴衆も彼らの演奏を楽しんでいる様子が双方に伝わる素晴らしい感動的な演奏会であったと言えよう。帰路に就く人たちから、“こんな楽しい音楽祭もいいね!”という声も聞こえてきた。札響の演奏会の後で感動して余韻を楽しみながら歩いている人はよく見るが、楽しかった喜びを素直に表現している場合はそんなに多くない。とにかく、今後の吹奏楽部の伝統が守られて自主的活動が円滑に進むことを祈りたい。

※チラシや情報の一部から推測すると、吹奏楽部の活動で他の高校との合同発表会や合同練習の機会があって交流があるのは良いことだと思った。

チェコ・フィル ストリング・カルテット2018

2016年から札幌公演を聴いていて今回が3回目。プログラムはほぼ毎回アンコールのベストヒット20。前回と同じ曲が3分の一、前々回とは半分が同じで、ある程度の重複は止むを得ないところだろう。弦楽四重奏団の演奏曲目のオリジナル曲はすべて人々に親しまれている珠玉の小品。全員がチェコ・フィルのメンバーで、顔触れは前回と全く同じ。

2018年3月22日(木) 18:30開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演〉マグダレーナ・マシュラニョヴァー(Vn)、 ミラン・ヴァヴジーネク(Vn)、 ヤン・シモン(Va)、 ヨゼフ・シュパチェク (Vc)
〈Program〉
 モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハト・ムジ―ク 第1楽章  
 バッハ:G線上のアリア、  ポッケリーニ:メヌエット、 モーツァルト:トルコ行進曲
 シューベルト:アヴェ・マリア、  シューマン:トロイメライ、 ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
 サン=サーンス:白鳥、  ドヴォルザーク:ユモレスク、  ロッシーニ:剣の舞
 ハチャトゥリアン:ウイリアム・テル序曲より、  レハール:メリー・ウィドウ・ワルツ
 クライスラー:愛の喜び、  バダジェフスカ:乙女の祈り、 イヴァノヴィッチ:ドナウ川のさざ波
 ネッケ:クシコス・ポスト、  ピアソラ:リべルタンゴ、  ビートルズ:ミッシェル
 ロドリゲス:ラ・クンパルシータ、  エリントン:A列車で行こう  

今迄に聴いた3回の公演の最初の2曲は同じで、前半10曲、後半10曲とプログラムの骨子が固定している感じ。意外性は少ないが、緊張せずにリラックスした雰囲気で名曲に浸れる利点があるといえる。
初めて耳にする曲は無く、後半のプピュラー音楽4曲は2年前のコンサートでも聴いた記憶がある。クラシック曲は何度も聴いているメロディが多いが、メロディを聴いて、曲のタイトルが判るのは半数ぐらいであった。(*今回は予めプログラムで曲名を見ていたので全曲のタイトルは直ぐに分った。)

前半の曲で、ポッケリーニの曲は聴いている途中で馴染みのメロディが出てきたので聴いたことが曲だと分った。久しぶりに耳にしたメロディであった。
後半の曲でイヴァノヴィッチとネッケという作曲家の名は2年前に知った。曲のメロディには、かなり以前から馴染んでいた。“クシコス”がハンガリー語で“馬”の意味とは改めて認識することになった。郵便馬車が走る様子が曲で上手く表現されていた。
「リベルタンゴ」はここ数年の演奏会で何度か聴く機会があって親しめる曲になっている。「ラ・クンパルシータ」はアルゼンチン・タンゴの名曲として子供の頃からラジオで耳にしていた。「ミッシェル」はタイトルさえ分らなかったが、学生時代とは違ってニ三十年前からビートルズの音楽は味わい深い曲として聴けるようになっている。

カルテットのメンバー全員はオーケストラのほかに様々な室内楽アンサンブルで活動していると思われるが、幅広い層に音楽を広げるために、今回のようなコンサートを続けているのは貴重な活動だと思う。弦楽四重奏団の演奏曲目は必ずしもポピュラーとは言えないのが実情である。
今回は前2回よりも聴衆が少なめに感じたが、帰りのホワイエにはCDを購入してサイン会に並ぶ人が想像以上に多かった。この種の演奏会を期待している人が結構たくさんいるようである。
女性のリーダーも日本語を出来るだけ使うようにしてコンサートを進めた。アンコール曲は3曲。①グリンカ:ルスランとリュドミラ「序曲」 ②岡野貞一:故郷  ③ヨハン・シュトラウスⅠ:ラデツキー行進曲。
(*東日本大震災以来、来日演奏家が演奏する邦人作品は「故郷」が多くなっているようである。)

チェコ・フィルの来札公演も期待したい時期である。
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アレクサンドル・タロー ピアノリサイタル

札幌コンサートホール開館20周年 〈Kitara ワールドソリストシリーズ〉
Alexandore Tharaud Piano Recital

第12代Kitara専属オルガニストの名がジローだったので、タローの名も日本人には親しみやすくて覚えやすい名前である。
アレクサンドル・タローは1968年パリ生まれ。父はバリトン歌手、母はバレリーナ。幼少の頃からバレエを習って芸術的環境の中で育ち、パリ国立高等音楽院に入学。1989年ミュンヘン国際コンクールで第2位入賞。2001年、オルガンのために書かれた作品をモダンピアノで斬新な音楽にした「ラモー作品集」でブレイク。ダンサーとのコラボレーションでピアノ音楽の新境地を広げた。モダンピアノならではの古楽の魅力を伝えるピアニスト。

2018年3月18日(日) 14:00開演
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988

「ゴルトベルク変奏曲」は2000年にグールドのCDを購入して、数回聴いている程度。コンサートで初めて聴いたのは、10年前のKitaraでのセルゲイ・シェプキン、2回目は3年前の小山実稚恵。親しみやすい曲とは違うので、コンサートの前に聴いたりしていても、アリア以外のメロディには馴染んでいない。
この作品は2段鍵盤を持つクラヴィチェンバロのために書かれ、アリアと30の変奏曲と再びアリア、計32曲から成る大曲。グールドの1955年の録音盤の演奏時間は40分程度、2度目の1981年のCDはテンポを遅くした演奏で50分程度。同じピアニストでも、こんなに違うが、今まで聴いたピアニストは60分程度だったと思う。タローの「ゴールトベルク変奏曲」は新しいアイデアが入った新鮮な演奏で世界の話題を集めているらしい。どのように曲が展開されるか興味津々であった。

