札幌交響楽団第576回定期演奏会 (2015年1月)

2014-2015シーズンのプログラム発表時から指揮者ユベール・スダーンの札響登場を心待ちにしていた。東京交響楽団を日本で一流のオーケストラに仕上げた指揮ぶりを観たかったのである。いよいよ、その時が来た。

2015年1月31日(土) 14:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ ユベール・スダーン
ピアノ/ バリー・ダグラス

ユベール・スダーン(Hubert Soudant)は1946年、オランダ生まれ。71年ブザンソン国際指揮者コンクール第1位、73年カラヤン国際指揮者コンクール第2位、75年カンテルリ国際指揮者コンクール第1位など多くのコンクールで受賞。フランス国立放送新フィル音楽監督(81-83年)、ウルレヒト響首席指揮者(83-86年)などを経て、94年ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団首席指揮者(04年以降は桂冠首席客演指揮者)及びザルツブルク州立歌劇場総監督として世界的な名声を獲得。コンセルトへボウ管、ベルリン・フィル、ロンドン・フィル、モントリオール響、ニューヨーク・フィルなどメジャー・オーケストラに客演。
初来日は75年。東京響には97年に初登場し、99年から同響首席客演指揮者を経て、04年音楽監督(14年桂冠指揮者に就任)。モーツァルトの交響曲、特にシューベルトは交響曲連続演奏会(08-09)で話題を集めた。オペラでも東京響を指揮して《トゥランドット》を演奏会形式で上演、新国立劇場で二期会公演《皇帝ティートの慈悲》(06年)の上演は絶賛を浴びた。ヨーロッパの歌劇場での客演も多い。
06年5月、ザルツブルク・モーツァルテウムを率いてKitaraに初登場してオール・モーツァルト・プログラムを披露。交響曲第31番「パリ」、第36番「リンツ」、第38番「プラハ」と都市名の付いた3つの交響曲を演奏。(ヴァイオリン協奏曲第5番の独奏は川畠成道。)

バリー・ダグラス(Barry Douglas)は1960年、北アイルランド生まれ。ロンドン王立音楽院に学ぶ。85年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール第3位。86年にはチャイコフスキー国際音楽コンクールに優勝して、58年のクライバーン以来の西側のピアニスト優勝で話題となった。87年、サントリーホールのオープニング・シリーズで日本デビュー。99年、室内合奏団「カメラ―タ・アイルランド」を結成して芸術監督となり、マンチェスターの国際ピアノ・フェスティヴァル芸術監督を務めるなどピアノ界の重鎮として活躍。欧米での活動が目立ち、近年は指揮者として弾き振りでも活躍している。

〈本日のプログラム〉
 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83
 フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」 作品80
 ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲

ブラームス(1833-97)は交響曲第2番と第3番の間に有名なヴァイオリン協奏曲(78年)とピアノ協奏曲第2番(81年)を作曲した。彼は58年に完成したピアノ協奏曲第1番に次いで、新しいピアノ協奏曲に着手した。78年に親友とイタリアを旅した折に刺激を受け、旅行中か直後に、スケッチをしていたらしい。作曲は5年も要したニ短調協奏曲より順調で、作品は伸び伸びと書かれ81年に完成した。ブラームス自身のピアノで初演され、その後も各地で演奏が続き、82年にはブラームスのピアノとハンス・フォン・ビューローの指揮でも演奏されたと言う。

ブラームスのピアノ協奏曲2曲を好んで聴くようになった切っ掛けはN響アワーでゲルバーの演奏であった。早速、アバド指揮ベルリン・フィル&ブレンデル、ベーム指揮ウィーン・フィル&バックハウス、ジュリア―ニ指揮フィルハーモニア管&アラウのCDでこの曲に親しんだ。
この協奏曲は珍しい4楽章構成。第1楽章は伸びやかなホルンによる第1主題の提示。ピアノが主題を引き継ぎオーケストラも加わる。抒情的な第2主題をヴァイオリンが提示して、ピアノが繰り返す。展開部でピアノがクライマックスを盛り上げる。第2楽章はスケルツォ楽章。ピアノ独奏でエネルギッシュな第1主題と弦楽の優美な旋律の第2主題が対照的。第3楽章はアンダンテで緩徐楽章。イタリアの美しい風景に影響された感情がロマンティックに表現されている様子。第4楽章はピアノが軽快な第1主題を導入して始まり、第2主題は幾分メランコリックな調べがオーケストラとピアノで示され、最後は華やかで力強いコーダ。

しばらく聴いていなくて久し振りで耳にした。第1楽章が20分弱で、あとの3楽章はそれぞれ10分、全曲で50分ほどの大曲。楽章の説明がまとまりのないものになった。
ダグラスは重厚なピア二ズムで経験豊富な円熟した演奏を展開した。1時間近くもかかる演奏が短く感じられた。この長大なコンチェルトを弾きこなして聴衆をうならせるピアニストはそんなにいないかも知れない。

ソリストのアンコール曲はIrish Folk Song{アイルランド民謡}から(ダグラス編曲)“My Lagan Love”.

後半はフランス音楽。
フォーレ(1845-1924)はピアノ曲、室内楽曲を多く書いたが、管弦楽曲は余り残していないのか聴いたことが無い。プログラム解説によると7曲しか残っていないとのことである。
「ぺレアスとメリザンド」はドビュッシーもオペラとして同じタイトルの曲を書いている。メーテルリンクの戯曲の付随音楽として1898年に作曲された。組曲はそれを4曲から成る構成にした作品。
主な登場人物はメリザンド、彼女の夫 ゴロー、ゴローの異父兄 ぺレアス。ゴローが妻とペレアスの仲を嫉妬してぺレアスを刺殺してしまう三角関係のストーリー。

第1曲「前奏曲」。第2曲「糸を紡ぐ女」。第3曲「シシリエンヌ」。第4曲「メリザンドの死」。
全体として綺麗な音楽で、旋律が美しい。ホルンの音がゴローを暗示していて物語の展開が読める。フルート、オーボエなど管楽器の活躍の場面が多い。第3曲はシチリア舞曲で広く親しまれているメロデイが流れた。高橋聖純のフルートが殊のほか美しい旋律を奏でて聴き惚れた。

ピアノ協奏曲では既に慣れているのか指揮者はピアニストとのコンタクトは目に見える形ではとっていないように思われた。オーケストラにだけ集中して指揮しているようであった。ピアノに隠れて指揮者の様子が完全には見えなかったが、曲の終りの方で弧を描くような大きな腕の動きが目に入った。
フォーレではストーリーが浮かんでくるような緻密でダイナミックな指揮ぶりでフランス音楽の魅力が直ぐに伝わってきた。オペラを指揮して経験を積んでいることが聴衆にも判る指揮ぶりに凄さを感じた。

ラヴェル(1875-1937)は近代フランス音楽の代表的な作曲家。パリ音楽院に在籍していた当時、ローマ大賞を目指す作品がことごとく落選していて、フォーレの助言も受けた。ラヴェル事件と言われる出来事があって、当時のパリ音楽院の院長や教授陣が辞職してフォーレが後任の院長になったエピソードが残っている。

ラヴェルの「ボレロ」は最も親しまれている作品のひとつだが、ピアノ曲を沢山書いて、管弦楽曲への編曲も得意であった。ムソルギスキーのピアノ曲「展覧会の絵」が有名になったのは、ラヴェルが管弦楽曲に編曲してからと言われている。

「ダフニスとクロエ」はロシア・バレエ団の依頼で書かれた、3部から成るバレエ音楽。ラヴェルはこのバレエ音楽から第1組曲(1911年)と第2組曲(1913年)を作った。第1組曲は第1部の終曲から第2部の前半までの3曲、第2組曲は第3部全体から切り取った3曲から成る。コンサートでは第2組曲が演奏されるのが圧倒的に多い。

