PMFオーケストラ演奏会(アクセルロッド指揮ブラームス第4番&PMFコンダクティング・アカデミー)

《PMFオーケストラ〈プログラムB〉》

先週ジョン・アクセルロッド指揮による〈プログラムA〉の演奏は聴いたので、〈プログラムB〉では彼が指導したコンダクティング・アカデミー・メンバーによる指揮ぶりを観てみたい思った。
PMFチケット購入を依頼された友人2人と一緒に鑑賞する最後の演奏会になったので、Kitaraテラスレストランでランチを共にした。その後、コンサートに臨んだ。

2016年7月31日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

Artists/ John Axelrod, PMFコンダクティクティング・アカデミー[Miguel Calderon Dominguez(Spain), Mayana Ishizaki(Japan), Alexander Prior(UK)], PMF AMERICA, PMF Orchestra

〈Program〉
 メンデルスゾーン:序曲「静かな海と楽しい航海」 作品27(指揮/ミデル・カルロス・ドミンゲス)
 ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第3番 作品72b(指揮/石崎真弥奈)
 ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」(原曲版)(指揮・アレクサンダー・プライア―)
 ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98(指揮・ジョン・アクセルロッド)

メンデルスゾーン(1809-47)は30-32年にかけてイタリア、スイス、フランス、イギリスなどを旅行した。彼は変化に富んだ地域の自然を描いた作品も幾つか書いている。演奏会用序曲として書かれた「フィンガルの洞窟」とともに演奏会の曲目になることが度々ある「序曲」。前半部分の“静かな海の状景”と後半の“楽しい航海の様子”が対照的に描かれていた。
コンダクティング・アカデミーには世界23ヶ国・地域から73人の応募がありオーデションで3名が選抜された。スペインのドミンゲスは緊張した様子だがメリハリのある溌剌とした指揮ぶりだった。

ベートーヴェン(1770-1827)はオペラ作品を一つしか書いていないが、その歌劇「フィデリオ」のために4つの序曲を書いている。そのなかで「レオノーレ第3番」は一番演奏機会の多い作品だったと思う。演奏時間が12・3分かかる為か最近の演奏会では取り上げられてこなかったように思う。今回久しぶりにスケールの大きい勇壮な音楽が聴けた。
レオノーレという女性が男装してフィデリオと名前を変え、捕らわれの身になっている夫・フロレスタンを救い出す物語。レオノーレの夫への深い愛と勇敢な行為が描かれ、曲の後半に大臣の到着を告げるトランペットのファンファーレが舞台裏から響き渡る場面は印象的だった。プレストのコーダで終るフィナーレが壮大だった。
男性2人と比べて小柄に見える日本女性の堂々としてメリハリの効いた指揮ぶりが目立った。

ムソルグスキー(1839-81)の「はげ山の一夜」は彼の有名な管弦楽曲。彼の死後、リムスキー=コルサコフが編曲した曲で知られていたという。原曲は10分程度の作品だったが初めて耳にして少し長めに感じた。コルサコフ版より荒々しく、夏至の夜に跋扈する闇の精霊たちの様子が描かれているような気はした。
190センチぐらいの背が高くて頑丈な体躯のスコットランドの若者の指揮ぶりも迫力があった。演奏終了後にアカデミー生による演奏をまとめる姿もユーモアがあって好感が持てた。

ブラームス(1833-97)は第1交響曲の作曲に時間を要して完成が遅くなったが、その後に書き上げた交響曲も含めて全て素晴らしい交響曲として後世に輝く傑作となっている。1885年に完成された「交響曲第4番」は彼の最後の交響曲となった。 「第4番 」の作品は芸術的な力強さでは比類ない作品と言われる。古典的形式美を残しつつも続く世代のロマン派の傾向を盛り込んで新しい流れの方向性をも示した高度な作品と評価されている。
PMF教授陣13人がこの曲での各パートを牽引して演奏を盛り上げた。特にソロ・パートの演奏を含む重厚感は抜きんでていた。1週間程度の練習では特効薬は現れないと思うが、この期間はアカデミー生にとってかけがえのない時間であったことも間違いない。PMF修了生としての今後の一層の努力が望まれる。教授陣からだけでなくアカデミー生同士で今後の成長が図られる要素がふんだんにある。彼らひとりひとりの今後の成長と発展を祈りたい。

アクセルロッドのアカデミー生への指導の熱意を支えているのは師バーンスタインであることを改めて確認した。アンコール曲は誰にも良く知られている「ブラームス:ハンガリー舞曲第5番」。楽しい雰囲気の裡にコンサートが終った。

プロの音楽家と違う若者のための音楽祭を毎年のように楽しめて嬉しい。1990年から楽しみ続けているPMFがまた来年以降も楽しめますように!(*ピクニックコンサートに参加できるかどうか現在の時点で不明なのでまとめの記事にした。)
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PMFアメリカ演奏会

PMFヨーロッパが指導する前半のプログラムが終了した。16日から24日まで5つのコンサートに参加した。22、23、24の三日連続のコンサート鑑賞は特徴ある演奏会で楽しめた。前後の21、25日に時計台ボランティア活動が入っていたので、さすがに疲れが出て翌日は一日中家にいた。
今週初めからPMFアメリカが指導する後半のプログラムが用意されている。
例年開催されていたPMFアメリカ演奏会(PMF AMERICA Concert)は昨年Kitaraではなく地方で開催された。

出演/ PMFアメリカ
    David Chan, violin/Metropolitan Opera Orchestra, Stephen Rose, violin/Cleveland Orchestra, Daniel Foster, viola/National Symphony Orchestra, Raphael Figueroa, cello/Metropolitan Opera Orchestra, Alexander Hanna, double bass/Chicago Symphony Orchestra, Timothy Hutchins, flute/Orchestre symphonique de Montreal, Nathan Hughes, oboe/Metropolitan Opera Orchestra, Stephen Williamson, clarinet/Chicago Symphony Orchestra, Daniel Matsukawa, bassoon/Philadelphia Orchestra, William Caballero,horn/Pittsburgh Symphony Orchestra, Mark J. Inouye, trumpet/San Francisco Symphony, Denson Paul Pollard,trombone/Metropolitan Opera Orchestra, David Herbert, timpani/Chicago Symphony Orchestra
佐久間晃子(PMFピアニスト)

〈Program〉
 ロドニー・ニュートン:3つのバス・ダンス(*世界初演)
 クーツィール:トランペット、トロンボーンとピアノのための協奏曲 作品17
 ヒナステラ:フルートとオーボエのための二重奏曲 作品13
 シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 D.803

第1曲はコントラバスとティンパニ。「バス・ダンス(Basse Dance)」は15,16世紀に人気のあった威厳に満ちた踊り。作品名に演奏する楽器がかけられている。5分強の曲。面白い楽器の組み合わせで、奏者が同じオーケストラ所属であることに注目した。アレクサンダー・ハンナはPMF初参加。

PMFにはイノウエは9回目、ポラードは7回目で気の合ったブラス・セクションのファカルティ。15分強の3楽章構成の曲。力強いピアノ伴奏を得て2人は息継ぎの大変な演奏曲を魅力的に吹いた。聴きごたえのある曲だった。

最初の2曲の作曲家名は初めて耳にするが、ヒナステラは何となく聞いたことがありそうな名前。南米の作曲家らしい名。フルートとオーボエのための二重奏曲は馴染んではいないがPMFの演奏会で数度は聴いている。2年前のモントリオール響の札幌公演でハッチンズとバスキンが世界一流のコンビと知った。PMFアメリカにカナダのオーケストラの重鎮ハッチンズが加わって新鮮さと重厚感が出た。ヒューズもPMFには初参加。
木管楽器の室内楽の方が聴きやすいのは好みのせいだろう。