サラバンド風の装飾豊かな美しい主題と、この主題に基づく低音の変奏が続く。30の変奏曲は2部構成で前半が15曲、後半が15曲。3曲ごとに“舞曲”、“トッカータ風”、“カノン”とキリスト教の三位一体論に基づくアイデアで、数学的にも工夫が凝らされた作品になっている。各ユニットの2曲目が2段鍵盤を駆使した両手の交差が使われる(*1段しかないピアノでの工夫に右手と左手の交差が必要なようであった)。前2回のホールでの演奏の座席はステージに向かって右側だったので、ピアニストの手の動きが見えなかったが、今回はホール中央左側の座席からピアニストの手の交差が良く見えたので、何番目の変奏をしているか分かって非常に良かった。譜めくりストがいたことで変奏の切れ目が解りやすかった。第26変奏の演奏が難易度が凄く高そうなことが観ていて分かった。第29変奏もフィナーレと言えそうな素晴らしい演奏で心に響いた。
音楽の専門的なことが解ると、鑑賞が一層、楽だったのだろうが、とにかく良かった。タローの演奏も舞踏の場面を連想させ、非常に洗練された音色で情感がこもっていた。ことし中に50歳を迎えるとは思えない若さとスタイルの良さも兼ね備えた格好いいピアニストの品格のある新鮮なピアニズムを味わえた。

70分の演奏時間を集中力を保って良い音楽が聴けた。“眠りのための音楽”というより“心の癒しとなる音楽”であった。満席の聴衆が70分間も静聴を続け、ピアニストが鍵盤から手を放して心を開放する瞬間まで見守る姿も大変よかった。
アンコール曲は「スカルラッティ:ピアノ・ソナタ K.141」だったが、左手の弾き方に特徴があって面白いタッチが見れた。

※アレクサンドル・タローは音楽の領域を超えた多彩な活動で注目されている。12年にはスイスでコンサートと並行して写真展を開催。12年のフランス・オーストリア合作映画「AMOUR](愛)ではピアニスト役で出演した。この作品はカンヌ国際映画祭パルム・ドールを獲得し、ゴールデングローヴ賞やアカデミー賞外国語映画賞も受賞している。
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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック(ピアノ/ユジャ・ワン)

アメリカのオーケストラはヨーロッパと違って公的援助が無いので運営資金は寄付で賄われている。特別なオーケストラを除いて海外公演はヨーロッパのオーケストラに比して少ない。日本公演が開催されても、東京が中心である。Big Five や Elite Eleven の日本公演が札幌に来ることは最近は稀である。ボストン響、フィラデルフィア管、クリーヴランド管の札幌公演は聴いてるが、シカゴ響とニューヨーク・フィルは聴く機会がない。一度は聴いてみたいと思っていたので、今回は東京で聴くことにした。

NEW YORK PHILHARMONICは創立が1842年でアメリカ最古のオーケストラ。ウィ-ン・フィルと同年創立の歴史を持つが、停滞の時期があって、ワルターが輝きを取り戻してバーンスタインが一気に盛り上げた。音楽監督がメータ、マズア、マゼール、ギルバートに引き継がれ、18年9月からズヴェーデンが音楽監督に就任する。

Jaap Van Zwedenは1960年、オランダ生まれ。ジュリアード音楽院に学び、19歳でロイヤル・コンセルトヘボウ管のコンサートマスターに史上最年少で就任。95年に指揮者に転向し、2005年からオランダ放送響首席指揮者を務め、07年ダラス響音楽監督などを務めているが、世界的名声は今後に期待される指揮者。

2018年3月13日(火) 19:00開演  サントリーホール

開演30分前にカラヤン広場に集まった人々の数は凄くて今までにない盛況ぶりで、開演前から期待が高まっていた。開場は予定通り18:30でチャイムの心地よい響きが鳴り終わって、入場できたのはロビーまでだった。リハーサルが長引いていたのかもしれない。チラシが渡されたがプログラムが入っていなかった。2曲だけの演奏で、曲目は判っていたので不安は無かった。2階のロビーの椅子に座ってエントランスの方を見ていると、いつの間にかホール内に人々がもうすでに入場していた。特別にアナウンスもなかった。

ホールに入って、2階12列22番のホール中央の席から見渡すステージは以前より広くなったように思えたが、これは勘違いのようであった。今迄は2階Cブロック席やRA席で鑑賞していて、ホールがグレード・アップした感を抱いた。より洗練された空間に見えたが、数年ぶりの入場で印象がやや異なった。いずれにしてもサントリーホールは素晴らしいホールである。

〈PROGRAM〉
 ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 作品15
 ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」 

ユジャ・ワン(Yuja Wan)は1987年北京生まれ。99年にカナダに移住し、フィラデルフィアのカーティス音楽院に学ぶ。07年、アルゲリッチの代役でデュトワ指揮ボストン響とチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を共演して知名度を上げた。2年後にドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、世界の第一線で活躍を続けている。批評家による最高の称賛を受け、カリスマ的才能と魅惑的な容姿で世界を魅了しているピアニスト。

ユジャ・ワンは評判通りの派手な金色の衣装で登場して50分にもわたる大曲jを弾き始める姿も最初から堂に入っていた。
「ピアノ協奏曲第1番」の第1楽章は交響曲の色彩を持った楽章。悲劇的な情熱を秘めた楽章に続いて、第2楽章は祈りの宗教的な情感を湛えている緩徐楽章。第3楽章はエネルギッシュで躍動感に溢れ、壮麗なフィナーレ。
ピアノの技巧が他の有名なピアノ協奏曲と比べてオーケストラとの対話の面で難しさがある曲に思えた。指揮者とピアニストがそれぞれのペースで進んでいるように思えたが素人には細かな面は解らなかった。
1階前方の席からとは違って指揮者の力強い腕の動きも良く見れた。ユジャ・ワンの演奏は人の心を掴む弾き方であった。
演奏終了後の大歓声に応えてアンコール曲が2曲も披露され、コンチェルトとは違う魅力を放った。①シューベルト(リスト編):糸を紡ぐグレイトヒェン ②メンデルスゾーン:無言歌集より“失われた幻影”。