ケント・ナガノ指揮ロンドン響&合唱団、 インバル指揮フランス国立管&合唱団のCDで聴いているが、バレエ音楽で合唱を伴う音楽ばかりで、実際のバレエは観たこともないし、管弦楽で偶にコンサートで聴く機会があっても今まで余り印象に残らなかった。正直に言ってストーリーも殆ど解っていなかった。

3世紀ごろにギリシャの詩人ロンゴスが書いた物語を題材にして、バレエ音楽のために脚本化された。物語の大雑把な概略は次の通り。少年ダフニスは森の中で山羊と暮らしていた。少女クロエはニンフの洞窟で羊と暮らしていた。二人はそれぞれ山羊飼いと羊飼いの夫婦に拾われ、成長して恋に目覚めるようになった。エーゲ海の島を舞台に繰り広げられる神話のような牧歌的物語。

第2組曲は次の3曲から成り、続けて演奏された。
①夜明け ②無言劇 ③全員の踊り
●「夜明け」 森のはずれの牧場、パンの神を祀る洞窟の前で日の出を迎える場面。フルートとハープが奏でるせせらぎの音、小鳥のさえずりや羊飼いの笛の音で夜が明ける。
●「無言劇」 ニンフ役のクロエにパンの神を演じるダフニスは彼女に愛を告白。ダフニスは葦笛を吹き鳴らし、クロエは踊り始める。踊りが最高潮になり、クロエはダフニスの腕に倒れ込む。
●「全員の踊り」 ダフニスとクロエの愛を祝福して、若い娘たちがタンブリンを打ち鳴らすと若い男たちも現れ、パンとニンフを讃える歓喜のバッカナールを繰り広げる。

金管楽器が加わっての壮大な管弦楽。最初からラベル独特の管弦楽の面白さが味わえたが、最後の場面でのオーケストラ全体の盛り上がりが凄くて聴きごたえがあった。音楽が熱狂と興奮の最高潮に達する場面の迫力ある演奏は見事であった。スダーンの名声は耳にしていたが、フランス音楽でこのような素晴らしい演奏を札響から聴けるとは予想もしていなかった。さすが大指揮者で東京響の関係が長く続いている理由が実感できた。彼は札響との共演も数度あったと言うが、東京響の音楽監督の忙しい任を離れたので、札響との更なる共演を期待したい。札響もレパートリーが増えていくのが楽しみである。モントリオール響の演奏に負けない出来栄えであった。
演奏終了後の聴衆の“ブラヴォー”、“アンコール”の掛け声が何度もあって、指揮者もステージに何度も足を運んだ。1月のコンサートでは珍しいほどの客の入りがあって会場も凄く盛り上がった。高校生などがP席・RA席を埋めたが、後半の曲で吹奏楽部員などは活動意欲を新たにしたのではないか。最近の札響演奏会で良い演奏が続くのは何よりである。

※前半にフルート首席奏者が出演していなかったので今回は休みかと思った。実際は後半の大役に備えていたようであった。外国のオーケストラでは管楽器は連続で吹き続けるのは難しいので、曲によって役割分担している様子をしばしば目にする。日本でも実情は詳しくは判らないが、自分が気が付かないだけだったのかも知れない。

[追記]ユベール・スダ―ン(Hubert Soudant)は1975年9月(札幌市民会館)と1980年7月(北海道厚生年金会館)の2回、札響と共演した記録があった。指揮者名がフベール・スーダントと札響定期演奏会の記録に載っていたので同一人物とは思えず自分の記憶になかった。当時は札幌在住でなかったが、1961年1月~1989年3月の全演奏記録が手元にあるので参照する機会がある。ラテン系の言語では綴りの最初の“H”や綴りの最後の“t”を発音しないのが普通である。
※フランス人が英語を使わない利用の一つは“he, his, him”が正しく発音できないからでもある。人の名前であるHenry ,Hondaの発音がアンリ、オンダのような発話になる。
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北海道交響楽団 第77回演奏会

北海道交響楽団の定期公演は最近では年3回になっているようである。アマチュアのオーケストラとして興味のある公演が札幌市内でも結構多く行われているが、月平均6・7回はKitaraでの鑑賞で埋まるので他会場での公演に行くのが難しい。北海道交響楽団の定期公演がKitaraで開催される場合は大抵聴いている。道響の定期公演は昨年1月25日の演奏会(第74回)以来、丁度1年ぶりである。今回(第77回)はソリスト出演のプログラムが興味を引いた。

2015年1月25日(日) 19:00開演 札幌コンサートホールKitara 大ホール

指揮/ 川越 守(北海道交響楽団音楽監督)
ヴァイオリン独奏/  鎌田 泉(紀尾井シンフォニエッタ東京)
チェロ独奏/ 石川 祐支(札幌交響楽団首席チェロ奏者)

〈プログラム〉
 ウェーベルン:パッサカリア 作品1
 ブラームス:ヴァイオリン、チェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
 ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」

ウェーベルン(1883-1945)はシェ―ンベルクやベルクと並ぶ新ウィ-ン楽派のオーストリアの作曲家。シェ-ンベルクに師事(1904-08)して「パッサカリア」の作曲により独立。十二音技法による音楽のことは詳しくは知らないが、この曲も一度聴いてその良さが解る曲ではないように思えた。
彼らの音楽は理解が難しいという先入観を持っていたが意外なことが過去にあった。今は解散してしまった東京クヮルテットがPMF2012の「東京クヮルテット演奏会」のアンコール曲に〈ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章〉を演奏した。その曲が美しい旋律に満ちた音楽で大変感動した記憶は忘れられない思い出となっている。

ブラームス(1833-97)は四半世紀前から好きな作曲家のひとりになって4つの交響曲や2つのピアノ協奏曲、名高いヴァイオリン協奏曲やハンガリー舞曲などはお気に入りで家で聴く機会も断然多い。変な話だが、音楽の教科書に載っていた顔が厳つくて何となく親しみが持てない感じがしていたのかも知れない。
本日の演奏曲は所有のCDが探しても見つからなかったが、前日になって指揮者別の棚に曲があるのが判った。オーマンディ指揮フィラデルフィア管の演奏(*ソリストはハイフェッツとホイエルマン)で1939年音源によるCDで音は良くなかったが曲が聴き慣れたメロディだった。演奏会で耳にした記憶もないし、家でも何回も聴いた覚えもなく、数回聴いた程度のメロディとも思えない気に入った曲に自分でも驚いた次第である。
そんな訳で、今日の演奏への期待が一層高まった。この曲は4つの交響曲を書き終えた後の1897年に書かれ管弦楽曲、協奏曲としてもブラームスの最後の曲になる。

管弦楽による力強い第1主題、独奏チェロがテーマをカデンツァ風に奏でると、独奏ヴァイオリンが追うように寄り添って奏でる感じで、その調べが美しい。オーケストラの全合奏も華やかで第1楽章(アレグロ)が全曲の半分ほどを占める。第2楽章はアンダンテで管楽器の色彩感が目立った。第3楽章は独奏チェロの愛らしい主題で始まり、独奏ヴァイオリンの寄り添うような演奏が曲を引き立て、テンポの変化で管弦楽に力強さが加わる。独奏楽器の第2主題の提示の後、全合奏で華やかなコーダ。
演奏終了後、ソリストも満足げな様子。初めて聴く曲の聴衆が多かったと思うが、いつも素晴らしい音を響かせてくれる石川祐支の魅力的な演奏には感服。鎌田泉も室内楽で昨年9月トリオ・レイラのコンサートをルーテル・ホールで聴いた。実力のあるヴァイオリニストとして知られ、日本フィルの客演コンマスを務め、3月には米国のオーケストラのコンマスとして出演する予定もある。

