アンネ・ソフィー・フォン・オッタ―&カミラ・ティリング in リサイタル

スウェ-デンが生んだ稀代のディ―ヴァ、アンネ・ソフィー・フォン・オッタ―がKitaraのステージに初めて登場。同じスウェーデン出身の新鋭カミラ・ティリングも一緒のステージに立った。

20世紀最大の歌姫といえばマリア・カラス。1950・60年代、他に活躍した世界的女性歌手でテバルディ、シュヴァルツコップ、シミオナートなどの名前が思い浮かぶが、その後の時代ではフレーニ、グルベローヴァぐらいしか名が浮かんでこない。最近ではネトレプコ、バルトリ、フリットリ、フレミングはオペラで馴染みである。数年前に映画館で始まったMETビューイングのお蔭で何人かの歌手の名を知るようになったとはいえ、オペラ歌手の知識は余りない。
今回来札したフォン・オッターの名もそれまで聞いたこともなかった。Kitaraのステージに登場したコッソット、ペーターゼン、ロストなどのディ―ヴァも実際に素晴らしい歌声を耳にして彼女たちが偉大な歌手であることを実感した次第である。

2015年9月28日(月) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

アンネ・ソフィー・フォン・オッタ― and カミラ・ティリング in リサイタル

Anne Sofie von Otter(メゾ・ソプラノ)はスウェーデン生まれ。ロンドンのギルドホール音楽大学で学び、1983年バーゼル歌劇場でオペラ界デビュー。メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座にも出演してキャリアを積み上げる。以後、世界一流のオーケストラや指揮者と共演。レパートリーは非常に広く、オペラのほか歌曲でもバロックから現代まで多彩な音楽を作り上げる世界最高峰のアーティストとして輝き続けている。来日は2006年以来、9年ぶり。

CamillaTilling(ソプラノ)はスウェ-デン生まれ。ロンドン王立音楽大学で学ぶ。1999年、ニューヨークでデビュー。2002年には英国ロイヤルオペラでデビュー。その後、メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座などで活躍。ラトル指揮ベルリン・フィルはじめ世界的な指揮者・オーケストラとの共演も多い。

ピアノのジュリアス・ドレイク(Julius Drake)は室内楽の専門家として世界の主要コンサートホールで共演を重ねている。

〈PROGRAM〉
 メンデルスゾーン:挨拶 Op.63-3 (デュエット)
 リンドブラ―ド:夏の日(ティリング)、警告(オッタ―)、少女の朝の瞑想(デュエット)
 グリーグ:6つの歌 Op.48 (デュエット)
        「挨拶」、「いつの日か、わが想いよ」、「世のならい」、
        「秘密を守るナイチンゲール」、「薔薇の季節に」、「夢」
 シューベルト:ます D.550 (オッタ―), 夕映えの中で D.799 (オッタ―)
        シルビアに D.891 (オッタ―)、  若き修道女 D.828 (オッタ―)
 メンデルスゾーン:渡り鳥の別れの歌 Op.63-2 (デュエット)
           すずらんと花々 Op.63-6 (デュエット)
 マイアベーア:シシリエンヌ(ティリング)、 来たれ、愛する人よ(オッタ―)、
          美しい漁夫の娘(オッター)
 マスネ:喜び!(デュエット)
 フォーレ:黄金の涙 Op.72 (デュエット)
 R.シュトラウス:憩え、わが魂よ op.27-1 (オッタ―)、たそがれの夢op.29-1(ティリング)
         どうして秘密にしておけようか op.19-4 (オッタ―)、
         ひそやかな誘い op.27-3{ティリング)、明日!op.27-1 (オッタ―)
         ツェツィ-リエ op.27-2 (ティリング)

プログラムで歌の名を知っているのは「ます」だけ。ソロがフォン・オットーが10曲、ティリングが11曲、デュエットが6曲。全部で27曲。
ステージに登場した時からフォン・オッターはオーラを発していた。背が高く美しい容姿は優雅で気品に満ちていた。最初に発した歌声は何とも形容し難い美しさ。ティリングの声量豊かで表現力のある歌声も若さに満ち溢れていた。最初のデュエットにはスッカリ聴き惚れた。
プログラムが進むにつれて、歌詞は解らなくても歌声からドラマ性も伝わってきた。ソリストが歌い終わった後にピアノが静かに曲を閉じる場面も結構多かったが、聴衆のフライイングが無かったのも良かった。落ち着いた静かな雰囲気で聴衆は素晴らしいリサイタルを堪能した。
小ホールでの声楽の楽しさをたっぷり味わえたコンサートで出演者も大満足の様子だった。アンコール曲は3曲もあった。
①オッフェンバック:舟歌 (《ホフマン物語》より)
②ブラームス:姉妹 
③フンパーテイング:「夜には私は眠りに行きたい」(《ヘンゼルとグレーテル》より)
          

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外山啓介ピアノ・リサイタル2015(オール・ショパン・プログラム)

2005年に外山啓介のコンサートを聴く機会があって、07年からは毎年聴いていて今回が14回目。札幌出身ということで親近感を持ったこともあるが、演奏が繊細で色彩感がある。ステージでの深い角度のお辞儀も堂に入ってキビキビしており魅力を増した。5年ぶりのオール・ショパン・プログラムによる外山啓介のリサイタル。

2015年9月25日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈All Chopin Program〉
 エチュード第3番 ホ長調 op.10-3「別れの曲」
 3つのノクターン op.9 第1番変ロ短調、第2番変ホ短調、第3番ロ長調
 バラード第1番 ト短調 op.23
 バラード第2番 へ長調 op.38
 プレリュード第15番 変二長調 op.28-15「雨だれ」
 ワルツ第9番 変イ長調 op.69-1「告別」
 バラード第3番 変イ長調 op.47
 ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53「英雄」
 バラード第4番 ヘ短調 op.52

今回はバラードをメインにプログラムを構成したようである。休憩前の前半の曲ではやはり「バラード第1番」が良かった。小品の曲が並ぶ中では個人的には一番聴きごたえがあった。
毎年のコンサートで新しいファンを増やしていくこともあってプログラミングにそれなりの苦労はあるだろう。「バラード第4番」は5年前のプログラムにも入っていて外山の好きな曲なのだろう。前半か後半にバラード全曲を並べた方が良いのではないかと個人的には思う。
確かに〈オール・ショパン・プログラム〉ではあったが、個人的には「ソナタ」が入っていなかったのは物足りなかった。

