クァルテット・エクセルシオ第8回札幌定期演奏会(ゲスト:近藤嘉宏)

弦楽四重奏団演奏会はエマーソン、プラジャーク、ダネル、PMFウィ-ンなど海外のカルテット、東京、Kitaraホール、New Kitaraホール、ロータスなど国内のカルテットに親しんできた。エクセルシオのコンサートは都合がつかずに今まで聴く機会がなかった。今回は毎年リサイタルを聴いている近藤嘉宏のコンサートがKitaraの改修時期と重なって今年は聴けないと思っていたら、エクセルシオとの共演が実現した。

2015年6月30日(火) 19時開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

クァルテット・エクセルシオ(Quartet Excelsior)は年間70公演以上を行う、日本では数少ない常設の弦楽四重奏団。94年結成。現在、東京・札幌・京都で定期公演を開催。
メンバー/山田百合子(ヴァイオリン)、吉田有紀子(ヴィオラ)、大友肇(チェロ)

今回の公演は第1ヴァイオリン西野ゆか休養のためピアニストの近藤嘉宏をゲストに迎えた。

〈Program〉
 ドホナーニ:弦楽三重奏のためのセレナード ハ長調作品10
 ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第2番 ト長調 Op.9-1
 ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 作品25

ドホナーニ(1877-1960)はハンガリーの作曲家。有名な指揮者は直系の孫だそうである。1902年に作曲されたセレナードは楽しい音楽。ディヴェルティメントのような娯楽曲のような感じの曲。(約25分)

ベートーヴェン(1770-1827)のOp.9は「3つの弦楽三重奏曲」で彼の初期の作品(1796-98)。パールマン、ズッカ―マン、ハレルによる輸入盤のCDで1・2回聴いたことがあるが、今日の午前中に改めて聴いてみた。作品3、8を含めて5曲で弦楽三重奏曲の作曲は止めてしまった。1800年からは弦楽四重奏曲の作曲に取り掛かった。作品3、8は娯楽音楽の多楽章形式の曲だったが、作品9ではソナタ、緩徐楽章、スケルツォorメヌエット、フィナーレという4楽章形式にした。弦楽四重奏曲に発展する作曲の変化が見られる曲。セレナードよりは何となく重々しい感じの曲。(約30分)

ブラームス(1833-97)のこの曲はシューマン亡き後の61年にクララのピアノで初演された。大成功を収め彼の出世作となった。2002年、ベルリンのスタジオでアルゲリッチ、クレーメル、バシュメット、マイスキーら4人のヴィルトゥオーゾによる「ピアノ四重奏曲」の録音が行われた。私は4年前に東京に出かけた時のコンサート会場で彼らのCDを偶々購入した。2・3回聴いてみたが、それほどの強い印象は残らなかった。この曲はしばらく耳にしていなかった。今日の午後に久し振りで聴いて出かけた。
初めて聴く生演奏は素晴らしかった。音楽に耳を傾ける自分自身の集中度も違っていた。いつも聴くピアノ五重奏曲ではピアノと他の楽器のバランスが難しいと思っていたが今日は物凄くバランスが良いと思った。特にピアノとチェロの対話が優れていたと感銘を受けた。やはり生演奏で聴いて親しまないと室内楽曲の良さは簡単には解らない。(約40分)

いつものコンサートと比べて聴衆は少な目であったが、結構レベルの高い趣向を凝らした演奏会となった。

近藤嘉宏とクァルテット・エクセルシオは室内楽で共演して、昨年末にブラ―ムスとシューマンのピアノ五重奏曲のCDをリリースしていた。ツイッターでその情報を得ていたので今回のコンサートの折に購入する予定だった。演奏会終了後に4人の演奏家からサインをもらって話が出来たのも良かった。

※近藤嘉宏は1998年に札幌デビューしてリサイタルを開いた。99年から会場が大ホールで今回は17年ぶりのKitaras小ホール。ツィッターでもホールの素晴らしさを絶賛していた。彼の演奏をKitaraで聴くのは今回が12回目だった。
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千住真理子&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

千住真理子デビュー40周年記念
創設1870年のドレスデンの名門オーケストラがデビュー40周年を迎えた千住真理子と共に贈るコンサート。

2015年6月29日(月) 7:00PM開演  札幌コンサートホールKItara大ホール

千住真理子は幅広いジャンルで活躍しているが、海外のオーケストラと共演する機会の多いヴァイオリニストである。彼女の演奏を聴くのは2000年以降で今回が7回目である。

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団(Dresdner Philharmonie)の創設は1870年に遡るが、現在の名称になったのは1915年からである。ブラッソン、ヤノフスキーやフリューベック・デ・ブルゴスが首席指揮者を務めて今日のドイツ音楽の伝統あるサウンドを築きあげた。

ミヒャエル・ザンデルリンク(Michael Sanderling)は1967年、ベルリン生まれ。戦後の古き良きドイツの伝統音楽を引き継いだ巨匠クルト・ザンデルリンクの息子。ミヒャエルの兄、トーマスは1988年に札響を客演指揮。もう一人の兄シュテファンも指揮者として2000年N響札幌公演で共演。
兄二人に続いて末弟も札幌デビューとは珍しい音楽一家である。ただ父親が20世紀の偉大な指揮者であったので父を越えるのは難しいかも知れない。ヤルヴィ一家の例もあるから、一概には言えない。
ミヒャエルはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ベルリン放送響などのチェロのソリストを務めて世界的に活躍した後、2001年に指揮者活動を開始。チューリッヒ・トーンハレ管、バイエル放送響、ドレスデン国立歌劇場管などに客演。2004年にドレスデン・フィルを指揮して、11-12年シーズンから首席指揮者に就任。

ドレスデン・フィルは《バッハ:「マタイ受難曲」全曲》演奏で2010年12月、ドレスデン聖十字架合唱団と共にKitaraで演奏した。「マタイ受難曲」はショルティ指揮シカゴ響とシカゴ響合唱団のCDで一度聴いたが壮麗な音楽で度々聴くことは無いが、印象度が高かった。宗教曲は慣れていないので鑑賞は難しい。
今回は5年前より楽員構成も大きくて本格的なオーケストラ演奏になった。プログラムによると4管編成が可能な団員構成。

〈PROGRAM〉
 ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」序曲 Op.72
 メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64 (ヴァイオリン/千住真理子)
 サラサーテ:「ツィゴイネルワイゼン」 Op.20 (ヴァイオリン/千住真理子)
 ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 Op.67 「運命」

ベートーヴェン{1770-1827}の唯一のオペラが「フィデリオ」である。歌劇「フィデリオ」のために書いた序曲は4つある。「レオノーレ第3番」が演奏される頻度が高い。「フィデリオ」序曲はオペラの本編とは関係ない独立した管弦楽曲。劇的な序奏で始まる堂々とした曲。

