エルム楽器創立40周年記念コンサート

40年の感謝をこめて ~エルム楽器史最大の演奏会~
 ELM 40th ANNIVERSARY CONCERT 2014
 ~ 世界で活躍する室蘭市出身・3名の音楽家を迎えて~

2014年11月30日(SUN.) 14:30開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

北海道室蘭市で創立された会社が本社を札幌にして北海道の音楽文化の発展に寄与してきた。創立40周年を記念して、室蘭市出身の音楽家を中心に据えて大々的なコンサートを開催した。渡邊一正指揮で管弦楽は札幌交響楽団。

〈前半のプログラム〉
 ベートーヴェン:ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲 ハ長調
 リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調(ピアノ:上野真)
 
渡邊一正(Kazumasa Watanabe)は1966年生まれ。96年から東京フィル指揮者に就任。広島響の正指揮者(95-02)を務めたほか、日本各地のオーケストラに客演。海外ではサンクトぺテルブルグ響にも客演。新国立劇場でオペラ、バレエも指揮。ピアノの名手でモーツァルト、ベートーヴェン、ラヴェルのピアノ協奏曲の弾き振りも行う。

上野真(Makoto Ueno)は室蘭市出身。昨年2月にKitara小ホールで開催されたヤマハ創業125周年記念特別企画「上野真ピアノリサイタル」に出演。その折にプロフィールは紹介済み。

四方恭子(Kyoko Shikata)は1957年神戸生まれ。ドイツ屈指のオーケストラ、ケルン放送響の第1コンサートミストレス(90-03)。その間、コンチェルト、室内楽、ソロのリサイタルでも活躍。98年10月、ビシュコフ指揮ケルン放送響のコンマスとして日本ツアー(札幌ではソリストが樫本大進。この時のコンマスが彼女だったので、それ以来彼女に注目していた)。05年から兵庫芸術文化センター管のコンサート・ミストレス、09年から東京都響のソロ・コンサート・ミストレスにも就任。アフィニス夏の音楽祭の音楽監督も務めている。現在、京都市立芸術大学教授。

上村昇(Noboru Kamimura)は1952年千葉県市川市生まれ。京都市立芸術大学卒業。77年、日本音楽コンクールチェロ部門第1位。79年、カサド国際チェロ・コンクール優勝。83年に続き90年に札響定期で共演(この時、彼の「ハイドン:チェロ協奏曲を初めて聴いた)。91年ノイマン指揮チェコ・フィルと共演。現在、京都市立芸術大学教授、桐朋学園大学客員教授。

最初のプログラムはベートーヴェンが残した唯一のチェロを伴った協奏曲。“Triple Concertofor Violin, Cello & Piano in C Op.56” はオイストラフ、ロストロポーヴィチ、リヒテル、カラヤン指揮ベルリン・フィルの輸入盤のディスクで聴き親しんでいる。これまで生演奏で聴いた記憶は無い。ソリストを3人も揃えるのが大変なのだろうと思う。今日の演奏会に備えて予め聴いてきたので大曲を身近に聴けた。名高いソリストを迎えて重厚な演奏会の幕開けの曲になった。

リストはそれまでのピアノ奏法とは異なった両手を高く上げ、凄まじい音量で鍵盤を弾き、圧倒的なテクニックで人々を魅了したピアニストとして知られる。この曲の初演は1855年ベルリオーズの指揮で作曲家自身のピアノによって行われた。各楽章4・5分程度で4楽章から成る。全体で約18分で聴きやすく聴衆は華やかな演奏技術に圧倒される。客席の8割が埋まったようだったが、聴衆からブラボーの声が飛び、暫し拍手も鳴りまず演奏者に対する驚きの声も聞こえた。
YAMAHA CFXのピアノを使っての音量は効果的であった。上野は19世紀のピアノ、プレイエルやエラールを使用したアルバムを発表しているが、最新のヤマハのピアノでの圧倒的な演奏は現代の聴衆の心を惹きつける。札幌市内だけでなく地方から駆け付けた幅広い年齢層の人々に強烈な印象を与えたように思った。私自身も彼の演奏を聴いたのは3回目だが、演目が協奏曲と言うこともあってリストの演奏に感動した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈後半のプログラム〉
 土田英介:ピアノ協奏曲(ピアノ独奏:泊真美子) [世界初演]
 チレア:オペラ「アドリア―ナ・ルクヴール」より“私は創造の神のつつましい僕”
 ヴェルディ:オペラ「ドン・カルロ」より“世の虚しさを知る神よ”
 プッチーニ:オペラ「トスカ」より“歌に生き愛に生き”

土田英介(Eisuke Tsuchida)は室蘭市出身の作曲家。東京藝術大学卒業。同大学院修了。1984年、第53回日本音楽コンクール作曲部門第1位(管弦楽曲)。オーケストラ、室内楽、合唱、ピアノ、ヴァイオリン曲など多くの作品がある。現在、東京音楽大学教授、洗足学園大学客員教授。東京芸術大学講師。桐朋学園大学講師。

泊真美子(Mamiko Tomari)東京藝術大学卒業。2003年、第72回日本音楽コンクールピアノ部門第1位。これまでに沼尻竜典指揮東京響、高関健指揮新日本・フィル、渡邊一正指揮札響ほかと共演。近年は「公共ホール音楽活性化事業」、「サントリーホール芸術財団サマーフェスティバル」でも活動。

立野至美(Yoshimi Tatsuno)は室蘭市出身。武蔵野音楽大学卒業。同大学院首席卒業。ミラノ国立ヴェルディ音楽院修了。イタリア・カタラーニ国際コンクール1位。数々の国際コンクールで優勝を重ね、イタリアの国立歌劇場を始めヨーロッパの歌劇場で活躍。藤原歌劇団団員。現在、武蔵野音楽大学講師。

後半のプログラムに登場した作曲家やピアニストの名は初めて耳にした。土田英介作曲の作品は国内やアジアでも演奏されていると言う。ヴァイオリン協奏曲が戸田弥生+十束尚弘指揮札響、漆原啓子+小松一彦指揮新日本フィル。管弦楽曲はソウル、上海、ハノイで演奏され高い評価を得たと言う。ピアノ・ソナタも泊真美子との録音盤がある。
本日の演奏曲は作曲家の集大成となる作品のようで、3管編成のオーケストラ、打楽器9(?)、ハープ2、ピアノ、チェレスタなど現代曲ならではの楽器編成(独奏用ピアノの他にもう1台ピアノが用意された)。かなりの大曲で曲が長く、ある程度の予備知識がないと鑑賞が難しい。弦楽器の演奏方法も変っていてピアノ独奏も特徴があって、それなりに興味はあった。
作曲家自身も1階席で聴いていて感激も一入だったのではないかと思った。

最後に登場したのがオペラ歌手、立野至美。室蘭出身で海外のコンクール入賞のニュースで早くから名前を知っていた。Kitaraの開館記念のコンサートにも何度か登場してその活躍ぶりを目にしていたが、今日は久しぶりのKitara登場。耳にした声は一段と磨きがかかって今までより声量が増した感じ(ソプラノ・スピントの範疇に入る歌声か)。舞台衣装、声量ともに一層華やかでオーラを発している印象さえ受けた。
札幌での知名度の高いソプラノ歌手の登場で客席が湧きたった。3階を埋めた客席まで届く素晴らしい歌唱に拍手喝采が湧き起こって会場の雰囲気が一気に盛り上がった。
アンコール曲にテノール歌手の協力を得て、「ヴェルディ:乾杯の歌」の場面を熱唱。