それぞれの曲の味わいは充分に表現されていて聴衆を満足させたようだ。聴き手の感動の表し方で、今日も気になったことがある。 男性の“イヨー”とか何かハッキリしない掛け声が聞こえたような気がした。普通のコンサートでは場違いではないかと思うのだが、、。

プログラムが全曲終ったところで外山にしか出来ないようなお辞儀の仕方が二度ほど見られた。深々としたお辞儀で一定の時間静止するという動作で彼特有の礼の仕草である。(*この数年お辞儀の仕方が変化していた。)
アンコール曲の演奏前に例年より長い挨拶があった。聴衆に話しかける大切さを感じているのかも知れない。1曲目は、あまり有名でない曲と言って「ショパン:コントルダンス」。2曲目は「ショパン:ノクターン 第20番 嬰へ短調 遺作」。

P席と3階席が売り出されなかったのが6・7年前と違った状況だった。それでも若い女性も含めて1300名程の観客がいたのではないか。サイン会に並ぶ人の列が以前ほどでないとはいえ最近のコンサート会場としては多くの女性が並んでいた。

※帰宅して本日のアンコール曲を確認してみると、「コントラダンス」の曲が手持ちのCDに入っていることが判った。ショパンが17歳の1827年に作曲した「コントラダンス 変ト長調」が横山幸雄のCDに入っていた。この作品は1934年に楽譜が出版されて、ショパンが使用していた当時の「プレイエル」のピアノを実際に使用して横山が〈ピアノ独奏曲全曲集〉の第4集に収録していた。偶々、1枚だけ持っていたCDに曲が入っていて1・2回は聴いたことは有るのだが曲の内容はともかく曲名さえ気付かなかった。

ヤナーチェク弦楽四重奏団

〈Kitara弦楽四重奏シリーズ〉
チェコの至宝、名門カルテットがうたうスラヴの魂。
ヤナーチェク弦楽四重奏団(Janacek String Quartet)は1947年結成以来、スメタナ・カルテットと共にチェコを代表する名四重奏団として世界中で活躍している。来日は1962年から20数回になる。
  今回のメンバー:ミロ―シュ・ヴァチェック(1st Violin)、リヒャルト・クルゼック(2nd Violin)、ヤン・レズニチェク(Viola)、ブレティスラフ・ヴィビラル(Cello)

 2015年9月22日(火・祝) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 ドヴォルジャーク:糸杉 作品152より
             ああ、私たちの愛に求める幸せは花開かない
             これほど多くの人々の胸に死の思いがあり
             お前の甘い目を見つめながら
             地上を静かなまどろみが支配し
             お前は聞く、なぜ私の歌が
 ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」
 スメタナ:弦楽四重奏曲 第1番 ホ短調「わが生涯より」

弦楽四重奏曲は2曲ともスメタナ・カルテットが70年代に録音して2002年にデジタル化されたCDを予め2回ほど久しぶりに聴いてコンサートに臨んだ。

ドヴォルジャーク(1841-1904)はチェコ音楽をドイツ古典派の伝統的な作曲技法を通して、薫り高いコスモポリタンな芸術作品に仕上げて世界に普及させた作曲家として親しまれている。
「糸杉」の知識は全然なかった。プログラムの解説によると、1865年に書かれた若き日の恋愛の思い出を綴った歌曲集「糸杉 作品11」が原曲で、そこから12曲を1887年に弦楽四重奏曲用に編曲した作品である。美しく親しみやすい旋律が曲に溢れている。

ヤナーチェク(1854-1928)はチェコのモラヴィア地方で教員をしながら作曲活動をしていた。61歳の時に38歳年下の人妻に恋をして600通以上の手紙を書き送るなどの変わり者で、性格が激しかった。彼の作品で名作となっているのはこの老いらくの恋が始まった頃からのものが大部分である。村上春樹の小説で話題となった「シンフォニエッタ」や「タラス・ブーリバ」。彼の晩年の作「弦楽四重奏曲第2番」はこの恋文を話題にした内容である。ボヘミア地方の音楽を扱ったスメタナ、ドヴォルジャークとは異なる音楽作りである。彼の音楽は個性的で独特である。

「弦楽四重奏曲 第1番」は69歳の時の作品で副題は文豪トルストイの小説「クロイツェル・ソナタ」に由来する。〈貴族の放蕩息子の妻がベートーヴェンの同名のソナタを合奏したヴァイオリニストを愛してしまい、夫に殺されるが無罪になる物語〉。純愛の強さを描く作品はヤナーチェクらしい。4楽章構成。テーマは重苦しいが、解りやすい簡潔な作品となっている。(*各楽章に「コン・モート」(動きをもって)という指示があるのに気付いた。副題の意味は今までハッキリ意識していなかった。この2点が今回の生演奏の機会に判った。)

スメタナ(1824-84)はチェコ国民音楽の祖としてチェコ国内ではドヴォルジャークより人気が高いことは過去のブログでも書いている。彼はチェコ語のオペラを書き、国民劇場の創設に力を尽くした。交響詩「わが祖国」はチェコ国民音楽の記念碑的な作品となっている。スメタナは耳の病が50歳頃から悪化して、両耳とも殆ど聞こえなくなった。創作意欲に燃えて波乱の人生を振り返った作品となったのが「わが生涯より」である。スメタナ自身が書き添えた説明がある。
第1楽章は“楽しかった青春時代の音楽への愛とロマンティックなものへの憧れ”。第2楽章は“ポルカを作曲して踊った若い頃の思い出”。第3楽章は“亡き妻の少女時代の初恋の喜びの回想”。第4楽章は“民族的要素を音楽に採り入れ成功した喜びと不幸な失聴”。チェロの序奏で始まる自由な緩徐楽章が印象的だった。