メンデルスゾーン(1809-47)の「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調」は彼の作品の中でも最も親しまれていて、三大ヴァイオリン協奏曲として有名であり、その内容に触れるまでもない。この曲が彼の最後の管弦楽曲となった。メンデルスゾーンは13歳の時に「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調」を書いていた。メンデルスゾーンの自筆譜を1951年にユーディ・メニューインがロンドンで見つけた。そのためベートーヴェンやブラームスと違ってメンデルスゾーンには「ホ短調」が必ず後に付く。

最初の美音が奏でられた瞬間から千住のヴァイオリンの世界に引き込まれた。演奏機会が多くて毎回全神経を集中して聴けるわけではないが、今日は一段とこの曲の素晴らしさを堪能できた。千住が自己所有しているストラディヴァリウス「1716年製デュランティ」で弾くカデンツァが彼女の思い通りの音を紡いでいるのだろうと聴き惚れた。
聴き慣れた曲とあって彼女の演奏にブラヴォーの声が上がった。

Kitaraの再開後に大ホールと小ホールで共に連日のように続くコンサート。先週のプラハ放送響は大入りであったが、やや知名度が劣り、宣伝の差もあってか今夜は2階・3階席で空席が目立った。一番高額で良い席と一番安い席が売れるのが特徴のように思われる。

後半のプログラムもソリストの演奏で始まった。サラサーテ(1844-1908)は19世紀ヨーロッパに輩出したヴァイオリンの名手の一人。数多くの作曲家からヴァイオリン曲を献呈されている。彼自身も自らの演奏のためにスペインの民族色に溢れた技巧的なヴァイオリン曲を多数書いている。「ツィゴイネルワイゼン」とはドイツ語で“ジプシーの調べ”の意味。ハンガリーのジプシー楽団の名人芸が披露される華麗な作品。

千住の演奏に聴衆は盛り上がって万雷の拍手でアンコール曲を求めたが、大曲と小品の2曲の演奏の後でアンコール曲は遠慮した様子であった。今回のドレスデン・フィルの日本ツアーは今日が初日で、ソリストの千住の出演は今回だけであった。

ベートーヴェンの「運命」も今更、言及するまでもない。世界のオーケストラは国際化の波で各国の特徴が薄れてきていると言われる。その中で旧東ドイツ所属の「ライプツィヒ・ゲバントハウス管」や「シュタ―カペレ・ドレスデン」などは古き良き時代の伝統を守って独自の特色を出しているとの定評があった。
漠然とした先入観しかなかったが、昨年のドレスデン・フィル日本ツアーの折にインタヴューに応えたミヒャエルの言葉がウエブ・サイトに載っていて印象に残った。「ドレスデンはボヘミア族の住む地域に近く、楽団員の構成でも独特の音楽を引き継いでいて他のドイツ地域とは違うドイツ特有の音色を持っている」。
「運命」の演奏でも、今まで聴いてきた重々しい音色とは違う、歌うような明るさを伴った響きが聞こえてきた。こんな印象で「運命」を耳にしたのは初めてのような気がした。
家を出る前に世界地図でドレスデンの場所を確認するとチェコとの国境に近い。会場に向かう中島公園では、2日前の札響名曲シリーズで指揮をしたエリシュカがまだ札幌に滞在していたのか、奥様とホテルに向かう途中で出会った。Kitaraから帰る途中でドレスデン・フィルの関係者と交流してきたと想像できた。
こんな状況が「運命」を聴く環境を変えていたのかも知れない。いずれにしても、何度も聴く「運命」に新鮮な響きを感じ取った次第である。

ミヒャエルは背が高く格好が良い。楽譜を丁寧に読みながらメリハリをつけながらの演奏。小さな動作と手の長さを使った大きな身体の動きを混ぜながら曲の表情を変化させていた。指揮の勉強に忙しく、将来を嘱望されたチェリストの道を断って、指揮者の道を歩んでいる。(昨年のインタヴューでチェロを弾く時間もなく、チェリストとしてコンサートに出演することは無いと断言していた。) N響や読響とも共演して、先日のEテレでN響と共演の様子も上映された。日本での知名度も上がり今後が期待される指揮者である。
アンコール曲は《ロッシーニ:歌劇「ウイリアム・テル」序曲》で会場も盛り上がって聴衆も今日のコンサートに満足した様子で家路に着いた。

※ドレスデン・フィルの日本公演はこの後7月2・3・4・5・6・8日と続く。6日のサントリーホールの公演にソリスト(清水和音)が入るが、他は全てオーケストラのみ。ベートーヴェンの交響曲が中心で各地でプログラムが違う。木管奏者が各4名で、楽団員の負担が掛からない体制を組んでいることに感心した。(*来日楽員92名)








ミニコンサート(by 金子亜未)in Steinway Studio

昨日の午後は北海道教育大学岩見沢校の芸術・スポーツ文化学科の学生約30名を対象にしたKitara案内活動に携わった。小ホール・大ホール・楽屋を16:30~17:30の時間帯で8名のボランティアで対応。ビジネス専攻の必修講座の一環としての見学。5グループに分けて短い時間で効率的に案内。2008年に彼らを案内する活動に従事したことはあるが、小編成のグル―プに分けてより丁寧な対応に変わってきている。ただ、今回は午後2時から大ホールでコンサートがあったためだろうが、いつもは1時間半かける案内を1時間で行うことで要点を押さえて小ホール、大ホール、楽屋、ホアイエを案内。将来は芸術・スボーツ関係のビジネス分野で活躍しようとする意欲を持った学生なので熱心に学習していた。

この日は18:00から最後の職場を共にした同僚との年1回の会合もあって少々忙しい日程をこなした、翌28日は9:00~12:30まで時計台でのボランティア活動に従事した。(今回の時計台活動では特に印象に残る出来事があったが、別な機会に書いてみたい)。午後はミニコンサートとタイト・スケジュールになってしまった。

札響首席オーボエ奏者の金子亜未のミニリサイタルは是非聴いておきたかったので、何ヶ月も前から計画に入れていた。

2015年6月28日(日) 14:00~14:45  井関楽器札幌3F スタインウェイスタジオ

金子亜未(かねこ あみ)は1990年、千葉県出身。2012年東京芸術大学管打楽器科を首席で卒業。2010年、第79回日本音楽コンクールオーボエ部門第3位。第28回日本管打楽器コンクールオーボエ部門第1位。2012年7月、札幌交響楽団オーボエ首席奏者として入団。同10月、第10回国際オーボエコンクール軽井沢第2位(*日本人最高位)。
13年7月、札響夏の特別演奏会で「モーツァルト:オーボエ協奏曲」にソリストとして出演。室内楽で14年9月、弦楽三重奏団レイラと共演して「モーツァルト:オーボエ四重奏曲」などを演奏。3週間前の6月7日にはアマチュア・オーケストラの札幌シンフォニエッタと共演してモーツァルトのオーボエ協奏曲を含めセレナード、交響曲第40番などの演奏にも加わってアマチュアのレヴェル向上に貢献。
札響の公演では毎回ソロ・パートで聴衆を魅了する演奏を展開している逸材のオーボエ奏者。今回は彼女のソナタを初めて聴く機会を得た。

