プラジャーク弦楽四重奏団2016

〈Kitara弦楽四重奏シリーズ〉

弦の国、チェコが誇る伝統のアンサンブル、プラジャーク弦楽四重奏団が2年ぶりのKitara登場。前回はシューベルト、ヤナーチェク、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲を演奏した。今回は第1ヴァイオリンが若き女性に交代した。2003年の来札時も2夜にわたっての連続演奏会だったが、今回も別プログラムで2夜の演奏会で第1夜を聴いた。

2016年11月30日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈出演〉 第1ヴァイオリン/ ヤナ・ヴォナシュコーヴァ、第2ヴァイオリン/ ヴラスティミル・ホレク
      ヴィオラ/ ヨセフ・クルソニュ、 チェロ/ ミハル・カニュカ
〈プログラム〉
 モーツァルト:弦楽四重奏曲 第20番 ニ長調 「ホフマイスター」 K.499
 ブルックナー:弦楽四重奏曲 ハ短調 WAB.111
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 「ハープ」 作品74

モーツァルトが書いた23曲の弦楽四重奏曲のうち所有しているCDは第17番「狩り」のみ。ストリング・カルテットの演奏会では聴く機会の多い作曲家だが記憶に残る曲が殆ど無い。モーツァルトのフルート、オーボエ、ピアノの四重奏曲や弦楽五重奏曲、クラリネット五重奏曲のCDは手元にある。彼の協奏曲のCDはピアノ、ヴァイオリンは当然ながらフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペットと揃っている。自分でも振り返ってみて不思議に思うが、多分ハイドンやモーツァルトの弦楽四重奏曲は曲数が多くてタイトルのない曲に親しめなかったのだろう。
「第20番」が楽譜出版社のホフマイスターの依頼による作品であることから名称が付いたらしい。モーツァルトらしい美しい旋律も余りないので余韻が残らない。生で聴くカルテットはCDとは比べものにならないほど心地よい。一過性の曲になってしまうのは残念ではある。

ブルックナーの弦楽四重奏曲を意識して聴いたのは多分初めてである。彼の38歳の作品というが従来のカルテット曲と違う味が出ていて面白かった。新鮮な気分で曲が鑑賞できた。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は初期の6曲を除いて、度々コンサートの前後に繰り返し聴いて今では結構親しんでいる。ベートーヴェンの手による曲はサロン的な気分ではなくて厳しい深い音楽になっているので一層心に響くものがある。彼が残した16曲の弦楽四重奏曲のうち「第7-11番」は中期、50代に書かれた「第12-16番」が後期作品とされコンサートで取り上げられる機会が多い。
「ラズモフスキー3曲」の後に作曲された《運命》、《田園》の波に乗って、「第10番」は1809年38歳の時に〈ピアノ協奏曲・皇帝〉、〈ピアノソナタ・告別〉と同時期に書かれた。3曲の調性が同じ「変ホ長調」というのも面白い。
「第10番」を作曲した時期は戦乱の外的要因もありベートーヴェンの心も動揺していたとされる。しかし個人的な恋愛感情に包まれる状況も曲に反映しているようにも感じた。激しい感情の揺れがなく透明で安らかな表情が感じ取れる曲になっていた。
「ハープ」の呼称が付いているがピッツイカートによる演奏法がハープの音に似ていることから付いているように思えた。

客席後方は埋まっていないようだったが、カルテットが大好きな聴衆の集まりで曲への集中度が高くて、演奏終了後のマナーも控えめながらも拍手に心が籠っていて良い演奏会となった。カーテンコールが続いて、アンコール曲も2つの楽章。「ハイドン:弦楽四重奏曲 第66番 ト長調 作品77-1 第3楽章」と「同曲 第2楽章」。

※Kitaraは1997年開館で来年20周年を迎える。開館当初より自主運営事業で〈古楽演奏〉や〈弦楽四重奏シリーズ〉を主催して独自のプログラムを展開してきている。
今回のブラジャーク四重奏団の招聘も画期的な事業で、第2夜はロータス・カルテットの山碕智子を加えての弦楽五重奏曲を含む演奏会。「音楽の友コンサート・ガイド」によれば12月2日~9日まで神奈川、東京、京都、大阪でもこのカルテットのコンサートが組まれている。Kitaraが発信して他に広がっているのだとすると嬉しいことだと思う。

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札響第595回定期演奏会 “バイロイトの伝説 飯森泰次郎”(ゲスト/ホジャイノフ)

新国立劇場第6代オペラ芸術監督を務める飯森泰次郎がワーグナーの《ニーベルングの指環》の名曲を指揮する。1970年以降20年以上にわたってバイロイト音楽祭で助手と務めて研鑽を積み、ワーグナーの伝統を受け継ぐ指揮者は彼の右に出る者がいないほどの日本のワーグナー・オペラの第一人者。
09年、12年に次いで3回目のKitara 登場。

ニコライ・ホジャイノフは2010年のショパン国際ピアノコンクールでファイナリスト。このコンクールでは予選が終わって優勝の呼び声が高まったが、経験不足で協奏曲がうまくいかなくて入賞できなかった。その後、日本での人気は高くなって各地でリサイタルを開いている。札響との共演は前回14年2月名曲シリーズ(*チャイコフスキー第1番)に続いて2度目。14年ダブリン国際ピアノコンクール優勝。14年11月に飯森範親指揮山形響と共演して「ベートーヴェン:第4番」を山形で聴いた。日本の文化にも詳しく、日本語も理解できる知識人。

2016年11月26日(土) 14:00開演  札幌コンサートKitara 大ホール
〈Program〉
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
 ワーグナー:『ニーベルングの指環』より
          「ワルハラ城への入場」、「ワルキューレの騎行」、「魔の災の音楽」、
          「森のささやき」、「ジークフリートの葬送行進曲」、「ブリュンヒルデの自己犠牲」

「皇帝」はベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の中で最もポピュラーな曲。前回は6月オルフェウス室内管の札幌公演で辻井伸行が弾いた。同じ曲でもピアニストやオーケストラの違いによって印象も異なる。今回はロシアの逸材ホジャイノフの強烈で個性的な演奏で絢爛豪華なピアニズムが展開された。「第3番」や「第4番」も味のある曲なのだが、「第5番」の華やかさが聴衆を圧倒する。指揮者もソリストと充分にコミュニケーションをとっていた。聴き慣れたメロディが聴衆を惹きつけ聴く者の集中力を高めたように思った。
ブラヴォーの声が上がり盛大な拍手の後、アンコールに応えて『ビゼー(ブゾーニ編):カルメン』が弾かれた。聴き慣れた旋律が様々な変奏をしながら繰り返し幻想曲風に弾かれた。超絶技巧が続く見事な演奏に聴衆の心も奪われた。演奏後の鳴りやまぬ拍手と歓声に応えての2曲目のアンコール曲は『リスト:グランド・ギャロップ・クロマティック』(*輸入盤リスト全集にこの曲が収録されていた。曲のタイトルの日本語は“半音階的大ギャロップ”になるらしい)。 この曲もリストならではの超絶技巧による曲で度肝を抜かれる演奏だった。演奏が終わって、もうアンコール曲はないと思っても暫しの間、割れんばかりの拍手が続いた。こんな聴衆の反応は未だかって無いほどだった。(*前日とは違うアンコール曲を披露するレパートリーの広さに恐れ入った。)