指揮者と管弦楽はソリストの引き立てにまわって控えめな役まわり。音楽教室や楽器購入などで繋がりのある聴衆が札幌だけでなく地方からも集まったようで、聴衆の年齢層も極めて広く特に若い人たちが多く目立ったのが良かった。
スポンサーサイト

時計台ボランティア活動(2014年)

2014年の時計台ボランティア活動も今日で終った。2月の雪まつり期間中にも特別な活動日があるが、例年は6月~11月の半年の間、国際ブラザ外国語ボランティアとして時計台を拠点にした活動に従事している。今年も月4回のペースで活動した。

外国人の来館者は1割程度であるが、一応世界各国から来館している。今年度後半はグループで来館するタイ、シンガポールの旅行客が目立った。香港からの観光客は2人連れで旅行する客が多いようである。欧米人の中には日本旅行中に英語を話す機会がなくてフラストレーションを感じている人も偶に見受ける。館内の説明より、英語で会話することで精神的に落ち着く人がいるのに毎年気付く。
今日の午前中だけで20名ほどの外国人が来館して、特に幼児を含んだ家族連れのシンガポール人十数人が英語の説明に傾聴してくれた。子どもたちの礼儀の良さと教育のレヴェルに関心した。円安の影響もあって多くの観光客が来日しているのかなという印象も受けた。

日本人で北海道を1週間かけて旅をする人もいるが、2泊3日の旅で、帰りの日の午前中に時計台や赤レンガ庁舎を訪れる旅行者が多いようである。何度も来道している人は時間的余裕を十分に持って来館している。来館者は時計が133年前から機械仕掛けではなく重りを利用して人間の手で手間をかけて動き続けているのを知って驚く。
当時の札幌農学校では農業、土木、工学、数学、物理学、化学、生理学、文学、倫理学など英語で授業が行われ、全人教育を受けていたことまで知って帰る人はまだ多くはないようです。

十日ほど前の時計台活動日に嬉しいことがあった。41年前に担任した教え子が卒業アルバムを持って時計台を訪ねてくれた。その女性とは1年間の繋がりだけであったが、私に怒られてばかりいたと言う。同級生に私と会いたいと言っていたらしい。その友人が偶々私の1ヶ月前の時計台ボランティア活動の様子をテレビで見て彼女に連絡した。(大阪のテレビ局が「恋の町札幌」の歌で知られた『石原裕次郎と時計台』の繋がりで取材に訪れていた。) その結果、私の消息が判り、時計台の事務局に連絡をして私の活動日を知って訪ねてきた次第。
孫2人がいて、英語教室で指導を続けて33年と言う。そのメリハリの効いた話しぶりに普段の活躍ぶりが目に浮かび、彼女の行動力に感心すると同時に感謝の気持ち! 教員冥利に尽きる場面が何度かあるが、今回も清々しい気分を味わった。

押しつけのボランティア活動にならないように、状況を見ながら必要に応じて来館者におもてなしの心で対応するように心がけている。来館者に情報を提供して自分自身も彼らから喜びを与えてもらっている。それなりに充実した活動ができ、個人的にも気持ち良く今年の活動を終えれたことは何よりであった。

山形交響楽団 第240回定期演奏会 

「日本プロオーケストラファンクラブ協議会」(JOFC)の第8回総会が今年度は山形で開催された。札響くらぶの一員として2泊3日の旅に参加。総会に先立ち、山形訪問の機会を利用して、前日に上杉藩の城下町であった米沢を観光した。歴史の面影が街のあちこちに感じられた。仙台空港から山形に向かう電車の車窓から望む山々の景色が晩秋を迎える森林の色どりに映えて美しかった。山頂に雪を頂いた蔵王も一段と光彩を放っていた。

《第8回JOFC 山形大会2014 総会》は11月23日12:30pm 山形テルサ2階リハーサル室で約80名の参加者と大会スタッフ20名ほどの協力で開会。(札幌からは15名ほどの参加)。 各団体活動報告が行われた後、参加者は各グーループ別トークとゲネプロ見学に二分。私は山形響のゲネプロ鑑賞(13:30pmから30分間 本日の演目の2曲の一部の演奏練習。)ホジャイノフも参加してくれて良かった。指揮者の細かい指示が楽員に出るたびに彼が指揮者の楽譜を覗き込む姿も可愛らしく、好感が持てた。

2014年11月23日(日) 16:00開演  山形テルサホール

指揮/ 飯森 範親      ピアノ/ ニコライ・ホジャイノフ
  
飯森範親(Norichika IImori)は1963年生まれ。桐朋学園大学卒業後、ベルリンとミュンヘンで研鑚を積む。94年より東京響の専属指揮者。モスクワ放響特別客演指揮者、ザ・カレッジ・オペラハウス管常任指揮者(現名誉指揮者)、ヴュルテンベルク・フィル音楽監督(現首席客演指揮者)、広島響正指揮者などを歴任。04年より山形響の常任指揮者に、07年より音楽監督に就任。海外ではフランクフルト放響、ケルン放響、チェコ・フィル、プラハ響、モスクワ放響など世界的なオーケストラとの共演も多い。
現在は山形交響楽団音楽監督、東京交響楽団正指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者、日本センチュリー交響楽団首席客演指揮者などを務めている。
今日の山形響を作り上げた彼の功績は計り知れないほどで、国内外での目を見張る活動でいろいろな賞を受賞している。彼のコンサートをKitaraで聴いたのは08年、日フィルの北海道定期札幌演奏会の1回しかないのが残念。山響、東響、日本センチュリー等の定期公演の合間を縫って幅広い音楽活動を展開している。北海道でも札響の地方公演の指揮も気軽に担っているようである。

ニコライ・ホジャイノフ(Nikolay Khozyainov)は1992年、ロシア生まれの将来を嘱望されたピアニスト。今年2月8日の札響名曲シリーズに登場して「チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番」を弾いた。類いまれなテクニックで展開した個性的な演奏には心を奪われた。アンコールに応えて弾いた「リスト:モーツァルトの〈フィガロの結婚〉の主題による幻想曲」の感動が頭の隅に残っている。
日本でのオーケストラとの共演やリサイタルは毎年あって、8月には東京で読売響との共演、リサイタルでは「シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集」が演奏曲目に入っていたようでレパートリーの広い本当に驚くべきピアニスト。日本では追っかけのファンもいると言う。

山形交響楽団は1972年1月創設。東北地方初のプロ・オーケストラ。初代音楽監督は村川千秋。92年、楽団創立20周年を祝って、モーツアルトの連続演奏会を開催。飯森&山響 モーツァルトシンフォニーサイクル『アマデウスへの旅』が来年2月の第24回が最終回で「交響曲全曲演奏定期演奏会」の完結年となる。
飯森範親の指導の下で、急激な成長を遂げてオーケストラのレベルが飛躍的に向上したと評判の楽団。テルサホールは木のぬくもりのあるホールであるが、客席が800弱なので定期演奏会は月2回開催である。楽団は山形以外に庄内、酒田、鶴岡でも定期公演を行っている。

〈プログラム〉
 ベルリオーズ:序曲「リア王」 作品4
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58
 ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 作品98
  
ベルリオーズ(1803-69)は「幻想交響曲」や「イタリアのハロルド」などの作品が良く知られている。シェクスピアの戯曲「リア王」を題材にして、作曲家自身の若い頃の実体験を乗り越えて芸術作品にしたそうである。今まで聴いたことは無かったので新鮮な気持ちで聴けた。