チェコの3人の作曲家の弦楽四重奏曲をチェコの音楽家が演奏するコンサートは珍しい。テーマは重くても、曲は重苦しさを感じさせない味のある演奏であった。スメタナの作品は「わが祖国」や「売られた花嫁」以外に聴くことが少ないので良い機会となった。

今日の演奏会は当日券が完売で補助席がステージ横側の2階席でなく1階席後方に十数席用意されている様子であった。演奏終了の度ごとに“ブラヴォー”の声も飛び、拍手大喝采。このカルテットの演奏に対する聴衆の反応は極めて良く、冷静ではあるが控えめな日本人にしては熱狂的に近いものがあった。
カルテットのメンバーも会場を埋めた聴衆の期待に気持ち良く応えてアンコール曲を3曲披露した。
リーダーのヴァチェックが曲名を述べて1曲目に日本の「赤とんぼ」。2曲目は「ドヴォルジャーク:ユモレスク」(ピアノ独奏曲 変ト長調 op.101-7の編曲)。3曲目は「ドヴォルジャーク:弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 作品96 “アメリカ” 第4楽章」。

ウォルトハウゼン デビューリサイタル(Kitara新専属オルガニスト)

札幌コンサートホールKitaraは2015年2月16日から4ヶ月間は改修工事のため休館となったため毎年9月から1年間に亘って活動するヨーロッパの若手オルガニストを招いていたプログラムを昨年の秋は招待を取りやめていた。今年の秋から新しい専属オルガニストを招く制度が再開された。今回は初めてアメリカ出身のオルガニストが専属オルガニストとなる。

第17代札幌コンサートホール専属オルガニスト 
ジョン・ウォルトハウゼン デビューリサイタル

2015年9月20日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

John Walthausenは1991年、ニューヨーク生まれ。オーバリン大学でオルガンとチェンバロを学ぶ。2011年、パリ国立音楽院に入学してオルガンをオリヴィエ・ラトリー、ミシェル・ブヴァ―ルに師事。13年、最優秀の成績で修士課程を修了。欧米の各都市でリサイタルを開催し、国際オルガン・コンクールでも第1位を獲得。数多くの音楽祭にも招かれている。
現在は現代作曲家の作品を広く研究して演奏を行っている。

〈プログラム〉
 ブルーンズ(1665-97):前奏曲 ト長調
 J.S.バッハ(1685-1750):コラール「おお汚れなき神の子羊」 BWV656
                  (ライプツヒ・コラール集より)
 ヴィヴァルディ(1678-1741)(J.S.バッハ編):協奏曲 ニ短調 BWV596
 ローランド(1989- ):わたしの夢はただひとつの名を持ち
 ヴィエルヌ(1870-1937):オルガン交響曲第3番 嬰へ短調 作品28

名を初めて聞くブル-ンズはブクステフーデに師事したデンマーク出身のオルガニスト。31歳で亡くなり、生涯で遺したオルガン作品は4曲だけだった。最初に演奏されたのは5つの部分から構成された7分程度の曲。足鍵盤で2つの音を両足で同時に弾く奏法が珍しかった。

1曲目が終わって日本語で挨拶して聴衆の拍手を浴びた。
バッハのコラール集で何曲かメロディに親しんでいるものはあるが、この曲は馴染みではなかった。

ヴィヴァルディのオーケストラ作品は力強さ、華麗な演奏技術、和声の明瞭さでバッハの時代に人気があった。バッハはオーケストラでなくてもヴィヴァルディの作品が楽しめるように多くの楽曲をオルガンやチェンバロ用に編曲した。「協奏曲ニ短調」は力強い演奏であった。この曲は人気があるのか、第15代Kitara専属オルガニストのマリア・マグダレナ・カチョルがCDに収録しているのに帰宅してから気付いた。後日、聴いてみようと思う。

ウォルトハウゼンが好きな作曲家は“J.S.バッハと現代の作曲家”だそう。今回のリサイタルで彼の友人でもあるローランの作品を紹介した。ローランはフランスの作曲家で、彼が18歳の時に作曲した初めてのオルガン作品。最初から何とも独特な音の展開にビックリ。音楽祭のコンクールで特別賞を受賞した作品という。
曲を聴いた第一印象は“ニューヨークをバックグラウンドにする音楽はヨーロッパの教会音楽を基にした音楽とは土台が違う”というもの。後でプログラムの解説を読んでヨーロッパ出身の作曲家の作品と知って2度ビックリ。変な先入観は役立たずと思い知らされた。次回以降の現代の作曲家の作品を耳にする楽しみが増すことになった。

ヴィエルヌはバッハに次いでKitara専属オルガニストが演奏会やCDでその作品を多く演奏している作曲家。「幻想的小品集」と「オルガン交響曲」が特に有名な作品である。「オルガン交響曲第3番」は大曲で5楽章構成。情熱的で緊張感に満ちた作品。母親を亡くした悲しみや第一次世界大戦後の混乱に対する不安の他に、未来への希望などが表現されている。「楽器の女王」と呼ばれるオルガンを使って、管楽器を含むオーケストラの様々な音色を作り出すヴィエルヌの魅力を堪能した。

アンコール曲に「クープラン:修道院のためのミサより  テノールをティエルスで」を演奏した。

ここ1週間ボランティア活動やコンサート鑑賞で休む暇もなくて疲労感を覚えていた。体調も万全でないせいもあって鑑賞能力が低下していた感じ。そんな訳でいつものパッションが欠けていたのか演奏会に今ひとつ物足りなさを感じ取った。

オルガニストは9月1日に来札してから3週間足らずで初のコンサート開催。本人にとっては準備が大変だっただろうと思った。アメリカのオルガン音楽の紹介と日本文化に高い関心を寄せている。来日以来、何事にも意欲的に取り組んでいる様子。18日のKitara ボランティアの活動日に挨拶に現れて女性群からイケメンぶりが話題になった。ここ数年は30歳前後のオルガニストが来日していたが、久しぶりに若手のオルガニスト。ボランティアとオルガニストの交流意欲が一層高まる年になりそうである。

大森潤子ヴァイオリン・リサイタル

札幌交響楽団首席奏者 大森潤子がNew Kitaraホールカルテットのメンバーとして第5~8回までの室内楽演奏会に出演した折に彼女のヴァイオリンを身近に聴く機会があったが、リサイタルを聴くのは今回が初めてである。