楽劇『ニーべルングの指環』の4部作より〈ハイライト〉の上演が2010年10月Kitaraで開催された。トヨタ・コミュ二ティ・コンサートとして北海道交響楽団創立30周年記念演奏会であった。
当時はワーグナーの楽劇の知識が殆どなくてストーリーも余りよく解らずに鑑賞した。ナレーション付きでジークリンデ、ブリュンヒルデ、ジ―クムント、ジークフリート、ヴォータンの歌唱の場面は眼前に浮かんでくる。ストーリーは今でも詳しくは理解していない。《ラインの黄金》、《ワルキューレ》、《ジークフリート》、《神々の黄昏》の4つのオペラから成る超大作。世界を支配する魔力を持つ指環をめぐって繰り広げられる神々族とニーベルング族や人間たちの死闘が描かれた作品。この程度の知識で登場する人物の名も上記の数人しか知らない。
最も聴き慣れた曲は「ワルキューレの騎行」で4管編成で聴く生の音楽は壮大であった。ストーリーは考えずに聴き入ったのは「森のささやき」。大音響で響く雄大な曲の中で特に印象に残った美しい旋律に満ちた曲。「ジークフリートの葬送行進曲」はCDがあって耳にしていた旋律であった。とにかく50分程度の管弦楽曲は聴きごたえあって大変良かった。とても満足した。
さすがオペラで人後に落ちない第一人者は暗譜で通した。上演時間が15時間近くもかかる『指環』全曲からすると朝飯前なのだろう。聴衆の満足度はもちろんのこと、指揮者自身も得意のワーグナーもので満足そうであった。
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川村拓也・佐野峻司(北大医学部学生)ヴァイオリン&ピアノ デュオリサイタル

今回のコンサートを聴いてみようと思った切っ掛けは「川村拓也」の名である。Kitaraで手にするコンサ-トのチラシで目にする名であった。PMF2016のアカデミー生の名簿で北海道大学に学ぶ学生の名があって珍しい経歴のアカデミー・メンバーに注目していた。同じ人物と判明した。ピアニストの名は彼の中学・高校時代から聞いていて、その後の進路は知らなかった。現在、二人とも北大医学部学生と知って、医師と演奏家を目指す頼もしい存在が市内にいることを知って好奇心が沸いた。このチケットを購入して佐野峻司の北大定期演奏会出演を知り、去る5日の北大定期演奏会をも久しぶりで聴くことになったのである。(*チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番の演奏は演奏家を目指すにふさわしい堂々たる輝かしものであった。)

2016年11月25日(金) 午後7時開演  札幌コンサートホールKitara 小ホール

〈Program〉
 フォーレ:子守歌 ニ長調 作品16
 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番 ニ短調 作品27-3「バラード」
 ショーソン:詩曲 作品25
 グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調 作品45
 スカルラッティ:ソナタ K.427、L.286
 リスト:パガニーニによる超絶技巧練習集より 第3曲「ラ・カンパネラ」
 ショパン:舟歌 嬰ヘ短調 作品60
  R.シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 作品18

前半4曲、後半4曲のプログラム。予定のプログラムに追加されたフォーレとスカルラッティは小品。

イザイはバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタとパルテイータを範として6つの曲を書いた。15年ぐらい前に加藤知子のCDを買い求めて数回は耳にしていた。「第3番」は単一楽章の短いソナタ。ラプソディックで現代的な曲。演奏会では久しぶりぶりで聴いた。川村は高度な技巧が要求される曲をプロ並の演奏で弾いた。
ショーソンの「詩曲」はオリジナルはオーケストラとヴァイオリン曲。ハイフェッツの演奏で聴き親しんだ。最近のコンサートではピアノ伴奏での演奏で何度か耳にする。
グリーグが書いた3曲のヴァイオリン・ソナタの中で「第3番」が最も魅力的でロマンティックな曲。北欧の自然と民族的な雰囲気が漂う作品。ピアノとヴァイオリンの持つ魅力が対等に表現された曲として美しいメロディに心が惹かれる。

二人ともに3・4歳より楽器を弾き始め本格的な音楽家としての経験を積んでいる。川村はHBCジュニアオーケストラのコンマスを務め、その後は札幌フィルハーモニー管弦楽団に所属して11年にはコンマスに就任。札フィルはここ数年は毎年のように聴いているのでステージ姿は見ていることになる。ソリストとして札響とも共演し、リサイタルやコンチェルトなどでの活躍も多い。学業との両立が難しくなる時期だが、本日の演奏ではプロ級の演奏の力量を示した。

後半のイントロとなったスカルラッティはバッハ、ヘンデルと同じ年生まれのイタリアの作曲家。彼のソナタは単一楽章の小曲。555曲の作品があるので曲の区別がつかない。この曲は1分程度の曲だったがとても力強い演奏。
リストとショパンの曲は言及の必要のないほど人々に親しまれている名曲。それぞれ素晴らし演奏で心を揺さぶられた。佐野峻司はプロとして通用する実力あるピアニストと言える。彼のピアニズムにはぞっこん惚れ込んでファンになった。
学業が疎かにできない時期を迎えて公演は減るかもしれないが、リサイタルを是非聴いてみたいピアニスト。

R.シュトラウス唯一のヴァイオリン・ソナタは14年、大谷康子のKitara初登場のステージで聴いて凄く印象に残ったヴァイオリン曲。R.シュトラウスの作品はこの20年くらいで交響詩を中心に多く聴くようになった。彼は交響詩やオペラなどの壮大な作曲家として知られる。彼のヴァイオリン協奏曲のCDを持っていたが、そこにヴァイオリンソナタがカップリングされていることに長い間気付いていなかった。15年前に手に入れたサラ・チャン&サヴァリッシュのCDだった。どちらかというと、最初はR.シュトラウスは苦手な方だったが、大谷の演奏を聴いて意外と親しみやすい曲だと思い直したのである。その時にも自分が以前聴いたことがあるとは想像もしなかった。
今回のプログラムを見て、ふとCDの棚で見つけたヴァイオリン曲を見つけて約15年ぶりに聴いてみた。

若々しい溌剌としたエネルギーに満ち溢れる曲がピアノの主導的な展開で始まった。ヴァイオリンとピアノが対等な掛け合いを見せるはずだったがピアノの音量がかなり高くヴァイオリンの響きがところどころかすんで聴こえた。
プログラム前半の川村は絶好調だったが、後半は二人の音のバランスが取れていないように感じた。

札幌で活躍中の異色の音楽家のコンサートとあって若い人を中心に幅広い年齢層の客が詰め掛けて9割以上の客席を埋めた。3楽章からなるソナタの知識がなくて、2曲ともに第1楽章の終りで拍手をする人が多かったのは止むを得ないところか、、、

アンコール曲は「ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏」。

演奏終了時間が大ホールと小ホールが同じ時間になって、帰路につく公園内が混み合った。中島公園駅に留まった電車内も混んでいていつもと違う様子。何事かと思っていて気付かなかったが、帰宅してテレビで羽生結弦の姿を見て判った。フィギュアスケートのグランプリシリーズ最終戦NHK杯が開催された真駒内から帰宅途中の人々だった。
 



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クァルテット・エクセルシオ 第9回札幌定期演奏会

Quartet Excelsiorは2008年以来、札幌で定期的に演奏会を開催するようになった。前回は第1ヴァイオリンの西野の休演のため弦楽三重奏団としての演奏会となった。ただし、近藤嘉宏をゲストに迎えてピアノ四重奏曲が聴けて良かった。
今年は西野も復帰して、結成23目の活動でサントリーホールではベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏を完遂し、ドイツ公演も大成功だったという。ドイツの音楽祭には20名ものファンが同行したというから凄い。

2016年11月22日(火) 19時開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈出演〉 ヴァイオリン/ 西野ゆか、 山田百子
      ヴィオラ/ 吉田有紀子、  チェロ/ 大友 肇
〈Program〉
 ハイドン:弦楽四重奏曲 第81番 ト長調 作品77-1
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番 「セリオーソ」 作品95
 メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第5番 変ホ長調 作品44-3