後半の「展覧会の絵」は最近、ピアノ曲、管弦楽曲としての演奏機会も多く、ブログにも書いているので曲の内容は省略する。
ラヴェル(1875-1937)はウェーベルンとほぼ同時代でも、現代音楽作曲家とは異なる。フランスの作曲家で魅力的な管弦楽曲をたくさん作曲した。ムソルグスキー(1839-81)のピアノ曲はラヴェルが管弦楽曲に編曲してから有名になった。
管楽器の活躍が多い曲なのでアマチュアの演奏としては管楽器の演奏が上手でないと欠点が目立ちがちである。ポピュラーな曲だが、プロの演奏に慣れた聴衆を惹きつけるのは相当な練習と実力を身に着けていなければならないと思う。

今日の演奏は素人の耳には完璧に近い演奏に思えた。トランペットを始め、トロンボーンなどの金管楽器、木管楽器や打楽器の見事な演奏が際立っていた。弦楽器とも調和して素晴らしい演奏となった。ラヴェル独特のファンタスティックな音の世界へ聴衆を誘い込んだ。

「古城」でアルトサックスがロマンチックなソロを演奏したが、演奏中にサックス奏者の姿を見れなかったのが残念だった。(後でホルン奏者の横にいたのに気付いた。) サキソフォンはプロでは使っていないので、アマチュアならではの楽器使用かな(?)と思ったのだが知識不足かも知れない。今度、プロのオーケストラで意識して観察してみたい。
(第74回演奏会の「R.シュトラウス:家庭交響曲」でサキソフォンが4本使われていたと思う。吹奏楽やジャズで使われる楽器がオーケストラで使われるのを今まで意識して見たことが無い。)

指揮者の川越先生は北大交響楽団の指導を始めてから50余年、北海道交響楽団の指導も35年にもなる。長年の熱心な
指導と指揮活動の姿を拝見できるのも嬉しいことである。彼の入退場時のペンギン・ウォークも微笑ましい。淡々とした指揮ぶりで楽団員を掌握し、演奏後には独特のお話しをしてくれるのも興味深い。今回はウェーベルンとラヴェル、ドビュッシーの違い、ラヴェルとドビュッシーの違いなどの言及も面白かった。

アンコール曲は{ラヴェル:バレエ《マ・メール・ロワ》より「終曲 妖精の園」 }

※演奏会終了後、地下鉄駅を通り過ぎて、凄い音響で楽しめるバーに自然と足が向いた。店でブラームスの二重協奏曲の話をしてCDを探してもらった。マスターがブルーノ・ワルター指揮のブラームス特集のCD5枚入りのボックスを持ってきてくれた。そのボックスのCDの中に1959年のモノの録音盤をSONYが2014年に再生した輸入盤があった。早速、大音量で聴いてみたが、チェロ、ヴァイオリン、オーケストラの澄んだ音が見事に再生されていた。50年前のワルター指揮コロンビア響とピエール・フルニエ(チェロ)(*ピアニストの名は忘れた)の演奏を堪能した。
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ハリウッド・フェスティバル・オーケストラ

懐かしのハリウッド映画音楽の数々をオーケストラが演奏するプログラムを見て聴いてみる気になった。
今日あらためてチラシを読んでみたら、“New Year Concert by Hollywood Festival Orchestra”として企画されたコンサートだと気付いた。1月3日に国内ツアーが始まって25日まで続くニューイヤーコンサート。2013年のコンサートが大好評で、今年は国内13都市14公演開催予定のようである。
今年は1月に入って吹雪模様の日が続いて飛行機の欠航も多くなって、今日も心配したが予定通りの開催となった。

2014年1月20日(火) 18:30開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

ハリウッド・フェスティバル・オーケストラは1990年にアトランタを拠点に結成されたオーケストラ。1回のツアーが6週間にも及ぶアメリカ国内ツアーのほか、台湾・中国などをふくむアジアツアーも定期的に開催。来日楽団員35名。

指揮/スティーヴ・シャルピー(Stephen Charpie)はマンハッタン音楽院でトランペットを学ぶ。卒業後はワシントン海軍音楽隊に入隊。ルイビル響、ロングビーチ響でトランペット奏者として活躍。東京ディズニーランドのオープニングセレモニーにゲスト・トランペット奏者として活躍。指揮者として米国の複数の楽団で音楽監督を務める。

PROGRAM
【第一部】 
 ~ジョン・ウィリアムの世界~
 ★インディ・ジョーンズのテーマ (1982-2008)  ★ハリーポッターと賢者の石(2001)
 ★E.T.(1982)
 ~ミュージカル映画傑作選2015~
 ★オペラ座の怪人(2004)   ★グレンミラー物語(1957)
 ~大ヒット作品より~
 ★ニュー・シネマ・パラダイス(1989)  
 ★ティファニーで朝食を(1961)より「ムーン・リバー」
 ★アラビアのロレンス(1962)  ★戦場にかける橋(1957)  ★タイタニック(1997)
【第二部】
 ~ビリー・キング/ヴォーカル作品~
 ★007/ロシアより愛をこめて(1963)  ★ゴッドファーザー(1972)より「愛のテーマ」
 ★慕情(1955)
 ~森山良子セレクション~
 ★この広い野原いっぱい   ★涙そうそう
 ★サウンド・オブ・ミュージック(1965)より「マイ・フェイバリット・シングス」
 ★キャメロット(1967)より「あなたと別れるなら」
 ~懐かしの名曲ヒット曲~
 ★オズの魔法使い(1929)  ★シャレード(1963)  ★風と共に去りぬ(1939)

入場時に本日のプログラムが手渡されなかった。予定プログラムは大体わかっていたが演奏順序が載っていないとハッキリと判る曲ばかりではないのでプログラムを購入した。
 
結果的に指揮者が演奏前に数曲まとめて曲名を英語でアナウンスしたので問題は無かった。但し、映画音楽にさほど詳しくなくて、英語が判らなかった人にとっては日本語で書かれた演奏曲目が配布された方が鑑賞しやすかったのではないかと思った。1曲ごとに拍手が起こったが、曲名が判った時の反応とは違うものを感じた。

実際に映画を観て、タイトルを知っている映画音楽も演奏曲のメロディを聴いただけで直ぐ判る曲は余り多くなかった。「E.T.」は家族で観に行った映画だったので、漠然としたストーリーを思い出して、当時の生活を振り返る機会になった。
「ハリーポッター」は第1作目で記憶に新しいので、映画のいろんなシーンが浮かんできた。
「オペラ座の怪人」はフィギュア・スケートの演技曲として多くの選手に使われたので聴衆全員が親しんでいると思われる曲。昨年、ミュージカルとして劇団四季の上演も観た。
「アラビアのロレンス」はアラビアの広大な砂漠を舞台に描かれた大作。冒頭の迫力あるティンパニの響きは映画の序曲のようで圧巻。
「戦場にかける橋」は指揮者が聴衆に手拍子を促して演奏した。軍隊の行進曲で“クワイ川マーチ”として知られる曲。旧日本軍とイギリス人捕虜との関係を描いた名作。アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、作曲賞などを獲得した。聴衆も一緒に手拍子で参加できる場面で良かったと思う。
前半の最後は空前の大ヒット映画となった「タイタニック」。ディカプリオとウィンスレットが主演したラブ・ストーリーの大作。2012年に3D映画になっても話題となった。4曲の劇中曲がメドレーで演奏された。最後の主題曲が“My heart will go on”。映画のラストシーンが美しかったが、いろいろな場面を思い出した。

後半はビリー・キング(Billy King)がヴォーカルで登場。ロサンゼルス、ニューヨーク、ラスベガスなどアメリカ各地でコンサート活動。日本では毎年行われる札幌グランドホテルでのソロ・ライヴをはじめ全国で数多くのコンサートを開催。