ベートーヴェンの全5曲のピアノ協奏曲で「第5番 皇帝」が最も有名で演奏機会も多い。私自身は「第4番」を聴くようになってからは、絢爛豪華な「第5番」より同等かそれ以上に好みのコンチェルトになっている。
ピアノ独奏で始まるという前例のない第1楽章から、ピアノ主導で曲が華やかに紡がれていく。主題の連打も面白い。ホジャイノフのカデンツァの手の動きも1階のG列から終始見れて良かった。ベートーヴェンが手にした新しいエラールのピアノが壮大な曲を可能にしたと思われる。ホールに持ち込まれたYAMAHAのCFXの音も良く響き渡った。ピアノと弦楽器だけで演奏される短い緩徐楽章の後、リズミカルな主題で明るく美しいフィナーレ。
期待のピアニストが奏でる「第4番」はすっかり私を虜にした。

演奏が終わってブラボーの声が上がる中、ステージに何度か登場して、アンコールに応えて弾いた曲は最初はリストの編曲ものかと思った。耳にしたことが無いと思っていたら、「カルメン」のリズムが何度も繰り返された。鍵盤を動き回る運指の速さは正に超絶技巧。ホジャイノフの面目躍如。
会場を出る時に確認したアンコールの曲は「ブゾーニ:ソナチネ第6番」(ビゼーの「カルメン」に基づく室内幻想曲)と書かれていた。

ブラームスの4曲の交響曲は全て聴きごたえがある。トスカニーニやC・クライバーによる「第4番」の名演はCDでしばしば聴く。コンサートでも演目になる機会が多い。
飯森はブラームス最後の交響曲を力感みなぎる指揮ぶりで各楽章の色々な表情を描き出した。各奏者の心を掴んで思い通りの音をオーケストラから引き出しているように思えた。楽員だけではなく聴衆も惹きつけるエネルギッシュで魅力ある指揮ぶり。今回の山形大会に集った各地の音楽ファンへの歓迎のもてなしの心も伝わってくるような演奏ぶりに尚一層の充実感が湧きあがってきた。
演奏終了後の万雷の拍手は見慣れた光景であったが、ホールを出るとピアニストと指揮者へのインタビューが行われようとしていた。その場に居合わせてインタビューの様子を観れたのはとてもラッキーであった。CDの販売とサイン会があったが、大会参加者の懇親会が行われるホテルに向かうバスの時間に間に合わなくなる恐れもあるので別な機会に譲ることにしたのが少々心残りであった。

山形国際ホテルでの懇親会では第2ヴァイオリン首席の舘野・ヤンネさんと言葉を交わす機会を持てた。(2年前Kitaraで舘野泉との親子によるデュオ・コンサートを聴いたことがあった)。パーカッションの南さんとも同じテーブルで親しく話ができた。二次会の居酒屋で大会を支えた山響のファンとも真夜中近くまで話が弾んだ。こんな経験は初めてであった。

札響くらぶの仲間とも旅行を通して一層親近感が湧いた。表面的な付き合いに終らない宿泊を伴う旅行の良さを味わった。普通の海外旅行の場合と違って同じ趣味を持つ人々の繋がりをより大切にしたいと思った。

*JOFC(Japan Professional Orchestra Fan Club Conference)は2005年、札幌、仙台、山形の3つのファンクラブの代表が集まって全国組織設立の提案がされ、2006年に上記3クラブに群馬、広島が加わってのJOFC設立総会で発足。2007年に第1回大会が仙台で行われた。その後、名古屋、石川が加盟して現在は7団体。都響倶楽部がオブザーバー参加。他にいくつかのオーケストラのファンクラブも加盟を検討していると言う。年1回開催で各地持ち回りが原則。来年の第9回大会は群響ファンズが幹事で指揮/大友直人、ソリスト/諏訪内晶子による演奏会が10月か11月に予定されている。群馬は訪れたことはないし、群響も一度聴いてみたい。出演者も魅力的である。来年度の計画に入れておこうかと思う。
注:JOFCの正式英語名は公式のものではなく単なる類推による。



西本智実 x ロイヤルチェンバーオーケストラ 北海道特別公演

西本智実のコンサートは2003、2004年と2回聴いていたが、それ以来しばらく聴いていなかったので、音楽鑑賞のスケジュールが立て込む中で思い切ってチケットを買い求めた。(発売開始の2ヶ月後の8月には購入していたので6500円の一番安い席でも3階中央の一番前の席であった。)
03年は札響くらぶコンサートでロシア・プログラム。04年は西本智実「革命」ツアー2004withアナスタシア。その後も度々「革命ツアー」があって来札していたようである。

2014年11月19日(水) 19:00開演 札幌コンサートホール Kitara 大ホール

〈Program〉
 チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調 作品48
 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番 二長調 『シュトラスブルガー』 K.218 
 モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550     

ロイヤルチェンバーオーケストラ(Royal Chamber Orchestra)は1987年に皇太子殿下を楽団長として結成され、後に「サイトウキネンオーケストラ」の若手メンバーなどを集めて、91年に堤俊作が結成。95年に現在名に改称。東京、大阪中心の活動が拡がりも見せ、99年に旭川、札幌公演(ソリストがイェルク・デムス)、2000年に仙台、札幌公演 を行なっている。私は2回とも札幌公演を聴いていたが、15年も前のことはすっかり忘れていた。
05年にはヨーロッパ公演も行い、マイスキー、ブーニン、諏訪内、樫本、中村などとも共演している。13年から音楽監督に西本智実を迎えた。

奥村 愛(Ai Okumura)は1979年、アムステルダム生まれ。父が当時のアムステルダム・コンセルトへボウ管のヴァイオリニストで、7歳までアムステルダムで過ごした。桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースで学ぶ。 スターン、デュメイ、パールマン、ホーネックからも薫陶を受けた。第68回日本音楽コンクール第2位。 読売日響、日フィル、東京響、仙台フィル、九州響など国内主要オーケストラと共演の他、ビエロフラーヴェク指揮プラハ・フィルとも共演。本名徹次指揮ヴェトナム国立響のヴェトナム・ツアーにソリストとして参加するなど海外のオーケストラとの共演も多い。

ホアイエに入場する際に渡されたチラシは沢山あったが、今日のコンサートのチラシが一番上にあり、今日の演奏曲目のプログラムは配布されなかった。 簡単なプログラムも全く配られないコンサートはKitaraでは極めて珍しい。今迄の経験でどこの主催かが判った。私自身は今日も演奏曲目をCDで聴いてきたので全然困らなかったが、曲名しかないので戸惑っている声が聞こえきた。隣りの座席の女性は第1楽章が終るとチラシをめくってプログラムを探し始めた様子。(1999、2000年はヤナセクラシックコンサートとして開催されたが立派なプログラムが渡されていた。)

第1曲目は西欧のバロック音楽や古典派の音楽を弦楽合奏で表現したチャイコフスキーの傑作。第1楽章はソナチネ形式の小品でロシア風の主題。第2楽章のワルツはウィ-ンやパリ風の優美さ、華やかさにロシア風の雰囲気が漂う。第3楽章のエレジーは哀愁に満ちた緩徐楽章。第4楽章はロシアの主題による終曲。ロシアの民俗舞曲を主題にドラマティックな展開。コーダは第1楽章の序奏が再現されて一気にフィナーレ。
女性の演奏者がオーケストラの8割も占めるのを目にして少々驚いた。昨日の台湾のオーケストラの楽員構成が珍しいと思ったが、日本のオーケストラにもこんな状況が普通になっても不思議ではないのかも知れない。音楽大学の学生の男女比率を見れば考えられることではある。オーケストラが作り出す音楽に変わりがなければ別に問題ではないのだろうが、日本の第一線のオーケストラの現状から男女半々の比率になるまでには時間を要すると思う。