ハイドンは生涯で全68曲の弦楽四重奏曲を残した。「皇帝」が有名でCDでも所有している。ハイドンの作品はPMFでウィ―ン・フィル弦楽四重奏団が演奏会に取り上げることが多い。今年のPMFでも「ハイドン:弦楽四重奏曲 作品77-2 “雲がゆくまで待とう”」が演奏された。
ハイドンの曲は明るい曲が多い。この曲も明るい行進曲で幕を開け、ハンガリーの流行歌やクロアチア民謡も用いられていると解説には書かれていた。第1ヴァイオリンの活躍が目立った。

ベート―ヴェンの弦楽四重奏曲は演奏会で聴く機会が断然多い。全17曲の中でアルバン・ベルク四重奏団、スメタナ四重奏団のCDを多く所有している。タイトルのある曲は聴きやすく、特に「セリオーソ」は第4楽章のメロディが親しみやすい。20分程度の曲で気軽に聴くには長さも適当である。ハイドンとは曲の重みが全然違う。ベートーヴェンの内なる声が聞こえる。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲を聴くことはめったにない。そういう意味ではいろいろな作曲家の曲を耳にする良い機会となった。彼の2つの交響曲やヴァイオリン協奏曲は充分に親しんでいる。室内楽曲でチェロソナタ第2番はマイスキー演奏のCDがあって心地よく聴ける。ロマン派の大作曲家としては特定の曲以外はあまり演奏会で取り上げられていないかなとふと思った。

クァルテットの定期演奏会を毎回多くの聴衆に聴いてもらうのはやはり難しいのだなと感じた。もう少し客が入ってくれればもっと盛り上がる気がした。
北星学園大学、同短期大学の学生たちの姿が多くみられた。クァルテット・エクセルシオはNPO法人を目指してアウトリーチ活動も行って室内楽文化の普及振興にも努めているそうである。

アンコール曲は「シューマン:トロイメライ」(弦楽四重奏版)

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名古屋フィル第440回定期演奏会(小泉&オピッツ)と名古屋城見学

2006年に結成された日本プロオーケストラファンクラブ協議会(JOFC)の今年度総会が11月19日(土曜日)名古屋で行われた。第10回JOFC総会の主催は名フィル・ファン・クラブ。総会の会場はSMBCパーク栄 会議室で7団体から約50名が参加して午後1時~3時までグールプ討論。
総会終了後に《名フィル第440回定期演奏会》鑑賞に備えて【愛知県芸術劇場コンサートホール】に歩いて移動。セントラルパークとなる大通りに建つテレビ塔も目立ち、名古屋の都心、栄地区にある大型文化施設も交通に便利な場所に立地する。

愛知県芸術劇場の建物全体は本格的3面舞台がある大ホール、コンサートホール、小ホールを持つ芸術劇場の他に美術館、アートライブラリーで構成されている。1992年開館の建物に入ったのは今回が初めてである。コンサートホールの映像は写真で何回か目にしているが実際に見てホールの素晴らしさを実感した。
コンサートホールは正面にオルガンが設置され、バルコニーがアリーナ型ステージと平土間席を取り囲む形式。客席は1800席。白いカーテンを連想させるコンクリート製の天井が印象的。

2016年11月19日(土) 4:00pm  愛知県芸術劇場コンサートホール

指揮/ 小泉 和裕 (Kazuhiro Koizumi)(名フィル音楽監督)
ピアノ/ ゲルハルト・オピッツ(Gerhard Oppitz)
管弦楽/ 名古屋フィルハーモニー交響楽団

〈Program〉
 ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15
 バルトーク:管弦楽のための協奏曲 Sz.116

小泉和裕は1949年、京都生まれ。72年第3回カラヤン国際指揮者コンクール優勝を果たし、ベルリン・フィル、フランス国立管、ウィ―ン・フィルなどのヨーロッパのメジャー・オーケストラと共演。その後もバイエルン放送響、シカゴ響でも客演指揮。新日本フィル音楽監督(75-79)、カナダ・ウィ二ペグ響音楽監督(83-89)、九州響首席指揮者(89-96)を歴任。東京都響では首席指揮者(95-98)、首席客演指揮者(99-08)、レジデント・コンダクター(08-13)を務め、日本センチュリー響音楽監督も歴任。現在は東京都響終身名誉指揮者、九州響音楽監督、仙台フィル首席客演指揮者、神奈川フィル特別客演指揮者。2016年4月より名フィル音楽監督。
マエストロ小泉の指揮ぶりを観るのは92年札響定期、07年と09年は都響札幌公演、12年札響定期に続いて今回が5度目となる。

ゲルハルト・オピッツは1953年、ドイツ出身のピアニスト。ヴィルヘルム・ケンプの後を継ぐドイツ伝統のピアニスト界の巨匠。77年第2回ルービンシュタイン国際ピアノコンクール優勝。ウィ-ン・フィル、ベルリン・フィルをはじめ世界のオーケストラと共演。90年代に日本での知名度が高まり、特に2005年~08年まで東京のステージで〈ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会〉を企画して大成功を収めた。その後の日本国内ツアーに繋がったと思う。
初めてオピッツのリサイタルを聴いたのが08年でべート―ヴェンの4大ピアノ・ソナタ。12年のピアノ・リサイタルではベートーヴェン、シューマン、シューベルトを弾いた。彼の得意な主要分野はドイツ古典派とロマン派の作品のように思われた。日本での音楽活動が多く親日家として知られる。ドイツ人気質と生真面目な性格が彼の演奏とステージマナーからも伝わってくる。日本人との相性が合う印象を深くしている。第3回目が昨年12月の札響定期で「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」を弾いて聴衆から嵐のような大喝采を受けた。オピッツの日本での人気の高さを改めて認識した。

名古屋フィルハーモニー交響楽団は1990年3月に札響tと合同演奏を行った。毎日新聞北海道印刷30周年記念として「マーラー:千人の交響曲」が当時の北海道厚生年金会館で演奏があったことを記憶している。(*指揮は高関健、ソリストは二期会会員8名、合唱は札幌の大合唱団。) 名フィルは「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ―ン」との年1回の合同演奏で親しみのあるオーケストラ。今回は単独の生演奏を聴ける滅多にない機会で楽しみにしていた。

ブラームス(1833-97)はピアノ協奏曲を2曲残している。1858年に完成された『第1番』はピアノ協奏曲として着想されたものではなかった。最初は2台のピアノのためのソナタとして書かれたが、第1楽章にオーケストレーションを施して交響曲にしようとした。最終的にはピアノ協奏曲に仕上げられ、ブラームスがオーケストラを用いた最初の作品となった。
華やかで色彩感豊かな曲ではないが、重厚感のある作品だと思う。悲劇的で情熱的な力強い表現に富む調べで長大な第1楽章。第2楽章は静かな情感を湛えた緩徐楽章。第3楽章はエネルギッシュな躍動感に満ちたフィナーレ。
オピッツによる生演奏のブラームスを聴いたのは初めてであるが重厚感あふれる演奏で指揮者との阿吽の呼吸もピッタリ。3階のほぼ中央に近い席からホール全体を見渡せ、ピアニストの運指も見れて曲の醍醐味を味わえた。

バルトーク(1881-1945)は1940年にハンガリーからアメリカに亡命したが、新天地では彼の名声は届かずに不遇な生活を送っていた。1943年に同じハンガリー出身でアメリカで活躍中の指揮者フリッツ・ライナーら友人たちの支援があり、ボストン響音楽監督クーセヴィツキーから現代音楽普及のための作品の委嘱を受けた。当時、バルトークは白血病で病床にあったが、3ヶ月足らずでこの『管弦楽のための協奏曲』を完成させたと言う。
曲のタイトルが面白い。「協奏曲」は一般には独奏楽器とオーケストラによる作品を指す。バルトークのこの作品では独奏は“オーケストラ全体”。曲が多彩に展開されて、いろいろな楽器にスポットが当てられる。極めて独創的な曲作りで、初演時から大成功を収め、現代音楽の傑作として評価されている。バルトークの管弦楽作品の中で最も演奏機会の多い作品。