後半のブログラムの案内は歌手が務めた。声量があって歌い方のツボを掴んでいる歌いブリ。「007」は24作目が今年公開されるそうだが、第2作が「ロシアより愛をこめて」だった。このテーマ曲はヒットして耳にすることが多い。マーロン・ブランド主演の「ゴッドファーザー」はマフィアの内幕を描いた話題作。キングはイタリアらしい雰囲気の曲を熱唱。3曲目を日本語で「ぼじょう」と言って紹介。聴衆の反応から札幌でのコンサートで人気のある歌手だと判った。「慕情」は香港を舞台にしたウィリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズ主演のラブ・ストーリー。プッチーニのオペラ「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」をヒントに書かれた曲と言う話が伝わっている。

今回のコンサートのゲストは森山良子。1967年「この野原いっぱい」でデビュー。「涙そうそう」など数々のヒット曲を生み出した。透明感のある歌声と歌唱力で日本を代表するトップ・シンガー。
彼女のトークぶりから多くのコンサートに出場して場を踏んでいる様子がうかがえた。上記2曲を披露した後、ミュージカル作品から2曲を英語で歌った。“My favorite things”(私のお気に入り)はジュリー・アンドリュース主演の映画で親しまれたが、「キャメロット」は覚えていなかった。

コンサートの最後はオーケストラによる懐かしい名作ヒット曲。「オズの魔法使い」は色々なところで耳にしていた言葉だが、音楽としては詳しくは知らない。ジュディ・ガーランドは有名で知ってはいた。オードリー・ヘップバーンは大好きな女優でその作品はかなり観ているが、「シャレード」はどういうわけか記憶にない。

“Gone with the Wind”はヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブル主演の映画で何度か観た忘れられない作品。アトランタの街にマーガレット・ミッチェル通りがあって8ミリカメラに収めたのが50年ほど前の事。映画の制作年が自分の生年と同じとは気付かなかった。いろいろなことを思い出しながら、親しみのあるメロディに聴き入った。
今回はじめて知って驚いたことは音楽を担当したマックス・スタイナーはウィ-ン出身の作曲家。名付け親がリヒャルト・シュトラウスで、ピアノをブラームスに習い、音大時代にはマーラーの教えを受けたという。ヨハン・シュトラウスとも親交があり、アメリカでもジョージ・ガ―シュインと知り合いであったというから彼は素晴らしい音楽を作り出す環境に恵まれていたと言えよう。

キングのアンコール曲は《ラマンチャの男》より「見果てぬ夢」と《アナと雪の女王》より「ありのままで」。
2曲目は“Let it go”と言って歌い始め、曲が流れると客席のあちこちから拍手が起こった。チラシの予定演奏曲目に入っていて期待していた客の反応のようであった。
森山良子のアンコール曲は《マイ・フェア・レディ》より「踊り明かそう」。1956年上演されたミュ―ジカルが元で、64年にオードリー・ヘップバーン主演で映画化された。映画版の音楽監督は現在の名指揮者アンドレ・プレヴィン。アカデミー賞では音楽賞を含む8部門制覇。この曲も知らない人がいない程の名曲。森山は素晴らしい演技と歌唱で歌い上げた。

最後のアンコール曲はキング、森山のボーカルとコンサートマスターのヴァイオリン独奏でオーケストラをバックに《ピノキオ》より「星に願いを」。

電車やバスなどの不通や交通機関の遅延などで開演時間に間に合わなくて駆け付ける客もいた様子。P席に少し空席があったようだが満席に近い状況で人気のオーケストラ公演。コンサートが終って聴衆もみんな満足げな様子。
低料金の3階席から鑑賞したが、サウンドも豪華で、ライティングも随所に幻想的な雰囲気が出ていて効果的であった。クラシック音楽とは違う楽しみ方ができて楽しかった。



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川畠成道ヴァイオリン・リサイタル2015

川畠のヴァイオリン・リサイタルを初めて聴いたのは2001年のことで4回目まで大ホールが会場であった。昨年久しぶりに彼のコンサートを小ホールで聴いてみて、再び小ホールでのリサイタルの良さを味わった。今年はコンサート鑑賞のスケジュールが混んでいて、彼の演奏プログラムの一部しか公表されていなかった上、映画音楽は昨年のコンサートで充分だという気もしたので計画には入れていなかった。(実際はプログラムはすべて純粋なクラシック音楽であった。)
2日前に妻のパソコンにコンサートの主催者からモニター割引のメールが入って、低料金で聴けることになったので私も鑑賞することに決めた。

《川畠成道チャリティプログラム》

川畠 成道 ヴァイオリン・リサイタル

2015年1月16日(金) 開演18:30  札幌コンサートホール Kitara小ホール

〈PROGRAM〉
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品12-2
 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ Op.34
            メロディ「なつかしい土地の思い出」作品42より
 グノー:アヴェ・マリア
 ワックスマン:カルメン幻想曲

ベートーヴェン(1770-1827)の作品12の3曲は1797-98年頃に作曲され、「ヴァイオリンの序奏を伴ったクラヴィ・チェンバロまたはピアノ・フォルテのためのソナタ」と記されているが、それまでのソナタの形を越えたベートーヴェンの独自性のある作品とされている。この3曲ともにサリエリに献呈された。「第2番」は軽快で愛らしい感じの曲。

フランク(1822-90)の偉大な作品は殆ど60歳を越えてから作られた。このヴァイオリン・ソナタは1886年の時の作品。4つの楽章から成るが、各楽章の主題が関連して全体が統一されている。第1楽章では自然の豊かさが描写され、第2楽章は緊張感に満ちた魅力ある旋律。この楽章の終わり方が力強かったので曲が終了したと思って1階席のあちこちから拍手が続いたのは残念であった。ソナタの多くは3楽章から成るが、プログラムに楽章の構成が書かれていたら勘違いすることは無かったのではと思った。(曲名しか書かれていなかった。プログラム・ノートも無し。)
嵐のあとの静けさで心が安らぐ第3楽章。ピアノとヴァイオリンの掛け合いで極めて印象的な旋律が多い第4楽章。第1~第3楽章までの主題が繰り返され、とても心に響く最終楽章。私はこの楽章が好きである。曲はヴァイオリンの名手、イザイに献呈された。ヴァイオリン曲でも聴く機会の多い名曲である。

チャイコフスキー(1840-93)の「ワルツ・スケルツォ」は題名の通り、ワルツの優雅さとスケルツォの軽快さが一体となった魅力的な小品。「メロディ」はチャイコフスキーがヴァイオリンとピアノのために作曲した唯一の作品《懐かしい土地の思い出》の第3曲。甘美な旋律に溢れていて単独で演奏されることも多い。「懐かしい土地」とは彼が結婚に失敗した後で、療養生活を過ごしたスイスのジュネーヴ湖畔の場所だとされている。

アヴェ・マリアはバッハ、シューベルト、カッチーニなどの作曲家の曲や編曲があるが、グノー(1818-93)の「アヴェ・マリア」。心の奥深くに響く優しい曲。

ワックスマン(1906-67)はドイツ出身で34年にアメリカに渡りハリウッドの映画音楽の作曲家・編曲者として名をはせた。「サンセット大通り」、「陽のあたる場所」でアカデミー音楽賞受賞。「裏窓」、「昼下がりの情事」など50年代の映画音楽が特に有名。
「カルメン幻想曲」は47年の音楽映画「ユーモレスク」のためにワックスマンが作った映画用オリジナル作品。映画ではアイザック・スターンが演奏した。言うまでもないがビゼー(1838-75)のオペラを基にしている。サラサーテにも同名の曲があり、川畠は2001年4月のリサイタルで演奏した。

1階はかなりの客入り。川畠は2001年から国内ツアーを行ないKitaraを毎年のように訪れ、今年が15回目だと言う。イギリスと日本を本拠地として活動している。英国王立音楽院に学び、同音楽院の協奏曲コンクールで第1位を獲得し、「スペシャル・アーティスト・ステータス」を授与されている。04年にはピリス、ハインリヒ・シフと共にチャールズ皇太子主催のリサイタル・シリーズにも招かれた。06年ユベール・スダーン指揮ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団日本ツアーのソリストを務める(Kitara公演もあった)など、その後の海外オーケストラとの共演も多い。近年はチャリティコンサートを国内外で積極的に展開している。

