三上亮(Vn)&金子鈴太郎(Vc) デュオリサイタル

三上 亮(ヴァイオリン)&金子鈴太郎(チェロ)デュオリサイタル ゲスト 高 実希子(ピアノ)

2015年4月27日(月) 開演 7:00p.m. 会場:ザ・ルーテルホール

Kitaraが休館する前に今日のコンサートのチラシが配られていた。札幌交響楽団のコンサートマスターを2007年~11年まで務め、昨年10月にヴィルタス・クヮルテットの演奏会にも来札した三上亮が出演するコンサートだったので2月初旬にチケットを買い求めていた。

三上亮(Ryo Mikami)は1976年、水戸市生まれ。東京藝術大学在学中に日本音コン第2位。東京芸大首席卒業。99年、米国アスペン音楽祭に参加してドロシー・ディレイに師事。04年、ローザンヌ高等音楽院でピエール・アモイヤルに師事。スイス国内を拠点にヨーロッパ各地で演奏活動。07年に帰国後、札響コンマスを4年間務め、11年に退団。その後、東京芸術大学非常勤講師、日本音コン審査員などを歴任しながら、東京モーツァルトプレイヤーズ・コンマスの他に室内楽活動やオーケストラ客演コンマスなど多方面で活躍中。

金子鈴太郎(Rintaro Kaneko)は桐朋学園ソリスト・ディプロマコースを経てリスト音楽院で学ぶ。 国内外の数々のコンクールで優秀な成績を収め、1999、2000年イタリア・シェナのキジアーナ音楽祭で名誉ディプロマを受賞。03~07年大阪交響楽団首席チェロ奏者、07~08年、同楽団特別首席チェロ奏者。現在は東京モーツァルトプレイヤーズ・チェロ首席、Super Trio 3℃などで活躍中。

高実希子(Mikiko Ko)は函館出身のピアニスト。桐朋学園大学ピアノ専攻首席卒業。2008年、パリ国立高等音楽院卒業。2008年イル・ド・フランス国際ピアノコンクールでドビュッシー特別賞を受賞。現在、ソロ・室内楽においてフランス・日本各地で積極的に演奏活動を行なっている。

〈PROGRAM〉
 1部 エルガー:愛の挨拶 (トリオ)
     ラヴェル:ヴァイオリンとチェロの為のソナタ (デュオ)
     ギス:God Save the Kingによる変奏曲 (デュオ)
 2部  チャイコフスキー:偉大な芸術家の思い出 (トリオ)

エルガーの作品で「威風堂々 第1番」と並んで有名な曲。 イギリスの作曲家であるが出版の際に経緯があって、曲のタイトルはフランス語“Salut d'amour”となった。「愛の挨拶」の英語タイトルは“Love's Greeting”である。
優美な調べで親しまれ、エルガーはピアノ曲、ヴァイオリン曲、小編成の管弦楽曲などいくつもの版を残した。

三上ファンが多く詰めかけたのか、入場時に道路にまで並ぶ人の列。会場は満席状態で、札幌公演に先立って函館で2種類のコンサートを行ってきて車で札幌入りしたとのこと。ほぼ満員の会場で聴衆の期待に応える意気込みも語られた。
トークが苦手という三上に代わって、以後、金子が進行役を務めた。(彼は話が得意そうで自制しながら進めた。)

ラヴェルが1920年から1922年にかけて作曲した珍しい楽器編成の作品。ドビュッシーの追悼曲として発表済みの作品を第1楽章として、4楽章構成にしてソナタとした。ストラヴィンスキーやヒンデミットなどの現代作曲家の音楽にも繋がる第一次世界大戦後の音楽を感じ取れた。今まで聴き慣れたラヴェルの音楽とは違った傾向の曲が聴けて興味深かった。
ヴァイオリンの極めて高度の技量が必要で、演奏が難しい曲に思えた。チェロがヴァイオリンに寄り添って支えている様子が感じられたが、金子の個性かも知れない。20分程の曲。
演奏前に三上は昨年10月に初めて金子と共演してから彼とは20数回共演を重ねていると話したが、音楽的にも相性が合うのだろうと思った。(* 先月ピアニストの近藤嘉宏が三上亮との室内楽共演の様子をtwitterに載せていた。室内楽を気軽に楽しむアーティストが増えているのを実感する。)