実は昨年9月のホリガー指揮札響定期でも聴いているが、座席が1階11列で弦楽器奏者の後ろに位置する木管・金管奏者の姿が全て明瞭に見渡せる状況ではない。今回は3階席ほぼ中央からステージ上の演奏者の姿が全てハッキリと視界に入った。独奏楽器の演奏の際に耳と目の両方で確かめることができた。曲の面白さが倍加した。独奏楽器の響きを聴き分けることができて、第1楽章から終曲の第5楽章まで曲を堪能できた。今まで何回か耳にしている曲がこんなに興味深く鑑賞できたことはない。
普段と違った環境のもとで気分も高揚して聴けたとは思うが、とにかく2日連続の公演が毎回満席状態が続く名フィルの演奏も素晴らしかった。演奏終了後の万雷の拍手に包まれたホールを後にして外に出た。清々しい気持ちになって演奏会の感想を友人と話しながら懇親会会場に向かった。
毎年“TOYOTA MASTER PLAYERS, WIEN”との共演を含めた演奏会の積み重ねによって、名フィルのレヴェルも確実に向上しているのではないかと思った。マエストロ小泉や若手の指揮者、川瀬賢太郎たちの下で成長を続ける名フィルの今後に注目したい。
(*12月の名フィル・コンサートの客演指揮者が尾高忠明と知って、いっそう名フィルに親しみを感じた。

JOFC懇親会はSMBCパーク栄1階ロビーで開催されたが嬉しいことにマエストロ小泉も20日の名フィル大阪公演のため出発直前に会場に姿を見せて挨拶した。今年は名フィル創立50周年に当たり、大阪・新潟・上田での特別公演が続くが、名フィル・シェフの仕事が最後になると語った。品格がにじみ出る姿を間近にして感激した。
更にビックリして感激したことが起こった。演奏会終了後のサイン会が終ってからオピッツが懇親会会場に姿を見せた。英語と日本語で挨拶して小泉先生との共演は嬉しかったと述べた。名フィルとは22年ぶりの共演で懐かしそうであった。20日からの名フィル特別3公演で「ベートーヴェン:皇帝」を演奏する予定などを詳しく話した。実直に語る姿も予め抱いていた印象の通りであった。通り一遍の挨拶ではなくて愛情のこもった話に出席者一同は感激した面持ちで耳を傾けて退出する姿を見送った。

懇親会の後に同じ会場で二次会も行なわれてお開きとなる9時20分ごろまで会合に出席した人々と懇談した。札響くらぶから17名の会員が参加して三次会に向かう人もいたが、私も含め半数がタクシーでホテルに帰った。
翌日は犬山城・明治村に出かける人が多いようだったが、私は25年ほど前に出かけ場所なので単独行動にした。名古屋市は初めて訪れたので名古屋城を中心に観光した。「なごや観光ルートバス」を利用して名古屋城と徳川美術館を観て回った。それぞれ2時間以上の時間をかけてゆっくり鑑賞できた。

名古屋城では11時開始のボランティアが案内してくれるグループに加わっての観覧。親切なボランティアの案内で効率的に見学できて良かった。本丸御殿の復元工事が2018年の完成を目指して進められている。2013年5月から「玄関・表書院」の公開が始まり、
今年の6月からは「対面所・下御膳所」などの公開も始まっていた。本丸御殿復元工事の一部を観覧できるとは思っていなかったので大収穫であった。
予想以上に見ごたえのある城で天守閣は正午ごろには階段を上り下りする人々で混雑した。当日は日曜日だったので外国人の姿も多く見られ、行きかう言語もさまざまであった。

※札幌では10年ぶりの日本一に輝いた日本ハムファイターズのパレードが行われ、サッカーJ2の北海道コンサドーレ札幌が優勝を飾って5年ぶりのJ1昇格を決めた日でもあった。
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上野星矢フルートリサイタル2016 札幌公演

上野星矢(Seiya Ueno)の名を知って初めて聴いたフルート・リサイタルが2015年2月。非常に魅力的なフルート奏者だった。《ジャン=ピエール・ランパル フルート・リサイタル》を1987年に旭川で聴いたことがあって、日本の奏者では工藤重典のコンサートは何回か聴いていた。上野のコンサートを聴く大きなきっかけも多分ランパル国際コンクール優勝者で新進気鋭の奏者ということだったと思う。札幌交響楽団の定期演奏会では首席フルート奏者・高橋聖純の奏でるソロ・パートを通してフルートの音色の格別な美しさに聴き惚れることが多い。上野星矢は国内外のオーケストラと共演を重ね、世界の舞台でリサイタルや室内楽を展開し、カーネギーホールでもデビューして活躍中のフル-ト界の俊英。

2016年11月16日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 ジョルジュ・ユー:ファンタジー
 ラヴェル(上野星矢&内門卓也編):マ・メール・ロワ
 ヴィドール:フルート組曲 作品34
 ライネッケ:フルート・ソナタ「ウンディーネ」 作品167
 ビゼー(上野星矢&内門卓也編):カルメン幻想曲

George Hue(1858-1948)はフランスの作曲家で初めて聞く名前で、綴りに関心があった。Victor Hugo(ヴィクトル・ユーゴー)は有名なフランスの小説家で、綴りから苗字の頭文字“H”は読まないラテン系の言語(仏語、伊語など)から判断できる。(*サッカーの本田(Honda)はイタリアでは“オンダ”と呼ばれている。)
話題が横道にそれたが、「ファンタジー」の世界に導かれるイントロとなった小品。

「マ・メール・ロワ」はラヴェル(1875-1937)に懐く友人の子供2人のためのピアノ連弾曲として書かれた。後にバレエ版や管弦曲版に編曲された。いつも耳にするのはオーケストラ版で演奏会に備えて聴くCDはブーレーズ指揮ベルリン・フィルかインバル指揮フランス国立管である。7曲か8曲構成の曲が編曲版で演奏された。子供を神秘的で幻想的な世界に誘うラヴェルならではの音の魅力がフルートとピアノで充分に表現されていた。曲調に変化があってフルートの高度な演奏技巧も鑑賞できて良かった。

ヴィドール(1844-1937)の名はオルガン曲を通して知っていた。パリ音楽院オルガン科教授以外に作曲科教授を務めていたのは知らなかった。約20分のフルート組曲でピアノの旋律の美しさも同時に味わえた。ピアノ伴奏の内門卓也(Takuya Uchikado)もかなり優れた力量を示した。(*一緒に聴いていた妻がピアニストを褒めていた。)
内門はクラリネット奏者として名高いオッテンザマー兄弟をはじめ世界の一流奏者と共演しているというからその実力のほども理解できる。東京藝術大学作曲科卒で同大学院修士課程修了。今回のコンサートで編曲も担当しているが幅広い活動がうなずける音楽家。

ライネッケ(1824-1910)はドイツの作曲家で彼の代表作の一つが、1882年に書かれた「フルート・ソナタ」。戯曲「ウンディ-ネ」に着想を得た作品。4楽章構成の曲に物語が詳細に書かれていたが第1楽章の話の筋だけ苦労して読んでダウン! 用紙は立派だが紙面が濃紺で書かれた字が読みづらい。読み手への配慮が足りない制作者の感覚にビックリ!
「水の精」のストーリーと分ったので、あとは音楽に身を任せた。何とか演奏は楽しんだが、少々フラストレーションが堪って残念ではあった。

ビゼー(1838-75)もフランスの作曲家として極めて有名で、オペラ《カルメン》は人々に広く愛されている。劇中の魅力的な旋律を使った「カルメン幻想曲」が色々な楽器で演奏されている。私はサラサーテやワックスマンのヴァイオリン曲に親しんでいる。フルートによる「カルメン幻想曲」を聴くのは初めてだと思う。 
超絶技巧を駆使して親しいメロディが奏でられるのは楽しい。上野&内門二人の編曲による演奏は15分にも亘る熱演だった。