前半はクラッシクのヴァイオリン曲、後半は有名なヴァイオリンの小品を淡々と一気に弾いた。トークは全曲終了後で演奏に流れがあって聴きごたえがあった感じ。映画音楽が悪いわけではないが、個人的には重みのあるクラシック曲の方が良い。
ピアノ演奏は昨年と同じ大伏啓太(オオブシ ケイタ)。

川畠は“Kitara公演15周年を迎えることに感謝”をしてアンコール曲の1曲目は《マスネ:タイスの瞑想曲》、2曲目は“定番の曲であるが毎回演奏は同じではない”と言って《モンティ:チャールダーシュ》。 最後のアンコール・ピースとして“20周年を目指す旨の心意気”を語って、映画音楽《ディア・ハンター》から「カヴァティーナ」を演奏した。(前回のアンコール曲と同じでCDにも収録されている曲)。
  
川畠のステージへの出入りの様子から見ると視力はかなり回復して10年前まではピアニストや指揮者の腕にすがって出入りしていたことを思うと見違えるようである。演奏自体は変ってきているのだろうが、聴衆の注目度が彼の内面的な音楽に向いていることは間違いないという印象を受けた。





           

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キューピースペシャル  テレビ北海道開局25周年記念

ウィ-ン国立歌劇場と並ぶオペラ・オペレッタの殿堂、ウィーン・フォルクスオーパーが贈る豪華なニューイヤーコンサート!
NEW YEAR CONCERT 2015  Symphonie-Orchester Der Volksoper Wien

2015年1月14日(水)7:00PM開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール
 
アンドレア・ロスト(ソプラノ)、 メルツァード・モンタゼーリ(テノール)
ルドルフ・ビーブル指揮ウィ-ン・フォルクスオーパー交響楽団
ウィ-ン・フォルクスオーパー・バレエ団メンバー

ウィ-ン・フォルクスオーパーのオーケストラメンバーにより結成された楽団が1988年より毎年お正月の日本にウィ-ンの香りを届けてくれてきた。ウィ-ン・フォルクスオーパー名誉指揮者のRudolf Biblが長年に亘ったフォルクスオーパーとの日本公演を今回で引退。Kitaraでの札幌公演がサントリーホールで元旦から始まった2015年のニューイヤーコンサートの最終回となる。

ロスト(Andrea Rost)はハンガリー生まれ。1989年ハンガリー国立歌劇場でオペラ・デビュー。91年にウィ-ン国立歌劇場とソリスト専属契約を結んで同劇場で活躍し、94年ミラノ・スカラ座デビュー。メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座など欧米の主要歌劇場に出演し、海外の日本公演でも度々来日している。2012、2013年に続くニューイヤーコンサート出演。

モンタゼーリ(Mehrzad Montazeri)はウィ-ンのシューベルト音楽院、ウィ-ン音楽大学に学ぶ。欧米の歌劇場や音楽祭で活躍し、フォルクスオーパーには2004-05シーズンにデビュー。日本のニューイヤーコンサートは09、10、12、14年に続き5回目の出演。

〈PROGRAM〉
 スッペ:オペレッタ《ボッカチオ》序曲
 J.シュトラウスⅡ:オペレッタ《ヴェネツィアの一夜》から「優美なヴェネツィアよ」(Ten.)
 J.シュトラウスⅡ:ワルツ《春の声》 Op.410 (Sop.) 
 J.シュトラウスⅡ:ペストのチャールダーシュ Op.23(Ballet)
 スッペ:オペレッタ《ボッカチオ》から「フィレンツェには美しい女だらけ」(Sop./Ten.)
 J.シュトラウスⅡ:ロマンツェ 第2番 ト短調 Op.255 (Vc.)
 J.シュトラウスⅡ:ワルツ《ウィ-ンの森の物語》 Op.325(Ballet)
-------------------------------- INTERMISSION ---------------------------
 J.シュトラウスⅡ:オペレッタ《こうもり》序曲
 レハール:オペレッタ《ジュディッタ》から「友よ、人生は生きる価値がある」(Ten.)
 カールマン:オペレッタ《マリッツア伯爵家令嬢》から「聞こえるジプシー・ヴァイオリン」(Sop.)
J.シュトラウスⅡ:ワルツ《ドナウ川の乙女》 Op.427 (Ballet)
 レハール:オペレッタ《ジュディッタ》から「青き夏の夜のごとく美しい」(Sop./Ten.)
 J.シュトラウスⅡ:新ピツィカート・ポルカ Op.449(Ballet)
 J.シュトラウスⅡ:ワルツ《美しき青きドナウ》 Op.314(Ballet)

2015年は元旦からテレビでウイーン・フィルニューイヤーコンサートを聴き、3日にはNHKニューイヤーオペラコンサートを昨年とは違った舞台装置、衣装とともにオペラの歌唱を楽しんだ。10日から≪Kitaraのニューイヤー≫など新年を祝う生のコンサートが続いて今日が新年の雰囲気を味わう最後のコンサートとなった。

パリで流行したオペレッタの創始者はオッフェンバックと言われているが、19世紀後半から20世紀前半にかけてオペレッタが最も盛んだったのはウイーンであり、その代表的な作曲家がワルツ王、ヨハン・シュトラウス。彼の代表的なオペレッタは《こうもり》や《ジプシー男爵》。その後、レハールが「メリー・ウィドウ」を作ってウィ-ン独自のオペレッタを繁栄させたと言われる。

スッペ(1819-95)はウィ-ン・オペレッタの基礎を築いた作曲家。ボッカチオの小説「デカメロン」は知っていたがオペラ名に認識は無かった。《ボッカチオ》の中で歌われる「恋はやさし野辺の花よ」は戦前の浅草オペラでも大人気で、戦後にも日本で流行して歌われた曲だと判った。歌詞を覚えているのでオペラ歌手の歌で流行ったのだろう。

“モンティのチャールダーシュ”は有名だがワルツ王の「ペストのチャールダーシュ」は初めて聴く。21歳の時のハンガリー旅行の折に聴衆のために作曲した曲だそうである。当時、ドナウ川西岸の街区がブダで、ドナウ川東岸の街区がペストと呼ばれていたが、1873年に合併でブダペストとなったので聞きなれないと一瞬戸惑ってしまう。(私は2000年にイタリアからギリシャに向かう飛行機が一端ブダペストの空港に降りて乗り換えをした不思議な体験があって、ブダとペストの事は覚えていた。)

「ロマンツェ 第2番」は1861年、ワルツ王がロシアでのコンサートのために作られた。チェロ独奏とオーケストラのための曲。シュトラウス一家の音楽の大部分は軽快で明朗なワルツ、ポルカ、カドリーユなどの舞曲や行進曲である。このチェロ協奏曲は短調で書かれ悲しい旋律を持つ曲でシュトラウスには珍しい作品。

前半のプログラムに書かれている以外でもフォルクスオーパー・バレエ団選りすぐりの2組のペア・ダンサーの踊りが入って華やかなステージを彩った。

後半のプログラムのレハールのオペレッタ名は聞いたこともないし、カールマンも初めて聞く作曲家の名前。管弦楽曲はともかくオペラやオペレッタに関しては一部の音楽専門家を除いて日本の一般の音楽愛好家に拡がっていないと痛感した。

《こうもり》序曲は何度聴いても飽きない曲。序曲と言っても、オペレッタに登場する美しいメロディが巧みに織り込まれている。ダイナミックなワルツのリズムに乗って聴いていて気分も高揚する。まとまった曲で単独で演奏される機会も多い曲。