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲のうちで第5番「トルコ風」を演奏会で聴く機会が一番多い。「第4番」はしばしば「軍隊的」と呼ばれると言うが、「シュトラスブルガー」という呼称があるのに気付いていなかった。楽器編成はオーボエ2、ホルン2と弦25。
第1楽章で軍隊ラッパを思わせる主題。第2楽章のアンダンテ・カンタービレではオーボエと第1ヴァイオリンが抒情的で美しい旋律を歌う。独奏ヴァイオリンがこの美しいメロディをいろいろ変化させて繰り返し、オーケストラが支える。第3楽章の最後のエピソードがディッタースドルフの「謝肉祭交響曲」の中の「シュトラスブルク舞曲」と呼ばれるミュゼットと類似したアンダンテ・グラツィオーソ。
奥村愛の名前は知っていたが生演奏を聴くのは初めてだったが、カデンツァを見事に披露して、独奏が際立つ演奏を展開した。オイストラフ、クレーメル、ムロ―ヴァ、藤川真弓のCDを何日かかけて聴いたので親しみ易い楽曲となって楽しめた。
普通ならソリストのアンコール曲もあり得たが、前半で20時を過ぎて予定時間が押したのか、聴衆の盛り上がりも今一つだったのか、間髪入れずにアナウンスが入って結局はアンコールなし。

休憩後の「第40番」はモーツァルト後期3大交響曲の1曲。全体に暗い抒情美をたたえながら、情熱的である。先日N響とのリハーサルでブロムシュテットが「モーツァルトの音楽がエモーショナル」と何度も強調していたのが印象的。
交響曲に管楽器全員が加わっての演奏で、楽器編成はフルート1、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、弦5部。
モーツァルトの不遇の晩年が描かれているかのようである。モーツァルトには珍しい短調の曲(他に25番があるだけ)。全4楽章のうち3楽章がソナタ形式。
西本は背が高く細身の体を駆使して、長い手を使いながら自由自在に広がりのある指揮ぶり。その美貌と相まって人気の高さを誇る。今日のKitara大ホールの9割ほどの座席を埋めた聴衆の多くは彼女の名で集まったような感じであった。1階、3階は満席。2階のRA、LA席に少し不自然な空席状況が見られて気になった。料金設定でのSS席と席の違いによるものかな(?)と思った。3階席はすべてA席だったと思う。(今回SS席10000円、S席・PS席8500円、A席6500円)。

アンコール曲は「J.S.バッハ:G線上のアリア」。 美しい弦の響きに聴衆もウットリ。 21時終了で時間的には余裕があったはずだが、アンコールは1曲のみ。聴衆へのサービス精神がもっと発揮されても良いのではと思った。

*2000年の入場料はS席4000円、A席3000円であった。学生、60歳以上、障害手帳所有の人は各1000円引き。89年小澤征爾指揮ボストン響の公演がS席18000円、札響の定期会員S席料金が1年11回公演で3万円。時代の違いで一概には言えませんが、今回の演奏会の料金は高いと思いました。3階CC席の1列目はS席になることもある良い席なので、個人的には普段の1階席とは違った面から音楽を鑑賞できて結果的に良かったと思っています。

*北海道特別公演は19日の札幌のほかに、18日函館、20日帯広でも計画されているようである。

台北市立交響楽団 札幌公演

台湾のオーケストラの札幌公演の情報を得た時には私の11月のスケジュールはかなりタイトになっていた。7年前のPMFで「フィルハーモニア台湾」の公演を聴いて以来のことで久しぶりである。来年3月に札響が台湾公演を行うこともあり、相互交流の一環になるのかなとも思った。いろいろ考えてチケットの購入は迷っていた。今月の初めにチラシを確認した時に、シニアで低料金のチケットが手に入ることが判り、出演者にも興味を抱いて聴いてみることに決めた。

Taipei Symphony Orchestra in Sapporo

2014年11月18日(火) 19:00開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

チャイコフスキーの夕べ All TCHAIKOVSKY PROGRAM

 歌劇「エフゲニー・オネーギン」より ポロネーズ
 ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23 (ピアノ:アンナ・ヴィ二ツカヤ)
 交響曲 第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」

台北市立交響楽団(Taipei Symphony Orchestra)は1969年、創立。ヨーヨー・マ、ロストロポーヴィチ、テミルカーノフなどが共演。05年~07年アンドラ―シュ・リゲティが音楽監督を務めた。13年、ギルバート・ヴァルガが音楽監督に就任。

Principal Conductor, Gilbert Varga
ギルバート・ヴァルガは1954年、ロンドン生まれ。ヴァイオリン奏者としてスタートしたが、73年に指揮者としてデビュー。アバド、バレンボイム、シャイ-、ムーティなどを育てたフランコ・フェラーリやセルジウ・チェリビダッケに師事。シュトゥットガルト室内管(91-95年)、スウェーデン・マルメ響(97-2000年)の首席客演指揮者。バスク国立響の音楽監督を10シーズン務め、フィラデルフィア管、アトランタ響、ボルティモア響など北米のほか、世界各地のオーケストラに客演。

アンナ・ヴィニツカヤ(Anna Vinnitskaya)は1983年、ロシア生まれ。07年エリーザベト王妃国際コンクール優勝。11年ルツェルン音楽祭にデビュー。ドイツを拠点にヨーロッパ全土でリサイタルを行う他、世界各地で公演活動。世界の主要なオーケストラとも共演。08年バーンスタイン賞受賞。同年東京公演がNHKで放送されて注目を集めた。09年、ハンブルク音楽大学教授に就任。

シニア券は当日座席指定券引き換えとなっていて、結果的に1階のS席10列の良い席が手に入った。何か凄く得をした気分であった。

最初の演奏曲は昨年のMETライブビューイングで観たネトレプコ主演の《エフゲニー・オネーギン》より「ポロネーズ」。「序曲」の予定が「ポロネーズ」に変更になっていた。1年前に耳にした舞踏会の場面での壮麗な音楽が展開され、オペラの場面を思い浮かべて聴けて気持ちも浮き立った。

オーケストラの構成メンバーの大部分が若い女性、コントラバス奏者8人や木管奏者は全員女性。オーケストラ楽員の8割は女性のようで、世界でも珍しいのではと思った。

ヴィニツカヤは最初から力強い演奏で一気に聴衆を彼女の世界に引き込んだ。ピアノ独奏の迫力がホールに広がった。全曲の半分以上を占める壮大な第1楽章。(この後、拍手が起こることが偶にあるが幸い今日は無かった。)フルートの歌う旋律が抒情的で美しい第2楽章。第3楽章は舞曲風のメロディを奏でて絢爛豪華なフィナーレで終結。
オーケストラの演奏に支えられ力感あふれる豪快なピアノ演奏は極めて印象的であった。

彼女の演奏に感動した聴衆の拍手は聴衆の少なさを補うほどの大きなもの。アンコールの1曲目「プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番より第3楽章」は今まで聴いたことも無いような激しい打鍵の曲。彼女はこのような曲が得意なのかもしれない。鳴り止まぬ拍手に応えて、アンコール2曲目は「ジロッテイ:バッハのプレリュードのテーマによるトランスクリプション」という魅力的な小品。今日の演奏から判断するとかなりの実力の持ち主。日本での知名度がもっとあってしかるべきと思った。