ギス(Ghys)(1801-48)は聞いたこともない名前。「God Save the Kingの旋律による華麗にして協奏的な変奏曲」という長い曲名。原題の“God Save the King”は英国国歌。(*現在の英国国歌は“God Save the Queen”) 。オリンピックの表彰式などで度々耳にする機会のある聴き慣れたメロディが繰り返されるので初めて耳にする曲でも親しみが湧く。10分程の曲。

休憩後はチャイコフスキーの大曲。昨年12月、レーピン(Vn)、クニャーゼフ(Vc),コロべイニコフ(Pf)のトリオでの生き生きとした名演奏が脳裏にある。今年は演奏会の曲目にも度々選ばれているのを目にする。室内楽では私の最も気に入りの曲になっている。いつ、何度聴いても飽きない。

金子のトークで初耳だったことがあった。ロシアでは有名人が亡くなった時に作曲家が「ピアノ三重奏曲」を書く習わしがあったという。チャイコフスキーが亡くなった1893年にラフマニノフが「ピアノ三重奏曲」を作曲していることに気付いていなかった。調べてみたら曲のタイトルに「偉大な芸術家の思い出」と書かれていた。

「偉大な芸術家の思い出」は当時ロシアの偉大なピアニストであったニコライ・ルビンシュテインの死を悼んで作曲された。今日では高い人気を誇るチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」がルビンシュテインから酷評を浴びたエピソードは余りにも有名である。
この曲は悲劇的雰囲気の曲であるが,憂愁をたたえながらも堂々としたスケールの大きい作品である。親しみのあるメロディが聴く者の心に深く染み込むように響く。この曲で全体的にピアノが活躍する場面が多い。日本の音楽界で活躍する二人に交じってパリ音楽院で研鑚を積んだ高が堂々と渡り合った。
50分近い長大な曲は深い悲しみに沈みながら葬送行進曲のリズムで静かに閉じられる。時間の長さを感じないうちに曲が終ってブラボーの声が会場を包んだ。熱演で時計の針は9時を過ぎていた。

進行役は最後まで金子が担当した。トリオのアンコール曲はチャイコフスキーの「悲愴」に因んだ「タンゴ」。
デュオのアンコール曲は「ヘンデル:パッサカリア」。
このアンコール曲は素晴らしく、聴衆の大喝采を受けた。ブラボーの掛け声に応えて、金子のピアノと三上のヴァイオリンで曲が奏でられると、いつの間にか「津軽海峡冬景色」の調べ、途中からピアニストの高が金子を押しのけて「モンティ:チャールダ―シュ」、チェロに戻ったはずの金子から生み出される音は口笛に変わっていて、会場から笑いが出て拍手喝采! 最後は会場も楽しい雰囲気に包まれて9時20分過ぎに終了。


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マチュピチュ村を創った日本人の話

世界遺産マチュピチュのことを知っている人は多い。マチュピチュ遺跡は15世紀、南米アンデスの山中にインカ帝国が築きあげた謎の要塞。5万km²に渡って神殿や居住区、段々畑などが残っている。切り立った山に囲まれたたずまいは神秘的である。この遺跡は1911年にアメリカの冒険家ハイラム・ビンガムによって発見されて世界の注目を集めた。
標高2400mの急峻な尾根に築かれた天空都市の麓に村を作った人の物語は知られていないし、関心も集めていない。私自身も昨年3月末から10日間の南米旅行でペルーのマチュピチュを訪れた。ロサンゼルス経由でペルーのリマ、クスコへと飛行機を乗り継ぐ長旅。標高3000mを越えるインカ帝国の古都クスコからバスに乗り換え、途中で観光列車に乗り換えてマチュピチュ村へ。100年前は先住民4家族が暮らしていたそうである。
      