本日のコンサートでテノールの甘い歌声も良かったが、ソプラノのロストのコロラトゥラと言うのか彼女の高音域による歌声に魅了された。歌唱の1曲ごとにブラヴォーの声が上がるような見事な歌声が披露された。
半年前のコンサート・チラシのプログラムには定番の数曲しか載っていなかったこともあって、思わず一番安い席のP席を購入していた。P席は好みだが歌が入る時には買わないのを原則にしていたが、今回は失敗してしまった。オーケストラだけなら後悔しないのだが、今回のように素晴らしいオペラ歌手の歌声は正面から聴きたかった。

ともかく何度も聴く機会があっても、今回はオーケストラと歌にバレエが入る楽しみ方も味わえて楽しかった。85歳の指揮者と楽員との息の合ったほのぼのとした関係もなかなか良かった。指揮者が“あけまして”、楽員全員が“おめでとうございます”と声を揃えて挨拶する姿も微笑ましかった。

ソリストのアンコール曲は[カールマン:オペレッタ《チャールダーシュの女王》から「踊りたい」] 。オーケストラのアンコール曲は「J.シュトラウスⅡ:ポルカ・シュネル “浮気心”と 「J,シュトラウスⅠ:ラデッキー行進曲」。

最後にサントリーホールで慣れているのか、指揮者の合図で1階席正面と反対側P席に向けて全員がお辞儀をした。その仕種も日本人向けの礼儀の表し方なのだろうと思った。

*ワルツ王、ヨハン・シュトラウス(1825-99)の名は多くの日本人に知られている。父親はダンス集団のリーダーで、大衆音楽の作曲家だったが、息子が音楽家になるのを反対して工業専門学校に行かせ、彼は銀行員になった。シュトラウスⅡは音楽が好きで才能にも恵まれて、その後「ワルツ王」と呼ばれる大作曲家になった。大衆向きの音楽でも、同時代のブラームス、ワーグナー、ブルックナー、マーラーなどからも同じ音楽仲間として尊敬されていたと言う。
500曲以上の彼の作品の楽譜はオーケストラのスコアとして出版されたのは「美しく青きドナウ」など数曲と言われている。1930年からパート譜が集められてフル・スコアの作成が始まり、「こうもり」のフル・スコアが完成したのは1968年だそうである。きちんとした楽譜の完成には膨大な時間がかかることが予想される。バッハ、ベ―トーヴェンなどの音楽の扱い方の違いが今でも感じ取れる。


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札幌交響楽団ニューイヤー・パーティー2015

2013年の札響ニューイヤーパーティに参加した時にミニコンサートがあったので、今年は2年ぶりに参加してみる気になった。

2015年1月13日(火)19:00開演  会場:ロイトン札幌 3Fロイトンホール
 19:00~ コンサート (指揮/尾高忠明  演奏/札幌交響楽団
 20:00~ 交流パーティ

《ニューイヤー・コンサート》
 ヨハン・シュトラウスⅡ:喜歌劇「こうもり」序曲
 シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ
 ヨハン・シュトラウスⅡ:ワルツ「美しく青きドナウ」

札響ニューイヤー・パーティーは2004年、尾高忠明が音楽監督就任の年に始まったそうである。今年は12年目で、3月末で札響音楽監督を退任するマエストロにとって最後の札響ニューイヤー・パーティになる。彼はウィ-ンに留学していたころに想いを馳せて演奏している様子が曲目からもうかがえた。
「こうもリ」序曲は日本では元旦にテレビで生中継されているが、ウィ-ンでは大晦日と元旦の2日間に亘って演奏されていることを昨年のNHKニューイヤーオペラコンサートでゲスト出演のライナー・キュッヒルが語っていた。その事実と合わせてニューイヤーコンサートの生中継に備えての猛烈なリハーサルが行われていることが尾高の口から語られた。
ズービン・メータやライナー・キュッヒルらが東日本震災当時に日本に寄せた心遣いも熱く語った。

生誕150年を記念してのシベリウス・チクルスも来月の定期で完成するが、2010年に一足早く札響との演奏でCD化された「アンダンテ・フェスティ-ボ」。シベリウスは1925年に交響詩「タピオラ」を作曲してから隠遁生活に入リ、その後、1957年に亡くなるまでほとんど作曲活動はしなかった。1922年、ある工場の25周年記念に短い弦楽四重奏曲を書いていたが、38年に依頼に応えてこの曲に手を加え弦楽オーケストラ(*任意でティンパニを加える)のために編曲した。
その曲が「アンダンテ・フェスティ-ボ」(祝祭アンダンテ)。別荘地“アイノラ”に引きこもっていながら書いた作品。北欧の澄んだ空に美しい音が広がっていくような曲。詩情豊かな優しい調べが心に響いた。
(ピアニストの舘野泉さんに案内されてアイノラを訪れたということで、マエストロ尾高のこの曲にかける想いも一層伝わった。)

「美しく青きドナウ」は定番で10日のコンサートでも聴いたが、指揮者が留学していた当時のドナウ川は汚れて水の色は青くは無かったそうである。札幌の豊平川も鮭が戻ってくるような澄んだ川になって日も浅い。
この曲は一月に聴く機会が多くなったが、何度聴いても美しい曲で踊れるものなら踊りたくなる気分の曲。

40分程度のコンサートの締めは「ヨハン・シュトラウスⅠ:ラディッキー行進曲」。
パーティー前の華やかなコンサートは予定通り終了した。

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《ニューイヤー・パーティー》
 
パーティ-の準備に少々時間がかかり、理事長挨拶、来賓挨拶、鏡開きなどの後、乾杯による開宴は実質的に8時15分ごろ(?)になっていた。
 1時間ほどの楽員との交流が楽しかった。私の場合はこれが楽しみで参加している。飲み物はともかく料理は余り食べない。一昨年は同じテーブルで一緒になったトランペットの佐藤さん、コントラバスの稲橋さんとの交流を楽しんだ。
今年はヴィオラの廣刈さん、オーボエの宮城さん、フルートの高橋さん、ホルンの橋本さんが同じテーブルになって親しく会話ができた。札響以外のコンサートで聴く機会の多い廣刈さんとはヴィオリストの話など幅広く話が弾んだ。(かなり時間を取らせて悪かったかも?)。ホルンの橋本さんとは第4番ホルンの話題を持ちかけると管楽器のこと、リハーサルの日数など私の質問を切っ掛けに詳しく興味深い話をして下さった。

 あっという間に1時間が過ぎ、お開きの時間も9時15分を過ぎていた。コンサートは6列目の正面近くで音楽を楽しみ、パーティは会場入り口のテーブルで楽員との交流を楽しむ私流のスタイル。快く応対していただいた4人の楽員に感謝の挨拶をして早々に良い気分で家路に着いた。

※前日の「札響くらぶサロン」のブログでフィンランドでは自国を“SUOMI”と呼ぶことを書いた。英語の国名は“Finland”で、「フィン人の国」の意味。フィン人は北欧に移住する民族の一つで、居住域はフィンランド。今日のコンサートの折に尾高さんは「フン族」と述べてFinland. Hungaryの繋がりを述べていてモンゴルとも繋がり日本とも繋がりのある話があった。フィン人はアジア系でそこで使われていた言語もウラル語族に属する言語群でアジア系と言われている。(スウェ‐デン語はゲルマン語群でヨーロッパ系である。フィンランドにはフィン人以外のスウェーデン系の人も居住していた。シべリウスはスウェーデン系なので歌曲はスウェーデン語で書かれているのは当然だと思う。(フィンランド語で書かれた歌曲があるかどうかは判らない。)
fin とフン族、フィン人は同じでも Hunがフン族と繋がるかどうかは学説として諸説があるようである。尾高さんの話はいつも面白いが真偽のほどはともかく興味深い話題である。音楽的にはチェコと日本の繋がりも興味深い。
北欧の国として、スウェーデンとフィンランドは同一に考えられがちであるが、国の成り立ちや言語は大違いである。今日でもフィンランドの自治領でありながら、公用語がスウェーデン語というオーラン諸島がある。両国の領有権争いがあって国際連盟に問題が提起され、当時の事務次長の新渡戸裁定で平和裏に解決された稀有の事例。
バルト海にあるオーランド諸島は6700以上の群島から成るが、殆どの島が無人島で、諸島全体の人口が約30万人。今日でも両国民が自由に往来できる島として新渡戸稲造の名はフィンランド国の恩人として知れ渡っているようである。
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第9回「札響くらぶサロン」 Takemitsu Memorial Salon