プログラム後半の「悲愴」は女性中心のオーケストラがどんな完成度を示すのかに関心があった。
ファゴットの暗鬱なメロディで始まり、苦悩や不安が重く歌い上げられ、ヴァイオリンが奏でる慰めの旋律。第2楽章はワルツの雰囲気。第3楽章はスケルツォと行進曲が合体して激しく感情が動く。(この楽章の終わり方で、曲が終ったと勘違いして、満席状態の時に拍手が起こる場合もあるが今日はそれが無くて良かった。)
アレグロが終って、第4楽章のアダージョ。「悲愴」という題名に相応しい、暗い絶望感にさいなまれる悲痛な調べ。各楽章に特徴があって名曲と親しまれているのが解る。

金管楽器に少し難があるように思ったが、若さで生き生きとした演奏。独奏ファゴット、独奏クラリネットなどの見事な演奏も目に付いた。優雅なバトンさばきでオーケストラをまとめあげる指揮者の技量も確かなもので、指揮台での姿が何となくアシュケナージに似た雰囲気がした。

アンコール曲は「赤とんぼ」、「台湾民謡:高山青」、「チャイコフスキー:くるみ割り人形より《トレパーク》」。

このオーケストラは海外公演を度々行っているが、今回の日本公演は札幌と横浜(20日)の2公演だけのようである。ヴァルガがこのオーケストラの実力を更に引き上げることが期待される。
慌ただしくスケジュールに入れたコンサート鑑賞であったが、思った以上に楽しめた。

***台湾のオーケストラは他に1986年に創立された「台湾国家交響楽団」(海外公演の際は“Philharmonia Taiwan”の呼称)と2001年に創立された「長栄交響楽団」(Evergreen Symphony Orchestra)が知られている。PMFの指揮者(1998-2004)として活躍し、07年のPMFに「フィルハーモニア台湾」を率いて指揮したチェン・ウエンピンは1999-2007年、台湾国家響の音楽監督を務めた。


札幌交響楽団第574回定期演奏会(2014年11月)

先週の札響名曲シリーズに続いて、ラドミル・エリシュカが札響定期に登場。83歳という高齢を感じさせない指揮ぶりでコンサートを盛り上げた。

2014年11月15日(土) 14:00開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

〈プログラム〉
 ウエーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
 モーツァルト:交響曲 第38番 二長調 K.504 「プラハ」
 ブラームス:交響曲 第2番 二長調 作品73

この序曲は数ある序曲のなかでも最も有名で、人々に親しまれている。札響の演奏機会も多く、初演が札響発足翌年の1962年、前回の演奏が今年のPMFピクニックコンサートがあった8月3日。今回が80回目という。
札幌芸術の森野外ステージで演奏された開幕早々のオペラ序曲3曲の華々しい音楽は何となく記憶していたが曲目までは覚えていなかった。Kitaraホールで聴くのとでは印象が全然違う。カセットで一時よく聴いたが、CDの録音盤は持っていないので今は家で聴くことはない。
4本のホルンが奏でる主題は有名で、親しまれているメロディ。クラリネットが奏でる主題も美しかった。

ウィ-ンで大当たりだった《フィガロの結婚》がプラハで興行されたのが1786年。「交響曲第38番」は1787年に行われたプラハでの演奏会でモーツァルト自身の指揮によって初演された。
曲はメヌエットなしの3楽章構成。クラリネットなしの特異な楽器編成(*ステージを見て初めて気付いた)。スケールは大きくないがまとまった曲として名高い。曲中、高橋聖純のフルートと金子亜未のオーボエが奏でるパートは実に美しかった。二長調で書かれていて軽やかで明快な曲。第2楽章がト長調。3楽章ともにソナタ形式。繰り返しの転調もあり,劇的な変化もあって交響曲としては短めな曲であったが終始盛り上がりのある演奏を楽しんだ。
後期3大交響曲に比べて演奏機会がそれほど多くない曲だが、エリシュカはコンサートの選曲も上手で、チェコとの繋がりも巧みに演出して見事な演奏を披露してくれると感心するばかりである。
「プラハ」は楽器編成が極めて小さくて、大ホールでの鑑賞では迫力に欠ける面もあるかなと思ったのも正直な感想である。

エリシュカはチェコ音楽だけでなくベートーヴェン、モーツアルト、チャイコフスキー、ブラームスとなんでもこなす指揮者で正に巨匠の名に相応しいとの思いが強まる。

ブラームスはドヴォルジャークとの繋がりがあって、以前のブログにも書いたことがある。
エリシュカは昨年10月の定期でブラームスの交響曲第3番を取り上げた。今回の「第2番」は1877年の作曲で、4ケ月ほどで完成した。第1番が完成に21年も要したと言われているから、湧き出る楽想のままに短期間で作られた曲。
4つの楽章が全て長調で書かれている。牧歌的で色彩感が豊かで、優しさにあふれ幸福感に満ちた作品。当時のブラームスの心のままが作品に表現されたと言われている。ウィ-ン・フィルと初演した指揮者、ハンス・リヒターが呼んだ「ブラームスの田園交響曲」の名にふさわしい曲。
第1楽章の冒頭、チェロとコントラバスの低音域弦楽器の旋律で動機が提示され、交響曲全体の基本モチーフとなっている。第2楽章はアダージョ。(*ブラームスの他の交響曲ではアンダンテ)。低音弦のメロディと木管楽器が奏でるメロディが美しいコントラスト。ホルンの調べが彩りを添えた。第3楽章でのオーボエが奏でるメロディが印象的。第4楽章は生き生きとして陽気で力強いフィナーレ。

札響の弦楽器は定評があるが、管楽器の出来如何が曲に及ぼす影響は大きい。特に金管楽器の演奏は大きい影響を与える。私のような素人では細かいことは判らないが、専門家は評価が厳しいようである。最近の札響の木管のレベルは高く、金管も健闘しているのではないだろうか。

演奏が終わるとブラボーの声があちこちから上がって、拍手喝采。エリシュカとオーケストラ楽員との信頼関係は素晴らしい。エリシュカの楽員に示す感謝の思いは演奏終了後の各奏者への態度が物語っている。各パートの奏者に起立を促して感謝の言葉を述べ、お辞儀までする様子はリハーサル時からのコミュニケーションが読み取れる。最後には各首席、副首席奏者に握手を求めて、コントラバス奏者にまで歩み寄っている。今回は2週連続だったので、お互いに感謝と労をねぎらう想いが強かったのかも知れない。いずれにしても温かい人間性が伝わってくる。エリシュカが人気のある所以である。

シュトイデ弦楽四重奏団

〈Kitara弦楽四重奏団シリーズ〉

2014年11月12日(水) 19:00開演 札幌コンサートホール Kitara小ホール

シュトイデ弦楽四重奏団(Steude String Quartet)のKitara初登場。
ウィ-ン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデが同楽団の仲間と2002年に結成したカルテット。