2015年9月15日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

デビュー15周年 CD『Zephyr~そよ風』発売記念 
 Junko Omori Violin Recital

大森潤子は東京藝術大学を首席で卒業、同大学院修士課程修了。パリ国立高等音学院修了。1994年、第63回日本音楽コンクール第2位。第3回パリ・ADAMI 財団コンクール優勝に伴い、同財団の名器を貸与される。条件として、日本・フランスを含む欧州各地でのリサイタルの他にアウトリーチ活動が課されている。ソリストとして東京フィル、仙台フィル、札響などに出演。2006年から札響首席奏者。オーケストラでの活動以外にソロ、室内楽、アウトリーチなど幅広い活動を行っている。
2010年、デビュー10周年の折にイザイの無伴奏ソナタ全曲演奏会を東京文化会館とKitara小ホールで開いて絶賛を博した。

中島由紀は桐朋学園大学卒業後、渡仏してリヨン国立音楽院でピアノと室内楽科のディプロマを取得。1997年、フランスのラヴェル・アカデミーにて最優秀ピアニスト賞受賞。2001-09年まで東京藝術大学管楽器科伴奏員。現在、日本とフランスを中心に演奏活動を行なっている。

〈プログラム〉
 モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ト長調 K.301
 フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調
 クライスラー:コレルリの主題による変奏曲
 シューベルト(ウィルヘルミ編):アヴェ・マリア
 パガニーニ:ラ・カンパネラ
 ヴィエニャフスキ:モスクワの思い出
 フバイ:そよ風
 ラヴェル:ツィガーヌ

コンサートの前半2曲はソナタ。モーツァルト(1756-91)が21歳の頃に作られたソナタは2楽章構成。ソナタは当初ヴァイオリン伴奏つきのクラヴィーア・ソナタから作られ始め、ヴァイオリンの比重が増したK.301はピアノに主導権はあるが、ヴァイオリンの瑞々しい歌がピアノと対話する明るく美しさに溢れた曲。ト短調のシチリアーノの部分が中間部にあって魅力的。
ハスキルとグリュミオーのCDを何年ぶりかでコンサート前に聴いてみて聴き慣れたメロディに親しみが増した。コンサートでも久し振りでモーツァルトの曲の明るさを楽しんだ。

フランク(1822-90)の名曲を聴く機会が今年は多い。1月川畠成道、5月五嶋龍、8月木野雅之に次いで今回が4回目で珍しい現象。祈りに始まり徐々に精神的に高揚していく生き生きとした曲。4楽章すべてに同じ主題が繰り返しあらわれて発展する親しみ易い曲で、何度聴いても飽きない名曲。生演奏で聴くと演奏家の個性も見えて同じ曲でも印象は必ずしも同じではないのが興味深い。
大森の演奏も全体的に統一感のあるヴァイオリン曲を堂々として揺るぎなかった。中島のピアノもお互いに息があって曲の重量感を作り上げていた。

後半は超絶技巧が必要な難曲が続く小品集。フバイだけ聞いたことのない作曲家。ヴァイオリンの名手の作品が並んで聴く楽しみが増した。ここ数年は前橋汀子のアフタヌーン・コンサートで小品を楽しんでいる。CDの小品集ではハイフェッツ、パールマン、レーピン、ヴェンゲーロフ、五嶋みどり、ゲオルギエヴァなどのCDを時々気分転換にBGMとして聞いている。

「コレルリの主題による変奏曲」はルガンスキーの弾くラフマニノフのピアノ曲のCDを所有しているが、聴いて直ぐにはピアノ曲との関連は解らなかった。クライスラー(1875-1962)がコレルリ(1653-1713)の作品を得意の技巧を駆使してヴァイオリン曲に仕上げた小品。(*コレルリorコレッリのソナタは寺神戸亮が演奏したCDを15年ほど前から持っていて名はよく覚えているだけ)
シューベルトの「アヴェ・マリア」は歌曲として親しまれているが、ドイツのヴァイオリニスト、ウィルヘルミ(1845-1908)の編曲でも名高い。
パガニーニ(1782-1840)の「ラ・カンパネラ」は〈ヴァイオリン協奏曲第2番の第3楽章「鐘のロンド」〉に出てきた曲。難度の高い文字通り超絶技巧の曲。ヴァイオリン演奏の多彩な技術が盛り込まれている難曲。大森はかなり集中力を高めて演奏したのではないだろうか。
ヴィエニャフスキ(1835ー80)はポーランド生まれ。ポーランドではショパンに継ぐ英雄で1930年代からヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールが行われていて、ヴェンゲーロフ、レーピンが彼の作品を多く取り上げている。ヨーロッパ、とくにロシアで人気が高いようで、前橋もロシア留学中の思い出をこのロシア民謡「赤いサラファン」にもとずく幻想曲をコンサートでよく弾いている。他に「華麗なるポロネーズ」、「ヴァイオリン協奏曲」など魅力的作品の多い作曲家。

大森潤子が今回初めて出すアルバムのタイトルにしたのが「Zephyr~そよ風」。「そよ風」の英語は普通“breeze”であるが、ギリシャ神話の『西風の神』を司るZephyrus(ゼフィルス)に由来する語である“Zephyr”(ゼファー)を使ったのには彼女なりのこだわりがある。フバイ(1858-1937)はブタペスト生まれ。ヨアヒム、ヴュータンに師事したヴァイオリニスト・作曲家。彼の師匠の名は知っていても彼の名は耳にしたことが無かった。歴代のグリュミオー、ヴュータン、イザイや現代のデュメイなどはフランコ・ベルギーの流れを汲む名匠。大森のヴァイオリンもフランコ・ベルギー派の演奏様式を受け継ぐスタイルらしい。詳しいことは判らない。とにかくフバイは彼女にとって大きな意味を持つ存在であることは確かである。曲の原名が“Der Zephir”。
曲そのものは軽妙な感じがした。