後半のプログラムは「OCTET for Clarinet, Horn, Bassoon, String Quartet and Contrabass」。ベートーヴェンかシューベルトの七重奏曲か八重奏曲を以前に聴いたことがあった。演奏に1時間もかかったので、記憶とは違っていたようだ。室内楽で1曲1時間かかる曲はコンサートで聴いた記憶がない。
デイヴィッド・チャンはメトロポリタン歌劇場管のコンサートマスターでPMFには6回目の参加。ローズ、フォスター、カバレロは10回目、最多参加マツカワは16回目。弦楽器奏者5人と木管・金管奏者3人による八重奏曲。6楽章構成で演奏時間60分の大曲。聴きごたえのある曲で聴衆を魅了した。何となく聞いたことのある親しみのある曲ではあった。
演奏終了後にアカデミー生から沸き上がった歓声で会場の雰囲気も盛り上がった。
JRの一部区間不通のためか空席が少々目について鑑賞できなかった人には気の毒であった。

帰宅して調べてみるとシューベルト(1797-1828)が1824年に八重奏曲を書いていてCDを所有していることが分かった。探したCDが見つからずに時間を要した。室内楽のコーナーにはなくて、D・オイストラフの10CDのうちの1枚に収められていた。まさかヴァイオリン協奏曲やピアノ三重奏曲以外にoctetが収録されていることに気づかなかった。購入時に必ず一度は聴いているので3年前には耳にしていたことになる。(EUでの制作で原盤の録音年は1955年)。

※新聞夕刊でピアニスト中村紘子が亡くなったことを知って衝撃を受けた。彼女がガンを患って入退院を繰り返していたことは承知していたがリサイタルを再開して安心していた。《「音楽の友」8月号》の連載も読み終えたばかりだった。
彼女は中学3年時の1959年日本音楽コンクール第1位。翌年N響の初の海外ツアー(70日間世界1周)にソリストとして同行。65年ショパン国際コンクール第4位入賞。ピアニストとして国際的な活動を繰り広げるだけでなく、文才を発揮した。「チャイコフスキー・コンクール」、「ピアニストという蛮族がいる」の2作の連続受賞で話題を呼んだ。彼女は指導者として浜松国際ピアノコンクールを世界的なコンクールに育て上げ、音楽界に多大な貢献を果たした。彼女のCDは5・6枚は所有していて、彼女のコンサートも89年から9回聴いてきた。2年前のデビュー55周年コンサートを聴いたばかりで次回を楽しみにしていた。
惜しい人材を亡くした。心から冥福をお祈りします。





PMFオーケストラ演奏会(ジョン・アクセルロッド指揮、ドビュッシー「海」、マーラー第4番)

《PMFオーケストラ演奏会〈プログラムA〉》

PMF2016アカデミーの応募者総数はは58ヶ国・地域から1056人で、選抜されたアカデミー生は27ヶ国・地域から97人だそうである。PMFオーケストラ・アカデミー・メンバーは90人。
首席指揮者はジョン・アクセルロッド(John Axelrod)は1988年ハーバード大学卒業。指揮をバーンスタインに学ぶ。ルツェルン交響楽団・歌劇場の音楽監督兼首席指揮者、フランス国立ロワール管弦楽団音楽監督を歴任。現在、スペイン王立セヴィリア交響楽団音楽監督、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団首席客演指揮者。これまでライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、パリ管、ロンドン・フィル、ロサンゼルス・フィル、フィラデルフィア管、シカゴ管、N響など世界各地の数多のオーケストラに共演。PMFには初めての参加。

2016年7月24日(日) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
 
出演/ ジョン・アクセルロッド(指揮)、今野沙知恵(ソプラノ)、PMFヨーロッパ、PMFオーケストラ

〈Program〉
 ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
 ドビュッシー:交響詩「海」
 マーラー:交響曲第4番 ト長調

ワーグナー(1813-83)自身が北欧伝説を基に台本を書いたオペラ。幽霊船のオランダ人船長が純愛を誓った少女の犠牲によって永遠の救済を得た物語。「序曲」はドラマティックな展開で起伏に富んだストーリーが描かれる。極めてダイナミックで力強い演奏が展開された。

ドビュッシー(182-1918)が1905年に書き上げた作品。初版譜の表紙に葛飾北斎の“富岳三十六景”の浮世絵を使ったことで知られる。自己所有のCDのカバーにも描かれている。ドビュッシーはピアノ曲を多く残していて、管弦楽曲は比較的少ない。印象派の絵画を写したかのような色彩感と幻想的な雰囲気を持つ作品。久しぶりに聴いて曲の素晴らしさを味わった。12年前のベルリン・フィルの札幌公演で聴いた「海」を思い浮かべた。
3つの交響的スケッチ。第1曲は「海の夜明けから真昼まで」、第2曲は「波の戯れ」、第3曲は「風と海との対話」。タイトルだけで状景が浮かび上がる。
ピアノ曲で通常聴くドビュッシーとは違って大胆な曲調。ドラマティックで起伏に富んだ曲となって彼のオーケストレーションは凄いと思った。

オーケストラはヴァイオリンとチェロの対抗配置。3管編成。木管12、金管13、打楽器 6、ハープ2の編成は迫力があった。友人と一緒にオーケストラのサウンドを楽しむために2階CB2列の正面の座席からダイナミックな演奏を堪能できた。座席を取ってあげた友人から何度も感謝の言葉をもらった。
ドラマティックな演奏でステージ上のオーケストラ・メンバーの動きが全体的に見渡せる絶好の席。各奏者の活躍ぶりが充分に見て取れた。経験豊富なアクセルロッドの指揮ぶりでオーケストラも若いエネルギーを出して全力で曲を作り上げている感じがして安定感もあった。

マーラー(1860-1911)は死の影が漂う曲が多くて彼の曲の良さは充分に理解できていない。数年前に比べると鑑賞力が高まってきているように思う。最近は「第4番」が非常に聴きやすいと感じている。2ヶ前の札響定期でも聴いたばかりだが、快活で爽やかな旋律を通して明るい前向きな曲として気軽に楽しめる曲になっている。
4楽章構成でマーラーの作品としては小規模な楽器編成。第4楽章で“天国の暮らし”を歌うソプラノ独唱が入る。
ソプラノ独唱は今野沙知恵(Sachie Konno)は桐朋学園大学に学び、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院に留学。2014年、新国立劇場オペラ研修所修了後にドイツ・ニュルンベルクで研鑽を積んだ。PMFには2回目の参加。

最終楽章はソプラノとオーケストラの歌曲という性格を持つ楽章で“天井の楽しい生活”を歌う今野の美しい歌声がホールに響き渡った。
マーラー「第4番」の演奏にはPMFヨーロッパの教授陣が出演して、PMFオーケストラの演奏に一層厚みが加わったように思った。

例年ひとりでコンサートを聴いているが今日はプログラムに合わせて座席を選び友人と一緒に鑑賞できて自分でも非常に満足した。Kitaraはどの席でも良い音楽を楽しめるが、この2・3年はオーケストラや曲目などによっていろいろ座席を変えている。鑑賞中も同じだったが、終了後の満足感が何とも言えない。コンサートで度々顔を合わす友人からの繰り返しの感謝の言葉に“鑑賞の仕方”も画一ではないと感じた。


PMF無料コンサート

PMFは1990年の創設から27年目に入ったが、近年は野外コンサートだけでなく屋内で行われるコンサートの無料公演が増えてきている。3週間余りにわたって繰り広げられる音楽祭で約半分の公演が無料である。室内での公演は定員があって混み合うので今までに参加したことはなかった。
今年は時計台コンサートや豊平館コンサートは魅力的で開場時間には長蛇の列が出来そうである。〈フリーコンサート〉はPMFで学ぶアカデミー生たちがレッスンの成果を示す場でもある。
私はKitara小ホールで行われる《オープン・ドア・コンサートⅡ》に行ってみたくなった。ハープの演奏をぜひ聴いてみたいと思った。