前半終了後にプログラム販売のアナウンスが入った。入場時の販売は混雑を避けて遠慮したと思われた。20分休憩中の男子トイレ前の行列はKitaraでは見たことも無いような長蛇の列だったが、客は整然と並んでいた。
後半のスタートが20時半だったが、「春の祭典」は意外と短くて21時には曲が終了した。
【第1部】 《大地礼賛》 ①序奏 ②春のきざし・乙女たちの踊り ③誘拐 ④春の踊り ⑤敵の都の人々の戯れ ⑥賢者の行列 ⑦大地への口づけ ⑧大地の踊り
【第2部】 《いけにえ》 ①序奏 ②乙女たちの神秘な集い ③いけにえの讃美 ④祖先の呼び出し ⑤祖先の儀式 ⑥いけにえの踊り。

舞台は先史時代のロシア。春の神を鎮める異教の儀式が執り行われている。今年は北海道命名150年に当たるが、先住民アイヌの人たちの儀式にも何か共通したものがあるかもしれないと想像しながら聴いた。この曲を前回Kitaraで聴いたのは5年前の2013年2月サロネン指揮フィルハーモニア管の演奏で強烈な印象を与えられたことを思い出す。その時は管楽器の圧倒的な演奏が印象的であった。
今回は2台のティンパニ、弦楽器群の充実と相まって金管、木管の演奏は一大スペクタクルの様相を呈して圧倒的な迫力があった。ステージいっぱいを埋めた演奏者が繰り出す音楽は壮観であった。
100年前の演奏では観客が大騒ぎになったというが、ある程度の知識を得て聴く《春の祭典》は聴く者の心に圧倒的なスペクタクルとして鑑賞できる。私自身にとっては前回とは違った観点からも味わえた曲となった。
スケールの大きな演奏が得意なズヴェーデンの姿が見れた。ブラヴォーの声が飛ぶ聴衆の盛大な拍手に応えたアンコール曲は[ワーグナー:楽劇《ワルキューレ》より “ワルキューレの騎行”] 。豪快なサウンドでコンサートのフィナーレに相応しい曲で幕となった。

※ニューヨーク・フィルの本拠地は以前はカーネギーホールであったが、1962年からリンカーン・センターに変わった。67年7月にRockfeller Centerと同じく美しい一角のLincoln Centerを訪れた。50年前の日記を読んで当時の様子を再び思い描いた。guided tourでPhilharmonic Hall、New York State Theater、Vivian Beaumont Theaterを見学。収容人数2858のフィルハーモニー・ホールの絵葉書もあった。リンカーン・センターにはいろいろな施設があるが、1966年9月オープンのMetropolitan Opera Houseは上演中で残念ながら見れなかった。ボーモント劇場は5億ドル(1800億円)を寄付した夫人の名が付いていることは記録があるので覚えていることである。6名単位でグループ分けして案内された様子も分かった。Guided Tourの料金$1.50(540円)が少し高いと書いてあった。翌年68年にジュリアード音楽院もリンカーン・センターに移ったようである。懐かしい思い出となって当時が蘇った。

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ルノー・カプソン(vn)&児玉 桃(p)

アルゲリッチ&カプソン兄弟の室内楽公演が確か15年ほど前に札幌であった気がしている。Kitaraでなくて他のホールが会場で二の足を踏んだようであった。その時からカプソン兄弟の名は覚えていた。ベルリン・フィルのデジタルコンサートでルノーの弟ゴーティエのチェロの演奏を視聴したが、ルノーのヴァイオリンを聴いたのは初めてであった。

ルノー・カプソン(Renaud Capuson)は1976年フランス生まれ。世界各地の聴衆を魅了するヴァイオリニスト。97-2000年までアバド指名のマーラー・ユーゲント・オーケストラのコンサートマスターを務め、02年ハイティンク指揮ベルリン・フィルでデビュー。ウィーン・フィル、ボストン響、ロンドン響、パリ管などとも共演。ザルツブルク音楽祭やルツェルン音楽祭などでも活躍。日本ではN響、東京フィルなどに客演。

児玉 桃(Momo Kodama)は1972年、大阪生まれだが、1歳で家族と共にドイツ移住。16歳でパリ国立高等音楽院を卒業して、国際的コンクールで優勝を重ね、91年ミュンヘン国際音楽コンクールで第2位(1位なし)。世界のトップ・オーケストラと共演。1997年Kitaraオープニング・シーリズでフォスター指揮N響で初登場以来、16年の《Kitaraのクリスマス》で井上道義指揮札響と共演してグリ―クのピアノ協奏曲を弾いた。今迄、Kitaraに5回出演でショパン、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルトを弾いたが、12年2月札響定期で「メシアン:トゥーランガリラ交響曲」を聴いたのが強く印象に残っている。ドイツ、フランスの伝統を生かした演奏で独自の境地を開いているといわれ、メシアンに力を注いでいるが、武満や細川作品などレパートリーの広いピアニスト。

2018年3月12日(月) 19:00開演  トッパン・ホール
〈program〉
 ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ(遺作)
 フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 Op.13
 メシアン:主題と変奏
 サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ短調 Op.75
 ラヴェル:ツィガーヌ

トッパン・ホールには電車を利用する面倒を避けて、ホテルのフロントで地図を書いてもらって徒歩で出かけた。21階建ての「トッパン小石川ビル」の1・2階を使った408席の小ホール。リサイタルで使用頻度の高い評判のホール。

プログラムは全てフランス音楽。ヴァイオリン曲で、全曲の作品がフランスものとは二人ならではのプログラミングだと思った。

ラヴェル(1875-1937)の曲は遺作となっているが、作品の自筆譜の発見が1975年で、ラヴェルが22歳の頃の作品らしい。単一楽章で書かれた色彩感豊かな曲で、色がどんどん変化していく様子が目まぐるしい。

フォーレ(1845-1924)はラヴェルの師匠。1876年作の4楽章構成。第1楽章・第4楽章はエネルギーに満ちた明るい感じで、第2楽章のアンダンテは優しさあふれる美しい旋律、第3楽章のアレグロも心が高揚する感じがした。教え子に伝える基本的な曲の骨組みをラヴェルが独自に発展させて行ったのかと想像してみた。
前半2曲はそれぞれ25分程度。演奏終了後に満席の聴衆からブラヴォーの声が上がった。無駄な空間が無いようなホールで、ステージの演奏家と客席の距離感が絶妙のようであった。