〈Program〉
 ドニゼッテイ(1797-1848)::ソナタ へ長調 op.50
 ヘンデル(1685-1759):ソナタ ト短調 Op.1-6 HWV364a
 ポンキエッリ(1834-1886)::カプリッチョ
 シューマン(1810-1856):アダージョとアレグロ 変イ長調 op.70

ドニゼッテイは「愛の妙薬」などオペラの作曲家として名高い。この「ソナタ」はオペラの雰囲気を持った曲の調べ。

ヘンデルの作品は原曲がヴァイオリン曲でオーボエ曲に編曲したものを演奏。金子亜未は小学生の時にオーボエを吹き始め、管弦楽に加わっていたと言う。高校で初めて演奏したソロがこのヘンデルの曲で印象深い作品として今回のプログラムに入れたと語った。高校の時は楽な気持ちで演奏したが、“話す方が緊張する”と今回の印象を述べた。

ポンキエッリはその名を初めて聞くが、演奏前にピアノで聴いた調べは何となく聞いたことがありそうな親しみのある曲。曲名も面白そう。オペラ「ジョコンダ」からの1曲という。

シューマンの曲名は何処かで聞いたことがある気がした。休みなく吹き続ける高難度の演奏曲に思えた。何となくシューマンらしい曲で聴くのは初めてではないと思った。帰宅してシューマンの作曲した記録を見たら、この曲が手持ちのCDにあることが判った。器楽曲で所有しているらしいが、直ぐには判らない。

オーボエはフルートと共に一段と美しい音を奏でる。あっという間の45分間。毎回、伴奏を担当する新堀聡子のピアノの腕も確かなものと感じる。満足感にみちたコンサートとなった。

PMFの折にウィ-ン・フィルのマルティン・ガブリエル(2002年)や宮本文昭のリサイタル(2006年)などでオーボエのソロは聴いたことがあったが、オーボエ奏者のリサイタルを聴く機会はめったに無い。
オーボエ奏者がリードを自作する話を金子が話したが、10年ほど前の宮本の話を覚えていて思い出した。こんな話を聞けるのも特別な機会ならではである。
サロンの雰囲気を持つコンサートの良さが味わえ、ソリストを身近に感じれるミニコンサートもKitaraとは違う楽しさがある。

アンコール曲は「ガブリエルのオーボエ」。ブログを書いていて気が付いたのであるが、上記のガブリエルと同一人物の曲かと、今、ふと思ってみた。確かなことは判らない。


ミハル・カニュカ チェロリサイタル(ベートーヴェン全曲演奏会)

〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉
ミハル・カニュカ チェロリサイタル

チェコ&スロヴァキア随一の実力派ソリストで、プラジャーク・カルテットのメンバーでもあるミハル・カニュカが世界的なチェロ奏者と評価されて、今回Kitaraのステージにリサイタルのソリストとして初登場した。

カニュカはプラジャーク弦楽四重奏団メンバーとしてこれまでKitaraに9回出演した。昨年6月の札響名曲シリーズにソリストとして登場し、チャイコフスキーの「ロココの主題による変奏曲」を演奏して万雷の拍手を浴びた。

2015年6月24日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

ベートーヴェン  チェロ・ソナタ全曲演奏会

Michal Kankaは1960年、プラハ生まれ。プラハ音楽院で学び、82年チャイコフスキー国際音楽コンクールで上位入賞。83年プラハの春国際音楽コンクールで第1位。86年ミュンヘン国際音楽コンクールで最高位(第1位なしの第2位)。ヨーロッパのトップオーケストラと共演を重ねており、世界各地でリサイタルを開いている。

ピアニストの三輪 郁(Iku Miwa)は1968年、東京生まれ。ウィ-ン国立音楽大学を首席卒業。同大学院を最優秀で修了。89年パルマ・ドーロ国際コンクール第1位、シューベルト国際や第1回浜松国際で上位入賞。ドルトムント・フィルや東京フィル、都響などの国内外のオーケストラと共演。ライナー・キュッヒルやラデク・バボラークなどとも共演。室内楽の他にもリサイタルも行い幅広い活動を展開している。

《プログラム》
 チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 作品5-1、 チェロ・ソナタ第2番 ト短調 作品5-2
 チェロ・ソナタ第3番 イ長調 作品69
 チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 作品102-1、チェロ・ソナタ第5番 二長調 作品102-2

ベートーヴェンの時代はチェロが独奏楽器として使われる機会は少なかったが、彼は「ピアノとチェロのためのソナタ」を5曲作曲した。
「第1番」と「第2番」はベートーヴェンが26歳の1796年に2曲セットで作曲された。宮廷におけるヴィルヘルム2世の御前での演奏のために作曲された曲といわれ、ピアニストでもあったベートーヴェンがチェロよりもピアノの活躍が多い作品に仕上げた。CDも持っていなくて初めて聴くのではないかと思った。作品は長調と短調で対照的な曲になっていた。想像以上に、ピアノパートは強い打鍵で、リズムも速く、手を休める暇もないくらいの忙しさ。チェリストよりピアニストの負担が多い曲で録音も他と比べて少ないのが判った感じ。2曲とも2楽章編成で演奏時間は各20分。とにかく全曲演奏会だからこそ聴ける機会になった。
 
「第3番」は5曲のなかでも最も親しまれている作品。他の作品が2曲ずつまとめられているのに対して、単独の作品番号になっている。ベートーヴェンの創作意欲が高く、名作が生まれた時期の作品。(*作品67は「運命」、68は「田園」)。ヴィルトゥオーゾがペアになったCD(ロストロボーヴィチとリヒテル、アルゲリッチとマイスキー)で聴く機会が多い。ピアノとチェロが対等の役割で活躍する曲。比較的に聴き慣れた旋律も出てきて演奏終了後は拍手大喝采。(約25分)