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100年前、マチュピチュ(Machu Picchu)に最初の村を作った日本人の話が昨夜の「世界ふしぎ発見!」というテレビ番組で紹介された。初めて聞く話に興味津々でテレビを観た。
18世紀にスペイン人がペルーを征服した後も、アメリカ人が発見するまでその存在を知られていなかったマチュピチュ遺跡。1923年、その山の麓に野内与吉(1895年、福島県出身)がペルーに渡って辿り着いた村には数家族しか住んでいなかったそうである。現在は80軒もホテルがある村に作り上げた功労者が野内与吉という。
彼は材木商として材木の切り倒しの仕事でペルーの奥深くに入ったと思われる。(材木を運ぶ列車が今日では観光列車になった。)村人は川の水を飲み水にしていたが、野内は山の湧水を引いて村人が飲めるようにした。人々はヴァイオリン、マンドリン、ギターを弾いて喜んだという。1935年に彼はホテルを建設。その後、川の水をせき止め、ダムを作って水力発電で電灯もつけた。海外の旅行客に親しまれている村の戸外の温泉プールも彼が作ったとされる。村の誰からも慕われる人物だった。
1941年、太平洋戦争勃発で日本人移民が強制収容所に入れられた時にも村人に守られた。1947年の大雨による被害でもクスコ新聞に窮状を知らせ、村の復興につなげて村の偉人になっていた。
1958年、三笠宮殿下のマチュピチュ訪問による日本の新聞報道で日本への一時帰国のための寄付金が集まり、彼を招待したとされる。

野内与吉は子供のホセ・ノウチに日本語を教えなかった。息子はインタビューで日本語で返答できないことが父親への唯一の不満と言えるぐらい、父親は優しい立派な人だったと話していた。(*第二次世界大戦のため家でも日本語は使わなかったと想像される。)
今回の《世界ふしぎ発見!》の話題は黒柳徹子も初耳だった。野内の子孫がペルーで“Yokichi Nouchi ”のサインが書かれた文書をたどってその存在が明らかになった。
マチュピチュ遺跡訪問の折にマチュピチュ村に一泊して早朝、散歩を楽しんだが、その映像をテレビで一年ぶりに観れて懐かしかった。同時にマチュピチュを訪れる日本人なら野内与吉の足跡を当然知っておくべきであると思った。

寝不足と高山病を心配しながら4時間も歩き回ったマチュピチュ遺跡! 遺跡内にトイレは無く、水分補給をしながらの観光に不安はあったが、汗をビッシリかいて心配無用であった。あちこちで息を吞むような絶景で暫し満足感を味わった。
     
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オーケストラHARUKA 第12回定期演奏会

今日は統一地方選挙の投票日。投票を済ませてからコンサート鑑賞に向った。Kitaraが休館になってから約2ヶ月になるが、チラシなどでのコンサート情報が少なくて、ネットで調べて2年ぶりにこのオーケストラの演奏を聴いてみることにした。

2015年4月12日(日) 13:30開演  札幌市教育文化会館大ホール

指揮/ 三河 正典

〈プログラム〉
 グリーグ:劇音楽「ペールギュント」 作品23より 
 シベリウス:交響曲第2番 二長調 作品43

前回2013年4月、創立10周年に開催した第10回定期演奏会で[オーケストラHARUKA]は札幌市民芸術祭奨励賞を受賞。今回も前回と同じ指揮者による演奏会。
Webの演奏会情報では「ペールギュント組曲 第1番・第2番」となっていたが、実際のプログラムは劇付随音楽「ペールギュント」であった。組曲のみの演奏しか聴いたことが無かったので、劇音楽20数曲のうち、全5幕のストーリーに沿って11曲が演奏されて一層新鮮な気持ちで演奏会に臨めた。