ラヴェル(1875-1937)の「ツィガーヌ」は演奏会用ラプソディとも言える、ヴァイオリンが技巧を駆使して大活躍する曲。2006年に五嶋龍がKitaraで演奏して以来、誰もが簡単に弾ける曲ではないと個人的に強い印象を受けていた。ロマ(ジプシー)のヴァイオリニストの即興演奏を感じさせハンガリーの舞曲「チャールダーシュ」の形式で書かれ、まさに超絶技巧の連続で迫力があって大森の演奏も圧巻であった。この曲は小品というより中品。
演奏終了後に男性から「ブラヴォー」、直ぐ後に複数の演奏者に対する賛辞の言葉「ブラヴィ」という声が掛かって聴衆の感動の様子がうかがえた。

これだけの難しいプログラムを小柄な体で弾き切った大森のヴァイオリンの技量も精神力も大したものと敬服した。ピアノの中島も大健闘。聴衆からの拍手大喝采も盛大だった。

疲れも厭わずにアンコール曲が3曲。①パラディス:シチリアーノ、 ②ドビュッシー:ゴリウォ-グのケィクウォ-ク(「子供の領分」より)、 ③アイルランド民謡(クライスラー編):ロンドンデリーの歌
*①②は4日前にあった工藤重典のコンサートの演奏曲と偶然同じでした。①はすっかり馴染みのメロディの感じさえして親しめた。

大森潤子の技量は承知してたが、今回初めてリサイタルを聴いて満足した。珍しい小品が入ったCDを買って、彼女と言葉を交わした。最後に「また聴きたくなるようなコンサートだった」と言ったら、「そんなに若くないから、、、」という言葉が返ってきたようだった。その時はピアニストにサインを貰うのにテーブルを移動していた。後方で笑いが起こっていた。彼女にとって今回のようなリサイタルは最初で最後のような全精力を使い果たしたリサイタルだったのだろうと改めてその姿に打たれた。

今回と同じプログラムの東京公演が10月9日(金)、JTアートホール・アフィニスで開催される。盛会を祈りたい。










都響創立50周年記念 札幌特別公演(下野&小曽根)

2005年に都響が創立40周年記念で初の札幌特別公演を開催してから2年毎の奇数年にKitaraで公演を実施している。東京オリンピックの記念文化事業として1965年に東京都が設立したこともあり、オリンピック開催の宣伝も兼ねて国内外での公演事業が盛んである。今年は東京都交響楽団創立50周年記念として開催された。一流オーケストラであるが、他のオーケストラ演奏会と違って安い料金で鑑賞できる。クラシック音楽のファンやシニア層にとってチケットが安価なのは有り難い。
チケットを半年前に購入していてどの席を買い求めていたか忘れていた。確認してみるとP席で妻のチケットも買ってあった。

2015年9月13日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 下野 竜也
ピアノ/ 小曽根 真
管弦楽/ 東京都交響楽団

〈プログラム〉
 外山雄三:管弦楽のためのラプソディ
 ガ―シュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(ピアノ/小曽根 真)
 ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 op.88 B.163

Shimono Tatsuyaは1969年生。2013年4月、読売日響首席客演指揮者に就任。2014年4月には京都市響常任客演指揮者に就任。2011年から広島ウインドオーケストラ音楽監督も務めている。
14年8月札響定期に出演して以来のKitara登場。下野竜也は人気の指揮者で、私にとって今回が7回目の鑑賞。

外山雄三(Toyama Yuzo)(1931- )のこの作品は1960年にNHK交響楽団が初の海外公演を行なった際に、アンコール曲として各地で演奏して好評を博した。その演奏旅行には作曲家自身、岩城宏之など数人の指揮者が同行して指揮を担当した。(*約2ヶ月の旅行)
日本民謡を満載した自由な形式で書かれたラプソディ。「ソーラン節」、「炭坑節」、「串本節」、「八木節」の旋律が現れる。拍子木、太鼓などの十種類ほどの打楽器が使用され日本の祭りの雰囲気も表現されている。
今回初めて耳にした人も多かったのではないかと思う。
今日では日本の作曲家では武満徹や細川俊夫などの作品が外国では演奏される機会が多いようである。《管弦楽のためのラプソディ》は日本人の指揮者とオーケストラでないと演奏が難しい感じがする曲。

Ozone Makotoはジャズ・ピアニスト。ニューヨークでの活動後、帰国してから近年はクラシックに取り組み国内外のオーケストラと共演している。日本ではPMF2008のバーンスタインの曲の演奏で喝采を浴びた。最近では昨年、〈札響夏の特別演奏会〉で尾高と共演してモーツァルトとプロコフィエフのピアノ協奏曲を2曲弾いて聴衆の度肝を抜いた。今日は昨年に続いてのKitara登場。

ガ―シュウィン(1898-1937)はポピュラー音楽の作曲家。10歳の時に聴いたドヴォルザークの《ユモレスク》に感動して、音楽を志したという。本格的な作曲家を目指して、1924年にジャズの要素をたっぷり取り入れながら書いた最初のクラシック風の作品が「ラプソディ・イン・ブルー」。何度か編曲版が作られ、シンフォニック・ジャズ、協奏曲ジャズというような内容となった。1928年に作曲された「パリのアメリカ人」と並んで彼の作品では最も親しまれている名曲である。
小曽根は超絶技巧を使った圧倒的な演奏で聴衆を魅了した。昨年2月のニューヨーク・フィルのアジア・ツアーでソリストを務めた様子が目に浮かぶほどの名演。
都響のメンバーも一層、若返って、演奏も一段と磨きがかかった印象を受けた。下野もメリハリがあって、身体の動きが団員に伝わるダイナミックな迫力ある指揮ぶりで従来よりも強烈な印象! (P席から指揮者の顔の表情や体全体の動きが見れて充分に観察できた。)
聴衆の拍手大喝采に応えて弾いたソリストのアンコール曲は自作“Reborn”。

後半のドヴォルザークの「第8番」は改めて言及の必要のないくらいの頻度の高い演奏曲。
昨年、テレビでインタビューに応える下野竜也の言葉が印象に残っている。彼は中学生の時にドヴォルザークの交響曲第6番を聴いて感動したそうである。レコード店を回って同曲のCDを買い求め、毎日聴いたくらい大好きな曲と話していた。昨年中に、「第6番」を演奏会で指揮したはずである。
今回配布された小冊子「月刊都響」によると9月2日の都響定期演奏会で下野は「ドヴォルザーク:交響曲第4番」を演奏したことになっている。「第6番」でさえ日本では珍しい演目だと彼は言っていたのだから「第4番」は尚更珍しい。