デュオ・リサイタルでは珍しいメシアン(1908-92)の曲。彼が24歳の頃の作品で晩年の現代音楽の特徴はそれほど強烈ではない。22歳ころから教会のオルガニストとして活動を始めていたそうである。主題と5つの変奏が途切れずに続いた。

サンーサーンス(1835-1921)は「フランス国民音楽協会」を創設した作曲家・オルガニスト。才能に恵まれ、あらゆる分野で存在感を発揮したが、ローマ大賞は取れなかった。
曲は2楽章構成だが、2つの楽章がそれぞれ2つの部分に分かれている。交響曲第3番「オルガン付」と同じ構成。新しい形式を模索していた曲作りの時期だったのだろうと思った。

演奏会は馴染みの「ツィガーヌ」で締めくくられた。ロマの音楽をヴァイオリンの派手な技巧で表現した極めて印象的なメロディを持つ曲で最後を飾った。もちろん、万雷の拍手が会場を包んだ。
小柄ではあるが端正な容貌を持ち、ヴァイオリンの艶やかな音色と完璧なテクニックを共有するカプソンの魅力が溢れていた。ピアノの児玉は度々カプソンとも共演して息の合ったコンビで存在感の大きさを示した。

アンコール曲は2曲。①ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ より “第3楽章” ②マスネ:タイスの瞑想曲。
作曲家の流れも解るプログラムに続いて、アンコール曲も全てフランスの作曲家の作品で感服した。
ホテルまでの道順が完全に分ったので、夜道は不安が無く、足取りも軽くて往路より10分ほど早く30分弱でホテルに着いた。


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東京へのクラシック音楽鑑賞の旅(ニュヨーク・フィル、他)

ニューヨーク・フィルハーモニックの来日公演が発表になった半年前から東京公演を聴きに行く予定を立てた。3月中旬で当日の飛行機が札幌から順調に飛ばないことも考慮して、前日にも違うコンサートを入れておいた。
自分一人だけの旅行では2泊3日の旅程を組み、今までは1回の旅で、11年5月は4つ、12年11月は2つの演奏会に出かけた。今回は公演期日と演奏家のプログラムを勘案してトッパン・ホールでのルノー・カプソンの室内楽を選んだ。カプソンは人気の高い世界的ヴァイオリニストで10月時点で残りのチケットが3枚しかない状況であった。
飛行機のチケットは旅割で3ヶ月前には購入していた。東京在住の娘が旅行の際に泊まらせてくれる話はあったが、ウィークディのコンサートは終了時間が21時を過ぎ、夜中の住宅街の移動は大変なので遠慮した。いつも、東京での滞在はホテルに決めている。1月に入ってホテルはトッパン・ホールに比較的近い文京区のホテルに決めた。今迄は新宿、品川、浅草を拠点にして空いてる時間を観光に使っていたが、今回は歩き回るのは東京ドーム周辺だけにしてホテルで休む時間を多くとる予定にした。

3月12日の出発の前に、書道に励んでいる妻が昨年と同様に全国規模の「創玄展」に入賞して、急遽、7日に東京に出かけた。応募を重ねて目出度く卒業となり、創玄展会員の資格を得て一人前の書家になった。ハッピーなことなので止むを得ないが、妻に頼った生活をしていると、一人で一週間も過ごすのは何かと不便である。普段の有難さを感じる時でもある。

この年齢になって一人で東京都内を動き回るのは大変なことを自覚した。サントリーホールにも数回は出入りしているが、ホール周辺の通りの様子も変わった。主要な地下鉄駅には何本もの線があって、乗り換えが大変である。同じことを繰り返して慣れると良いが、大江戸線は地下深くを通っていているのは知っていたが、南北線の後楽園駅で降りた電車は地上に出るまで歩道も長く、6つか7つのエスカレーターを上るのにはびっくりした。東京は地下鉄網もどんどん増えて、街の風景も変わっていく様子に驚く。

文京シビックセンターの25階展望台ラウンジから見下ろす東京都内の街並みも観れた。東京ドーム内の「野球殿堂博物館」に入ってラジオ放送時代に活躍したプロ野球の選手名を多く見て懐かしい想いをした。正岡子規が学生時代にベースボールに夢中になり、一時、名乗った“ノボル”から“野球”という語が生まれたという説(?)も思い出して懐かしかった。大谷翔平の写真も入って、館内には新しいものも加えられているようである。館内では【“ミスタープロ野球”プロ入り60周年記念 昭和、平成と長嶋茂雄】企画展もあった。これまでに殿堂入りした人物は平成30年度の松井秀喜、金本知憲、原辰徳、瀧正男を含めて201人になったという。

昨日は創玄展の審査会員や入賞者の作品が展示されている国立新美術館に立ち寄って、中野北溟先生や妻の作品など一部の作品を鑑賞してカメラに収めた。東京都美術館は古くからあるが、国立新美術館は文字通り新しくて立派である。

この旅で何十人もの人に電車の乗り場や地下通路を尋ねて、親切に対応していただいた。通勤に利用していると思われる人を中心に訊いたのだが、快く応じて下った皆さんに感謝したい。

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ラトルとバレンボイム(p)がバルトークのピアノ協奏曲第1番で共演

1・2月ベルリン・フィル定期公演の出演が予定されていた小澤征爾の海外公演にドクターストップが掛かったり、ズービン・メータの体調不良もあってキャンセルが続いて代役がステージに上がっている。近年は高齢の指揮者の活躍が目立ち、彼らが活躍を続けていることは喜ばしい限りだが、事務局も健康第一にして若手の登用を真剣に考えるべき時期ではないか。若手の優秀な指揮者がどんどん育っていると思う。メータのキャンセルが2回あったが、そのうちの1回にダニエル・バレンボイムの息子ミヒャエルがヴァイオリニストとして出演し、「シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲」を弾いた。ハイフェッツが1940年に依頼された曲を断った経緯があり、前衛的で難曲なようだが、父親設立のウエスト=イースタン・ディヴァン管のコンマスを務めるミヒャエル・バレンボイムが力演した。