グリーグ(1843-1907)はノルウェーの文豪イプセン(1828-1906)の依頼を受け、2年がかりで劇音楽を作曲して1875年に完成した。ノルウェーの伝説的人物“ペール”を主人公にしたイプセンの詩劇よりもグリ‐グの音楽の方が有名になった。その後、グリーグはこの劇音楽を編曲し管弦楽組曲を2つ編んだ。(第1番 作品46と第2番 作品55で各4曲編成)
 
本日、演奏された曲は組曲に編まれた8曲の他に3曲が加わり、第1幕~第5幕までの物語の流れに沿って全部で11曲。ナレーション付きでストーリーが解りやすい配慮がなされていた。(ナレーション:高橋弥子)

〔第1幕〕 ①前奏曲「婚礼の場で」、②ノルウェーの花嫁の行列
〔第2幕〕 ③前奏曲「花嫁の略奪とイングリッドの嘆き」、④山の魔王の宮殿にて
〔第3幕〕 ⑤オーゼの死
〔第4幕〕 ⑥前奏曲「朝の気分」、⑦アラビアの踊り、⑧アニトラの踊り、⑨ソルヴェイグの歌
「第5幕」 ⑩前奏曲「ペールギュントの帰郷」、⑪ソルヴェイグの子守唄

曲は知っていてもストーリーとの繋がりが明確でなかったので、今回はメロディが明瞭になって曲をより深く鑑賞できて大変よかった。ナレーションが入ることで、曲全体の鑑賞が途切れるのは止むを得ないと思った。音楽鑑賞で曲の流れの観点からは組曲の順番が物語の流れとは違う編成になっているのは納得できる気がした。とにかく、今回は面白い試みで楽しめた。

シベリウス(1865-1957)は2015年が彼の生誕150周年に当り、今年は彼の曲が世界中で演奏される機会が多くなると思う。札響の音楽監督を務めた最後の3年間にマエストロ尾高はシベリウスの交響曲全7曲を演奏した。その折にブログでシベリウスの生涯を含めてブログに書いたので、今回は改めて書くことはしない。
 
シベリウスの交響曲の中で最も有名でプロのオーケストラで聴く機会の多い「第2番」の感想をアマチュアのオーケストラの演奏を聴いて書くのは難しい。この3年間で札響の名演奏を聴いた印象が生々しい。
いつも思うのは仕事の合間に集まって限られた時間でハーモニーを作り上げる音楽作りは大変だろうということ。そのような状況でアマチュアの音楽愛好者が心をひとつにして音楽発表を行って成果を上げていることは実に素晴らしい。
今日は第1楽章、第3楽章が印象的に聴けた。特に第3楽章でのフルートの響きが美しかった。ピッチカートが多用される第2楽章のほの暗い音楽はこの曲の特徴でもあるのだろうが、何となく他の楽章に比べて今ひとつ心にスッと入ってこなかった。最終楽章のオーケストラ総奏での堂々としたフィナーレは見事で、本当に素晴らしかった。管楽器奏者の健闘を称えたい。フィンランド讃歌が歌い上げられた感じが伝わった。

指揮者とオーケストラの呼吸もピッタリで最後の盛り上がりに聴衆の気分も高揚した。アンコール曲も心が浮き立つ行進曲風の聴き慣れた音楽で良かった。
アンコール曲は「シベリウス:カレリア組曲 第3曲 行進曲風に」。

※前回の札響による「第2番」の演奏は2014年3月、第567回演奏会。
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橘高昌男リサイタル(チェンバロとモダンピアノで)