ともかく「第8番」演奏終了後の聴衆の拍手も凄かった。指揮者の最後のスピーチも良かった。北海道出身の団員4名の紹介もあった。そのうちの一人が30年前の教え子だと判った。(05年の札幌公演の都響のホルン奏者で彼の名前を見つけた。彼が東京芸術大学器楽科に進学したのは知っていたが、同一人物かは判らなかった。下野の紹介で旭川出身と聞いて間違いないと思った。次回には是非会ってみたいと思う。) 演奏会も良かったが、最後に特別なことがあって何か嬉しい気持ちになった。

オーケストラのアンコール曲は「ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第15番 作品72-7」。

日曜の昼の公演で聴衆の年齢層も幅広く8割以上の客入りだったが、1階S席の空席がやや目立った。座席をいち早く購入して当日来れなかった人がいたようである。帰りのホアイエにはサイン会に並ぶ人の長い列が続いていた。

















工藤重典アニバーサリー・フルート・リサイタル(ランパルに想いを馳せて)

工藤重典がパリ音楽院で師事したフル―ト界の不滅の巨匠ジャン=ピエール・ランパル(Jean-Pierre Rampal)のリサイタルは1987年9月に旭川で聴く機会があった。ランパル(1922-2000)は1964年に初来日してから15回目にあたる87年の日本ツアー22公演で日本でのコンサート回数が当時で225回に達した。器楽界に大変革をもたらす活躍をしたと言う意味ではチェロのパブロ・カザルス、トランペットのモーリス・アンドレ、オーボエのハインツ・ホリガーなどに比肩されるヴィルトゥオーソである。彼らは楽器に新しいページを開いて音楽界全体に計り知れない影響を与えた最高の演奏家。カザルスの生演奏は聴いたことは無いが、他の演奏家のコンサートを聴いたことがある事実は嬉しくて堪らない。

ランパルはウィ-ン国立歌劇場管弦楽団、パリ国立オペラ座の首席奏者を歴任して、一時パリ音楽院主任教授も務めたが、世界中でソロ活動を展開した。工藤重典はパリ音楽院でランパルに師事して、1980年第1回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールの優勝者であり、ランパルの秘蔵っ子と言えよう。

工藤重典は1999年6月、Kitara 小ホールで「工藤重典 トリオ・エスプリ・ド・パリ」でチェンバロ(ピアノ)、オーボエと三重奏団を組んでパリの仲間と室内楽を演奏した。2007年5月には「工藤重典フルート・ファンタジー」と銘打ってKitara大ホールでリサイタルを開いた。(このコンサートでのピアノ伴奏は野原みどりであった)。その他、工藤はKitaraの記念演奏会や北海道音楽界の節目となるコンサートに度々出演している。直近で聴いたのは10年2月の高関健指揮札響定期で「モーツァルト:フルート協奏曲第1番」。

2015年9月11日(金) 開演19:00  札幌コンサートホールKitara小ホール

Shigenori Kudo Anniversary Flute Recital ~フルートと共に50年

工藤重典は1954年、札幌生まれ。75年、桐朋学園音楽大学を中退して渡仏、パリ音楽院でランパルに師事。78年、第2回パリ国際フルートコンクール第1位。79年、フランス国立リール管絃楽団に首席奏者として入団。79年、パリ音楽院を1等賞で修了。80年、第1回ジャン・ピエール・ランパル国際フルートコンクール第1位。87年、リール管を退団してソロ活動を展開し、パリ・エコール・ノルマル音楽院教授に就任。
以後、04年までにリサイタルを中心に40ヶ国180以上の都市で演奏し、国内外のオーケストラとも数多く共演。1988年、《ランパル&工藤重典/ 夢の共演》で文化庁芸術作品賞受賞。
83年からランパル国際フルートコンクールの審査員。87-09年、サイトウ・キネン・オーケストラ首席フルート奏者、90年から水戸室内管首席フルート奏者。13年、オーケストラ・アンサンブル金沢の特任首席奏者。現在、パリ・エコール・ノルマル教授、東京音楽大学教授、上野学園音楽大学教授。

~工藤重典が10歳でフルートを始めて50年を記念してのコンサート~
〈PROGRAM〉
 クレメンティ:フルート・ソナタ ト長調
 モーツァルト:ソナタ ヘ長調 K.376
 シューベルト:ソナチネ 第1番 二長調
 ドビュッシー:《子供の領分》より「小さな羊飼い」
         《前奏曲第1集》より「亜麻色の髪の乙女」
         《子供の領分》より「ゴリウォ-クのケイクウォ-ク」
 サン=サーンス:ロマンス ヘ長調 Op.36
  チャイコフスキー:6つの小品 Op.51より 第6番「感傷的なワルツ」
 ツェルニ―:協奏的二重奏曲 ト長調 Op.129
  
ピアノ伴奏は工藤重典の娘、工藤セシリア(Cecilia Kudo)。彼女はフランス生まれ。フランス国内の多くのコンクールに出場して、全て第1位を獲得。8歳でフランスと日本のコンサートに出演。東京、札幌、横浜、浜松などでソロや室内楽の公演を行っている。シンガポール、ロシア、韓国における父のツアーで伴奏ピアニストを務めている。

前半の3曲の原曲はヴァイオリン曲。いずれも調性が長調で明るい曲。フルートが奏でる音は特に美しいといつも思っているが、工藤の楽器から奏でられた音は格別に美音で、最初から最後まで心地よい響きを存分に楽しんだ。
3曲とも3楽章構成で聴きごたえがあった。ピアニストは最初は曲が「フルートとピアノのための曲」と思って伴奏していたようである。それほど曲が自然で、フルート奏者の父の演奏が素晴らしいとも言えるのだろう。