私が注目したのは翌週のラトル指揮ダニエル・バレンボイムが共演するプログラムだった。バレンボイムがピアニストとして出演するとは想像もしていなかった。バレンボイムやアシュケナージは大好きなピアニストで彼らのピアノのCDはかなり所有している。バレンボイムがベルリン・シュターカペレを率いてKitaraに登場したのが2005年。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を弾き振りしてくれた。とにかく嬉しかった忘れられない思い出がある。
70年に彼の妻でチェリストのデュプレと共演したバレンボイム指揮シカゴ響の「ドヴォルザークのチェロ協奏曲」は気に入りのCDだが、数年前に当時の映像付き録音をクラシック・バーで観た時の感激も一入であった。

前置きがかなり長くなったがCDでしか殆ど聴いたことがなかったバレンボイムを映像付きで、顔の表情、鍵盤上の指の動きなどを高画質で観れる期待感は心が踊るほどであった。3月に入ってバレンボイムの出演場面を2度視聴した。 

Berlin Philharmoniker , Sir Simon Rattle (connductor), Daniel Barenboim (piano)
〈Program〉
Antonin Dovorak: Slavonic Dances, op.72
Bela Bartok: Piano Concerto No.1 Sz83
Leos Janacek: Sinfonietta op.60

今回のプログラムはチェコ、モラヴィア、ハンガリーの作品を集めた。Kitaraにはチェコ、ハンガリーのオーケストラの来演が多いのでスラヴ舞曲第1集、第2集各8曲で全16曲のうち数曲が演奏されることは多い。一番多いのは単独でアンコール曲に使われる。
ラトルは第2集、作品72を昨年のジルヴェスターコンサートでも一部取り上げたが、第2集8曲全曲を一気に演奏するのは珍しいと思った。第2集はチェコ以外のスラヴ地域の舞曲を集め、内面的でメランコリックな雰囲気も表現されているようであった。

バルトークのピアノ曲はよく知らなかったが、一年前のデジタル・コンサートで聴いたブロムシュテット&アンドラーシュ・シフによるピアノ協奏曲第3番を思い出した。ピアノが打楽器のような役割を果している印象を受けていた。バルトークは管弦楽作品でも従来にない新しい試みをしたり、打楽器に焦点を当てた作品も書いている。
バレンボイムはブーレーズ指揮べルリン・フィルと1964年にこのピアノ曲で共演してるというが、今回が54年ぶりとのこと。ピアノ演奏は十数年前とは外見もそれほど変わらず堂々とした迫力のある演奏であった。耳を通してだけでなく、演奏者を観ながら聴くデジタル音楽の素晴らしさを堪能した。気に入ると数回視聴できる良さもある。

スメタナやドヴォルザークの作品にはボヘミアの情感と自然が溢れるが、モラヴィア地方に生まれたヤナーチェクには違う風土が感じれられる。ラトルは最後のシーズンにヤナーチェクの「利口な女狐の物語」を取り上げ、今回は「シンフォニエッタ」。シンフォニエッタは“小交響曲”の意味だが、4管編成の大規模なオーケストラ編成。9本のトランペットに加えて、バス・トランペットとチューバが各2本。村上春樹の小説に出てきて、曲が一気に有名なった。管楽器の編成が大変なので、コンサートで聴く機会は少ない。
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札響名曲シリーズ2017-18 ~輝きと躍動のボレロ~(渡邊一正&中川英二郎)

シーズン5回開催の〈森の響フレンドコンサート〉も今回が2017-2018シーズン最終回。定期演奏会は月2回、年10回開催であるが、この札響名曲シリーズは各1回なので満席状態になるのが普通である。今回はトロンボーンの名手が登場して管楽器の活躍が多いプログラムでいつもより学生の姿が多く目についた。

2018年3月10日(土) 14:00開演  札幌コンサートホール大ホール
指揮/渡邊 一正   トロンボーン/中川 英二郎   管弦楽/札幌交響楽団

渡邊は1966年生まれ、96年から東京フィル指揮者に就任し、15年から東京フィル・レジデント・コンダクター。広島響の正指揮者(1995-2002)を務め、N響、東京フィル、日本フィル、九州響各定期などに出演。サンクトぺテルブルク響へも客演。札響とは1992年に初共演して以来、ほぼ毎年のように札幌や道内各地での演奏会を指揮しているという。私自身が彼の指揮ぶりを観たのは14年に続いて2回目。
中川は日本を代表する世界的トロンボーン奏者。15年札響特別演奏会〈シンフォニック・ブラス2015〉で金聖響と共演。

〈Program〉
 バーンスタイン:「キャンディード」序曲
 シルクレット:トロンボーン協奏曲
 ビゼー:「アルルの女」組曲より5曲
 ラヴェル:ボレロ

2018年はバーンスタイン生誕100年に当たり、PMF2018ではオール・バーンスタイン・プログラムが五嶋みどりも出演して開催予定。札幌ではPMFでバーンスタインの曲目が演奏される機会も多くて人々に親しまれている。
ティンパニーの強打、金管のファンファーレで始まる躍動感に溢れた調べが聴衆の高揚感を掻き立てた。

吹奏楽関係の人にとっては有名な音楽家なのだろうが、初めて耳にする名。プログラム・ノートによれば、ガーシュインの「パリのアメリカ人」を初録音したのがシルクレット(1889-1982)だそうである。彼はクラシックとジャズの垣根を越えて活躍した音楽家で、数々の映画音楽やミュージカルの制作・録音などで活躍したという。
曲は3楽章構成。中川はトロンボーンを自由自在に扱って、聴衆をスペクタクルの音の世界に誘った。当然ながら、ジャズの雰囲気も醸し出された。
演奏終了後に歓声が起こって、聴衆の盛大な拍手に応えてのソリスト・アンコール曲は「チャーチル:いつか王子様が」。

ビゼーは劇音楽《アルルの女》を27曲にして書いたが、のちに「第1組曲」に編曲した。この組曲が大評判になったが、「第2組曲」は
彼の死後に友人のギローによって完成された。2つの組曲はそれぞれ4曲編成。
今回演奏されたのは5曲。「第1組曲」第4曲“カリヨン”+「第2組曲」。鐘の音を模倣した陽気な音楽に続いて、「第2組曲」が“パストラル”(牧歌)、“間奏曲”、“メヌエット”、“ファランドール”。平和な農村に住む男がアルルの女に失恋して、祭りの日に村人がファランドール舞曲を踊って楽しんでいる最中に、高窓から身を投げて命を絶つ悲劇のストーリー。
木管が奏でる情熱的な旋律とタンブリン&太鼓のリズムがクライマックスへと向かう。悲劇が起こっていると想像して聴いている人がどれほどいるであろうか。これは実際に起こった出来事に基づいて書かれた劇と言われている。