開演20分前には会場に着いた。Kitara会員対象の先行発売のチケットを購入してからホールに入って間もなく1階343の客席は満席となってしまった。2階は使われなくて入場できない人が多く出たようであった。

2016年7月23日(土) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈出演〉 PMFオーケストラ・メンバー、ミヒャエル・ブラーデラー(double bass)PMFウィーン、安楽真理子(harp)PMFアメリカ
〈Program〉
 シュルホフ:フルート、ヴィオラとコントラバスのための小協奏曲
      Haruyo Ohira、Japan (flute)、Howard Cheng、Taiwan (viola)、Sebastian Zinca、USA (double bass)
 バックス:フルート、ヴィオラとハープのための悲歌三重奏曲
      Hyunseo Cheon、Korea (flute)、So Hyun Chung、Korea (viola)、Sonia Bize、France(harp)
 ラヴェル(エスコサ編):マ・メール・ロワ より 「眠れる森の美女のパヴァーヌ」、「親指小僧」、「パゴダの女王ドロネット」、「妖精の園」
      Mariko Anraku、Metropolitan Opera Orchestra (harp)、Sonia Bize (harp)
 サルゼード:古代様式の主題による変奏曲 作品30
      Mariko Anraku (harp)
 フランセ:バロック風二重奏曲
 フォーレ(ツィンマーマン編):夢のあとに
 サン=サーンス:白鳥
      Michael Bladerer、Wiener Philharmoniker (double bass)、Mariko Anraku (harp)

最初は4楽章構成で20分弱の曲。フルート奏者(大平治世)は第2楽章でピッコロに持ち替え第4楽章の冒頭でもピッコロで演奏した。コントラバスは小ボールで使われることは比較的に少ないので楽器の大きさを改めて感じた。
第2曲は10分弱の単一楽章の曲。ハープの奏でる悲しみに満ちた旋律が切ない感じを出していた。

子供のためのピアノ連弾曲として書かれた《マ・メール・ロワ》はオーケストラ組曲として演奏される機会が多い。解りやすい曲想で神秘的な世界に誘い込まれた。ハープの美しい音色に導かれでフィナーレは別世界に連れて行かれたようだった。

安楽のハープ・ソロは魅力的な演奏で素晴らしかった。天使のような清らかな澄んだ音色は他の楽器では表現できない美しさを醸し出していた。

最後にハープとコントラバスの共演を存分に楽しめた。予定されていた曲のほかにチェロで聴く機会の多い「夢のあとに」と「白鳥」を聴けたのが凄く良かった。チェロが出す音をコントラバスが奏でるのに何の違和感もなかった。世界一流の演奏を聴けた満足感を味わった。休憩のない75分がアッと言う間に過ぎた。有料でも聴くに値するコンサートになった。

※オープン・ドア・コンサートは入退場自由となっていたが、今日のようなコンサートでは中途で退場する人が少なくて空席待ちの人が僅か十数人入場できただけで大部分の人は折角会場に来て鑑賞できずに終わったのは気の毒であった。














    

PMFベルリン演奏会

2016年7月22日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara 小ホール

出演/ PMFベルリン(Members of the Berliner Philharmoniker)
アンドレアス・ブラウ(flute)、ジョナサン・ケリー(oboe)、アレクサンダー・バーダー(clarinet)、フォルカー・テスマン(bassoon)、サラ・ウィルス(horn)、タマーシュ・ヴェレンツェイ(trumpet)、シュテファン・シュルツ(trombone)
*ブラウは前ベルリン・フィル首席奏者、テスマンはベルリン音楽大学教授。ケリーとテスマンはPMFには初めての参加。

    佐久間晃子(PMFピアニスト)

〈Program〉
 モーツァルト(シェーファー編):歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」によるハルモニ―ムジ―クから 6曲 〔木管五重奏版〕
 テレマン(ギュンター編):協奏曲 ヘ短調 TWV51:f1 [トランペットとトロンボーン〕
 ベートーヴェン(レヒトマン編):弦楽五重奏曲 変ホ長調 作品4 〔木管五重奏版〕
 ヒルドガード(マルバッド編):コンチェルト・ボレアリス〔バス・トロンボーンとピアノ〕
 リスト(ドクシツェル編):コンソレーション 第3番 〔トロンボーンとピアノ〕
 ドビュッシー(リンケルマン編):「子供の領分」から 3曲 〔木管五重奏版〕
 ピアソラ(シェーファー編):「タンゴの歴史」から 2曲 〔木管五重奏版〕 

モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」は「フィガロの結婚」と並んで彼の喜劇的ブッファの代表作。オペラは他愛もないストーリーが多いが、“女はみんなこうしたもの”の意味のこの歌劇も荒唐無稽な物語。演奏会形式も含めて今までに2・3度オペラ上演を観る機会もあった。「序曲」はCDで度々聴いている。編曲ものとはいえ耳慣れたメロディで心地よく聴けた。

ベートーヴェンの弦楽五重奏曲は2・3曲書かれているようだが聴いたことはない。弦楽曲が管楽器で演奏されると曲の印象がかなり変わる。フルートが第1ヴァイオリン、チェロのパートは何かな?と想像を巡らせながら聴いた。
演奏終了後に“ブラヴィー”の声が上がった。“ブラヴォー”の声も聞こえたが、力強い“ブラヴィー”の掛け声が数度続いた。多分イタリア人だろうと思った。PMFの演奏会で数年前に初めて耳にした言葉、“ブラヴィー(Bravi)”。男女混合の複数のアーティスト対象に使われる。プログラムで確認するとイタリア出身のファゴット奏者と思われた。(*イタリアでは男性に“Bravo”、女性に“Brava”) 

会場にはPMFアカデミー・メンバーの姿も見えた。休憩時間中のホワイエでPMFウィーン教授陣3人がコーヒーを飲みながら談笑している姿も目にした。国際音楽祭の雰囲気が漂う会場に何となく心も躍る。

トロンボーン奏者のシュルツは2006年以降5回目のPMF参加。4楽章から成る20分ほどのトロンボーンの大曲を熱演。小ホールに鳴り響くトロンボーンの豪快な演奏を久しぶりに耳に出来て良かった。

トランペット奏者のヴェレンツェイは2006年以降9回目のPMF参加でベルリン・フィル奏者として一番参加回数が多くて顔なじみの教授。彼の選んだ曲はリストの有名なピアノ曲。“慰め”の意を持つ「コンソレ―ション」6曲中の「第3番」。原曲はショパンのノクターンに似た雰囲気がしたが、トランペットでは曲調が違ったが吹き続けるのは難曲と思われた。5分程度の曲をいつもとは違った鑑賞で楽しめた。(*Kitaraのボランテイアで彼の追っかけをしている女性がいる。)

木管奏者による最後の2つのプログラム。
ドビュッシーの6曲のピアノ組曲から3曲。彼の娘に捧げられた小品集から編曲された曲が楽しい。3曲中でゴリウォーグの人形がケークウォークで躍る姿が5つの楽器で表現され生き生きとした音楽となっていた。聴き慣れたメロディでも人形が楽しく踊っている様子が想像できて非常に面白かった。
ピアソラの1900年と1960年作のタンゴなのだろう。南米のタンゴの調べが会場の雰囲気を高揚させて再び“ブラヴィー”の声があがって盛大な拍手。
演奏終了後にホルン奏者のサラ・ウィリスが日本語で丁寧な挨拶。彼女はPMFには14年から3回目の参加だが、明るい性格で毎回リーダーとして振る舞い元気溌剌とした様子で周囲を楽しませている。
アカデミー・メンバー(パーカッション2名)を加えてのアンコール曲は「アブレウ:ティコ・ティコ」。3名がサングラスをつけての演奏でサービス満点。サラはエンタテイナーの要素を備えたアーティストと言えよう。