アンコール曲は「尾崎 豊:I Love You 」で昨年と同じだったが、初めて聴いた人には意外な選曲。

※上野は2015年秋にアメリカ国内ツアーを8か所で開催して成功を収めたようである。“Ueno”は日本人はローマ字読みで正しく読めるが、アメリカ人は戸惑ってから“ユーイノ”と発音すると思う。アルファベット読みになるからである。大リーグで活躍中の「上原」は渡米当時「ユーイハラ」と呼ばれていた。親しくなると苗字で呼ばないで、ニックネイムを使う。日本語で「ウ」で始まる語は英語では「ユ」が原則。ユガンダ、ユルグアイ、ユクレイン(Ukuraine)。
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鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン《ミサ曲 ロ短調》 札幌公演

『鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン』の演奏会をKitaraで初めて聴いたのが2006年12月であった。(*森麻季のほかに3人の外国人ソリストが加わって曲目は「モーツァルト:レクイエム」など。当時のプログラムでチェロの鈴木秀美は当たり前と思ったが、鈴木優人(オルガン)の名は当時は知らなかった。)
2回目の札幌公演は2007年12月で「ヘンデル:メサイア全曲」。古楽に重点も置くKitara 主催のプログラムでは〈2008年ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団、2010年ドレスデン聖十架合唱団&ドレスデン・フィルハーモニ管弦楽団による「マタイ受難曲」も忘れ難い。
鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパンは世界ツアーとアルバム録音で日本が世界に誇る音楽集団であるが、度々Kitaraに登場してくれるのは嬉しい。毎回聴いているわけではないが久しぶりに未知の曲を聴いてみることにした。

未知と思ったが2011年12月に〈オランダ・バッハ教会合唱団&管弦楽団〉による「バッハ:ミサ曲 ロ短調」を聴いた記録が出てきた。当時のプログラムを読み返しても思い出が蘇ってこない。5年ぶりに耳にする音楽で何かの繋がりが見えてくることを期待した。

2016年11月15日(火) 開演19:00  札幌コンサートホールKitara大ホール

J.S.バッハ:ミサ曲 ロ短調 BWV232

指揮/ 鈴木雅明(Masaaki Suzuki)
ソプラノ/ 朴 瑛実(Terumi Boku)、ジョアン・ラン(Joanne Lunn)
アルト/ ダミアン・ギョン(Damien Guillon)   *カウンターテナー
テナー/ 櫻田 亮(Makoto Sakurada)
バス/ ドミニク・ヴェルナー(Dominik Worner)
合唱・管弦楽/ バッハ・コレギウム・ジャパン(Bach Collegium Japan)

鈴木雅明は1990年にバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の創立以来、バッハ演奏の日本における第一人者。BCJを率いて欧米の主要ホールや音楽祭に定期的に出演し、古楽演奏では世界的な指揮者として名高い。2013年には〈Kitaraのニューイヤー〉で札響を指揮してモダン・オーケストラとも共演。
BCJコンサートマスターの若松夏美(Natsumi Wakamatsu)をはじめメンバーの多くは10年前と変わっていない。メンバーは約50名。本日の出演者はソリストを含めたコーラスは25名、オーケストラ25名。(*オルガンは鈴木優人で、彼は作曲・指揮・ピアノなど多岐にわたる分野で活躍している卓越した音楽家。)

ソリストの中で櫻田は昨年札響とも共演。イタリアの古楽アンサンブルや国内外のモダン・オーケストラなどと多数共演し、オペラの舞台でも活躍中。2016年4月BCJヨーロッパ公演でソリストを務めた。
ドミニク・ヴェルナーは2002年ライプツィヒ国際バッハ・コンクールで優勝し、BCJとは2005年から国内外で共演を重ね、札幌公演には毎回参加している。

BCJはバッハの約200曲もの教会カンタータ(ルター派プロテスタントの礼拝で演奏される大規模な声楽曲)の全曲演奏&録音で世界の注目を浴びた。バッハの「マタイ受難曲」も大傑作として知られる。ミサ曲はラテン語で歌われるカトリック教会の礼拝音楽である。「ミサ曲 ロ短調」は後半生の長期にわたって書き続けて完成させたバッハ唯一のミサ曲で彼の集大成の作品とされる。

曲は4部構成、全27曲。第1部が12曲、ミサ(キリエ、グロリア)で約1時間。第2~4部が15曲で約55分。
5部合唱で始まるコーラスの美しさに魅せられた。独唱・二重唱も入るが、独唱+ヴァイオリン独奏、二重唱+フラウト・トラヴェルソなどの組み合わせがあって非常に面白くて前半の1時間はアッという間に過ぎた。
ソロを歌った4人の歌手はいずれも素晴らしい歌声で聴きごたえがあった。特に聴く機会の珍しいカウンターテナーの声には興味をそそられた。(*1998年、スラヴァのカウンターテナーや2004年、岡本知高のソプラニスタの歌声でのオペラのアリアを想起した。)

今回の古楽器で「コルノ・ダ・カッチャ」というホルンに似た楽器の名は初めて耳にした。バス独唱、2本のファゴットとともに目立って使用されたので判った。モダン楽器とはかなり違う響きの演奏が展開されて、古楽器演奏によるバロック音楽で独特な雰囲気を醸し出すコンサートを堪能した。一番印象的だったのは合唱の素晴らしさで、ハーモニーの美しさは群を抜いていると思った。やはりプロ歌手は違うと実感した。

後半部分が終了したのが21時15分。予め終演時間が知らされていたが、演奏終了後の聴衆の反応も凄かった。“新鮮な”曲を耳にした客席を埋めた人々の満足度がお互いに伝わってきた。地味な演目のコンサートではあったが、1階は満席で1200名ぐらいの客入りだったのではないだろうか。
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METライブビューイング2016-17 第1作《トリスタンとイゾルデ》

ワーグナーのオペラはMETビューイングで《パルジハル》を観ただけで、殆ど親しんでいない。管弦楽曲集として有名な歌劇・楽劇の「序曲」や「前奏曲」などの音楽はCDで耳にする程度である。
《楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死》はマゼール指揮ベルリン・フィル、レヴァイン指揮メトロポリン・オーケストラによる演奏で聴いている。今回はオペラ全集ワーグナーのDISC3枚に収録されていたバーンスタイン指揮バイエルン放送響withベーレンスの「愛の死」を聴いてみた。

今シーズン第1作《ワーグナー:トリスタンとイゾルデ》の札幌での上映がいよいよスタート。5時間余りの長時間鑑賞はスケジュールを調整してチケットは一昨日購入しておいた。
指揮/サイモン・ラトル、演出/マリウシュ・トレリンスキ。全3幕、 ドイツ語上演。究極の恋愛物語として知られるワーグナーの傑作オペラ。

〔ストーリー〕
アイルランドの王女イゾルデはコーンウォールの王マルケと結婚することになり船に乗っている。彼女を迎えに来たのがマルケ王の甥、トリスタン。かって自分の婚約者を殺したトリスタンには復讐心を抱いていたが、イゾルデは彼を介抱したことがあって二人の間に恋が芽生えた。会ってよそよそしい態度をとるトリスタンに傷ついたイゾルデは侍女ブランゲーネに毒薬を用意させ二人で飲もうとする。しかし侍女が盃に入れたのは媚薬であった。飲み終わった二人の愛は激しく燃え上がり、コーンウォ―ルでも密会が続いて、王の知るところとなる。王の家臣と喧嘩となり銃で重傷を負ったトリスタンは自分の領地に移される。イゾルデを待ち続けたトリスタンは彼女の到着を待たずして亡くなる。ブランゲーネから媚薬の話を聞いたマルケ王が二人の結婚を許そうとして船で駆けつけるが、イゾルデはトリスタンの遺骸の上で息絶える。二人の愛は死によって成就することとなる。