ラヴェルの5曲のバレエ音楽の中で最後に書かれて最大の傑作となった「ボレロ」。1990年に観たジョルジュ・ドン&東京バレエ団の舞台が忘れられない。結果的に、このバレエ音楽の実演とフィギュアスケート(*ペアor アイスダンス)のスポーツ大会で曲の魅力にはまって、後にコンサートで音楽を度々聴くようになったように思う。
小太鼓と弦のピッチカートで始まる演奏が延々と続き、フルート・ソロに始まって、普通はクラシックでは使われない楽器も加わって小気味良い美しい旋律がホールに響き渡る。楽器の組み合わせも変わって、音楽が厚みを増して総合奏に至ってフィナーレ。管弦楽の魔術師ならではのオーケストレーションの曲はラヴェルからしか生まれないような作品である。

渡邊一正の名は以前から知っていた。新国立劇場で指揮を重ねて、オペラ、バレエ音楽が得意な様子がうかがえた
万雷の拍手の応えてのアンコール曲も「ハチャトゥリアン:バレエ音楽《ガイーヌ》より第3曲“レズギンカ”」。
今後は札響定期演奏会での出演も期待される。
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中木健ニ(チェロ)X松本望(ピアノ)デュオ・リサイタル

中木健ニ(Kenji Nakagi)の名は六花亭札幌本店に「ふきのとうホール」が落成してオープニング・フェスティバルが2015年7月に約1ヶ月間にわたって開催された時のプログラム一覧で知った。25回のコンサートのうち7回聴いたが、彼が出演するコンサートには行っていなかった。中木は東京藝術大学を経て、パリ国立高等音楽院、ベルン音楽大学の両校を首席で卒業。05年ルトスワフスキ国際チェロ・コンクール第1位など受賞歴も多く、10-14年フランス国立ボルドー・アキテーヌ管首席奏者を務める。帰国後、ソロ、室内楽活動やオーケストラへの客演などで活躍を続け、現在は紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー、東京藝術大学准教授。

松本望(Nozomi Matsumoto)は私が勤務した高校の卒業生。彼女のクラスを担当したことは3年間なかったが、同じ担当学年の優秀な生徒で顔は覚えていないが名は知っていた。彼女は東京藝術大学の作曲科に進学し、高校合唱部演奏会ではピアノを弾いていた。卒業後も何度か卒業生として合唱部演奏会には出演していた。彼女が作曲した合唱曲が最優秀作品に選ばれたり、彼女の作品が全国合唱音楽コンクールの課題曲になったことは承知していた。「音楽の友」誌で一部の音楽評論家から高い評価を受けて、ピアニストとして活躍している様子も分かっていた。大学院修士課程修了後、パリ国立高等音楽院で学んでいたことは後で知った。パリ音楽院ピアノ伴奏科を首席で卒業し、デュオ、トリオの国際コンクール優勝を重ねた実績は喜ばしい限りである。現在は作曲家・ピアニストとして活動し、国立音大や洗足学園音大で後進の指導にも当たっている。
今回のコンサート開催を知ってチケットは早くから購入していた。

2018年3月7日(水) 7:00PM 開演  ふきのとうホール
〈Program〉
 ベートーヴェン:魔笛の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46
 メンデルスゾーン:歌曲《歌の翼に》op.34-4(チェロとピアノのための編曲版)
 メンデルゾーン(ピアッティ編):ピアノのための無言歌より《狩人の歌》 op.19-3
 メンデルスゾーン:チェロとピアノのための無言歌 ニ長調 op.109
 R.シュトラウス:チェロとピアノのためのソナタ へ長調 op.6
 ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ
 フォーレ:チェロとピアノのためのソナタ第2番 ト短調 op.117
 メシアン:世の終わりのための四重奏曲より《イエスの永遠性への賛歌》

ベートーヴェンのチェロ・ソナタのCDはアルゲリッチ&マイスキーの演奏で持っているが、その中に「魔笛の主題による2つの変奏曲」が収録されていた記憶があった。「変奏曲」は購入時に1度聴いたきりだったと思うが、この機会に聴いておいた。歌劇《魔笛》のアリアの主題と変奏曲で生で聴くと素朴さと優しい愛らしさが強く感じられた。

メンデルスゾーンのピアノ曲で知られる有名な「歌の翼に」と「狩人の歌」にチェロが加わっても何の違和感もなく聴けた。「チェロとピアノための無言歌」は初めて耳にした。

前日に聴いたR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタの魅力は素晴らしかった。十数年前までは交響詩や特定のオペラに親しめずに苦手な作曲家に入っていたシュトラウスだったが、近年は彼の才能の豊かさに驚いている方である。チェロ・ソナタもヴァイオリン・ソナタと同様に伝統的な急・緩・急の3楽章構成の曲で、2つの楽器が対等に渡り合う演奏は歌心に溢れて躍動感もあり非常に楽しく聴けた。コンサートのハイライトになった。

ドビュッシーは晩年に6曲のソナタ集を計画したが、完成せず3曲で終わった。第3曲のヴァイオリン・ソナタが彼の最後の作品で何度かコンサートでも聴いているが、第1曲のチェロ・ソナタは今回初めて聴いた。この曲を聴くと、ドビュッシーが現代作曲家であったことがよく判る。今年はドビュッシー没後100年に当たる。人気の作曲家であるが、今まで余り聴く機会のない作品も今後は聴けると良いと思っている。

フォーレはラヴェルを陰から支援し、ラヴェル事件の後にパリ音楽院長を務めたことでも知られるが、彼の生涯は詳しく知らない。彼の小品「夢のあとに」、「エレジー」、「シチリアーノ」などはチェロ名曲集に入っている。彼の美しい旋律が特徴のピアノ曲集は持っているのだが、馴染みのある特定のメロディの曲は残念ながら知らない。今回の曲のメロディも一貫して美しい曲の特徴が出ていた。フォーレはベートーヴェンと同じように難聴に苦しんでいて、この作品も殆ど耳が聞こえない状況で書かれたそうである。彼の生命力の強さと音楽への深い想いを知らされた。