「札響くらぶサロン」はアカデミー活動として2012年12月に第1回サロンを喫茶店「ウィ-ン」で開いた。札響創設当時からの名演奏と言われる定期演奏会を振り返り、当時の録音を聴いたり、札響OBのお話しを聴いて参加者が語り合ったりしてきた。
第5回サロンから会場を札幌市教育文化会館4階研修室に変更して、年間4回開催の予定になっている。私は第5回サロン(14年1月)から参加し始めて、第7回サロン(14年6月)については活動の様子を翌日のブログに書いた。札響アーカイブシリーズのナビゲーターとして今は亡き竹津さんの素晴らしいお話しと交流会の印象が今でも忘れられない。ブログを書いて2週間後に竹津さんの急逝を知った時の衝撃は大きかった。竹津さんが尽力したPMFの開催時期と重なって、札幌の音楽界にとっても彼の死は計り知れない損失であると思った。

9月の第8回サロンは北海道作曲家協会会長の八木幸三さんを新しいナビゲーターとして迎えた。彼は札幌の音楽界の指導者としても多方面で活躍している現役の中学校教諭。第8回「札響くらぶサロン」からサロンは“TAKEMITSU MEMORIAL SALON”と呼称することになり、八木さんの軽妙なトークで新しい企画がスタートした。

《第9回札響くらぶサロン》 
[日時] 2015年1月11日(日)5:30PM~8:45PM  [場所] 札幌市教育文化会館 401号室

〈第1部〉 「札響定期演奏会アーカイブ」
 ナビゲーターは八木幸三さん。札響定期シベリウスのチクルスは来月が最終回。今回のアーカイブはシベリウスの代表作「フィンランディア」の聴き比べ。
 
 フィンランドは東のロシアと西のスウェ‐デンという2つの大国から政治的にも大きな圧迫を受けていた。「フィンランディア」が作曲された1899年当時、フィンランドはロシアの支配下にあった。人々の愛国心を高めるための行事のために、シベリウスはフィンランドの歴史を表した6つの場面のための6つの曲を書いていた。第6曲として書かれた「フィンランドは目覚める」のための音楽が、後に手が加えられ独立して「フィンランディア」となった事が判った。

{新春お楽しみクイズ大会}形式で聴き比べをしたのが次の3曲である。
  ①2009年尾高忠明指揮札響定期の「フィンランディア」
  ②1966年渡邊暁雄指揮札響録音盤の「フィンランディア」
  ③オッコ・カム指揮ヘルシンキ・フィルの「フィンランドは目覚める」の原典版。
 順不同で3曲を聴いてどれが上記の曲であるかを問うクイズであった。正解者の中から1名が抽選で選ばれ、フィンランドのウォッカ“finlandia”が贈られた。
 かなり違う曲かと予想したが、80%は同じだと言うことで、集中して聴いていないとその違いが直ぐには判らないような曲であった。独立を願う国民の想いが表された曲調で熱狂的に支持されたが、帝政ロシアはフィンランド国内での演奏を禁止していた時期もあったと言う。そのような時代に国内では“SUOMI”(スオミ)という曲名(祖国を意味するフィンランドの国名)で演奏されていたと言う話はよく知られている。
 
 ※フィンランドではスウェーデン語が公用語として広く使われていた。言語学的にはスウェーデン語はヨーロッパの言語に属し、フィンランド語はアジアの言語に属すると言われている。日本と韓国の関係と同様にフィンランドとスウェーデンの関係は仲が悪いようである。(英国でもイングランドとスコットランド、イングランドとウェールズ、イングランドと北アイルランドは同じ国とは言えない関係にあるのは昔からよく知られている事である。)

〈第2部〉 ミニ・コンサート
 札響第1ヴァイオリン奏者の河邉俊和さんによるヴァイオリン独奏。
  ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ第6番ホ長調
  パガニーニ:「24のカプリ―ス」より 第1番、第3番、第20番
  バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より 「シャコンヌ」
  バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番より 「ガボット・アン・ロンドー」
  
河邉さんは神奈川県出身。東京音楽大学卒業。1993-95年、九州交響楽団コンサートマスター。97-99年、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉や東京ヴィヴァルディ合奏団の客員コンマス。東京ヴィヴァルディ合奏団などではソリストとしても度々コンチェルトを演奏。NHK FMリサイタルに出演。東京、福岡、札幌でリサイタル。2000-04.年札幌交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者、05年から札響第1ヴァイオリン奏者として現在に至る。
札響くらぶの催事に毎回のように顔を出し、楽員とファンクラブの交流に極めて協力的なアーティスト。札幌市内の各種活動も積極的に行っており、後進の指導にも携わっている。

トークを交えてミニ・コンサートというより、リサイタルのように思えるプログラムを披露してくれた。
ヘンデルのソナタは自ら編曲して無伴奏で演奏。ヘンデルのソナタは余り聴いたことが無かった。パガニーニの2曲は暗譜で演奏。慣れていないと大変な難曲と思うが、久しぶりで演奏したとの事。かなりの経験がないと、プロとは言えボランティアのような活動に感心した。驚いたことに、20分近くもかかる大曲「シャコンヌ」を暗譜で弾き切った。ブラヴォーの掛け声もかかるほどで拍手喝采で会場が湧きあがった。ソリストとしては当然だろうが楽員として誰でも出来ることではないと思った。もちろん、演奏内容も素晴らしくて感銘を受けた。壮麗で長大な短調の曲の後は明るくて軽やかな長調の3分余りの曲で締めた。
1時間以上の演奏にも疲れを見せず、自ら作曲した優しい曲をアンコールに披露。最後にラデッキー行進曲で演奏を終えた。401号室は録音室で音響も良いので演奏者自身も満足した様子で何よりだったが、参加者全員が期待以上のプログラムに大満足だったのは言うまでもない。

〈第3部〉 ゲストの皆さんと楽団員さんを交えての新年会(交流パーティ)
 ひとテーブル10人のテーブルをいくつか作っての交流会。ワイン、ビール、日本酒を飲みながら音楽の話題で1時間はあっという間に過ぎてパーティ終了。二次会参加者は会員経営のクラシック音楽を楽しめるバー“OLD CLASSIC”へ徒歩やタクシーで向かった。20名ほども集まって立ち飲みの人も出た中で深夜近くなったころ各々家路へと店を出た。同じ趣味の仲間の集いは何と楽しいことか!



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Kitaraのニューイヤー 2015

Kitara New Year Concert 2015
Kitaraのニューイヤーは毎年のように聴いている。外国人指揮者の登場は2012年のウォ-レン・グリーン以来である。今年はウィ-ン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務めるライナー・ホーネックが初登場。ヴァイオリンと指揮で心躍るワルツやポルカを含め、古典派からロマン派の名曲をプログラミングしてKitaraの新年を飾った。

2014年1月10日(土) 15:00開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

指揮・ヴァイオリン/ ライナー・ホーネック   
管弦楽/ 札幌交響楽団
 
ライナー・ホーネック(Rainer Honeck)は1961年、オーストリア生まれ。ウィーン国立音楽大学に学ぶ。81年にウィ-ン国立歌劇場管弦楽団入団。84年にウィ-ン・フィルハーモニー管弦楽団入団、92年に同楽団のコンサートマスターに就任し現在に至る。ウィ-ン弦楽ゾリスデンを主宰し、ソロ・室内楽活動でも積極的に活動している。93年、英国の「プロムス」に出演するなど、ソリストとしても国際的に活動。2002年以来、名古屋フィルの首席客演コンサートマスターに就任して“弾き振り”で活躍し、紀尾井シンフォニエッタ、読売日響などでも指揮活動も行っている。兄のマンフレート・ホーネックは指揮者である。

〈PROGRAM〉
 ロッシーニ:歌劇「泥棒かささぎ」序曲
 シューベルト:キプロスの女王ロザムンデより 間奏曲第2番、 バレエ音楽第2番
 ベートーヴェン:ロマンス 第2番 ヘ長調
 ドヴォルジャーク:スラヴ舞曲集 第2集より 第2曲 ホ短調
 ブラームス:ハンガリー舞曲集より 第1曲 ト短調
 ヨハン・シュトラウスⅡ:喜歌劇「ジプシー男爵」序曲、 行進曲「エジプト行進曲」
             ワルツ「レモンの花咲くところ」
             ピッツィカート・ポルカ(ヨーゼフ・シュトラウスとの合作)
 ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ「とんぼ」、 ポルカ「おしゃべりなかわいい口」
             ワルツ「天体の音楽」、 ポルカ「騎手」
 ヨハン・シュトラウスⅡ:ワルツ「美しく青きドナウ」

ロッシーニ(1792-1868)はイタリアの人気のオペラ作曲家。2000年に訪れたミラノ・スカラ座に胸像が飾られていた。「セビリアの理髪師」序曲が最も有名。歌劇「泥棒とかささぎ」はパーティの会場で銀の食器が盗まれ、女中が泥棒の嫌疑をかけられるが、かささぎ{カラス科の鳥}がくわえて逃げたことが判明して、恋仲の女中と貴族の息子が無事に結婚するストーリー。ロッシーニの数ある序曲の中でも最も親しまれている名作のひとつ。行進曲風の序奏で始まり、明るい雰囲気に満ちた華やかな曲。ピッコロが目立った活躍で印象に残った。

シューベルト(1797-1828)のこの曲は知らないと思ったが「間奏曲」はよく耳にするメロディが繰り返して奏でられた。「ロザムンデ」は弦楽四重奏曲で聴いているので、同じ旋律が転用されているのかも知れない。バレエ音楽の曲と共にウイーン風の香りのする優雅な調べ。 オーボエ、フルート、クラリネットの音色が特に美しかった。

ベートーヴェン(1770-1827)は《ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス》を2曲残している。アルテュール・グリュミオー独奏のCDを15年前から数年間は好んで聴いていた曲で、ベートーヴェンの曲としては一貫して美しい詩的リリシズムに満ち溢れている。「第2番 ヘ長調」のヴァイオリン独奏はホーネック。本日のプログラムで見せ場のひとつ。

ブラームス(1833-97)とドヴォルジャーク(1841-1904)の交友関係は以前のブログでも書いたが、《ハンガリー舞曲集》の成功が《スラヴ舞曲集》に繋がった。両舞曲集とも原曲はピアノ連弾用で、後に管弦楽用に編曲された。
スラヴ舞曲2集全16曲のうち、「第2集 第2曲」は曲集中で最も人気のある1曲。ショパンのマズルカによるスタイルで豊かな情感のある美しい舞曲。クライスラーがヴァイオリン独奏曲に編曲したことで演奏される機会も多くて一層人々に親しまれているように思う。
ハンガリー舞曲集は全21曲から成る。「第1番」は神聖なチャールダーシュで哀愁に満ちた旋律が心を打つ。ブラームスの管弦楽編曲は第1、第3、第10の3曲のみ。いろいろな作曲家が管弦楽曲に編曲している。アンコール・ピースとしても名高い。また、いくつかの曲はヴァイオリン曲として聴く機会も多い。

オーケストラの楽器配置に特徴があった。ヴァイオリンの対抗配置で、コントラバスが下手。ホーネックの弾き振りはピアニストの弾き振りと違って身体の動きが自由で指揮もダイナミックに見えて面白かった。名古屋フィルとシューベルト全交響曲シリーズを指揮したり、読響のモーツアルトシリーズにも出演したりして、指揮活動も本格的になって堂に入っている感じであった。

後半は毎年ウィ-ン・フィルニューイヤーコンサートで演奏されるヨハン・シュトラウス一家の音楽。

ワルツ王ヨハン・シュトラウスⅡ(1825-99)はウィンナー・ワルツの全盛期を築きあげ、オペレッタに多くの名作を残した。喜歌劇《ジプシー男爵》は《こうもり》と共に代表的な作品。「序曲」はハンガリー風の雰囲気とウイーンのワルツ、ポルカの楽しい旋律が混ざりあった正月ならではの心が浮き立つ曲。
「エジプト行進曲」は1869年のスエズ運河開通を祝って作られた行進曲。厳かではあるが祝典的な曲。演奏者のコーラスが入って興味深かった。
「レモンの花咲くころ」はイタリアの美しい風景を描いた作品で、題名はゲーテの小説から採った。
「ピッツィカート・ポルカ」は弟のヨーゼフとの合作でピッツィカート奏法で弦楽器だけで演奏されて親しまれている曲。今回は打楽器のかわいい音色が加わって心に残る印象的な調べになった。

ヨーゼフ・シュトラウス(1827-70)はヨハンと2歳下の弟。ヨハンの曲は何十年も前から親しんでいるが、ここ数年前から観るようになったウィ-ンフィルニューイヤーコンサートでは父ヨハンの他にヨーゼフ等の曲が演奏されることが多くなっている感じがする。何百曲もある中から選曲されているので有名な曲以外は覚えていない曲が多い。
ワルツ「天体の音楽」のタイトルは何となく覚えているが、他のポルカの名は記憶にない。ポルカは2拍子の軽快な舞曲。

毎年、コンサートの最後の曲は「美しく青きドナウ」。60年前の最初に買い求めたLPレコードで慣れ親しんだ曲。ウィ-ンの街をゆったりと流れるドナウ川の様子が情景として浮かぶ心温まる美しい曲。個人的にはクラシック音楽で心を癒した学生時代を思い出す原点となる曲。毎年のウィ-ンフィルニューイヤーコンサートのフィナーレを飾る曲となるのはオーストリアの第2の国歌とも呼ばれる曲であることを認識したのは数年前の事であった。(「ウイーンの森の物語」もフィナーレにしても良いと思っていた。)

Kitaraのニューイヤーで8割の客が入ったのは良かったのではないだろうか。1階の客席は満席状態、2階もCB,RB.LB席も結構な客入りであった。ウィ-ン・フィルのコンマスの指揮振りでウィ-ンの香りが存分に漂うコンサートは大変良かった。演奏終了後の拍手喝采で聴衆も充分に楽しんだ様子だった。ホーネック自身も満足したのではないだろうか。

アンコール曲は「ヨハン・シュトラウスⅠ:ラデッキー行進曲」。聴衆の拍手と共に曲が演奏されたのは言うまでもない。

ここ数日間の吹雪で交通機関も乱れ、今日のコンサートのチケットを購入した人でも会場に来れなかった人もいたであろう。ともかく無事に終了して何よりであった。

*ライナー・ホーネックは1997年10月10日にKitaraで行われた「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会」のプログラムに4人のコンマスの一人として名前が載っていた。この時に出演していたかどうかは判らない。他のコンマスは1991年以降毎年のように来札している。会場で手渡されたチラシによると、ホーネックも札幌駅前に誕生する室内楽ホールのオープニングフェスティバルの杮落とし記念コンサート(7月5日)に出演が決まっている。このコンサート情報によると7月5日から7月31日まで25のコンサートが開催される。PMFと開催時期が重なるが楽しみが増える。ライナー・ホーネックが毎年来札する可能性が高まるような気がする。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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