メンバーは第1ヴァイオリン/フォルクハルト・シュトイデ(Volkhard Steude)、第2ヴァイオリン/ホルガー・グロー(Holger Groh)、ヴィオラ/エルマー・ランダラー(Elmar Landerer)、チェロ/ヴォルフガング・ヘルテル(Wolfgang Harter)。彼らは共に70年代生まれ。
シュトイデは1971年、ライプツィヒ生まれ。 ほとんどの楽団員がオーストリア出身のウィ-ン・フィルでは異色の存在。マーラーユース管のコンサートマスターを経て、ウィ-ンの音楽を身に着け、97年にウィ-ン・フィルに入団。99年より同団コンマスに就任。2000年にトヨタ・ミレニアム・コンサートが始まって以来、トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ-ンのコンマスを務め、独奏者・室内楽奏者としても頻繁に来日している。私はトヨタ・ミレニアム・コンサート2000以来、02、05、09、10、12、13、14年と最近は連続してトヨタ・プレミアム・コンサート札幌公演を聴いている。
グローは95年よりウィ-ン・フィル補助楽団員として活動して、09年に正式入団。ランデラーは99年にウィーン・フィルに入団。ヘルテルは03年の入団。3人ともトヨタ・マスター・プレイヤーとしての経験が豊富である(特にグローの参加が目立つ)。シュトイデとランダラーは去る4月のトヨタ・マスター・プレヤーズ、ウィ-ンにも参加しているので今年2度目の来札。

このカルテットは06年にはウィ-ン楽友協会で演奏会を行ない、09年からは年4回の定期演奏会を楽友協会で開催している。

〈本日のプログラム〉
 モーツァルト:弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 K.387
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 「セリオーソ」 作品95
 シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 「死と乙女」 D.810

今年の日本公演は札幌が最初で、大阪・東京・横浜・名古屋など日本ツアー7公演を行う。来年以降の札幌公演の定期化が期待される。

彼らは大ホールには何度も登場しているが、小ホールのステージでの演奏は初めてだと思う。本日は代表的な弦楽四重奏曲のプログラムを披露した。
モーツァルトの弦楽四重奏曲は「第17番 《狩り》」のCDが手元にあるだけで親しんでいない。演奏会で聴くだけで終わっている。モーツァルトの曲はどれも同じような曲に思えて初心者には魅力がなかったのかと思う。今回「ハイドン・セット」という言葉を目にして少々思い出すことがあった程度。第14番~第19番までの6曲がハイドンに献呈されたので、その名が付いたとされる。
モーツァルトの曲の調性は大部分が長調なので基本的に曲は明るく軽快である。この「第14番」も明るい曲調で、伸びやかで躍動感に富む旋律で始まり、従来にない作曲技法が駆使されているとされる。各楽器が均等な役割を果す演奏にも注目して傾聴した。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は重々しくて鑑賞が難しそうだったが、今では全16曲のCDで演奏会の前後に聴いて親しむようにしている。その所為か親しみのあるメロディが増えてきた。演奏会の曲目になる機会も多くて、真剣に身構えなくても気持ちを楽にして聴けるようになってきた。
情熱的で重々しい第1楽章。落ち着きのある情緒をたたえた第2楽章。舞曲風のリズムを持つスケルツォ的な第3楽章。第4楽章におけるラルゲットの序奏は極めて印象的。軽快な調べと力強い調べが交互に繰り返され、激しいクライマックスへと向かう。
“serioso”は「真面目な」とか「厳粛な」のような意味。第3楽章に「セリオーソ」という指示がある。今日は親しみのある曲として聴けてとても良かった。

Kitara主催の「シュトイデ四重奏団演奏会」はシーズン初めからの案内があって、私自身4月にはチケットを買い求めていた。演奏会当日前にチケットも売り切れて小ホールは満席。客の入りはコンサートの盛り上がりにもそれなりの影響があるように思う。そういう意味でも本日のコンサートの雰囲気は好ましいものであった。

シューベルトが作曲した全15曲の弦楽四重奏曲のうち標題のある「第13番《ロザムンデ》」と「第14番《死と乙女》」だけは20年前からCDを所有して聴く機会は多かった。やはりタイトル付きの有名な作品はCDを購入して親しむきっかけにはなりやすい。
第1楽章は緊張感の高いドラマティックな楽章。第2楽章は歌曲《死と乙女》に基づく主題と変奏。全曲の演奏時間40分のうち前半2楽章で約30分。第3楽章は悲壮感が漂うスケルツォ。トリオで叙情的なメロディも奏でられた。第4楽章はタランテラ風のテーマと勇ましいテーマを中心に力強いフィナーレ。
聴き慣れたメロディが曲のあちこちに流れると心地よい気分になる。どちらかと言えば苦手な弦楽四重奏曲も聴き終わった後で充実感を味わえることが多くなった。

演奏終了後にホールに鳴り響く大拍手の音に聴衆の満足度が伝わった。
アンコール曲は「ドヴォルジャーク:弦楽四重奏曲第12番 《アメリカ》より第1楽章」。
シュトイデが曲名を自ら“アメリカ The first movement”と言って演奏を始めた。この数年間は聴いていなかったメロディが7分ほど流れた。ヴィオラが歌うチェコ民謡風の5音音階(ヨナ抜き)は日本とチェコの音楽の類似性を感じさせた。日本人に親しまれている曲を選曲する点では彼らは日本通の音楽家である。

充実感と満足感をたっぷり味わえたコンサートであった。

ユンディ・リ ピアノ・リサイタル2014

2012年9月26日に予定されていた公演が尖閣諸島問題で中止を余儀なくされた。それから待つこと2年。やっと李 雲迪(YUNDI))のコンサートが実現。日本ツアー14公演のうち札幌は13番目の公演。
2001、02、07、08、09、10年に続いて、ユンディ・リのコンサートを聴くのは今回が7回目。今まで6回の公演の前後に5枚のCDを購入した。実質的にすべて輸入盤。①2000年のショパン国際コンクールの際の演奏曲。②Chopin ③CHOPIN, LISZT ④PROKOFIEV, RAVEL ⑤Nocturnes 。

2014年11月11日(火) 7:00PM開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 「月光」 Op.27-2
         ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 「悲愴」 Op.13
 ショパン:ノクターン第1番 変ロ短調 Op.9-1 、  第2番 変ホ長調 Op.9-2
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 「熱情」 Op.57

午後6時半ごろ中島公園駅で地下鉄をおりる若者の姿が際立って多かった。今夜のコンサートがいつもと違う客層になることがこの時点で予想できた。ユンディ・リの人気の高さがうかがえた。
エントランス・ホールも人の賑わいで普段より何となく活気のある雰囲気が漂っていた。ホアイエではプログラムとCDを買い求める人がテーブルを囲んでいた。プログラムの他に12年収録の“BEETHOVEN:DVD付き限定盤のCD”を購入した。一緒に聴きに来た妻も私の所有物と重複しないLISZTのCDを手に入れた。こんなことは極めて稀な出来事である。やはり李雲迪は特別な魅力を持っていることは確かだ。

演奏曲順が予定と変わっていた。前半と後半のプログラムが入れ替わって「熱情」で終わるようになった。多分、この順序の方が良いだろうと思った。
「月光」は繊細で詩的な雰囲気を持ち、幻想的な感じのする曲で特に第2楽章までロマンティックなユンディの世界。第3楽章が情熱的な心の高まりをドラマティックな表現で盛り上げた。
ピアニストの手指の動き、顔の表情が読み取れる1階6列の正面の座席から鑑賞できたので今までにない満足のいく鑑賞が出来た。

「悲愴」は第1楽章が重苦しい序奏で始まり激しい情熱が込められたソナタ形式だったこともあり、楽章が終った途端に曲の終了と勘違いする客がいるのは満席状態の場合に偶々起こることである。ピアニストは拍手を気にせず、得意の甘い悲しみにあふれるカンタービレを美しく奏でた。第3楽章は感傷的な主題のロンド形式。3大ソナタで「悲愴」だけはベートーヴェン自身が付けた副題として知られている。

ショパンは遺作の含めて21曲のノクターンを遺しており、アンコール曲に20番、21番の遺作が演奏されることが多い。「第2番」は美しい旋律を持つ最も有名な曲として親しまれている。