「4月4日はピアノ調律の日」記念コンサート
5年前の《ピアノ調律の日 記念レクチャー&コンサート》に於いて上野真が三台のフォルテピアノでベートーヴェンを弾いたのを記憶している。ここ札幌では毎年この時期に日本ピアノ調律師協会北海道支部が主催して記念コンサートが開催されている。今回は「北海道ゆかりの音楽家シリーズ」の第2回目として橘高昌男氏が招かれた。

橘高昌男は2005年、「Kitaraのオータムコンサート~日本音楽コンクール優勝者によるコンサート」に外山啓介と共に出演した。同じ札幌出身ということでのKitara自主企画のコンサートであったと思う。橘高は1996年、外山は2004年の優勝者。ちなみに鈴木慎崇(2002)、吉田友昭(2010)も札幌出身で日本音コンの優勝者である。彼らは札幌でピアノを習っている生徒・学生の努力の励みになっているピアニストたちであると思う。


橘高昌男(きつたか まさお)は東京藝術大学付属高等学校を経て、同大学を首席で卒業。第65回日本音コン第1位。イル・ド・フランス国際ピアノコンクール第1位ほか海外のコンクールに入賞。2001年文化庁在外研修員としてジュネーブ音楽院に学び、同音楽院を卒業後、更にパリ国立地方音楽院でフォルテピアノを専攻し最優秀の成績で卒業。これまでに東京響、都響、札響、新日本フィルなど数々のオーケストラと共演。フェリス女学院、武蔵野音大で後進の指導にも当っている。

2015年4月5日(日) 開演 17:00  札幌市教育文化会館小ホール
橘高昌男リサイタル  ドイツ、フランスへの誘い(チェンバロとモダンピアノで)

〈PROGRAM〉
 J.S.Bach:シンフォニアから第1番、第14番 (チェンバロとピアノ)
 Mozart:ロンド イ短調 KV511 (ピアノ)
 Schumann:フモレスケ 作品20 (ピアノ)
 F.Couperin:「クラヴサン奏法への追加」から第1プレリュード
        クラヴサン曲集 第2巻 第6組曲より第5曲
        クラヴサン曲集 第3巻 第18組曲より第6曲 (チェンバロ)
 Ravel:「クープランの墓」から 前奏曲、メヌエット、トッカータ (ピアノ)
 Chopin:即興曲 第2番 作品36 嬰へ長調
      ワルツ 第5番 作品42 変イ長調
      バラード 第1番 作品23 ト短調 (ピアノ)

ステージに色鮮やかなチェンバロとYAMAHAのピアノ。この二台の楽器を使ってバッハの曲、第1番(ハ長調)と第14番(変ロ長調)を交互に弾いた。柔らかで小さい音しか出せないチェンバロと強い音を出せるピアノでは同じ曲でも全く違った雰囲気。

モーツァルトはフォルテピアノの方が当時の感じが出せたのかも知れないと思った。最近、このロンドを聴く機会が多いのでモダンピアノで聴き慣れてきた。ドラマティックで幻想的な感じが味わえた。

シューマンの「フモレスケ」は今まで余り耳にしたことが無かった。彼の喜怒哀楽が曲の中に自由に表現されていて聴きごたえがあった。小品かと予想していたら、20分ほどの曲で味わい深い作品。日本ではドヴォルザークの「ユ―モレスク」が有名で親しまれているが、クライスラーが「8つのユーモレスク」の第7曲をヴァイオリン曲に編曲して、より知られるようになったようだ。ドヴォルザークのピアノ曲も8曲全部は聴いたことが無いので、類推だが全曲は、シューマンの「フモレスケ」とほぼ同じような長さなのかも知れない。
英語の“Humoresque”に相当して「ユーモラスで軽やかな曲」に語源がありそうだが、2作品ともCDがあれば手に入れてみようと思ったくらい興味をそそられた。

前半はドイツ・オーストリア音楽だったが、後半はフランス音楽。

F.クープランはバッハと同時代のフランスの作曲家。彼の作品全部に題名が付いている。演奏曲目の第5曲は「神秘的なバリケード」、第6曲は「テイク・トク・ショック、オリーブしぼり機」。
楽器名でチェンバロはイタリア語、クラヴサンはフランス語、英語はハープシコード、ドイツ語はキール・フリューゲルで国によって呼び方も異なる。日本では通常イタリア語、偶に英語が使われている。(*音楽用語はイタリア語が多い。)
本日用意されたチェンバロは〈堀栄蔵制作 1987年製 フレンチスタイル 61鍵、2段鍵盤〉でバッハの作品より長くて、チェンバロでもドイツとフランスの違いが何となく解る気がして楽しめた。

ラヴェルはクープランの古典様式に従って書いたピアノ作品は6曲ある。昨年10月のケント・ナガノ指揮モントリオール響による演奏以来、手元のジャン=イヴ・ティボーデとアンヌ・ケフェレックのピアノ曲でこの曲を聴く機会が増えた。第一次世界大戦の時に書かれたこの曲はクープランに代表されるフランス音楽を讃えた6曲からなる作品。「前奏曲」はクラヴサン音楽を想起させる。戦争で亡くなった友を懐かしむ曲でもある。ラヴェル独特の音楽表現も楽しめた。

ショパンは人生の大半をフランスで過ごしたことから、フランス音楽の範疇に入れてのプログラム。彼の曲は親しまれた作品ばかりで言及の必要がない。 会場を埋めた聴衆は聴き慣れた、あるいは弾き慣れた曲にウットリ!

普通のリサイタルと違って主催者からの要請もあったのだろうが、レクチャーを入れながら、ドイツ・フランス音楽の違い、チェンバロとモダンピアノの聴き比べなど教育的なコンサートは特色があって印象的なコンサートになった。

5年前のコンサートも超満員であったが、今日のホールもほぼ満席で家族連れや若い人の姿で充実した活気ある演奏会。春休み期間中で、低料金でもあり参加しやすいようである。私は今回2回目だったが来年以降もスケジュールに入れておきたいコンサート。

チェンバロとモダンピアノを同じステージで弾くのは気分の切り替えなどで大変難しいと言う話だったが、ピアニストはアンコールに「バッハ:インヴェンション イ長調?」をチェンバロとピアノで演奏。大学で教鞭を執っている所為や聴衆に子供たちも目立ったこともあり、適切な説明と真摯な姿勢で好印象。もちろん、ピアノ演奏が充分に魅力的であったことは第一に挙げられる。

※追記:ブログを読んでくださった方からアンコール曲は“ハ長調でした”というご連絡を頂きました。
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METライブビューイング2014-15 《イオランタ》&《青ひげ公の城》

第8作は2本立て。
チャイコフスキー 《イオランタ》 MET初演  全一幕  ロシア語上演
バルトーク 《青ひげ公の城》 新演出  全一幕  ハンガリー語上演

2本共にタイトルを知っているだけで、ストーリーも全然わかっていないので、近年はこのようなオペラ作品に興味がある。特に今回はネトレプコが主演するので期待していた。《マクベス》ではドラマティックな歌唱と迫真の演技で圧倒的な存在感を示した。今やアンナ・ネトレプコはMETの女王の風格充分で世界のディーヴァと言えるだろう。

《Iolanta》
昨シーズンの第1作《エフゲニー・オネーギン》に続いて名指揮者ゲルギエフとネトレプコのゴールデン・コンビで、相手役もピョートル・べチャワ。三人ともロシア物の上演では特に気が合っての共演。
ロシアでは人気のオペラが123年の歴史を持つMETでは初演。ロシアの歌姫の登場で可能になった作品かもしれない。