後半の聴き慣れた小品は会場が和むような曲が中心でフランスもの。ドビュッシーの3曲は原曲が有名なピアノ作品。「子供の領分」よりの2曲は前回のリサイタルでも演奏した。
今夜のコンサートで工藤はドビュッシーやラヴェルに代表されるフランスの作曲家の曲の特徴を語った。フランスの音楽は「五感に訴える音楽」であり、ドイツの音楽は「和声がしっかりした内臓の音楽」と話したのを聞いてとても納得がいった。ドビュッシーは「風、水、光、空気、川のせせらぎ、太陽の日差し」などを音にしたと言う。

サン=サーンスの〈フルートのための作品〉は聴きごたえがあった。

ツェルニ―(1791-1857)はオーストリアのピアニスト・作曲家。ピアノ教則本で知られている。「協奏的二重奏曲」はピアノとフルートの曲。4楽章から成る本格的な曲。この曲の演奏ではピアノもフルートと対等に渡り合って、セシリアもかなりステージ慣れしている印象を受けた。父が偉大過ぎるので大変だとは感じた。
親子で演奏するのは、マイスキーやアシュケナージ親子のデュオがあったが、日本人では珍しく微笑ましく感じた。

アンコール曲は4曲。「パラディス:シシリエンヌ」、「ショパン:子犬のワルツ」、「フォーレ:子守唄」、「モンティ:チャルダッシュ」。1曲目はウィ-ンの女性作曲家の曲で初めて聞いたが、ショパンとモンティのメロディは全ての人に親しまれている速いリズムでの曲をフルート編曲で吹く技はまさに超絶技巧。開場に詰めかけたファンを魅了した。

小ホール1階の客席はほぼ満席だったが2階に客を入れるために、主催者は公演間近かになってモニターの条件で某プレイガイド会員に半額で売り出した。私自身は久しぶりで日本のフルート界の第一人者の演奏を聴こうとKitara閉館中の4月に郵送でチケットを取り寄せていた。妻がインターネットを通して安い料金が魅力で申し込み一緒に出かけることになった。得をした気分もあってか、コンサートを充分に楽しんだ様子。自分自身もそんな経験が無いわけではない。今は無くなってしまったが、「北海道芸協」には今も感謝の念を持ち続けている。

※「工藤重典アニヴァーサリー・コンサート」が9月21日サントリーホールで開催される。50周年の機会に工藤自身が演奏したい曲目を選び共演者に頼んで実現する運びになった記念演奏会。日本の第一線で活躍している演奏家たちが出演する豪華なコンサート。東京在住の人にとっては珍しくて楽しいコンサートになるであろう。チョット羨ましい。盛会を祈りたい。
この情報が入った「音楽の友9月号」に面白い記事が載っていた。
工藤は子供の頃にフルートとアルペンスキーに熱中していて、将来の進路をどちらに決めるか迷うくらい両面で才能を発揮していたらしい。スキーでは将来の人生設計に不安が残るので、フルートの道を選ぶことになったと言う。正しい選択だったのだろうが、ひょっとしたらスキーでオリンピック選手になっていたかも?

札響第580回定期演奏会 (指揮・オーボエ/ホリガー)

20世紀の音楽界でハインツ・ホリガーはオーボエという楽器の枠を無限に広げた天才であり、20世紀最大の音楽家として評価されていた。その当時から彼は既に世界で作曲家として扱われていた存在である。21世紀に入って指揮活動も加わった。オーボエ奏者、指揮者、作曲家として世界の音楽界で名高い人物をKitaraに迎えることは極めて喜ばしい。
Kitaraのステージには今回が初登場であるが、1970年2月の札幌交響楽団第92回定期演奏会にはソリストとして客演した記録がある。「ドニゼッテイ:イングリッシュホルンのための小協奏曲」と「R.シュトラウス:オーボエ協奏曲」をペーター・シュバルツ指揮札響と札幌市民会館で共演した。(*同年1月の札響定期にはアルゲリッチが登場。この頃の札響は名だたる演奏家を客演に迎えていたことが判る。)

2015年9月5日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮とオーボエ/ ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger)
管弦楽/ 札幌交響楽団

Heintz HOLLIGERは1939年、スイス生まれ。ベルン音楽大学でオーボエと作曲を、さらにパリ音楽院でピエール・ピエルロにオーボエを学んだ。62年にはピエール・ブーレーズに作曲を学んでいる。59年~64年までバーゼル交響楽団の首席オーボエ奏者を務めた。59年ジュネーブ、61年ミュンヘン両国際オーボエ・コンクールで優勝して、ソリストとして国際的な活動を始めた。超絶的なテクニックでオーボエという楽器奏法の枠を広げ、ジョリヴェ、シュトックハウゼン、武満徹などの現代作曲家から多くの作品を献呈されている。80年代に指揮活動を開始して、ベルリン・フィル、ウィ-ン・フィルはじめ世界の主要なオーケストラと共演。バロックと現代音楽に限定されているが、吹き振りで卓越した演奏の録音も残している。
1990年代前半まで頻繁に来日していた後、しばらく日本での活動が途絶えていたが、2010年より日本でオーケストラとの共演やリサイタル活動も行なわれている様子である。

〈プログラム〉
 フンメル:序奏、主題と変奏 ヘ長調 作品102(オーボエ:ハインツ・ホリガー)
 シューベルト(R.モーゼル編):アンダンテ ロ短調 D.936A
 シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D.759 「未完成」
 バルトーク:管弦楽のための協奏曲

フンメル(1778-1837)は現在のスロヴァキアに生まれ、ドイツ・オーストリアを中心に活躍した作曲家・ピアニスト。8歳でモーツァルトにピアノを師事して87年にモーツァルト指揮でドレスデンでデビューした。数年間にわたるヨーロッパ演奏旅行で大成功を収め、その後、ウィ-ンでサリエリ、ハイドンなどに作曲を学んだ。ベートーヴェンと共にウィ-ンを代表するピアニストとして知られた。各地で宮廷楽長を務め、多岐にわたる300曲を超える作品を残したという。こんな情報がプログラム解説に書かれていて興味深い情報だった。
演奏曲は4手ピアノのために作曲された変奏曲op.99を独奏楽器(オーボエorクラリネット)とオーケストラ用に編曲したもの。オーボエ協奏曲と呼んでも良いような曲。楽器編成は独奏オーボエ、フルート2、ファゴット2、ホルン2と弦5部。オーボエから奏でられる音が実に繊細で美しい。ホリガーが自由自在に楽器を操って流麗なメロディを奏でる15分ほどの曲に聴き惚れるばかりであった。初めて聴くフンメルの曲とホリガーの素晴らしい演奏に感激! 札響初演。