※オーボエ奏者Jonathan KellyはPMF初登場ではあるが、オーケストラメンバーとしてKitaraのステージには何度か登場している。2002年9月バーミンガム市響、2004年11月ベルリン・フィルのメンバー、2016年2月ベルリン・バロック・ゾリステンと共演。彼のような偉大な演奏家がソリストとして来札している時は忘れるはずもないが、楽団員としてKitaraのステージに上がっている音楽家は意外と他にも多くいるように思った。



 
 

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PMFウィーン弦楽四重奏演奏会

2016年7月18日(月・祝) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

出演/PMFウィーン(Members of the Wiener Phiilharmoniker)
    ライナー・キュッヒル(violin Ⅰ)、ダニエル・フロシャウアー(violinⅡ)、
    ハンス・ペーター・オクセンホーファー(viola)、エディソン・パシュコ(cello)
*パシュコはPMF初参加。他の3名は4年連続の参加。オクセンホーファーは前ウィ-ン・フィル奏者。

〈Program〉
 ハイドン:弦楽四重奏曲 ヘ長調 作品77-2「雲がゆくまで待とう」
 シューベルト:弦楽四重奏曲 第9番 ト短調 D.173
          弦楽四重奏曲 第12番 ハ短調「四重奏断章」 D.703
 ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 作品110

ハイドン(1732-1809)が生涯にわたって書いた弦楽四重奏曲は全部で68曲。6曲ずつセットで書かれた作品が多いが、この作品は最後から2番目に作られた2曲セットの曲。ハイドンの弦楽四重奏曲で最も有名な「皇帝」はメロディに親しんでいるが、他の曲はあまり馴染みでない。実際に聴いてみると親しみやすい曲も沢山ある。演奏曲はタイトルが付いていて場面を連想しやすかった。

シューベルト(1797-1828)も短い生涯の間に約30曲の弦楽四重奏曲を作曲したと言われるが、失われた作品も多いそうである。初期の作品は家庭音楽的なものだったようである。「第9番」はハイドンやモーツァルトの影響から脱してロマン派的な傾向を持つ作品に感じられる。「第12番」は第1楽章のみの曲。過渡期の作品で弦楽四重奏曲の曲作りにシューベルトが悩んでいたのかも知れない。完成された作品として8年ぶりとなる第13番「ロザムンデ」と第14番「死と乙女」の2作は彼の代表作として演奏される機会が多い。

ショスタコーヴィチ(1906-1975)は交響曲の数と同じ15曲の弦楽四重奏曲を遺している。1960年に作曲された弦楽四重奏曲「第8番」は「ファッシズムと戦争の犠牲者の思い出に」捧げられた。冒頭の4つの音による主題が中心で5楽章全体に繰り返して現れる。4つの音はショスタコーヴィチの頭文字(DSCH)をドイツ語表記した時のアルファベット(DE♭CH)に当たる。彼の苦しみ、悲しみが伝わってくるようだった。
今年はショスタコーヴィチの生誕110年に当たるが、生誕100年の2006年から彼の交響曲を集中して聴くようになった。弦楽四重奏曲もエマーソン弦楽四重奏団のCDで聴き始め、コンサートで聴く機会も増えてボロディン四重奏団の2枚入りCDも手に入れた。何年経ってもショスタコーヴィチの音楽は鑑賞が難しいと思っていたが、少しづつ鑑賞力も高まった。
本日の演奏に備えて数度CDで耳にしたこともあり、PMFウィーンのレヴェルの高い迫力のある演奏のお陰もあって曲の素晴らしさを味わえて感動を覚えた。ショスタコーヴィチの音楽が身近に感じられたのは今までにない事であった。この曲の作曲前年の1959年に彼が無理やり共産党員にさせられた状況の中で、人生を振り返って旧作4曲のメロディも盛り込み3日間で一気に書き上げたと言われる。彼の自伝的作品を通して戦争の悲劇、悲惨さを感じた。

演奏中は常に真剣で気難しい表情のキュッヒルさんも演奏が終った途端に見せた笑顔はとても印象的だった。妻と友人と一緒に3人で3列目で鑑賞したが、こんなに前の列に座るのは珍しいが違和感は無かった。

アンコールに「日本民謡に基づくメロディ」を演奏した後、コントラバス奏者ブラーデラーの予想外の登場に客は大喜び。「チャイコフスキー:弦楽セレナード 第2楽章 ワルツ」の演奏で会場に一瞬ウィーンの華やかな雰囲気が広がった。

特別な午後のひと時を過ごせた想いに浸ってホールを後にして外に出た。友人に挨拶をしようと振り返った途端に一昨日芸術の森で出会った女性の姿が目に入った。アナさんと目が合ってお辞儀をしたら彼女が手を振ってお互いを確認した。彼女が私の名を口にして近づいてきた。私も彼女の通称“マレ”さんと言って奇遇を喜んだ。今回は日本語で会話したが、彼女はウィーンでカルテットを組んで活動しているとのことだった。“またお会い出来るといいですね”と言って別れた。良い出会いが2回もあった。いいことは3度あるかもしれないと思った。

[追記〕 弦楽四重奏によるアンコール曲は「佐渡おけさ」と発表されているが、曲の主なメロディは《あんたがたどこさ》であった。作詞・作曲不詳の童謡として親しまれている。
子供の時に親しんだ歌詞は次の通り。“あんたがたどこさ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ せんば山には狸がおってさ それを猟師が鉄砲で撃ってさ 煮てさ焼いてさ食ってさ それを木の葉でチョイトかぶせ”。
熊本市船場地区が舞台の日本のわらべ歌とされているが、異説もあるようである。熊本にまつわる歌には違いない。
日本の歌をかなり編曲して西洋的な解釈をした曲になっていて興味深く聴いた。

PMF2016 オープニング・コンサート

札幌の夏を彩るクラシックの祭典PMF(Pacific Music Festival)が始まった。今年で第27回目のフェスティバルになるが昨年から恒例のセレモニーが無くなって正味2時間の中身のあるコンサート。

会場の札幌芸術の森には地下鉄とバスを利用して出かけた。シャトルバスの中で思いがけないことがあった。バスに乗って立っていた時にかなり離れた席に座っていた外国人と思われる女性が合図してきて“どうぞ”と言って席を譲ってくれた。しばらくして日本語と英語で“話しかけてもよろしいですか?”と声を掛けた。オーストリアのヴァイオリニストだった。ウィ-ン・フィルのキュッヒル、シュトイデ、フロシャウアーさんらの名を上げたら、フロシャウアーさんは彼女の友人だという。1990年からPMFを楽しんでいると話すと、“バーンスタインを見たことあるの?”と確認して羨ましそうだった。今回の来札は3度目になるという。音楽の話しで10分ほどの時間がアッという間に過ぎた。Annaさんは日本語も解るようだったので下車するときに日本語で再度お礼の言葉を述べて別れた。

コンサートの前に気持ちが明るくなる出会いがあって良かった。ピクニックコンサートでは時には寝転んで気軽に聞ける芝生席を好んでいる。オープニングコンサートでは雨の心配もあって招待席の椅子席で鑑賞するのが常である。出演者がまじかに見えて違う鑑賞の仕方が出来る。

2016年7月16日(土) 13:00開演  札幌芸術の森 野外ステージ

出演/ ウィーン・フィル弦楽器奏者4名、ベルリン・フィル木管楽器奏者5名、
    原田慶太楼(指揮)、PMFオーケストラ、新井田有希子(司会)
〈Program〉
 ハイドン:弦楽四重奏曲 ヘ長調 作品77-2「雲がゆくまで待とう」
 モーツァルト(シェーファー編):歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」によるハルモニームジ―クから 〔木管五重奏版〕
 ドビュッシー(リンケルマン編):「子どもの領分」から 〔木管五重奏版〕
 ピアソラ(シェーファー編):「タンゴの歴史」から 〔木管五重奏版〕
 バーンスタイン:「キャンディード」序曲
 ドビュッシー:交響詩「海」から第2楽章 「波の戯れ」
 ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
 ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲

PMFヨーロッパとPMFオーケストラメンバーによるファンファーレで華やかに開幕。司会者がPMF教授陣をステージで紹介した後、直ちにコンサートが始まった。

ハイドンの弦楽四重奏曲は《PMFウィーン弦楽四重奏演奏会》の曲目からの1曲。タイトルも興味深く野外で空を見ながら鑑賞できて面白かった。演奏後にコントラバス奏者が加わってアンコール曲として「チャイコフスキー:ワルツ」が演奏され心が躍るような雰囲気に包まれた。 

《PMFベルリン演奏会」のプログラムから3人の作曲家の作品の木管五重奏版。歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」は「序曲」を含め馴染みのメロディの5曲。ピアノ組曲「子供の領分」の木管五重奏版はとても面白かった。特に「ゴリウォーグのケークウォ―ク」は印象が強烈で原曲よりも面白いと思った。2月のKitara公演を聴き逃していたオーボエのジョナサン・ケリーに注目した。ホルンのサラ・ウィリスは相変わらず楽しい雰囲気を振りまいて皆をまとめている。

オーケストラの演奏前にトイレタイムを取って、司会者が指揮者にインタヴュー。原田慶太楼(Keitaro Harada)は2011年PMFコンダクティング・アカデミーに参加。その後、研鑽を積み2015年シンシナチ響のアソシエイト・コンダクターに就任。アメリカを拠点にして活動を続け、11年にはオペラ・デビュー。14年には新日本フィルに客演。
大植英次、佐渡裕などPMFに携わって世界的に活躍している指揮者がいるが、現在の日本の若手指揮者として活躍中の川瀬賢太郎は07-09年PMFでアシスタント・コンダクターを務めた。

《PMFオーケストラ演奏会〈プログラムA〉》の演奏曲を含め4曲が演奏された。原田は勢いのある勇ましい音楽が得意らしく、身体全体を大きく使って若手らしい表情豊かなダイナミックな指揮ぶり。バーンスタインへの想いがこもった指揮ぶりにオーケストラも応えて現代名曲の演奏に新鮮味があった。序曲は2曲ともドラマティックで壮大な音楽で開幕を飾るに相応しい迫力のあるコンサートを締めくくった。

曇り空を吹き飛ばすような力強い演奏に芸術の森を埋めた数千名の聴衆からブラヴォーの声が湧き上がって空に広がった。

玉置浩二 プレミアム・シンフォニック・コンサート 札幌公演

旭川出身の歌手、玉置浩二が札響と共演したニュースを耳にしていた。本人が“両親も演奏会に来て喜んでくれて一番の親孝行になった”という話をたまたま小耳にはさんでいた。
先月、妻の誕生日が近づいた時に東京に住む娘が“母の誕生日祝いと父の日の祝いを兼ねて両親に玉置浩二のコンサートのチケットをプレゼントしたい”という申し出があった。娘は旭川で生まれ、歌手と同じ中学出身ということもあり玉置のファンで東京でのコンサートを楽しんだようであった。私はクラシック音楽の大ファンであり、音楽は何でも好きな方である。ただし、クラシック以外のジャンルのコンサートに出かけることはめったにない。高額な料金を払ってまで鑑賞はしないポピュラーコンサートではあるが、娘のプレゼントを喜んで受けた。

KOJI TAMAKI Premium Symphonic Concert
~21st Century Renaissance~

2016年7月14日(木) 19:00開演  ニトリ文化ホール(札幌芸術文化の館)

指揮/ 柳澤 寿男(Toshio Yanagisawa)   管弦楽/ 札幌交響楽団

柳澤という名の指揮者はコソボ紛争後に旧ユーゴスラヴィアを中心に活躍している日本人として知られている。コソボ・フィルの首席指揮者、バルカン室内管弦楽団音楽監督として戦場となったサラエボの地に音楽を響かせている日本人指揮者。彼の著書「歓喜の歌」に共鳴した玉置浩二が日本公演のオープニングテーマとして書き下ろした旋律でコンサートが始まった。

管弦楽曲「歓喜の歌」(*新制作オーケストラ作品)に続いて、オーケストラをバックに玉置浩二の演唱が前半は9曲。
「雨」、「恋の予感」、「あなたに」、「ロマン」、「SOS」、「キラキラニコニコ」、「MR. LONELY~メロディ」、「Friend」。

比較的に落ち着いた静かな曲で始まったコンサート。玉置は恋心を切なく歌上げた。厚みのある艶やかな歌声は聴衆を魅了した。歌詞が明瞭で聞き取りやすく聴く者の心に届く歌唱は素晴らしかった。恋多き男が語る言葉を聞くと女性は恋に落ちてしまうと思えるような歌。恋をし続けている男の人生が嘘っぽくなく心に届くのは不思議であり魔力のようである。

後半は管弦楽曲「ブラームス:ハンガリー舞曲第5番」の演奏で始まり、玉置の演唱曲は9曲。
「いつの日も」、「GOLD」、「To me」、「それ以外に何がある」、「行かないで」に続けて3曲「ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら」。最後の曲は「夜想」。


歌われた曲はほぼ玉置が好んでいると思われる旋律で心に届くものばかり。聴かせどころを心得た歌唱。予め知っていた曲のタイトルは「ワインレッドの心」だけだった。聴き終わって「悲しみよさよなら」も聞いたことのあるメロディだと思った。

1・2階の客席をギッシリ埋めた聴衆の大歓声は凄かった。特に演奏終了後にアンコールを求めてのスタンディング・オヴェイションはKitaraではめったに目にしない光景だった。立ち上がる人の数が半端でなかった。アンコールに演奏された「ベートーヴェン:田園」の管弦楽曲の旋律に続いて、玉置が彼独自の日本語の歌詞をのせて歌った。最後には殆ど全員が立ち上がって割れんばかりの大歓声に包まれるなかでコンサートは無事終了。コンサートに酔いしれている客が沢山いた。私自身も普段とは違った音楽に触れる時間を楽しんだ。最後の場面には少々抵抗はあったが、、、(座っているとステージが見えなくて最後には立ち上がった。)

※2015年に始まった玉置がオーケストラと共演するコンサートは今年は既に東京、大阪、京都、大宮で開催され、福岡、熊本、横浜でも予定されている。来年度以降も人気のコンサートとして定着するかもしれないと思った。

Kitaraのバースディ 19th Anniversary (オルガン・コンサート)

新旧専属オルガ二ストの共演で祝うKitaraの開館記念日

2016年7月9日(土) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

出演/ ジョン・ウォルトハウゼン(第17代)、 ローラン=シプリアン・ジロー(第12代)

〈Program〉
 J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ロ短調 BWV544、 白岩優拓(北海道作曲者協会):BIRTH Ⅲ~オルガンソロのための~、  ボナル:バスクの風景より “朝のベオルギーの谷”、 フランク:3つの小品より 「英雄的小品」 ロ短調
                        以上の演奏/ John Walthausen

 バリエ:オルガンのための3つの小品 作品7より “行進曲”、 ルフェビュール=ヴェリ:演奏会用ボレロ ト短調 作品166、 J.S.バッハ(ヴィドール編曲):フルートとチェンバロのためのソナタ第2番 変ホ長調 BWV1031より “シチリアーナ”、 ボネ:大オルガンのための12の小品より “風景” 作品10-9、 ギルマン:演奏会用小品 作品24
                         以上の演奏/ Laurent - Cypyien Giraud

メルケル:4手のためのオルガン・ソナタ ニ短調 作品30より Ⅰ.アレグロ・モデラート
 モーツァルト:幻想曲 ヘ短調 K.608                            
                             連弾

オルガン・ソロの作曲家で知っている名はバッハ、フランク、ヴィドールだけ。フランク(1822-90)はパリ音楽院在学中にオルガン曲の才能が充分に評価されなかったが、後にパリ音楽院教授となって偉大な足跡を残した。彼のヴァイオリン・ソナタはコンサートで演奏曲目になることが多い有名な作品。今までもオルガン・リサイタルでフランクの作品を聴く機会があったが、今回演奏された「英雄的小品」は迫力ある曲調と抒情的な旋律が組み合わさった極めてドラマティックなオルガン曲で強く印象に残った。1878年のパリ万国博覧会でフランク自身のオルガン演奏で初演されたそうである。フランクはオルガ二ストとしても名を馳せた。

北海道の新進作曲家の作品は理解が難しかった。曲に様々な技巧が施された作品らしいが音楽の知識が足りないためか、曲の良さを解らずに想像力も働かないうちに終った。

ローラン=シプリアン・ジローは1982年、フランス・ニース生まれ。09年9月~10年8月、第12代札幌コンサートホール専属オルガニストを務めた。現在、ニ―スのノートルダム教会堂専属オルガ二スト。ラジオのパーソナリティーとしても活躍中。

「演奏会用ボレロ」は聴いていると思わず身体が浮き立つほどの魅力にあふれたダイナミックな曲。ヴィドールがバッハの器楽曲を編曲した曲集《バッハの思い出》の中の1曲「シチリアーナ」も魅力的な音楽だった。

1曲が4・5分程度の小品4曲の後に演奏された最後のソロ「演奏会用小品」は15分程度の交響的形式の作品。“コンサートのための”作品は卓越した演奏テクニックが散りばめられて聴く者を惹きつける。
後半のプログラムでオルガンコンサートも盛り上がった。ジローさんは在任中と比べて聴衆を喜ばせるプログラミングも一段と巧みになったようである。

連弾の前に2人のオルガ二ストが日本語で挨拶して一層会場が和やかな雰囲気になった。
モーツァルトの珍しいオルガン曲である〈自動オルガンのための「幻想曲」〉は数年前にKitara専属オルガ二ストの女性2人が演奏した記憶がある。
盛大な拍手に応えてのアンコール曲は「ワグナー:ワルキューレの騎行」。聴き慣れたメロディが繰り返して出てきて客も大喜び。コンサートも大いに盛り上がって無事終了した。

第17代オルガ二ストのCD発売初日でサイン会があって人々が列に並んでいた。ホワイエにジローさんの姿が見えて近寄ると彼が私に気づいた。“お久しぶりです”と言って握手を求めてきた。6年ぶりの懐かしい再会であった。

※実はジローさんがKitara専属オルガ二スト在任中に私はKitaraボランティアとして彼の日本語サポート活動に携わっていた。一年間に十数回、彼に日本語を教えていた。彼の言語習得能力は目覚ましく簡単な日本語では物足りなくて結構高度なレベルで学んでいた。平仮名、片仮名はすぐに覚え漢字も平易な漢字は覚えた。日本の文化として47文字から成る「いろは歌」にも触れた。今、思い出しても懐かしい。“色は匂へど散りぬるをわが世誰ぞ常ならむ有為の奥山今日越えて浅き夢見し酔ひもせず”を英語に訳して説明するために私自身も勉強したものだ。仮名が漢字の楷書体から草書体への変換で作られたことも具体的にいくつかの例で学習したことを懐かしく思い出している。毎月1回は会っていたので彼からも様々な刺激を受けていて思い返すと懐かしいことが沢山ある。教えることで自分も学んでいたのである。
コンサートがある度に過去と現在を結び付けてブログに綴っている。脳を活性化させる一助にもなっていると思って続けている。

スーパーガラコンサート  ロイヤル・バレエ in Sapporo

バレエを観たのは世界のプリマ・ドンナのマイヤ・プリセツカヤの来札公演があった時(1989年4月)が初めてであった。スペイン国立クラシックバレエ団と「カルメン組曲」、「白鳥の湖第2幕」が出し物だった。
90年4月はチャイコフスキー記念東京バレエ団創立25周年記念特別公演として、ジョルジュ・ドンの「ボレロ」。これは極めて独創的なバレエで今もその光景が眼前に浮かぶ印象的な公演であった。次いで91年は国立モスクワ音楽劇場バレエ「白鳥の湖」(プロローグ、エピローグ付全4幕)。
10年ほど後の2000年12月、レニングラード国立バレエ「くるみ割り人形」。07年11月はキエフ・バレエ(=ウクライナ国立バレエ)の来札で「白鳥の湖 全3幕」、09年12月は同じキエフ・バレエ「くるみ割り人形」全2幕。6回目は特別な優待料金だったので繰り返しの出し物を楽しんだ。 

今回のバレエを観る切っ掛けになったコンサートが先月行なわれた《トランス=シベリア芸術祭》のコンサート。札幌会場ではバレエの演目はなかったが他の会場ではバレエを含むコンサートも行なわれていた。先月Kitaraのエントランスホール入り口で出会ったロシア語を話している背が高い若い美男子が上手な日本語で知人に挨拶をする場面を目にした。シベリアの関係者かと思ったが、手にしたバレエのチラシで札幌在住のロシア人のバレリーナらしいことが判った。
プレイガイドでチケットを購入して妻と一緒に鑑賞することにした。

 2016年7月7日(木) 開演:18:00  わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)

第1部 ジゼル/ 第2幕より
第2部 ガラコンサート
     ロミオとジュリエット バルコニー アダージョ(マクミラン版)、  白鳥の湖(*オリジナル作品)、 ラ・シルフィードより “ パ・ド・ドゥ”、 ドン・キホーテ 第3幕より “グラン・パ・ド・ドゥ” 他。

芸術監督:アナトーリ・スタブロフ(北海道インターナショナルバレエ・ダンスカンパニー プリンシパル)
バレエダンサーはオランダ国立バレエのプリンシパル、英国ロイヤルバレエのプリンシパル、英国ロイヤルバレエのソリスト3名と主催者の代表スタブロフを含む日本人ダンサー20名。

「ジゼル」というバレエ音楽のタイトルは知っていたが観たのは初めてで、第2幕だけで約1時間。見応えはあったが、ストーリーが解っているとより良く鑑賞できただろうと思った。貴族アルブレヒトと村娘ジゼルの恋物語。第2幕は森の中の墓の前で繰り広げられるロマンティックなバレエ。白い衣装の群舞も見事であった。

後半のプログラムは妙技が凝らされたバレエの名場面。
プロコフィエフのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」はデュトワ指揮N響による組曲の抜粋版はCDで偶々耳にしていた。ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場キーロフ響のバレエ完全版も手元にあることに今回気づいたが近いうちにその音楽を聴いておきたいと思う。
《白鳥の湖》から「4羽の白鳥」は久しぶり。美しい音楽と踊りの名場面を観て懐かしかった。このバレエの全曲盤はサヴァリッシュ指揮フィラデルフィア管のレコーディングで所有している。「白鳥の湖」の美しい音楽にはいつも心が癒される。
「ドン・キホーテ」はリヒアルト・シュトラウスの交響詩で知っていたがバレエ曲は初めて聴く。第3幕から数場面が踊られたが楽しさと活気あふれるバレエ。クラシックバレエの美しさとヴァラエィに富んだダンスが披露されて面白かった。

特に世界トップバレー団のプリンシパルやソリストたちによるダンスは今までに見たこともないような驚くべき高度なものだった。会場から素晴らしい高難度な演技が披露されるたびに拍手や歓声が何度も沸き起こった。アンナ・ツガンコーワ(Anna Tsygankova)とマシュー・ゴールディング(Matthew Golding)の踊りはオーラを放っていた。ステージいっぱいに繰り広げられる整然とした群舞も綺麗だった。
 バレエがメインで音楽がバックとはいえチャイコフスキーやプロコフィエフの音楽は音響にもっと一工夫があれば良かった。
とにかく各出し物での素晴らしい踊りには拍手が沸き起こり、酔いしれている観客も大勢いて盛り上がりのあるコンサートになったのは喜ばしい。ロシア人らしき外国人やバレエを習っていると思われる少女たちの姿も目について特徴のある催し物となった。