長時間演奏(正味100分)に鑑み、作曲時期とメイン曲を考慮してか、3部に分けて、休憩時間が2回設けられた。
「第4番」と「第5番」は1815年に作曲された。「第4番」は「ピアノとチェロのための自由なソナタ」と題されている。ベートーヴェンの主要作品が殆ど完成された後で、自由奔放な形式になっているのが特徴。一応、前半の2部と後半の3部をわけて2楽章構成か。(約15分)
「第5番」は急ー緩ー急の3楽章構成。ベートーヴェン最後のチェロ・ソナタで全5曲中で唯一の緩徐楽章のある曲。第3番のスケールの大きさや第4番の穏やかさを併せ持つ内容豊かな作品とされ、上記のヴィルトゥオーゾの録音もある。(約20分)

《ベートーヴェン チェロ全曲演奏会》を企画しても実現は困難だと思われるが、今回カニュカの決断で実を結んだと思う。ピアニストの三輪郁の協力なしには難しかったのではと演奏を聴いている中で思った。演奏家のエネルギーも称賛ものだが、聴衆の集中力も大変なものである。改めて二人の音楽家に敬意を表したい。

エネルギーを使い果たして“アンコール曲はなし”かと思ったが、演奏曲の中から「アダージョ」を再び演奏して21時25分終了。今晩のコンサートで注目したのがピアノがベーゼンドルファーだったこと。

※ミハル・カニュカは7月7日「七夕チェロ・リサイタル」で東京の日経ミューズサロンに登場して、バッハ、シベリウス、コダーイなどの無伴奏の作品を演奏する予定になっている。









プラハ放送交響楽団

チェコ・プラハのオーケストラの来日公演は多い。プラハではチェコ・フィルが一番歴史の古い名門である。2年に一度は来日公演を行っている様子。一時、プラハの三大オーケストラはチェコ・フィル、プラハ放送響、プラハ響と呼ばれた。2000年代の初めには競って札幌公演も行われていた。最近では1994年に結成されたプラハ・フィルの公演を札幌で聴く機会が多くなっていた。
プラハ放送交響楽団(The Prague Radio Symphony Orchestra)を聴くのは2000年に続いて2回目である。

2015年6月23日(火) 開演19:00  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ オンドレイ・レナルト    ピアノ/ ショーン・ケナード

Ondrej Lenardは1942年、スロヴァキア生まれ。革命前のチェコスロヴァキア放送響の首席指揮者(1977-1990)を務めた。スロヴァキア・フィル首席指揮者兼音楽監督(1991-2001年)、スロヴァキア国立歌劇場音楽監督(97-98)をはじめ世界の歌劇場で活躍。旧新星日本交響楽団首席指揮者(93-99)を務め、同団が東京フィルと合併した後も東京フィル名誉指揮者として共演。日本の他のオーケストラにも客演している。札響とは89、91、93年に定期で共演。(少なくとも3回は実演を聴いた記録がある。)日本で馴染みの指揮者。

〈PROGRAM〉
 スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より「モルダウ」 
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 op.18
 ドヴォルジャーク:交響曲第8番 ト長調 op.88

プログラムにラフマニノフが入っているのと、旧知のレナルトの指揮で興味が湧いた。プラハのオーケストラの来演で毎回スメタナ、ドヴォルジャークでは食傷気味の感があった。

ピアニストのSean Kennardは1984年、ハワイ生まれ。フィラデルフィアのカーティス音楽院で学ぶ。ジュリアード音楽院大学院修了。2013年エリザべ―ト国際音楽コンクールのファイナリスト。アメリカ国内の他、イタリア、ウルグアイなどでリサイタルを開催。09年東京デビューを果たし、これまでに読響、山形響と共演。

いつも開演20分前には会場に到着しているが、今日のエントランス・ホールの混雑ぶりは普段の混み具合とも違っていた。当日券売り場に列を作る人の数が延々と続いて、チケットを持って入場する人たちの列と区別できない状態で一層混雑していた。多分、当日に割引券で入場できる人もいちいち指定席の手続きで時間を要して長蛇の列ができていたように想像できた。(このような場合には特別にデスクが置かれて迅速な手続きが行われるのが通例。) ひどい混乱状態にならないのは冷静な国民性だろう。

入場手続きに時間を要して開演時間が過ぎた19時5分にチャイムが鳴りアナウンスがあった。毎回遅れる人はいるので、どこかで扉を締めないと収拾がつかない。オーケストラの楽員は楽屋のホアイエで立ちっぱなしの状態が10分は続いたのではないかと思われる。楽員がステージに登場した後にも遅刻者を座席に案内する状況が続いて、指揮者も全員が座り終るのを待っていた前代未聞の状態だった。900回ほど通っているKitaraでこんなことは初めての事態だった。主催者を始め関係者の猛省を求めたい。

開演時間は19時15分過ぎであった。静かに開演を待つ心をかき乱された人も少なからずいたのではないだろうか。指揮者の指揮ぶりを観察しようとホール全体も見渡せるP席から一部始終が見えてしまった。レセプショニストも大変忙しく対応に追われて気の毒であった。

多分93年以後も札幌を訪れている指揮者はほぼ満席の聴衆を「モルダウ」の世界に引き込んだ。チェコ音楽の祖、スメタナの交響詩《わが祖国》の第2曲「モルダウ」は単独で演奏される機会が多い。チェコ語で“Vltava”(ブルタヴァ)。プラハの街を流れていく河の名である。プラハ市民の愛する河にいろんな想いがこもっている。

チェコのオーケストラは何回も来演するが、ある程度プログラムが固定化されている。スロヴァキア出身のレナルトは二十数年前の札響定期で各演奏会にそれぞれドボルザークの交響曲第7、8、6番を1曲入れていたが、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなども入れて変化を持たせていた。今回はラフマニノフを選曲したのがとても良かった。

ショーン・ケナードは初めて名をきくピアニストであるが、堂々たる技巧とピア二ズムで聴衆の大絶賛を浴びた。鐘の音で始まる《ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番」は彼の曲でも最も有名だが、ソチ・オリンピックでの浅田真央がフリーに使用した曲にもなって、現在では多分日本人が最も好きなピアノ協奏曲になっているかもしれない。ケナードは美しい旋律に満ち溢れたドラマテイックな曲を華麗に演奏して満席の聴衆を感動の渦に巻き込んだ。
アンコール曲は「プレリュード Op.23-5」で更に聴衆の喝采を浴びた。

最後の曲は改めて言及の必要がない。レナルトの指揮ぶりに注目してP席を購入したが、期待以上の興味をそそる指揮の様子が観て取れて大満足であった。指揮棒を右手に、左手は指の細かな動き、その表情豊かな指揮ぶりに魅せられた。巧みに各楽器奏者を操り、時にはタクトを左手に持ち替え、右手でヴィオラ奏者を歌わせる場面もあった。楽譜をめぐりながら忠実に演奏する姿勢と自由自在に表情をつけて指揮する姿に惹きつけられた。
演奏終了は21時10分。帰りを急ぐ客はアンコールを聴けずに退場する人もいた。(時間通りに始まれば聴けた人も居たのではないか。)
アンコール曲は2曲。「ドヴォルジャーク:スラブ舞曲 第8番、第15番」。
アンコール曲の演奏ではタクトを指揮台に置いたままにして、オーケストラに自由に演奏させたり、顔を上げたり下げたり、ヘッドを動かす動作を見せて和やかな楽しい雰囲気を作り出した。聴衆も大満足! 終わりよければすべて良し!

※今回のプラハ放送交響楽団の日本ツアーは6月20日の山口に始まり、大阪、札幌、青森、岩手、東京、石川、愛知、和歌山、福岡、と続き、最後は7月5日鹿児島という長丁場。プログラムもドヴォルジャークをメインに、ベートーヴェンの交響曲、ショパンのピアノ協奏曲など曲目にも多様性を持たせ、ソリストも上原彩子やフジコ・ヘミングも組み合わされて自在だという。レナルトのプログラミングの特徴が出ているように思う。


第578回札幌交響楽団定期演奏会(2015年6月)

2015/2016シーズン最初の札響定期演奏会の日を迎えた。Kitara改修工事のため例年より2ヶ月遅れのスタート。2015年4月よりマックス・ポンマーが札響首席指揮者に就任し、名誉音楽監督の尾高忠明、名誉指揮者となったラドミル・エリシュカと共に新たな札響の音楽作りが始まる。

2015年6月20日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ ラドミル・エリシュカ

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調
 ブラームス:交響曲第4番 ホ短調

昨年11月の定期公演が録画され、Eテレで放映された時にエリシュカがインタヴューに答えて述べた言葉が印象に残っている。
「中欧文化圏の指揮者としてハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルジャークをレパートリーの中心においているが、それぞれの作曲家には固有のスタイルがある。 楽譜と向き合って様式をさぐり、自分で解釈を深め構築する。的確な身体表現で伝えるべき内容を楽員へ正しく伝えるのが指揮者の仕事である。」

エリシュカは札響首席客演指揮者に就任した2008年4月以来、ドヴォルジャークやヤナーチェクを中心とするチェコの音楽家のシリーズを展開した。やがてヨーロッパの音楽を広く取り上げた彼の力量には驚くばかりである。札響の楽団員だけでなく、札響定期会員の心を掴み続け、全国的にその評価を高めている。音楽的にも人間的にも魅力を増している指揮者と言える。
チェコでの革命以後、自国で指揮の仕事が出来なくなってチェコ国内で大学教授として教育指導に携わっていた。日本で演奏の機会があって脚光を浴び、札響とは相思相愛の仲という関係を築き上げた。今日では札幌以外の地で公演依頼を受けて彼の真価を発揮している。

ベートーヴェンの「交響曲第4番」は2管編成だが、フルートが1本しか使われていないため、彼の交響曲9曲の中で最小の楽器編成である。(*コントラバスが8本で他の楽器に比して多いように思った)。この曲の魅力は最近は聴くたびに広がってくる。フルートを始め管楽器が歌う旋律が特に印象的であった。ティンパニの客演奏者(読響首席を38年も務めた後、フリーで活躍中の菅原淳)の演奏ぶりも目立った。エリシュカは思い通りにオーケストラを動かしている様子が演奏終了後にも見て取れた。

ブラームスの「交響曲第4番」は札響の演奏歴で曲目別演奏回数が最も多い曲とされる。弦楽器の美しさは言うまでもないが、この曲では木管・金管奏者の充実した演奏も光った。比較的にテンポの速い指揮ぶりで、小気味よくオーケストラを操っているようであった。同じ曲でも指揮者によって曲の魅力の伝わり方が違ってくるのは当然だろうが、エリシュカはいつも聴衆を魅了する。ブラヴォーの声があちこちから上がった。鳴り止まぬ拍手に丁寧に応じて、楽団員への感謝の意を表す老巨匠の姿は溌剌としていた。各パートの首席奏者(特に客演奏者)に対する挨拶は本番前の指導の様子が読み取れる。
コンサート開始前と終了後に大平コンマスへの抱擁とキスはいつ見ても微笑ましい。老いて益々元気な様子は次回以降の楽しみを約束してくれる。

数日前から脊柱管狭窄症の症状が出て整形外科に通ってリハビリを始めた。コンサートやボランティア活動でKitara通いが続いて少々過労気味か? 午前中に札響くらぶの総会出席の予定があったが、欠席して身体を休めた。午後のコンサートに出かけて、終った後に開かれたKitaraレストランでの札響くらぶ交流会に出席。音楽の話に花が咲いて足のしびれも忘れたが、帰りの道程で足の痛みが出た。時間はかかりそうだが来週以降のコンサートに備えて気長に症状と付き合うしかない。

カワイコンサート 中井恒仁 ピアノ・リサイタル

KAWAI CONCERT 2015 (第2230回)
2015年にカワイコンサートが日本国内で17回予定されているが今年度10回目のコンサート。14人のピアニストがリサイタルを開くが、札幌でのゲストが中井恒仁。以前から名前を知っていたピアニストで初めて聴く機会が出来た。

中井恒人(なかい のぶひと)は1969年、神奈川生まれ。東京藝術大学、同大学院、ミュンヘン音楽大学大学院、モーツァルテウム音楽大学で研鑚を積む。89年日本音楽コンクール第3位、ブラームス国際コンクール第2位、セニガリア国際コンクール第1位など受賞歴も多数。オーケストラとの共演も数多く、その他に夫人である武田美和子とのピアノ・デュオ、室内楽、音楽祭への参加など非常に幅広い活動を展開している。夫人とのブラームスピアノ作品集の評判が高い。

2015年6月18日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

PROGRAM
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2 「月光」
ブラームス:6つのピアノ小品集 作品118より
           1.間奏曲  2.間奏曲  3.ロマンス
       パガニーニの主題による変奏曲 作品35 第2集
ショパン:バラード 第1番 ト短調 作品23
      ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作
      ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 「英雄」 
リスト:愛の夢 第3番、 メフィスト・ワルツ 第1番

昨日の大ホールに続いて、小ホールでのコンサート。Kitaraがオープンする前の1997年4月のホール見学で電気代だけで1日30万円の費用が掛かるという説明を受けたのを記憶している。今回の改修工事で照明器具のLED化による節電効果は大きい。多様な照明演出が可能になる最新の照明操作卓も導入される。照明設備の他に音響設備がデジタル式に更新され、舞台機構で多様なステージ・セッテイングも可能となる。Kitaraの見た目は大きく変っていない。改修工事による変化は外観上は判らないと思う。“Seeing is believing.”という英語のことわざ通り、先ずは自分の目で確かめてみてはどうでしょう。

前半はドイツの巨星「ベートーヴェン」と「ブラームス」、後半は東欧で生まれパリで活躍した「ショパン」と「リスト」。この4人の作曲家は映画化された場面で登場している人物で、音楽が趣味でなくても殆どすべての人に知られている作曲家。

ベートーヴェンの曲は今更、言及の必要がない。ブラームス晩年のピアノ曲は私自身親しむようになってそれほどの月日が経っていない。クライバーンやアファナシェフのCDを持っていたが、2年前の田部京子の演奏会の折にブラームス・ピアノ小品集のCDを購入した。以前より演奏会でブラームスの小品集を聴く機会が増えた。作品116~119の20曲。ブラームスのピアノ作品は地味で華やかさに欠ける印象を受けがちだが、演奏頻度が高くなると彼の音楽の良さが解ってくる気がする。
「パガニーニの主題による変奏曲」は2000年第4回浜松国際音楽コンクールで優勝したガヴリリュクのCDで聴き親しんだ。変奏曲を得意としたブラームスが、パガニーニの「24のカプリ―ス」の第24番を主題として高度な技巧を散りばめた華やかなピアノ曲に仕上げた。

ドイツ物を得意として、特にブラームスの全曲シリーズで名を馳せた中井恒仁は、現在は桐朋学園大学准教授も務めているせいか、トークにも慣れているのか作曲家と作品の適切な説明を加えながら演奏を行なった。

ショパンは1810年ポーランド生まれ、リストは1811年ハンガリー生まれで、二人ともパリの社交界で華やかな活躍を繰り広げたピアニスト・作曲家。ショパンが作り上げた独特の雰囲気を持つ作品が続けて3曲演奏されたが、静かに名曲に聴き入るオーディエンスの姿が印象的でもあった。
リストの「愛の夢 第3番」は当初はソプラノ向けの歌曲として作曲されたが、後にピアノ独奏版に編曲してピアノ曲として有名。最後に演奏された「メフィスト・ワルツ 第1番」はアルゲリッチの演奏で聴き始めた頃からすると、今は聴き慣れてきた。ファウストが悪魔メフィストに魂を売ってしまうストーリー。超絶技巧の難曲で聴衆も鍵盤を動き回る運指に驚きの表情。

全力で弾き切って疲れも見えた様子だったが、アンコールが2曲。
「ショパン:幻想即興曲」、「ブラームス:インテルメッツォ Op.117-1」。

使用ピアノ/カワイフルコンサートピアノ SK-EK







タリス・スコラ―ズ~キング・オブ・クワイア~(世界最高のアカペラ合唱団)

Kitara リニューアルオープン記念
THE TALLIS SCHOLARS

世界最高のア・カペラ合唱団といわれるルネサンス教会音楽のスペシャリスト《タリス・スコラ―ズ》。
日本ツアー15回記念コンサートで、休館が4ヶ月にわたった札幌コンサートホールKitaraの改修工事後の最初のコンサートとなった。Kitaraでの公演は99年以来2回目の公演という。99年2月、ヴァチカン・システィ―ナ礼拝堂合唱団は聴いたが、タリス・スコラ―ズは今回初めてであり、長期間の休館後の最初のコンサートなので期待度が高まっていた。

エントランスホールは入場者で混みあっていた。開演時間まで余裕があったのでチケットセンターで10月コンサートの先行発売のチケットを購入した。休館中のチケットは電話で申し込みをしてコンビニで受領するか、郵送してもらう方法で数回手続きをしていた。これからは以前のように窓口でチケットが先行発売中に購入できるので不便を蒙らなくても済むようになって一安心。

大ホール・ホアイエはいつもの賑わいを取り戻して、広い空間には人々の興奮が伝わってくる雰囲気が漂っていた。売り出されたチケットはsold out.。ホアイエも大ホールも外観的には以前と変わらない状態。いつもと同じとはいえ、オープニングを待つ人々にはやや緊張感もあったように感じた。

2015年6月17日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

指揮/ ピーター・フィリップス

〈プログラム〉
 ジョスカン・デ・プレ:喜びたまえ、キリストのみ母なる乙女
 パレストリーナ:教皇マルチェルスのミサ曲
 アレグリ:ミゼレーレ
 ベルト:彼は誰々の息子だった
 ベルト、トレンテス、パレストリーナによるヌンク・ディミッティス(主よ、今こそ御身のしもべを)

1973年、ピーター・フィリップスによって創立されたタリス・スコラ―ズは年間約70回の演奏を教会やコンサートホールで行っているという。ルネサンス教会音楽において世界最高の合唱団の地位を占める。
指揮者の他にクワイア(Choir)のメンバーはソプラノ4名、アルト2名、テノール2名、バス2名の計10名(男5、女5)。

デ・プレ(1450/55頃ー1521)は15、16世紀のルネサンス時代を代表するフランスの作曲家。演奏曲は聖母マリアを讃えた作品。(約5分)

パレストリーナ(1525-94)は前回のKitaraの公演(1999年6月)でも取り上げられたイタリアの作曲家。「教会音楽の父」とも呼ばれるくらい厖大な数のラテン語による教会音楽を作曲した。このミサ曲はこのクワィア(聖歌隊)が何度もコンサートで取り上げてきた作品のひとつ。パレストリーナがシスティ―ナ礼拝堂聖歌隊に所属していた頃の作品で、声楽的な美しさが際立つ大曲。(約35分)

後半のプログラムはアレグリ(1582-1652)の《ミゼレーレ》で始まった。1999年のコンサートでも演奏された有名な曲。「ミゼレーレ」とはラテン語で「憐れみたまえ」という意味で、旧約聖書の詩編に基づく。アレグリがシスティ―ナ礼拝堂聖歌隊のために作曲した作品。この曲にはモーツァルトに関わるエピソードがある。この宗教曲はシスティ―ナ礼拝堂でしか演奏されず、筆記も持ち出しも厳禁の秘曲とされる。14歳のモーツァルトはこの曲を聴いた後、宿で記憶を頼りに五線紙に書き留め、後日もう一度聴いて訂正して完成させたという。
ポリフォニーと呼ばれる多声音楽で5声の第一合唱と4声の第二合唱が交互に歌う。第一合唱がステージ(4名)とオルガン演奏台前(1名)、第2合唱が3階席後ろの通路(4名)に配置されて歌われた。偶々、両方の歌手が見えて聴こえやすいRA席にいたので非常に興味深かった。 
タリス・スコラ―ズが18番とする作品らしく、コンサートでのホールの利用形式に工夫があって印象深い演出と思った。(約15分)

ベルト(1935-  )はエストニアの現代作曲家。「彼は誰々の息子だった」は2009年にアイスランドの首都レイキャビクからの委嘱作。イエス・キリストの直系の祖先をたどっていく新約聖書の言葉をテキストにした作品。ルネサンス音楽との共通性が強い印象の曲。(約7分)

「ヌンク・ディミッティス」はラテン語で「今こそ主よ、僕を去らせたまわん」という意味。一日の務めを終えて最後の祈りとして捧げてきた賛歌。3人の作曲家がそれぞれ聖務日課の終歌で歌われる曲を残している。現代の作曲家とルネサンス時代の作曲家の作品の聴き比べは面白い試みだと思った。
ベルトの作品は2001年の作曲。(約7分)  
トレンテス(1510頃-80)は16世紀のスペインの作曲家。(約4分)
パレストリーナ作曲の作品は前半のプログラムにも入っていた。(約4分)

「グレゴリオ聖歌」は聞いたことがあるが、無伴奏で聴くルネサンス時代のポリフォニー楽曲は素晴らしかった。人の声がまるで楽器のようであった。大ホールに響きわたる美しいハーモニー。心洗われる美しい歌声に魅了された。歌詞が解らなくても安らぎのひと時を過ごせたことに満足感を味わった。

チケットは完売のはずだが4ヶ月以上前からの売り出しで、急に来れなかった人もいたのだろうが、空席が数十席以上あったのは残念。横並びでの空席は招待券の受領者かと余計な想像もした。

感動した聴衆からブラヴォーの声もあり、万雷の拍手に応えてアンコール曲が2曲歌われた。

今回の日本公演は全国8都市(福岡、豊田、西宮、東京、札幌、新潟、岐阜、京都)での開催。各地での聴衆を感動の渦に巻き込むことは疑いがない。







朝日カルチャーセンター(札幌) 公開講座 「ロシア音楽におけるジャポニズム」

無料の文化講座に参加することも年に数回あるが、カルチャーセンター主催で実施される有料の講座に参加することもある。最近では2月に朝日カルチャーセンター主催の「ラフマニノフと祖国ロシア」の公開講座に参加した。ラフマニノフの音楽と生涯について比較的に知識がある方だった。彼の音楽的特徴を作品説明とDVD・ピアノ鑑賞を通して確認することとなった。ただ資料の楽譜が読めないのが残念! ラフマニノフの作品のCDは沢山あって彼の作品名には通じているが、「徹夜祷 Op.37」の曲名だけは知らなかった。この時の講師は今回と同じで札幌大学教授でピアニストの高橋健一郎。

2015年6月12日(金) 18:00~19:30  朝日ビル4階

朝日新聞とJTBの文化活動 2015年春講座

ロシア音楽の魅力 ロシア音楽におけるジャポニズム
講師:札幌大学教授 高橋健一郎
演奏:ピアノ/高橋健一郎  声楽/松井 亜樹 

19世紀後半に日本の浮世絵や和歌などがヨーロッパに紹介されて、「ジャポニズム」が大流行した。その影響が20世紀初頭のロシア音楽に見られるという。ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチなどロシアの作曲家たちが日本の和歌に基づいて作曲した歌曲の話は初めて聞いた。(プロコフィエフがロシア革命勃発直前に日本に一時滞在して「越後獅子」のメロディを耳にしてピアノ協奏曲第3番に挿入したとか、山田耕筰と連絡を取ろうとした話などは知られているが、、、。)

ストラヴィンスキーは1913年に万葉集の山部赤人、古今集の源当純、紀貫之の3つの和歌のロシア語翻訳をテキストにして歌曲を書いた。松尾芭蕉の俳句や万葉集、古今集の和歌を歌曲にしたルリエーやチェレプニンなどのロシア人作曲家もいるという。
ショスタコーヴィチも《日本の詩人の詩による6つの歌曲》作品21を書き残した。
講座の中でこれらの歌曲がロシア語で歌われた。解説を読みながら何となく聞いた感じで、ゆったりとした気持ちで鑑賞できる心の余裕がなかった。

浮世絵の芸術家に及ぼした影響は知られているが、日本の詩がロシアの作曲家に与えた影響は想像できずにいた。

事前に知識のある講座ならともかく、今回は殆ど知識のないテーマで盛り沢山の内容だったので鑑賞力が不十分であった。後でその内容が充分に理解できた気がした。

最後のテーマはローゼンブラットの日本曲。ローゼンブラットは1956年生まれのロシアのピアニスト・作曲家。音楽の多くのジャンルで多岐にわたる活動を展開している。彼の名を初めて聞いたのはニコライ・トカレフのコンサート。トカレフの2007年の日本デビュー10周年のコンサートの折に、ローゼンブラット作曲「パガニーニの主題による変奏曲」を演奏した時であった。トカレフは2004年以来毎年Kitaraで演奏して、毎回楽しみにしていた好きなピアニストだった。ローゼンブラットを好んで弾きだした様子が判って特に印象に残っていた。翌年から来札の機会が無くなり、13年5月に4年ぶりの日本公演(熊本、福岡、東京の3公演)のニュースを知った。その時に「ニコライ・トカレフ札幌公演の期待」と題してブログを書いたら(http://teruoblog687.blog.fc2.com/blog-entry-87.html), “招聘元の音楽事務所の倒産で全国公演は困難でしょう”との事情通の方から連絡をいただいたことがある。

話題は逸れたが、ローゼンブラットは07年以来初めて耳にする名前。高橋教授によるとローゼンブラットは日本は憧れの国で、2005年の初来日で「さくらさくら」「浜辺の歌」「赤とんぼ」を使って《日本の主題によるファンタジー》を日本の観客に披露。続いて06年に仙台を訪れた際には宮城県にゆかりの深い「荒城の月」「斉太郎節」が主題に使われた《宮城ファンタジー》をニコライ・トカレフとデュオでコンサートを開いて初演。
以上の2曲に続いてピアニスト高橋健一郎は最後に《鉄腕アトムの主題によるファンタジー》を演奏。ノクターンの特徴とジャズの要素を組み合わせた曲。日本人すべてに馴染みのメロディがトカレフの来日公演の際にアンコール曲で大きな話題になったという。作曲者自身の初来日でも自作自演が実現。

本日の講師2名が出演する「松井亜樹ソプラノリサイタル」が去る3月6日に行われていて、その時のブログで彼らのプロフィールは紹介済みである。(http://teruoblog687.blog.fc2.com/blog-entry-282.html)
高橋健一郎はロシア音楽の研究者として地道な研究と普及に努めていて、日本アレンスキー協会副会長も務めている。札幌の音楽家のピアノ伴奏ではその演奏力は群を抜くと感じている。いつか彼のリサイタルを聴ける日を楽しみにしている。

札幌シンフォニエッタ 第56回演奏会

札幌シンフォニエッタは室内オーケストラとして約30年前から定期的に演奏会を開催しているようである。数年前にオーケストラ名が目に入ったが、スケジュールが混んでいて聴いてみる機会がなかった。今回は6月初旬の日程が空いていて、オーボエ奏者の出演が目に留まり聴いてみることにした。2週間ぶりのコンサート鑑賞となった。
会場は北24条西5丁目にあり自宅から徒歩で30分ほどの距離で、昼間の開演だと散歩も兼ねて適当な距離にあるので便利である。

2015年6月7日(日) 13:30開演  札幌サンプラザホール(座席数:506)

指揮・ファゴット: 坂口 聡(札幌交響楽団首席ファゴット奏者)
オーボエ: 金子 亜未(札幌交響楽団首席オーボエ奏者)

〈オール・モーツァルト・プログラム〉
 セレナード「グラン・パルティ-タ (8管楽器版)」 変ロ長調 K.Anh.182
 オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
 歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲
 交響曲 第32番(序曲) ト長調 K.318
 交響曲 第40番 ト短調 K.550

モーツァルトは50代になってから好んで聴くようになった。特にモーツアルト生誕250年の2006年には1年間1日も欠かさず毎日モーツァルトの曲を聴いていた。ベートーヴェンが1番好きな作曲家であるが、所有しているCDの数はモーツァルトの方が多い。モーツァルトの交響曲は41番まで知られているが、ケッヘル番号の付いていない交響曲が数曲ある。10枚のCD Boxの交響曲全集に46SYMPHONIESが入った安価な輸入盤がある。(*14・5歳の時に書いた曲が後に判って交響曲の数が増えた。)

K.182の交響曲は手元にあるが、K.Anh.182は編曲版かなと思った。演奏が始まると何となく聴いた感じのする曲であった。オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、コントラバスの楽器編成。本来7楽章構成の曲は50分もかかるので、本日は短縮して第1~3と第7楽章(?)で30分の演奏。札響首席奏者と一緒に演奏するメンバーの喜びも伝わってくる演奏は安定感があって最初から安心して聴けた。見事な演奏であった。
帰宅して調べてみたら、オルフェウス室内管の演奏によるCDが出てきた。曲目が「セレナード 第10番 変ロ長調 K.361(370a)《グラン・パルティ-タ》」となっていた。明日にでも7・8年ぶりに聴いてみようと思う。

オーボエ協奏曲は耳慣れたメロディ。ザルツブルク宮廷楽団のオーボエ奏者から依頼されて書いた曲を、後にフルート用に二長調で編曲して「フルート協奏曲第2番」としても演奏される機会が多い曲。原曲はオーボエの曲である。
金子亜未は2013年7月の札響夏の特別演奏会でこの曲を演奏した。彼女は2012年7月札響に首席奏者として入団以来、オーボエの美しい音色を響かせている魅力的な奏者。昨年9月弦楽三重奏団レイラと共演して「モーツァルト:オーボエ四重奏曲」で聴衆を魅了した。札響入団以来、その逸材ぶりを発揮している。今日も親しまれた魅惑的な作品をカデンツァを交えながら演奏してホールを埋めた聴衆の心に強烈な印象を与えた。
アンコールを求める拍手が鳴りやまなかったが、前半2曲もの熱演もあって、アンコール曲は無かった。

歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲はモーツァルトのオペラ序曲として最も親しまれた曲のひとつ。

「交響曲第32番」は3楽章構成で10分弱の小品。モーツァルトはコンサートの最初やオペラの前に、オーケストラだけの短い曲「シンフォニア=序曲」を書くことを常に迫られていた。これはホルン4本、トランペット2本、ティンパニが伴う序曲らしい輝かしい響きの曲。
演奏会では初めて聴いた曲も含めて、小編成の曲では期待以上の演奏ぶりに満足した。

「交響曲第40番」は後期3大交響曲として知られ演奏機会の多い交響曲。「第25番」とともにモーツァルトの交響曲で珍しい短調の調性による曲で、2曲ともにト短調。全体的に暗い雰囲気で悲痛の叫びがする曲ではあるが、情緒もあって音楽的に深みのある作品。演奏で少し気になったのがホルンの響き(1・2度だけ、、、)。ホルンはやっぱり難しい楽器だといつも思う。

小さな交響楽団の意味を持つ「シンフォニエッタ」で、総勢45名のアマチュア・オーケストラ。少数精鋭を目指して小ぶりながらも良い演奏を視界に入れた音楽作り。2管編成を基本とする特徴あるアマオケとして成長することを期待したい。

指揮にあたった坂口は札幌シンフォニエッタとは今回が8回目の共演とあって、このオーケストラとの信頼関係も十分で楽団の発展に寄与している様子がうかがえた。指揮ぶりも安定していて、共演を通して彼自身の指揮能力も高め、ファゴット奏者としてだけでなく幅広い音楽活動を展開していることが理解できた。

※ブログの記事ランキングに気付いたのが数カ月前で、5月に「本年度アカデミー賞主要部門ノミネート作品の映画鑑賞」の記事が1位でビックリ! ベスト5に入った記事は2月「札響第576回定期演奏会」、「上野星矢フルートリサイタル」が各5位、5月「札幌西区オーケストラ第29回演奏会」、「札響シンフォニックブラス」が各3位、5月「クラウディオ・アバド&ジョージ・セル初来日公演」が4位。6月に入って「札幌フィルハーモニー管弦楽団第53回定期演奏会」が1位で再度ビックリ!

定期購読者は殆どいない筈だが、アマチュアオーケストラの場合は関係者の口コミでブログを一時的に読んでくれる人が多いのかも知れない。順位の基準が如何なっているのか判らないが、クラシック音楽全体の順位では50位以内は1回だけ(本州の見知らぬ特定の人の操作(?)と思われることがあって4位だか6位になっていた不可解なことがあった。)で、その時は却って不快な気分だった。75~100位が普通で、最近は60~75位が多い。原則としてコンサートの記録を書いているので、10日以上も書いていないと100位以下に落ちる。以前は150位以下になることもあったが、最近はどういう訳か120位以下にはならない。

2012年のブーニン、Kitaraホール、ユンディ・リ、の記事など過去の記事にアクセスする人が多いのが私のブログの特徴である。アメリカからの特定の人が何台かのパソコンかスマートフォンを使って毎日何十回もアクセスしてくる状況が一段落してホッとしている。広告を出していないので私のブログを悪用していたのではないかと思われることが多々あって、ブログを止めようかと思った時期もあった。(広告は出し方が判れば、いずれは出す気持ちになるかもしれない。)

6月中旬から7月末まで2日に1回はコンサート鑑賞の予定。ブログを書いている暇はないかもしれない。書いても短いものになるだろう。




 
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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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