シューベルト(1797-1828)は短い生涯で未完や断片を含めると13曲の交響曲を手がけたと言われる。「アンダンテ」ロ短調はシューベルトが亡くなった年の秋の「交響曲第8番」のあとに作曲を試みたと推測されている。3楽章構成の交響曲が構想され、ほぼ完成していたスケッチの第2楽章「アンダンテ」が現代スイスの作曲家モーゼルによる編曲で陽の目を見た。
この曲以降はホリガーは指揮に専念。この曲もオーボエのソロのパートが多くて金子が大活躍。ヴィルトゥオーソの前で緊張もしただろうが堂々とした演奏を披露したと思った。この曲も札響初演。約12分の「アンダンテ」演奏が終わると、休みを取らずに、「未完成」に入った。「交響曲第7番」が始まったのに気付くのが遅れた人がいたかもしれないと思った。

シューベルトの作品で未完成に終った交響曲は6曲もあるが、25歳の時の〈管弦楽総譜2楽章と第3楽章断片〉だけが「未完成」と称されている。この作品は作りかけでなく、清書された2楽章だけでも完成度が高く、埋もれていた楽譜は1865年に発見され、その年の12月にウィ-ンのムジークフェラインザールで初演され好評を博したという。
ベートーヴェンの「運命」とシューベルトの「未完成」はカップリングされたブルーノ・ワルター指揮のCDで聴き親しんだものだ。カルロス・クライバー指揮ウィ-ン・フィルのCDも人気の2曲がカップリングされていた。「未完成」だけでもブリュッへン、ムーティ、岩城などでも聴いた。「運命」と同様「未完成」も余りにもポピュラー曲なので、ここ数年は家で聴くことは殆ど無い。
それだけにコンサートで生演奏で聴くと新鮮な気持ちで鑑賞できる。
曲はチェロとコントラバスの荘重な序奏で始まり、オーボエとクラリネットの奏でる哀愁を帯びた美しい旋律が心に響いた。第2楽章ではヴァイオリンの優美な第1主題とクラリネットの寂しげな第2主題の提示で歌曲王シューベルトならではの歌の世界に引き込まれた。ホルンと木管の対話も楽しく聴けた。

凛とした姿勢で格好の良いホリガーの指揮ぶりも鮮やかであった。1曲目の終了後の聴衆の反応がおとなしかったが、「未完成」終了後には“ブラヴォー”の声も上がって一段と大きな拍手も起こって聴衆の感激の様子も伝わった。指揮者のオーボエ、クラリネット、ホルン各首席奏者への賛美も良かった。札響の弦楽器群の演奏は安定しているので、管楽器が活躍して一体感が出ると一層引き立つ。

バルトーク(1881-1945)は1940年にハンガリーからアメリカに亡命したが、白血病が悪化して体力も衰え、慣れない亡命生活で精神的にも追い込まれていた。同じハンガリー出身の同胞であるボストン交響楽団音楽監督のクーセヴィッキーから委嘱されて書き上げた作品が「管弦楽のための協奏曲」である。彼の作品でも最も規模が大きく演奏機会の多い曲。この大作曲家が不遇な晩年を過ごしたアメリカで健康と名声を取り戻すことになった作品でもある。

この曲を聴く切っ掛けになったのは2000年5月にブダペスト祝祭管弦楽団の創設者で音楽監督のイヴァン・フィッシャーが諏訪内晶子と共にKitaraで開いたコンサートであった。札幌公演では「管弦楽のための協奏曲」は演目ではなかったが、会場でフィッシャー指揮ブダペスト祝祭管演奏のCDを購入して、指揮者のサインも貰った。CDを集め出した頃で大ホールで初めてアーティストからサインを貰った情景が眼前に浮かぶほどである。3年前にブログを書き始めた頃にその時の様子を思い出して記録したことがある。
ハンガリー出身の指揮者フリッツ・ライナーが率いたシカゴ響によるCDとともに数年ぶりで改めて聴いてみた。

暗黒の亡命生活の中で作曲家としての再生を目指すバルトークの姿そのものが描かれているようである。「協奏曲」と言うと、独奏楽器と管弦楽による作品を指すが、バルトークのこの作品では各楽器群が独奏者で全管弦楽と対峙している。
5楽章構成。第1楽章「序章」、第2楽章「対の遊び」、第3楽章「悲歌」、第4楽章「中断された間奏曲」、第5楽章「終曲」。
CDで聴いているだけではハッキリ判らないが、生演奏では独奏者のように歌う各楽器群の様子が見れてより良く鑑賞できる。個人的には好みの作品とはいえないが、現代音楽として面白い作品ではある。

現代音楽を得意とするホリガーにとって満足のいく演奏だったのか、オーケストラ全体への評価が高かったのが見て取れた。演奏終了後の聴衆の万雷の拍手も良かったが、指揮者のオーケストラに対する賛美も表されていて良い演奏会となった。
憧れのオーボエ奏者・音楽家の演奏が聴けてこの上ない満足感を味わった一日であった。


※シェレンベルガー(1948年ー )は名オーボエ奏者として名高く、指揮活動も開始してKitaraでオーボエと指揮の吹き振りを2度も行なっている名音楽家である。彼は「クラシックの現代の巨匠たち」にオーボエ奏者として唯ひとり載っていた。その時に、ホリガーの名が無いので変だと思ったことがある。実際、ホリガーの名は既に亡くなった名演奏家の名が殆どの「クラシックの不滅の巨匠たち」の別冊の方に載っていて納得したものである。逆に現役として活躍中の演奏家が既に偉大な業績を残して今は亡き巨匠たちと同列視される音楽家であることを改めて認識した。(*「不滅の巨匠」の初版が1993年、「現代の巨匠」の方は1994年。)
プロフィール

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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