全3幕。《トリスタンとイゾルデ》の中で最も有名なのが「前奏曲」で第1幕が開く前に演奏される。オーケストラ・ピットの映像はなかったが、ラトル指揮による素晴らしい演奏はオペラ上演の期待感を一層高めた。

昨シーズン第10作《エレクトラ》で主演を務めた二ーナ・ステンメの名演には心を奪われていた。衝撃的なギリシャ悲劇で表情豊かな演技力と歌唱力を見せたドラマティック・ソプラノのステンメは最高のディ―バの一人として評価が高い。犬のような生活を送りながら復讐の時を待つ王女の壮絶な復讐劇を演じた場面が今も眼前に浮かぶ。前回の6月に続くステンメの名演を再び目にした。イゾルデは彼女が100回以上も演じた「十八番」ともいえるはまり役とされる。トリスタン役のスチュアート・スケルトンのテノールも素晴らしかった。(*立派な体躯だが、もう少し身体を絞った方が好感度が上がる気がした)。開幕から閉幕まで舞台上での二人の熱演は聴衆の心を掴み、特に二重唱は圧巻であった。

マルケ王役のルネ・バーペは以前のMETビューイングで聴いたことがあるバス歌手でワグナーの歌い手として名高いそうである。ブランゲーネ役のグバノヴァも堂々とステンメと張り合ったメゾ・ソプラノ。
今回のオペラの立役者はもう一人、サイモン・ラトル。第2・3幕の開幕では聴衆から一段と大きな拍手を浴びていた。歌手との呼吸をうまくとりながらオーケストラから素晴らしい音を引き出すラトルはさすが世界の名音楽監督。。

タイトルは良く知られているが、内容は余り知られていないストーリーのオペラ。初日で結構な客の入りであった。5年前からMETビューィングを観だして、近年は年に5・6作は観ている。妻も私の刺激を受けて、書道などで忙しいスケジュールを縫って現在は私と同じ回数は鑑賞している。自分の都合の良い日を選んで鑑賞しているので、今まで一度も一緒に鑑賞したことがないのも不思議ではある。
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Class Reunion (同期会)

英語の“class”には同じ学年の者全部を指す場合がある。日本語ではクラス会と同期会に違いはあるが英語では“Class Reunion”で表す。自分の中学時代は1学年7クラスで3年間同じクラスで学んだこともあって同じ組の者が卒業後、何回かクラス会が開かれている。私は30年前に1度参加したことがある。同期会は還暦を迎える頃に登別温泉で始まって10年程は続いた。今までに4回ほど出席して懐かしいクラスメイトとの再会を喜んだ。

高校時代は毎学年クラス替えがあり、3学年時には英数国の3教科で進学4クラス中トップクラス編成で更にクラス移動があった。クラス会を開く環境になかった。室蘭在住の有志が同期会開催の労を担ってくれて1957年卒のClass Reunionが開かれている。私が初めて参加したのが登別温泉での第18回(1989年)、その後は札幌での開催も増えて今までに10回ほど参加した。東京やハワイでも開催されている。最近の会場は登別温泉が多いが幹事のご苦労は感謝に堪えない。今回が第45回七期会で参加者は29名。女性の名前が分からないのが残念だが二次会まで和気あいあいに過ごした。60年前に同じ学校で学んだ者同士の心の触れ合いには代えがたいものがある。

病後、初めて札幌を離れての1泊旅行。昨年から妻に勧められていた携帯電話を持つことにした。購入したのは先月だがコンサートには未だ携帯していない。マナー・モードにしても万が一が気になる。もう少し時間が必要なようである。昨年11月の旅行予定はキャンセルしたが、今後は余計な心配なしに旅行にも出かけられる気がする。


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反田恭平(piano)X上野耕平(saxophone)デュオ・コンサート

話題の若手演奏家がKitaraに初登場。反田恭平(Kyohei Sorita)の名は2012年第81回日本音楽コンクールの様子をテレビで見ていた折に知った。当時の彼は高校3年生でピアノ部門優勝に輝いた。昨年Twitterを通して彼の活動ぶりを知った。デビューアルバム「リスト」の発売の情報を得て8月に直ぐ購入したが素晴らしいピアノの音色に感動した。モスクワ音楽院に在学しながら日本ではバッティスト―ニ指揮東京フィルと共演して大反響を呼び起こした。ロシアと日本を行き来しながらコンサートやテレビで大活躍中である。
札幌生まれの反田は未来のヴィルトオーゾとしてKitara Club の情報誌第60号(Winter2015)に紹介された。

上野耕平(Kohei Ueno)の名は知らなかったが、話題沸騰のサキソフォン奏者。2日前の日曜日、NHKEテレ夜の番組〈コンサートプラス〉で演奏を披露した。バッハの「無伴奏フルートのためのパルティ-タ」をサキソフォンで吹いた。ヴァイオリンで馴染みの曲だが管楽器での演奏も味があって良かった。難易度の高そうな舞曲を4曲続けて吹いた。

〈PROGRAM〉
  シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70(Duo)
 リスト:愛の夢ー3つの夜想曲より 第3番 変イ長調(Piano)
     巡礼の年報 第2年への追加 「ヴェネツィアとナポリ」より 第3曲「タランテラ」
 デザンクロ:プレリュード、カデンツァとフィナーレ(Duo)
  ボノー:ワルツ形式のカプリス(saxophone)
 グラズノフ:サキソフォン協奏曲 変ホ長調(Duo)
 ガーシュイン(長生 淳編曲):ラプソディ・イン・ブルー(Duo)

シューマンのこの曲は室内楽で何度か聴いたことがある。サキソフォンがクラシック音楽に用いられるのは稀である。原曲はホルンとピアノ。
上野は1992年、茨城生まれで東京藝術大学器楽科卒。須川展也に師事。12年前にKitaraで開催された東日本吹奏楽大会に参加したと話した。2014年アドルフ・サックス国際コンクールで第2位。15年の日本フィル9月定期で山田和樹と共演。クラシックサキソフォンの注目度を一気に高めている。

反田はCDで収録されていた「愛の夢 第3番」と「タランテラ」の対照的な曲を演奏。2曲続けて演奏したが超絶技巧を披露する「タランテラ」は聴衆の度肝を抜くような演奏となった。演奏後に一段と大きな歓声が上がった。
彼は関東・関西では人気の高い若手ピアニスト。1月のサントリー公演のチケットは完売。浜離宮朝日ホール8月の3公演も完売となり追加公演も開催された超人気のピアニスト。まだ道内での知名度は高くないようである。今回の公演はKitaraクラブ会員拡大のためにクラシック音楽の裾野を広げている上野耕平に焦点を当てたプログラムになったような感じがした。

リストのピアノ曲以外は反田はピアノ伴奏を担って、主役は上野。サキソフォン・リサイタルの感がしないでもなかった。それは別として素晴らしい演奏会ではあった。サキソフォンの演奏がメインだがピアノにも相当な技量が必要とされる曲。

グラズノフはロシアの偉大な作曲家。一昨日のクラシック音楽館でも「グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲」が演奏された。グラズノフが「サクソフォン協奏曲」も手掛けていたと知って驚いた。

上野は前半のプログラムでは1曲目でテナー・サキソフォンと2曲目にアルトサキソフォンを用いた。後半では大きさの違う3本のサクソフォンを予めステージに運んでいた。3本目の楽器はソプラノで一番小さい楽器。
「ラプソディ・イン・ブルー」はよく知られた名曲で親しまれている楽曲。サキソフォンとピアノで聴く音楽は初めてである。2番目の大きさのアルトサクソフォンを中心にして時折ソプラノやテナーに持ち替えての演奏は圧巻であった。何十回となく聴いていた「ラプソディ・イン・ブルー」でこんなに楽しく面白く聴けたことはない。そういう意味では今回のコンサートは大満足であった。
惜しむらくは反田恭平のピアノ・ソロがもっと聴きたかった。彼のピアノ・リサイタルを心待ちにしたい。