ベルリン交響楽団 札幌公演2016

旧東ベルリンに1952年に設立されたベルリン交響楽団(Berliner Sinfonieorchester)による初の札幌公演が行なわれたのが2001年11月であった。(指揮はエリアフ・インバル)。旧東ドイツが旧西ベルリンのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)に対抗するために創設したオーケストラとして知られた。1966年旧西ベルリン創立のベルリン交響楽団(Berliner Symphoniker)と混同されやすいので(*日本では全く同じ名称の日本語が使われていた)、2006年に名称がベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団に変更された世界の主要オーケストラである。

2002年の初来日以来、度々日本ツアーを行なっているベルリン交響楽団はベルリンのトップ・オーケストラではない。首席指揮者シャンバダールに率いられるベルリン響の演奏会は料金も比較的に安くて、プログラムも名曲ばかりで人気の公演になっているようである。私は4年前の札幌公演のソリストがイリヤ・カーラーだったので初めてこのオーケストラの公演を聴いた。聴衆を引き付けるシャンバダールの巧みな指揮ぶりに感心した。

Lior Shambadalは1950年、イスラエル生まれ。97年ベルリン交響楽団の首席指揮者に就任。イスラエル・フィル、バイエルン放送響、ミュンヘン・フィルなどにも客演。ベルリン響の海外ツアーでの活躍は顕著で今回は8回目の来日公演。
Ilya Kahlerは1963年、モスクワ生まれ。パガニーニ(1981)、シベリウス(1985)、チャイコフスキー(1986)国際コンクールの全てに優勝し世界の主要オーケストラと共演を重ねている。

2016年7月5日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 エルガー:愛のあいさつ
 ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」
 ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
 ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」

開場時の混雑ぶりからベルリン響の人気ぶりがうかがえた。会場を埋めた9割強の観客の期待度も高まっていた。
演奏に120分かかる3曲のプログラムに加えてオープニングに「愛の挨拶」が管弦楽曲として演奏された。間を置かずに「運命」。この1ヶ月で3度の「運命」に食傷気味のせいもあって、盛り上がらない平板な演奏に拍手をする気分にもならなかった。拍手をする人は勿論いたが盛大なものではなかった。楽団員も慌ただしく次の曲の準備に入っていた。

イリア・カーラーがステージに出てきて抒情的な旋律を奏でると彼の音楽に聴衆の耳が集中した。カデンツァも入っていたがオーケストラと呼吸を合わせ交響曲的な音楽を展開した。カーラーがオーケストラから引き出す音をバックにヴァイオリンが奏でる演奏は実に素晴らしかった。さすが世界のコンクールの覇者だった経歴を感じさせる演奏であった。
演奏終了後の聴衆の反応も大きく、傍でシャンバダールが見守るうちにアンコールに応え「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より“サラバンド”を演奏した。時計は8時半を指していた。

人気曲「新世界より」については改めて言及するまでもない。4年前より一層体格が良くなったのか、ネルロ・サンティを思わせる堂々たる体躯をしたリオン・シャンバダール。最後のドヴォルザークで力量を発揮した。聴衆も聴き慣れた美しいメロディに満足した様子で、演奏終了後にはブラヴォーの声も上がった
遅い時間(9時35分)になっていたが多分アンコール曲を演奏するだろうと思っていた。前回にアンコール曲の披露で強烈な印象を受けて人気の要因の一つと感じ取っていたからである。アンコール曲があったのは予想通り。ところが、巧みな日本語での挨拶にはビックリ!。“ありがとうございました。アンコールにエルガー:エニグマ変奏曲 二ムロッドを演奏します。”と言った。鳴りやまぬ盛大な拍手に聴衆を制して“おやすみなさい”の言葉に皆、大笑い。コンサート終了時間は9時40分。こんな遅い時間は極めて珍しい。家路に着く人々の姿は楽しい雰囲気に満ちていた。

※2004年11月に世界のトップ・オーケストラ、ベルリン・フィル公演を聴いた時の料金は42.600円。それだけの価値があったのか未だ判らない。今回の札幌での料金は¥10.500~¥6,000。オーケストラのレヴェルなどで料金が違うので料金の高低は一概に言えない。高い料金でもウィーン・フィルとベルリン・フィル札幌公演は常に完売でチケットを手に入れるのも困難な状況になる。需要と供給の関係に左右されるが音楽の質にこだわる専門家は別にして素人には今回のような料金で音楽を気軽に楽しめる機会が増えると良い面もある。(*今回の料金は各演奏地で違って¥11.000~¥5.000)
 

札響第591回定期演奏会(尾高惇忠の最新作とザ・グレイト)

~尾高惇忠の最新作とシューベルト最後の交響曲~

2016年7月2日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 尾高忠明(Tadaaki Otaka)  ピアノ/ 清水和音(Kazune Shimizu)

〈プログラム〉
 尾高惇忠:ピアノ協奏曲
 シューベルト:交響曲第8番 ハ長調 D.944 「ザ・グレイト」

尾高惇忠(Atsutada Otaka)は1944年生で忠明の兄。東京藝術大学作曲科卒業後に渡仏してパリ国立高等音楽院卒業。在学中
デュティ―ユらに師事。(*次回の札響定期はデュティ―ユ生誕100年記念プログラム)。日本の交響楽運動の先駆者でN響の前身である新響の指揮者として活躍し作曲家でもあった父・尚忠の息子。尚忠を記念して優れた作曲活動に対して贈られる《尾高賞》を2回受賞(82年、13年)している。作曲のジャンルは多岐にわたる。
2009年に札幌で開催された《第10回現代日本オーケストラの夕べ》を尾高忠明指揮札響を中心とするオールジャパン・シンフォニーオーケストラによる演奏で聴いたことがある。三善晃、武満徹、尾高惇忠、尾高尚忠の4作品。演奏会の印象は“近寄り難い特別なものではなく案外に身近に感じられる音楽”であった。惇忠の曲は〈オーケストラのための「肖像」〉(1993年)。

今回演奏されたピアノ協奏曲は日本フィルの委嘱作品で今年3月、サントリーホールで野田清隆のピアノ独奏、広上淳一指揮日本フィルによって世界初演。開演前に作曲者によるプレトークがあり、彼は多楽章でピアノとオーケストラの曲に取り組んだと言う。オーケストラとの関係でピアノの多様な可能性を試みたようである。3楽章構成で約30分の曲。聴き慣れたピアノ独奏と違って独奏部分に独特な工夫を凝らしていた。12種類の打楽器が使われていたのも特徴となっていた。

ピアノ独奏の清水和音は20歳で1981年ロン=ティボー国際コンクールに優勝。以来、順風満帆の勢いで活躍を続けている。Kitaraに初登場した2001年以降、彼の演奏を聴くのは6回目。2011年にデビュー30周年記念で札響と「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲全曲」を演奏した時の感動は忘れ難い。彼の魅力は思いきりの良いダイナミックな力強い演奏である。今日も聴衆の心を引きつける迫力ある打鍵が印象的だった。
名曲だけでなく珍しい作品を耳にするのも定期演奏会の良さである。そういう意味では今シーズンの札響のプログラムには新鮮さがあると感じている。

シューベルトの交響曲で「未完成」と「ザ・グレイト」は聴く機会が多い。それぞれ「交響曲第8番」、「交響曲第9番」とされていた。“Unfinished”は60年前から親しんでいる曲であるが、“The Great”は25年ほど前からである。所有している6枚のCDはいずれも古い番号つきで2002年ケンペ指揮ミュンヘン・フィルのSONY版(録音1968年)のみSINFONIE Nr.8(9) C-dur,D944“DIE GROSSE”となっていた。約20年前録音のムーテイ指揮ウィーン・フィルによる全曲盤には第7番は入っていない。国際シューベルト協会が1978年に第7番をシューベルトの作品から削除して、それまでの番号を変更して第8番と第9番の番号が繰り上がったとされる。長年の慣習で切り替えがうまく行かずに混乱していたようである。十数年前から統一されたように思われる。

長くて美しい旋律で曲が始まる。ホルン、トロンボーンが奏でる演奏は効果的である。第2楽章のオーボエの可憐で鄙びた旋律が印象的!第3楽章は舞曲的なスケツォで親しみやすい。第4楽章は長大なフィナーレ。指揮者によっては演奏時間が50分から60分で10分ほどの違いが出るがテンポの違いもあるだろうが繰り返しの差があるのかもしれない。
今日の演奏では聴いていて心地は良かったが第2楽章での繰り返しが多かったように感じた。全体的には久しぶりで聴く「ザ・グレイト」を楽しく聴けた。シベリウスの交響曲での指揮ぶりに比べて、尾高の指揮ぶりがダイナミックな感じが出ている印象を強く受けた。

海老彰子ピアノ・リサイタル

カワイコンサート KAWAI CONCERT 2016

カワイコンサートは低料金で一流ピアニストの演奏を聴けるので大変有り難い。先週の金曜日に次いで使用楽器はSHIGERU KAWAIのコンサート・グランドピアノSK-EX。海老彰子のピアノ・リサイタルを聴くのは初めてである。彼女は1991年5月札響定期に初登場。山田一雄指揮のべ^―ト―ヴェン・シリーズでピアノ協奏曲第1番を弾いた記録がある。その当時の記憶は定かでないが1980年ショパン国際ピアノコンクール入賞者でその名を知っていた。彼女は2015年第9回浜松国際ピアノコンクールの審査委員長を務めた。同コンクール優勝のアレクサンデル・ガジェヴのリサイタルが1週間前にKitara小ホールで開催されたばかりで珍しい現象である。日本を代表する国際的ピアニストによるフランス音楽の夕べを楽しみにしていた。

海老彰子(Akiko Ebi)は1953年、大阪生まれ。72年、東京藝術大学1年の時に日本音楽コンクールで第1位を獲得。渡仏してパリ国立高等音楽院でチッコリー二に師事し、最優秀首席で卒業。75年ロン・ティボー国際コンクール第2位、80年ショパン国際コンクールでは第5位に入賞し、当時の審査員アルゲリッチから高い評価を得て彼女の信頼が厚いと言われている。パリを拠点に活動して世界各地の音楽祭にも招かれている。2015年ショパン国際ピアノコンクールの審査員を務め、2012年以降の浜松国際ピアノコンクールの審査委員長も務めている。

2016年7月1日(金) 開演18:30  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 武満 徹:雨の樹 素描Ⅱ
 ドビュッシー:雨の庭《版画》、 オンディーヌ《前奏曲第2集第8曲》、
       金色の魚《映像第2集》、 水の反映《映像第1集》、 
       月の光《ベルガマスク組曲》、
       雪の上の足跡《前奏曲第1集第6曲》、西風の見せたもの《前奏曲第1集第7曲》
 ラヴェル:ソナチネ、 クープランの墓 

武満徹(1930-96)がオリヴィエ・メシアンに捧げた追悼曲。フランス音楽の影響を受けた作品に仕上がっている。

ドビュッシー(1862-1918)はフランス印象派音楽を確立した作曲家。印象主義派の画家たちが扱った変転する自然ーーー海、雲、風、雨、水などを音で生き生きと表現した。絵画的タッチで色彩が感じられる曲を作り、官能的な雰囲気を持つ作品もある。「月の光」はピアノ曲の中でも最も知られている作品。「金色の魚」は日本の漆塗りのお盆に描かれた金魚か緋鯉を見て作曲されたと言われる。
7曲は続けて演奏された。ホールを埋めた聴衆はピアニストの集中力を妨げることなく聴き入り、演奏終了後には力強いブラヴォーの声が客席後方から上がったが何か関係者の叫びだったような気がしないでもなかった。もっとも、素晴らしい演奏が展開されてドビュッシーの世界に引き込まれた聴衆が満足したことは確かである。

ラヴェル(1875-1937)のピアノ独奏曲はそれほど多くはない。「亡き王女のためのパヴァーヌ」や「水の戯れ」など今日コンサートで演奏される機会の多い作品はパリ音楽院時代に発表されていたが彼の作曲能力は当時の教授陣からは評価されなかった。ローマ大賞を取れなくて“ラヴェル事件”が起こった話は有名である。
1905年に作曲された「ソナチネ」はラヴェルの出世作となった。3楽章構成の小規模なソナタ形式の曲。古典的ではあるが循環形式が採られ無駄な音のない簡潔な作品。

組曲《クープランの墓》はラヴェルの最後のピアノ独奏曲。1914年に着手したが兵役のために中断して1917年の除隊後に完成された。クープランに代表される18世紀フランス音楽を称えた6曲から成る曲。曲は第一次世界大戦で亡くなった友人に捧げられている。第1曲「前奏曲」、第2曲「フーガ」、第3曲~第5曲は舞曲、第6曲「トッカータ」。
4曲から成る管弦楽曲は演奏会で数回は聴いているがピアノ曲は初めて。第6曲の力強い演奏は一層聴きごたえがあった。高度な演奏力が求められそうな曲でピアニストの手の動きが見えて迫力あるフィナーレを楽しめた。

ドビュッシーとは少し違う色合いのフランス音楽を肌で感じた。ドビュッシーの影響を受けながらも独自の音楽作りを行なったラヴェル。2人のピアノ曲を心から堪能できたコンサートだった。パリを拠点にして活動する海老彰子の本領が発揮されたリサイタルとなった。

万雷の拍手を浴びてピアニストは来場の聴衆に感謝をして熊本応援のメッセージを述べた。アンコール曲を4曲弾いた後で、2015年ショパン国際ピアノコンクールで使われたピアノに魅せられたのか、“長めの曲を弾いてもいいですか?”と言って5曲目を演奏した。アンコール曲は全てショパンの曲。
①ノクターン第4番 op.15-1  ②ワルツ第3番「華麗なる円舞曲」 op.34-2 ③即興曲第3番 op.51 ④幻想即興曲 op.66 ⑤バラード第1番 op.23

サイン会に並んで周囲を見ると殆ど女性ばかりだった。購入したラヴェルのCDは昨年カワイコンサートグランドピアノを使用してリリースしたもので、海外向けにも作られ解説がドイツ語、英語、日本語の3ヶ国語で書かれていた。曲目はフランス語で書かれていた。さすが国際派ピアニストだと思った。
海老はひとりひとり極めて丁寧に対応して耳を傾け名前を聞いてサインに応じていた。私の番が来て感想を述べ25年前のことを話したら覚えていた表情だった。同じホールでの1週間前のガジェヴのリサイタルの話もついでにすると気づいていなかったようで驚いていた。最後に彼女から握手を求められ“お元気で”と言ってくれた。実に人当たりの良い人物で好印象を受けた。CDにはサインとともに“Merci!”と書かれ私の苗字も書いてくれていた。

※指揮者に転向したミハイル・プレトニョフがKAWAIのピアノに出会ってピアニストに戻った話は嬉しいニュースであった。昨年の浜松国際コンクールの第一次予選でカワイのコンサートピアノを使用した出場者の数は驚異的といえるものだった。第一次予選では全72名中24名、第二次予選では全24名中11名、第三次予選では全12名中7名、ファイナルでは全6名中3名だったそうである。改めてカワイピアノ「SK-EX」の世界的な評価の高さに注目した。
プロフィール

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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