20世紀最大の作曲家のひとりオリヴィエ・メシアンの代表作は昨年12月末のベルリン・フィルの“Late Night”のコンサートで演奏されて、私の記憶に新しい。第二次世界大戦で捕虜となったメシアンはドイツの収容所で音楽を演奏する自由を与えられた。収容所内で知り合った3人の音楽家と知り合い、彼らが演奏できる楽器ヴァイオリン、チェロ、クラリネットとピアノで演奏会を開いた。
曲は8楽章構成。全員合奏のほかにクラリネット独奏、チェロ独奏、ヴァイオリン独奏も入る。「イエスの永遠性への賛歌」は第5楽章で旋律はチェロが担当して、ピアノは一定のリズムで和音を刻む。ピアノが打楽器のような技法で演奏したので12月末のラトルの演奏が印象に残っていた。こういう難しい曲は目で見ながら耳から聴くと、その良さが解る気がした。優しさと神々しさに彩られた音楽が紡がれた。

パリ国立高等音楽院でメシアン夫妻に教えを受けた日本人は多いと思うが、2人が室内楽曲の最後にメシアンを演奏した選曲も十分に理解できた。9日には東京のHakujuホールでも演奏会があるが聴衆の喝采を浴びることは間違いないだろう。特に玄人受けするプログラミングである。

中木は室蘭出身と知って親近感が増した。演奏中は目を閉じて一心に音に集中して楽器を弾き続ける姿は極めて印象的であった。演奏後に、ニコっとする姿も素敵だった。松本も総じて柔らかなタッチで表現力豊かな安定した演奏が印象的だった。R.シュトラウスの演奏では作曲家の力強い将来への憧れと想いがダイナミックに表現されて秀逸であった。いろいろな作曲家に対応できる幅の広い演奏技術を身に着けているのが素人にも分かった。若々しい端正な容姿も魅力的だった。

聴衆の盛大な拍手を受けて、中木が挨拶すると思ったが、地元出身の松本が初めての札幌のコンサートで挨拶して、アンコール曲の演奏があった。ブルッフの曲と聞こえたが、確かでない。

※さっぽろ雪まつり期間中に時計台に来館したフランス人の女性と音楽の話をした時に、演奏会で聴くフランスの作曲家の名を訊かれ、ラヴェルやドビュッシーなどのほかにメシアンの名を挙げたら知らないと言われた。彼の有名な曲「トゥランガリラ交響曲」のことを話しても通じなかった。意外に思ったと同時に、日本で音楽が好きな人でも黛敏郎、武満徹、細川俊夫の名を知らない人がいても不思議ではないと思った。
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三浦文彰ヴァイオリン・リサイタル(ピアノ:イタマール・ゴラン)

三浦文彰は2009年ドイツ・ハノーファー国際コンクールにおいて16歳で優勝して一躍脚光を浴び、一昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」のメインテーマ演奏で全国的に知名度を上げた。Kitaraのステージには2012年以来、4回目の登場。前回の出演は広上指揮札響との共演で〈Kitaraのニューイヤー2017〉。今回のリサイタルは2016年5月以来で2回目の開催。

2018年3月6日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈出演〉 ヴァイオリン/ 三浦 文彰(Fumiaki Miura)、 ピアノ/ イタマール・ゴラン(Itamar Golan)
〈Program〉
 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306
 R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
 バルトーク:ルーマニア舞曲
 福田恵子:「赤とんぼ」の主題による小ファンタジー
 ブラームス(ヨアヒム編):ハンガリー舞曲第5番 
 チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ ハ長調 Op.34,、  感傷的なワルツ Op.51-6
 サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.28

ピアノのイタマール・ゴランは1970年リトアニア生まれ。室内楽活動が顕著であるが、ベルリン・フィル、ウィ-ン・フィルとも共演する実力者。Kitaraでも2006年レーピン、09年竹澤恭子と共演。レーピンのリサイタルの折にはゴランのサインも貰った。1994年からパリ高等音楽院教授を務める。

半年前に予定されていたプログラムは小品集が多めだったが、ソナタが前半2曲入り、結果的に重量感のあるプログラムになって良かった。後半の小品も予定されたものは2曲だけだったが、在り来たりの名曲でなくて新鮮味が期待できるプログラミング。

モーツァルトは10代まではピアノを主とするヴァイオリン・ソナタを書いていたが、22歳の頃からはピアノとヴァイオリンが対等の作品を書いた。K.301、,K.304などは演奏の機会が多くてメロディにも馴染んでいる方である。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは番号に慣れていないので「第30番」は演奏会では初めて聴くような感じがした。ケッヘル番号で判断すると所有のCDの棚にはあるなとは思った。「第30番」は以前の2楽章構成と違って、急・緩・急の3楽章制で曲の変化が際立って面白い。30分弱を要する長めのソナタもピアノとヴァイオリンの対話が興味深くて面白く聴けた。

R.シュトラウス唯一のヴァイオリン・ソナタはここ数年で演奏される機会が多くて楽しんで聴いている。ピアノ、ヴァイオリンともに高度な演奏テクニックが展開されるスケールの大きな作品。曲は急・緩・急の伝統的な3楽章構成。2人の丁々発止のドラマティックな演奏で凄く盛り上がった。自分でもこんなに気分が高揚してR.シュトラウスの曲を聴けたのは初めてと思うくらいの感激度だった。
演奏終了後の聴衆の盛り上がりも一段と凄かった。早くからチケット完売で期待されていた演奏会だったが、聴衆の感動の様子がホールに広がった。演奏家同士もお互いに健闘を称え、2階バルコニーの客にも反応する姿も非常に良かった。

世界のピアニストと共演する三浦の物おじしない堂々たる演奏も頼もしいが、イタマール・ゴランのピアノを身近で聴いて今回ほど彼のピアニズムに魅了されたことはなかった。前回まではゴランの演奏は大ホールで聴いていて、ヴァイオリニストに目が集中し過ぎていたのかも知れない。室内楽での彼の偉大さを知った。今回はデュオ・コンサートと呼ぶにふさわしい前半のプログラムであった。

後半はヴァイオリンを中心にした小品6曲。後半の初めに三浦がプログラムの変更について説明したが、彼の人間性があらわれる
話しぶりで客の好感度を増した。

手渡されたプログラムにバルトークの小品が追加された。「ルーマニアン・ダンス」と紹介されたが、「ルーマニア民俗舞曲」6曲中の1曲と思われた。聴いたことのあるメロディが流れた。

福田の作品は三浦文彰委嘱作品。山田耕筰作曲の「赤とんぼ」を主題にして福田はヴァイオリン・ソロ曲を作っていた。三浦の委嘱を受けてピアノとのデュオの作品にしたという。抒情的で幻想風の小品。

「ハンガリー舞曲第5番」はピアノ曲、管弦楽曲として最も親しまれていて言及するまでもない。ここではヴァイオリンとピアノ用編曲版。ヨアヒムは19世紀後半を代表する名ヴァイオリニストで、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の初演者として知られる。

チャイコフスキーのヴァイオリンの小品は「ワルツ・スケルツォ」、「メロディ」などが有名である。タイトルが示す通りで、ワルツの優雅さとスケルツォの軽快さを備えた小品。「感傷的なワルツ」は本来はピアノ曲だが、現在ではヴァイオリンやチェロで演奏されることが多いようである。

サン=サーンスがピアノの名手サラサーテのために書いた曲で、小品と言うより中品と言える。アンダンテの序奏と気まぐれなロンドから成る。ジプシー風の音楽に始まり、ヴァイオリンの超絶技巧が使われる華麗な音楽でプログラムが終了した。

後半にも盛大な拍手があったが、前半2曲のソナタの聴きごたえに比べると、感動的と言えるほどでもなかった。名曲では新鮮さが必ずしも味わえないが、演奏家の技巧は楽しめる。今回のハイライトは何と言っても前半のソナタ。心に残る素晴らしい演奏会であった。
アンコール曲は2曲。①クライスラー:中国の太鼓  ②チャイコフスキー:メロディ。

今回のコンサートでは演奏以外にヴァイオリニストの性格の一端が覗けて興味深かった。年齢は20歳は違うが、まるで同輩のようでお互いに目指す音楽性が共通しているのだろうと思った。
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名曲の花束 及川浩治ピアノ・リサイタル 

2016年12月のリサイタル以来、及川のピアノを聴いたのは16回。オーケストラとの共演でコンチェルトを聴きたいと思っていたが
、今回も前回と同様にピアノ名曲のプログラム。今回のタイトル「名曲の花束」は2001年にブルガリア出身のヴァイオリニストと及川が共演したデュエットのタイトル「音楽の花束」を想起した。2000年からCDを集め出した時期でもあったので、コンサート会場で妻が及川浩治のCD、私がミラ・ゲオルギエヴァのCDを購入してサイン会に並んだコンサートを思い出した。

2018年3月3日(土) 13:30開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈Program〉
 J.S.バッハ(ヘス編):主よ、人の望みの喜びよ
 J.S.バッハ(ブゾーニ編):トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
 シューマン:トロイメライ
 リスト(ブゾーニ編):ラ・カンパネラ
 ベートーヴェン:エリーゼのために、 ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調「熱情」Op.57
 ショパン:ノクターン第16番 変ホ長調 Op.55-2、 バラード第1番 ト短調 Op.23
 リスト:愛の夢 第3番,  死の舞踏 S.525
 
及川は1999年「ショパンの旅」で国内ツアーを大々的に行って脚光を浴びて以来、ほぼ毎年のようにリサイタルを開催している。ショパンに加えてベートーヴェン、リストなどを得意にして、昨年はバッハの「シャコンヌ」に注目した。
今年もオープニングの曲はバッハ。教会カンタータのコラールから有名なメロディで始まった。 2曲目はオルガン曲としてコンサートで最も聴く機会の多い馴染みの曲だが、ピアノ曲として聴くのは初めてのような気がした。
「トロイメライ」、「ラ・カンパネラ」は誰もが耳にしたことのある親しまれたメロディ。
「エリーゼのために」はSP時代から親しまれているベートーヴェンのピアノ曲だがプロのコンサートの曲目として演奏されるのは極めて珍しいように思う。及川自身が「ベートーヴェン:4大ピアノ・ソナタ+エリーゼのために」でプログラムを過去に組んだことがあったと記憶している。やはり「熱情」は聴きごたえのあるソナタ。200年以上も前のピアノでこんな力強い曲を創り出せたものだとつくづく思う。鍵盤の上を這うピアニストの手の素早い動きとテクニックに引き込まれた。

後半のプログラムは及川が最も得意とするショパンとリスト。ノクターン「第16番」と「死の舞踏」はメロディには親しんでいない。「バラード第1番」は私自身の大好きなピアノ曲のひとつ。羽生結弦のフィギュア・スケートの使用曲でになって、知らない人がいないくらいのメロディになった。先月の平昌五輪で1日に10回以上も羽生選手の素晴らしいスケーティングに見惚れながら聴いたメロディは一生記憶にとどまるだろう。
リストのピアノ曲の中で最も有名で親しまれている「愛の夢 第3番」は美しい調べでコンサート定番の小品。「死の舞踏」は昨年8月の田代慎之介のリサイタルで聴いたが、この曲を聴く機会は少ない。生の演奏会で視聴して面白さが伝わる曲。キリスト教聖歌の「怒りの日」を主題とした変奏曲で演奏に超絶技巧が必要な難曲と言われる。抒情的な美しさと厳しい切迫感が漂って楽想の展開が目まぐるしく変化する。15分程度の演奏に目が奪われた。

超絶技巧の演奏終了後に客席からブラヴォーの声も上がって、聴き慣れない曲でも聴衆は率直に感動した様子を伝えた。
及川浩治はデビュー当時はショパンやベートーヴェンの演奏で作曲家の立場から語りを入れながら演奏を進めていた。
本日は演奏後に挨拶をして、アンコール曲の説明を加えながら2曲。①ショパン:ピアノ協奏曲第2番第2楽章(ピアノ独奏版) ②ショパン:ノクターン第20番。

※及川浩治はブルガリア・ソフィア音楽院に学び、ブルガリアとのつながりも深い。1999年10月にはソフィア・ゾリステン&ミラ・ゲオルギエヴァがKitaraで「名曲の花束」のタイトルで演奏会を開いた。2015年11月にはブルガリアでソフィア・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会に出演。同年デビュー20周年を迎えた及川のリサイタルには新たな出発としてプログラム構成にも前回から変化が見られた。今後も「名曲の花束」と銘打ったコンサートが続くかもしれない。まだまだ若さに溢れた演奏ぶりであるが、彼も五十路を越えた。円熟味も兼ね備えた演奏家として活躍が続くことを期待する。
 

           

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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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