アンデルセンの童話を基にしたチャイコフスキー晩年の作品。目が見えないことを知らない王女イオランタが人里離れた森の館で乳母たちに囲まれて幸せに暮らしていた。レネ王は見知らぬ人との接触を禁じていた。ある日、彼女の婚約者になっていたロベルトが王に婚約解消を告げるために、友人ヴォデモンと森の中で迷い込んでいた。
城の一室でイオランタを見たヴォデモンは彼女の美しさに魅了されてしまう。彼は彼女が盲目であるのに気付いて、彼女の知らない光の素晴らしさを伝えて「二重唱」を歌う。(この二重唱が素晴らしい。)ヴォデモンは王に姫を妻にと望み、結果的に願いが叶う。イオランタの“光を見たい!”という叫びが手術の成功に結びつき目が見えるようになってハッピーエンド。

80分程度の一幕物で舞台は簡素だが、館が回り舞台になっていて森の様子にも転換できる舞台装置。チャイコフスキーの美しい音楽を中心にソリストたちの歌唱がそれぞれ素晴らしかった、大向こうをうならせる見せ場が各々のソリストにあった。主役だけでなく脇役のアリアも聴きごたえがある歌唱。(ネトレプコの太り過ぎの体が少々気になった程度。)
闇から抜け出て浴びる光、世界の美しさ、生きることの美しさを歌い上げ、全員の合唱で大団円の舞台を飾るフィナーレは見応えがあった。

《Bluebeard's Castle》
元々はグリム童話でペローやメーテルリンクによって戯曲化されたらしい。字幕に原作がペローとなっていた。グリムの童話には大人向けの作品があるようだが、この童話の原作は完全に大人向けである。
バルトークの唯一のオペラ。《青ひげ公の城》の音楽は初めて耳にしたが、物語の内容に即して極めて音楽が陰湿で重苦しい雰囲気が漂う。専門的には解らないが、各場面で短調や長調で曲の色彩を変化させているようである。

プロローグに始まり、7つの扉を開けてストーリーが展開される。実質的な出演者は2人。ソプラノのN.ミカエルとバリトンのM.ぺトレンコ。
愛する夫の全てを知ろうと城の中を案内してもらう新妻ユティット。第1の扉は拷問部屋。第2の扉は武器庫。第3の扉は宝物庫。いずれの室にも血痕が付着していた。第4の扉は秘密の庭園。白いバラに血痕。土に血が染み込んでいた。第5の扉は青ひげの広大な領地が見える部屋。雲から赤い血の影。不吉な予感が押し寄せる中でユティットは残りの扉を開けるように迫る。
2人の心理状態が緊迫する。第6の扉は涙の湖。2人は抱擁する。妻は夫が過去に愛した女のことを聞いて嫉妬する。やがて殺したのではと疑う。最後の扉を開けるのに抵抗していた青ひげだが、遂に第7の扉が開く。3人の妻が列になって現れる。まるで生きているようで美しい姿。彼女たちは「夜明け」、「真昼」、「夕暮れ」を支配している。青ひげは「4人目を真夜中に見つけた」と言い、彼女も4人目の妻として第7の扉に消える。青ひげも暗闇の中に消えていく。

映像でストーリーが綴られるので、実際の舞台が曖昧で解り難かった。実演なら緊迫感があったかもしれない。サスペンスオペラで意外性はあった。愛する人のすべてを知ろうとして、相手の心の奥底まで踏み入ってしまう人間の性。悲劇になってしまうドラマは現代にも通ずるところがある。
2人だけの心理劇を迫真の演技で表現したミカエルとぺトレンコの演唱を他のオペラでいずれかの機会に聴いてみたい。

演出家によると今回のオペラは1つの続き物として演出したと言う。目が見えなかった女性と目が見える女性の対照的な童話ともとれる。

私は2011年からMET Live Viewing を見始めて、今は年に5・6本は鑑賞している。妻も昨年あたりから私以上にMETビューイングが面白くなって忙しいスケジュールを縫って私と別の日に楽しんでいるようである。





 
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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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