P席とRA、LA席は販売せずに前売券は完売、当日券のみの売り出しで1000名以上の客は入ったと思われる。Kitara会員限定コンサートとして開催された格安料金でのコンサート。これを機会に会員が増えてくれば良いのだが、、、。

コンサート会場は一気に盛り上がって帰りのサイン会に並ぶ行列は凄かった。管楽器関連の賑わいは普段のクラシックコンサートと少々違う賑わいを見せていた。





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北海道大学交響楽団第132回定期演奏会

現在の北海道大学交響楽団の前身となるオーケストラの演奏会は1922年に北大の中央講堂で開催されたという。1941年に北大交響楽団が発足して第1回演奏会開催。1956年2月に〈復活演奏会〉が開催され、1960年6月の復活5周年記念演奏会が「第20回定期演奏会」となった。私は川越守指揮によるこの演奏会を聴いた。会場は多分、札幌市民会館だったと思う。
北大交響楽団の演奏をKitaraで聴いたのは2007年の第114回定期演奏会。記録によるとブログラムは「ドヴォルザーク:交響曲第7番」、「グラズノフ:バレエ音楽 四季より“秋”」、「川越守:即興曲第4番」。この頃には1980年に川越守が設立した北海道交響楽団の演奏会を聴くことが多くなっていた。
2010年10月には〈北海道大学交響楽団第120回定期演奏会〉を聴いたのだが、第20回演奏会から50年経っていた演奏会だったことに今回気付いた。当時のプログラムは「シューベルト:未完成」、「チャイコフスキー:悲愴」など。
年2回の定期演奏会のうちで1回はKitaraで開催されているようだが、学生オーケストラ鑑賞が入る余裕がない。今年はピアノ・コンチェルトが入るプログラムに惹きつけられて敢えて3日連続のコンサート鑑賞となった。

2016年11月5日(土) 18:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 川越 守    ピアノ/ 佐野 峻司
管弦楽/ 北海道大学交響楽団

〈Program〉
 シベリウス:「カレリア」序曲 作品10
 川越 守:Sapporo Serenade  2つのメロディによる幻想曲 「秋風」
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
 ドヴォルジャーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70

北大交響楽団のブログを書こうとして過去の記録を見て少々驚いた。「ドヴォルザーク:交響曲第7番」は2007年エリシュカの札響4月定期演奏会で初めて聴いた曲として印象に残っていた。同年秋の北大交響楽団の定期演奏会でも聴いていて、久しぶりで聴く今回の同響の演奏会の曲目が同じ曲とは偶然の一致であるが驚きを禁じ得なかった。

「カレリア」組曲 作品11はシベリウスのオーケストラ曲としてポピュラーな作品であるが、「序曲」には親しんでいない。フィン人発祥の地であるカレリア地方の歴史を基にした劇付随音楽の「序曲」で北海道と似た気候・風土を持つフィンランドの自然が描かれていた。同時にカレリア地方の人々のロシアからの独立を願う愛国心も描かれていて、交響詩「フィンランディア」に似た雰囲気を持つ曲でもあった。

札幌生まれの川越が昔の札幌の姿を懐かしんで書いた曲。明治40年(1907年)に札幌を訪れて1週間滞在した石川啄木は札幌の町の印象を「秋風記」としてタイムスに書き残して釧路に去った。「札幌はまことに美しい北の都、秋風の国、静にして木の香りあり。大いなる田舎町であり、恋の多くありそうな郷である。」 この言葉に郷愁を感じている様子が彼の曲にうかがえる。15分ほどの曲には北大の寮歌「都ぞ弥生」のメロディが繰り返し反復される。彼の学生時代と当時の札幌の風景も懐かしく思い出して作曲したのではないだろうか。

チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」は古今東西の協奏曲でも最も人気の高い曲。北大医学部4年の佐野峻司(1994年、札幌出身)が力強く華やかな圧倒的な演奏を展開して最初から最後まで聴衆の心を惹きつけた。彼は幼少時から札幌コンセルヴァトワールにて学び、PTNAピアノコンペティションで優秀な成績を収めてきた。彼の名は中学時代から耳にしてきた。その後の進路状況は知らなかった。以前にも北大響と共演してラフマニノフの第2番を弾いているというから、医師とピアニストの両立を目指して努力を積み重ねているのだろう。(*医師&ピアニスト上杉春雄という偉大な先輩が目標となっているのかも知れない)。2階中央の座席からピアノの鍵盤上を動き回る手の動きも見ていたが、初演がルービンシュタインから断られたことが判るような当時としては超絶技巧を要する演奏を自由自在に弾いて見せた。とにかく素晴らしい演奏で約1800名の聴衆の期待に応えた。
演奏終了後の嵐を思わせるような盛大な拍手に応えて、アンコール曲に「シューマン/リスト:献呈」を弾いた。

休憩が2回挟まれての最後の演目が「ドヴォルザーク第7番」。第9番、第8番に比べて演奏会で取り上げられることが滅多に無かった第7番は近年注目されているようである。エリシュカは第5番や第6番も札響定期で演目にした。私も刺激を受けてノイマン指揮チェコ・フィルのドヴォルザーク交響曲全集を手に入れた。川越も演奏終了後に“第7番は音楽的に良くできた曲である”と語っていた。演奏者の代表もプログラムの中に“楽器のどのパートも目立つ部分が多くて非常に演奏しがいのある曲”と書いている。
「新世界より」では5音音階が使われたメロディが入って日本人が親しみやすい音楽となっているが、この曲にもヨナ抜き(4番目と7番目のファとシの音が無い)の旋律がある。第3楽章のスケルツォはチェコの民族舞曲が入って魅力的だった。

今まであまり意識していなかったが、川越は北海道交響楽団や北大交響楽団の演奏時に指揮台を使っていない。何十年も前から彼の考えで慣習となっているのだろう。2つのオーケストラを率いての演奏会で彼以外の指揮者がステージに立った姿は未だ目にしていない。十年前と変わらぬ姿にアマチュア・オーケストラを支える偉大な指揮者の愛情の深さと情熱を感じる。

演奏終了後にドヴォルザークの天才ぶりを語った。ブラームスがジプシーの音楽をハンガーリ―舞曲に仕立て上げたのに対して、ドヴォルザークはボヘミアの舞曲を自らが作り上げたと話したのが印象に残った。その点でブラームスよりドヴォルザークの方が天才的であるというのが彼の考え方で面白いと思った。
アンコール曲は「ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1番」。

学問をしながら余暇に音楽に取り組む学生の姿からプロの演奏家のコンサートと違う音楽の楽しみを人生に位置付けている頼もしさを感じ取った。

※プログラム作りに携わった楽団員の情報で興味深い記事があった。
北大オケの団員数は約200名。今回の定期演奏会に出演した団員178名の出身地。
北海道 70(札幌市内35、市外35)、東北 5、関東 55、中部 21、関西 14、中国 4、四国 2、九州 7。
地方大学とはいえ、全国から多くの学生が北海道大学で学んでいる様子がオーケストラ団員の数からもうかがえると思う。近年の傾向として女子学生の団員が6割に達しているという。




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石川祐支&大平由美子 デュオ・リサイタル

石川祐支(cello)&大平由美子(piano)デュオは2014年9月以来の2年ぶりのリサイタル。前回は重量級のプログラムで少々力みがあった感じがした。今回もベートーヴェンとブラームスのソナタの入るプログラムで重厚感があり、二人は共演を重ねて経験を積んでいて期待できそうである。

2016年11月4日(金) 7:00PM開演 札幌コンサートホールKitara小ホール
 
〈Program〉
 ストラヴィンスキー:イタリア組曲(チェロとピアノ版)
 ベートーヴェン:ピアノとチェロのためのソナタ第2番 ト短調 作品5-2
 ドヴォルザーク:「ボヘミアの森」より “森の静けさ”
 ブラームス:ピアノとチェロのためのソナタ第1番 ホ短調 作品38