興行的にショパンをプログラムに入れることが幅広い聴衆をコンサートに向かわせる集客力と考えたのではないか。また、ベートーヴェンも前回キャンセルになったプログラムでコンサートを実施することでCDなどの売り上げを目指したと考えられる。(自分自身もベートーヴェンは望んでいたことで異論はない。)

「熱情」はプログラムの最後を飾るに相応しい曲。ベートーヴェン中期のピアノ・ソナタの傑作とされる。第1楽章の緊迫感、第2楽章の心穏やかな祈り、第3楽章の情熱的なドラマティックな展開。当時の楽器の発達によって可能になった画期的な作品と位置づけられている。

ベートーヴェンの3大ソナタで私がCDを通して最初に親しんだのがホロヴィッツ、以後、ゲルバー、バックハウス、ポリーニ、ハイドシェク、グールド、シュナ‐ベル、ブーニンなど手当たり次第で一貫性は無い。今回YUNDIが加わった。実際のコンサートでは日本の代表的な数多くのピアニストが3大ソナタを弾くのを聴いている。

ユンディ・リは繊細で叙情的な演奏で彼自身の特色が出ていた。ドラマティックな演奏の場面もあったとはいえ、全体的には淡々とした詩的な演奏に貫かれていた。聴く方でのショパンの印象が強いのかも知れないが、他の演奏家と少し違ったベートーヴェンの解釈に基づいた演奏のような気がした。それなりに楽しめた。

演奏終了後、ブラボーの声があちこちから上がり一段と拍手も大きく歓声も拡がった。最近では珍しくP席も満席状態で1900名ほどの聴衆が客席を埋めたホールでユンディは1階とP席に向かって何度も丁寧な礼をしていた。(多分、サントリホールでの公演が多くて習慣的な礼の仕方になっているのかも知れない。)

前半40分、休憩20分、後半35分で午後8時40分には演奏が終了した。アンコール曲は中国の音楽が2曲。中国らしい独特のメロディが入った曲。3曲目がリストの「タランテラ」。アンコール曲としては長い9分ほどかかる曲。超絶技巧のリズム感のある曲を披露した。演奏会で聴く機会の多くない珍しい曲で楽しかった。
 * 任光/王建中編:「彩雲追月」、   青海民謡/張朝編:「遥か遠くそのまた彼方」
    リスト:タランテラ(「巡礼の年」第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」より)

演奏会が終ってCDを購入した多くの客が長い列を作る中、サイン会が始まった。係の指示でテーブルに次々と並べられたCDにユンディが機械的に一人2秒もかからないサインを黙々と書いていく姿にビックリ!私は感想を述べてサインを貰うことにしているが、“Thank you very much for your great performance,”と言って通り過ぎた。これに近い状況が以前にあったが、ムターは私の感想に顔を上げて応じてくれた。(サインは判読が難しかったが丁寧であった。)また、庄司紗矢香の雑なサイン会があった。(飛行機の時間を気にしながらのサイン会だったようだが、CD販売による無理な日程のサイン会は行わないほうが良いのではないかと思っている。)ペラィアやアシュケナージの丁寧な心のこもったサイン(*以前ブログに載せた、)や、その際の簡単な会話や握手は偉大な演奏家を身近に感じれてその人間性に接する素晴らしい機会となって、今は懐かしい思い出となっている。)最近、以前より心の通うサイン会が増えているように思う。困難な点はあっても、場合によっては人数制限などの工夫も必要であろう。

ともかくも、待ち望んでいたコンサートが聴けたので、帰りは楽しい気分で家路に着いた。
           

             

札響名曲シリーズ2014-2015 vol.4 ~エリシュカのチェコ名曲アルバム~

森の響フレンドコンサート

札幌交響楽団首席客演指揮者を務めるラドミル・エリシュカは年2回の定期演奏会の他に名曲シリーズでも札響を指揮している。近年、来日の折には国内オーケストラとの共演の機会が増えている。去る10月30日(木)には東京芸術劇場における《世界のマエストロシリーズVol.2》で読売日本交響楽団と共演した。

2014年11月8日(土) 14:00開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

〈プログラム〉
 スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
 フィビヒ:詩曲~管弦楽のための牧歌「黄昏」より
 ヤナーチェク:のこぎり~ラシュスコ舞曲集より
 スメタナ:モルダウ(ヴルタヴァ)~連作交響詩「我が祖国」より
 ドヴォルジャーク:スラヴ舞曲集 op.72(全8曲)

ラドミル・エリシュカは昨シーズンの札響名曲シリーズに続いての名曲シリーズ再登場。昨年は「ベートーヴェン:交響曲第6番」と「ドヴォルジャーク:スラヴ舞曲集 op.46」。今回のプログラムは全てチェコ作曲家の作品。

スメタナ(1824-84)はチェコ国民主義音楽の祖と仰がれ、「チェコ近代音楽の父」と称されている。《交響詩「我が祖国」》は毎年〈プラハの春音楽祭〉の開幕日に必ず演奏されるのが恒例となっている。全6曲の交響詩の第2曲「モルダウ」は単独で演奏される機会の多い人気曲。ヴルタヴァはプラハの街を流れる河の名でチェコの自然の象徴。ボヘミアの大地を潤す様子が感動的に描かれている曲。
歌劇「売られた花嫁」はスメタナの作品として有名であるが、タイトルは知っていてもオペラの内容も知らないし、序曲を聴く頻度も高くはない。久し振りに耳にした序曲の聴き慣れたメロディに心も浮き立った。

フィビヒ(1850-1900)の名は初めて聞く。何となくロマンティックな感じのする曲。ヤナーチェク(1854-1928)のこの曲は全く聞いたこともない。未知の作品を紹介されるのもコンサートの楽しみ。親しまれている曲ばかりでは物足りないこともあるので、この2つの小品が演奏されて良かった。
ヤナーチェクはボヘミア出身のスメタナやドヴォルジャークの音楽とは違って、モラヴィアの民族色を反映した曲作りで独自の音楽世界を構築した。エリシュカも札響の演奏会でヤナーチェクの作品を多く取り上げてきた。「のこぎり」は6曲からなる〈ラシュスコ舞曲集〉の終曲。木を切り倒して薪を集めて冬支度を急ぐ農民たちの姿を描いている。3分程度の曲で面白かった。

後半の「スラヴ舞曲集第2集」は昨年の「第1集」全8曲の続編。ブラームスの勧めもあって、ピアノ連弾曲集として作曲した作品を管弦楽曲に編曲した曲集(op.46)が大ヒット。ピアノ連弾の8曲から成る第2集の管弦楽編曲版(op.72)も大ヒット。オーケストラのための編曲版は名作としてして親しまれている。スラヴ音楽ならではの郷土色豊かで、リズム感の溢れた作品になっている。ボヘミアの舞曲が中心の第1集に対し、第2集はポーランド、ウクライナ、クロアチアなど、スラヴの舞曲で構成されている。
第2集の第2曲がマズルカ風の曲で抒情美に満ち、曲集のなかで最も親しまれている曲のひとつ。クライスラーがヴァイオリン曲に編曲していることでも知られる。

エリシュカは完全に札響を掌握してお互いに気持ちが通じあった関係を築き上げている印象。マエストロは聴衆にもチェコの音楽を届ける術を手にしているように見える。指揮者、オーケストラ、聴衆が三位一体となる雰囲気の演奏会を作り上げる技量と人柄にいつも感心する。
演奏終了後に楽員に示す称賛の仕草、親愛の表情は心温まる。9割以上の座席を埋めた聴衆への感謝の念も心がこもっている感じ。来週15日の定期演奏会でも札響を指揮する予定。