ストラヴィンスキー(1882-1971)は〈3大バレエ〉で有名な現代作曲家である。「イタリア組曲」の原曲がバレエ音楽「プルチネッラ」とは知らなかった。アバド指揮ロンドン響による全曲のCDを所有している。管弦楽のための「プルチネッラ組曲」は演奏会で聴いたことがある。室内楽のために5曲から成る「イタリア組曲」として発表されたのが1932年という。
チェロの巨匠ピアティゴルスキーの意向を汲んで書かれたのでチェロ作品として難曲中の難曲と知られているそうである。色々な技巧が駆使されていて石川の演奏は見事で魅力的であった。バレエ音楽の雰囲気もあるが、特に第4曲“タランテラ”での超絶技巧が目を引いた。大変面白い曲として聴けて楽しかった。

ベートーヴェンの「第2番」のCDは持っていない。第3~5番はロストロポーヴィチ&リヒテル、マイスキー&アルゲリッチのCDは持っているのだが、初期の作品は聴いたことがなかった。
曲は2楽章構成。第1楽章がアダージョの長大な序奏と、それに続く流麗なアレグロでスケールが大きい楽章。第2楽章はロンド形式で表情豊かな曲作り。チェロもピアノと対等な役割を担うがピアノ・パートが際立った演奏技巧を披露する曲。第3番以降のチェロ・ソナタと遜色のない曲だと思えた。

ドヴォルザークはピアノ二重奏曲「ボヘミアの森より」6つの描写的小品を書いていて、その後に第5曲「静けさ」をチェロのピアノのための二重奏曲に編曲した。5分余りの曲でドヴォルザークならではの美しい旋律。原曲の第5曲のみカセットかCDで聴いていることが判った。

ブラームスのチェロ・ソナタはデュ・プレ&バレンボイムのCDがあるので今日の午前と午後2回聴いておいた。3回目に耳にした生演奏が、やはり生き生きとした演奏となって聴きごたえが違った。
「第1番」を書き始めたのは29歳の時だったが、この頃は悩み事が多くて作曲が思うように捗らなかったようである。30歳でウィ―ンのジングアカデミーの指揮者に就任したが、満足のいく職でなくて8ヶ月後に辞任した。故郷ハンブルグのフィルハーモニック指揮者を目指したが、実現しなくて悩んでいたらしい。曲の完成は3年後であった。
このソナタからは、若き日のブラームスの心の葛藤や秘めた思い、激情、故郷への郷愁などが綴られている。チェロの物悲し気な旋律が心に響き渡る。チェロとピアノが激しく対立しながら曲を彩る。ブラームスらしいドラマ性を感じさせる曲作りであると思った。

このデュオは人気があって多くの聴衆を集める。演奏終了後には盛大な拍手が送られた。
アンコール曲は「ドヴォルザーク:母の教え給えし歌」。

今回のコンサートはCD発売記念として開催された。終演後のサイン会で多くの客がホワイエに列を作っていた。
石川祐支が札響首席チェロ奏者に就任してから11年、オーケストラのチェロのソロ・パートでも素晴らしい音色を毎回響かせている。札響になくてはならない存在で、他のオーケストラと共演してのコンチェルト演奏、室内楽での活動などで私自身聴く機会が結構ある。
大平由美子はベルリン芸術大学卒業後、2008年に帰国するまでベルリンで幅広く活動していた。彼女のプロフィールを読むといつも私の学生時代を思い出す。当時ラジオを通して歌声を聴いていたドイツ・リートの20世紀伝説の歌手、シュワルツコップやフィッシャー=ディースカウの許で彼女は伴奏法などを学んでいたというからピアノの実力のほどが推し量れる。同時に親近感も沸く。現在は札幌在住で地元の音楽界に多大な貢献をしている。
石川と大平の相性も良いようであり、今後も定期的にデュオが続いていくことを期待する。

※昨年11月4日はピリス&メネセスのデュオ・リサイタルの日であった。私は心臓のバイパス手術を受けた日で翌日までICUで昏睡状態にあり、親戚にチケットを譲って聴いてもらった。医学の進歩は驚くべきもので今では月10回ほどのペースでKitaraに足を運べるほどに健康を取り戻している。音楽は心を安らかにして気を楽にしてくれる。私にとってクラシック音楽は健康の源である。


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小山実稚恵「音の旅」第22回 ベートーヴェン・ブラームス・シューベルト

小山実稚恵の12年間・24回にわたるピアノリサイタルシリーズも今回を含めて残すところ3回となった。

第22回 2016年 秋
~心の歌~ イメージ〈グレーベージュ:深い森の中へ分け入っていく

2016年11月3日(木・祝) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 ベートーヴェン:ソナタ 第30番 ホ長調 作品109
 ブラームス:6つの小品 作品118
 シューベルト:ソナタ第20番 イ長調 D.959 

演奏前のプレトーク。24回のリサイタル・シリーズのうち最後の3回のプログラムは構想当初にいち早く決定していたという。ベートーヴェン後期三大ソナタ、シューベルト最晩年の2つのソナタ、ブラーム晩年の小品。
今回はシリーズの中で最も優しさ溢れる「静」のプログラムであると小山は語った。

「ハンマークラヴィーア」でピアノ・ソナタの巨大性を追求したベートーヴェンは「第30番」のソナタでは深い精神性を表現した。非常に落ち着いた内省的な作品。“歌うように心の底から感動を持って”とのベートーヴェンの言葉が添えられている第3楽章が象徴的。美しい主題と6つの変奏、最後にテーマに戻る重厚な作品。小山はゴルトベルク変奏曲に通じる心の底からの感動がある「心の歌」と述べている。

ブラームスの晩年に書かれたピアノ小品はクライバーンとムソルグスキーのCDで聴いていた程度であった。コンサートのアンコール曲に演奏される度に親しみを持ってCDを聴き直したりしていた。ブラームスの作品ではピアノ協奏曲のほかにピアノ小品の良さも分るようになってきて、数年前には田部京子のCDを演奏会の折に購入した。今回もコンサート前に予め聴いておいた。
第1、2、4、6曲は「間奏曲」で第3曲「バラード」、第5曲「ロマンス」。形式は小規模で簡素であるがブラームスの心情が吐露されて心にしみる味わい深い作品。バラードで急に曲調が変わったがほのかな希望の表れだろう。
地味で華やかさには欠けるが、何回か聴いていると聴きごたえのある作品だと思う。

シューベルトのピアノ作品に親しむようになったのは紗良・オットの演奏会が切っ掛けで、ラドゥ・ルプーのオール・シューベルト・プログラムによるコンサートで魅力が一気に開花した。今回も彼のCDを聴いて演奏会に備えた。まだ、ベートーヴェンやショパンの曲ほどには聴きこなせていない。
「第20番」のソナタはシューベルトが亡くなる2ケ月前に書かれた“3つのソナタ”の2番目の作品。3曲の中では最も明るく華やかさもあるが、忍び寄る死の影が感じられるという。
壮大なソナタに相応しい力強さと幻想的な第1楽章。抒情的な第2楽章。第3楽章は即興的なスケルツォ。第4楽章は幸福感に満ちた歌謡主題を持つ長大な最終楽章。
シューベルトの音楽もベートーヴェンやショパンに比べると聴いている頻度が違うので曲の良さが分りつつも心地よい親しみのあるまでには至っていないような気がする。

小山実稚恵「音の旅」を聴き続けて16回。この数年のKitaraでの「音の旅」は満席に近い状況が続く盛り上がりを見せている。来年の秋で今シリーズは終了するが、早くも2018年以降の小山の新しいコンサート企画に関心が集まっているようである。

アンコール曲は①シューベルト:即興曲 Op.90-4 、②シューマン:トロイメライ。2曲とも最も親しまれている心地よい曲だった。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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