アンコール曲は「スーク:弦楽セレナード 変ホ長調 op.6より 第1楽章」。
今日は一日チェコ音楽を満喫した。

*チェコが生んだ最初の世界的指揮者はターリヒ(1883-1961)であるが、アメリカやヨローッパなど世界中で活躍した指揮者はクーべリック(1914-96)だと思う。ノイマン(1920-95)も名高い。マカール(1936- )もチェコ・フィルで活躍した。ヴァ―レク(1936- )、コウト(1937- )も有名。Kitaraにもたびたび登場したビエロフラーヴェク(1946- )が現在のチェコ・フィルの首席指揮者として活躍中。彼の教えを受けたヤクブ・フルシャ(1981- )はプラハ・フィルの音楽監督で来年Kitaraに再登場するが、現在、東京都響の首席客演指揮者も務める。エリシュカ(1931- )はフルシャの指揮者としての道を開いた恩人であるらしい。
上記以外のチェコの指揮者で札響を含めて日本国内のオーケストラと共演した指揮者が目立つ。チェコと日本の音楽には共通点があると聞いているが、チェコのオーケストラの来日公演が多くて、常日頃、チェコ音楽を好む日本人が多いような気がしている。チェコ人も日本のオーケストラや聴衆を高く評価してしている様子がうかがえる。
札幌コンサートホールがオープンした年の1997年11月にヴァ―レク率いるチェコ・フィルが「モルダウ」「新世界より」をKitara で演奏しているのも忘れられない思い出である。
尚、山田和樹が来年1月チェコ・フィルの演奏会に出演予定である。

ティル・フェルナー ピアノ・リサイタル

〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉

世界で注目されるピアニストとして「ティル・フェルナー」がいつかKitaraのステージに登場してほしいと願っていた。やっとその時が来て嬉しい限りである。ウィ―ンで音楽を志す者はオーケストラや室内楽での音楽活動が最優先でソリストを目指す人は極めて少ないと言われる。他国と比べて国際コンクール出場者が少ない中でのフェルナーの経歴が目に留まって6・7年前から期待が高まっていた。

ティル・フェルナーは1972年、ウィ―ン生まれ。ウィ―ン音楽院に学び、その後アルフレッド・ブレンデルらに師事。93年、クララ・ハスキル国際コンクールにオーストリア人として初優勝。98年、アルバン・ベルク四重奏団のソリストとして初来日。翌年にも再来日してリサイタル。08年からはケント・ナガノ指揮モントリオール響とのベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏と録音、秋からはウィ―ン、ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京など各地でベートーヴェンのソナタ全曲演奏会を行い、世界のピアニストとしての地位を確立した。現在、モントリオール響のレジデント・ピアニスト。13年よりチューリヒ芸術大学で後進の指導にも当っている。

TILL FELLNER Piano Recital

2014年11月3日(月・祝) 14:00開演 札幌コンサートホール Kitara小ホール

〈PROGRAM〉
 モーツァルト:ロンド イ短調 K.511
 J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻より
          第5番 二長調 BWV874,     第6番 ニ短調 BWV875
          第7番 変ホ長調 BWV876    第8番 変ホ短調 BWV877
 ハイドン:ピアノ・ソナタ 第50番 二長調 Hob.XVI:37
  シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集 作品6

「ロンド K.511」は2ヶ月前の外山啓介のコンサートで聴いた時は、きちんと鑑賞できなくて単調な感じさえした。2度目の鑑賞で曲の良さが解った。聴き慣れるかどうかにもよるが、鑑賞の仕方によって曲の印象がこうも違うものかとじくじたる思いがした。
モーツァルトの明るくて軽やかな作品と違って、親友の死を悼みつつ偲んでいるような曲。この曲を書いた年に彼は父も亡くしている。悲しみの旋律が何回か繰り返されるが、その静かな哀愁漂う音色が心に響いた。

バッハの平均律クラヴィーア曲集の第1巻と第2巻は各々すべての長調・短調を網羅した24曲の「前奏曲とフーガ」でワンセットになっていることを再確認した。バッハの作曲家としての素晴らしさとバッハ以後の12、24等ひとまとめの曲作りの先駆者として敬意を払わずにはいられない。彼の作曲の奥の深さは素人の自分には推し量れないものがある。
CDで何となく耳にしているだけでは曲の良さがよく解らない。生演奏で8曲を聴いてみて身近に感じれた気がする。特に「第5番ニ長調」の7分余りの躍動感あふれる華麗な前奏曲が印象に残った。

ハイドンのピアノ・ソナタは60曲以上ある。デジュ・ラーンキのリサイタルの折に後半の10曲ほど入った彼のCDを買った。
「第50番」は初めて聴くと思ったが、最も有名な作品ということなので、今まで耳にしたことがあるのだろう。第1楽章は明るい快活な調べ。この第1楽章は「バッハの平均律第2巻、二長調の前奏曲」で聴いたばかりと思える華麗な楽章。短い荘厳な感じの第2楽章に続いて、素朴で軽快な第3楽章。
ハイドンとバッハの組み合わせという絶妙なプログラミング。

フェルナーは年齢より若々しくて、ピアノを弾く姿勢が良くて、その演奏は繊細で緻密。知性と感性を併せ持つ雰囲気。ウィ-ンの香りが伝わってくるような感じがした。

後半のプログラム「ダヴィッド同盟舞曲集」は半年前の小山実稚恵のリサイタルで初めてライブで聴いた曲。この曲はピアニストでもかなりの経験を積まないと演奏困難ではないかと思える曲。
シューマン自身の2面性を表す「動と静」を全18曲の小品で構成。第1集が第1~第9曲、第2集が第10~第18曲。文学面でも才能を持つシューマンが音楽評論として斬新な構想のもとに作リ上げた。簡単には鑑賞できないが、とにかく今回は2度目ということもあってシューマンの世界が拡がって迫ってきた。フェルナーは淡々と弾いているように見えるが、様々な感情が音となって伝わってきた。曲が終ると、聴く者の心に届いた感動の輪がホール全体に広がった。ブラボーと声に出して叫ぶ人はいなかったが拍手の大きさと会場の雰囲気によって、演奏者が聴衆に届けた音は間違くなく演奏者自身にも伝わったと思える瞬間。感動の有様もいろいろあるが、何かいつもと違うものを感じたのである。
記憶に残る演奏会になった。

アンコール曲は《リスト:巡礼の年 第1年 スイス 第2曲「ワレンシュタットの湖畔」》。聴き慣れない曲であったが、帰宅してチッコリーニの弾くCDを聴いてみた。

*フェルナーの使用楽器はスタインウェイであった。アンドラーシュ・シフ、パウル・バドゥラ=スコダ、イェルク・デムスなどウィ-ンの奏者はベーゼンドルファーを大ホールで使っていた。Kitara所有の楽器は古くなった為か、小ホールだったためかは判らない。昨年10月、佐藤卓史が小ホールでベーゼンドルファーを使用したが思うような音が出せなかったのを耳にした。(多分1曲だけ)

*今回の来日公演は11月1日、桐朋学園大学 調布キャンパス1号館ベーゼンドルファーお披露目コンサート&マスタークラス。5日、トッパンホールでは札幌と同じプログラム。(ここではスタインウェイの可能性大か?)
折角の来日の機会に3公演だけとは勿体ないというのが率直な印象。今回の札幌公演はKitaraの自主性が発揮されたと言う意味で有り難かった。





,

  
プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR