第12回ゾンゴラコンサート

第1324回札幌市民劇場
 
第12回ゾンゴラコンサート~北海道に伝えるリストの系譜~

F.リスト全曲演奏シリーズⅡ 〈語りのリスト〉

2014年4月29日(火・祝) 札幌サンプラザホール 13:00開演

昨年から《リスト全曲演奏シリーズ》が始まって関心を抱いていた。今年は2ヶ月ほど前にチケットを買っておいた。Kitaraのホール以外でコンサートを聴くことはめったに無い。特に、サンプラザホールは十数年ぶりである。今日も好天で札幌は例年より早く桜も開花したようで、気が向いて運動がてら徒歩で会場まで出かけた。
 
Zongoraの会(ゾンゴラとはハンガリー語で「ピアノ」の意味)は1999年、北海道教育大学札幌校芸術文化課程音楽コースで谷本聡子に師事する学生と卒業生により結成されたグループ。10周年を機に札幌大谷大学の卒業生も加えて、新たな活動を目指して、《リスト全曲演奏シリーズ》をスタート。

今回のプログラムは『文学への巡礼』

★巡礼の年 第1年〈スイス〉より「郷愁」(ピアノ:谷本聡子)
      第2年〈イタリア〉より「ペトラルカのソネット」47番(ピアノ:木村悠子)
★超絶技巧練習曲集より「マゼッパ」(ピアノ:中山真梨子)
★「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ (ピアノ:中島幸治)

上記のような比較的に聴き慣れた曲でCDでも聴く機会のあるピアノ曲のほかに、歌曲も歌われた。ヴァイオリン曲やフルート曲もあって室内楽曲もプログラムに入っていた。

〈語りのリスト〉のタイトルが付いていて、リスト自身が語り役として、コンサートが始まった。ピアノ演奏が始まる前の語りが長過ぎる印象を持ったが、曲ごとの解説ではなかったので、後からは気にならなくなった。プログラムの展開の上で必要だったのだろう。リストは読書に親しんで様々な文学から刺激と啓発を受け、音楽へと昇華していったと伝えられている。

最後の演目《レーナウの「ファウスト」による2つのエピソード》のピアノ連弾(谷本聡子、小杉恵)では演奏に合わせて物語中の人物がステージに出て無言で演技をする場面があって面白かった。歌手や演奏者たちが役を演じていた。ファウスト役はオペラの経験があってか、演技力が達者で感心した。
第1曲 夜の行列、 第2曲 村の居酒屋での踊り(メフィストワルツ)

谷本聡子は87年、ハンガリーのリスト音楽芸術大学を卒業。ドイツのフライブルク音楽大学院修了。ブタペストの春音楽祭、ルガーノ音楽祭などに出演。ヨーロッパ各地のほかアメリカ、カナダ、ロシアでも演奏活動。海外の著名な室内楽団と共演を重ね、国内外のオーケストラとも共演。現在、札幌大谷大学教授。
以前にKitaraで日本フィルや札幌交響楽団と共演してのピアノ協奏曲の演奏を聴いた記憶がある。

今後のゾンゴラコンサートの企画が5年先まで出来上がっていて、〈華麗なるリスト〉、〈悟りのリスト〉などが続く。

F.リスト作品一覧のプリントが手渡されたが、ジャンル別に分類されていて、とても参考になって興味が湧いた。リストには膨大なピアノ曲があり、4手用や2台用などは素人には見当もつかなかった。これを貰っただけでも今日のコンサートに来た甲斐があった。勿論、コンサートも楽しんだ。座席数が506のこのコンサートホールは座席が階段状になっていてステージが見やすくて、音響も標準以上である。個人的には歩いて30分以内で来れるのも便利である。これを機会にオペラの上演にも来てみる気になった。


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札幌西区オーケストラ 第28回定期演奏会

今月は3日に《マチュピチュの遺跡、イグアスの滝、ナスカの地上絵》の旅から帰って、コンサートも6つ、METビューイングも2本、映画も2本鑑賞した。他にボランティア活動も4日間こなした。管理組合理事長としての仕事も管理人から毎日のように何かかにか連絡があって結構忙しい。今日は午前中に町内会臨時総会にも出席。
旅行中の3月末、ブラジル入国の日が偶々自身75歳の誕生日に当った。ホテルのディナー会場でピアニストが奏でる“Happy Birthday to you”の曲が聞こえてきた瞬間に添乗員から “誕生日おめでとうございます”と言われ、お祝いの品を貰ってビックリ仰天! 旅行会社から祝いの大きなケーキも運ばれてきて二度ビックリ! ロウソクが何本あったか数えれなかったが、一息で消した。旅行同行者にも祝ってもらう誕生日は格別な嬉しさで感激いっぱい! 人生でも忘れ難い誕生日となった。

そんなわけで、今回の「札幌西区オーケストラ定期演奏会」は聴きに出かけようかどうか迷っていた。演奏会案内のハガキが届いていたこともあり、ボランティア仲間から整理券を貰ったことも重なって行くことに決めた。
開演10分前に会場に着くと、満員状態の様子でリセプショニストの立ち振る舞いも大忙し。ホアイエにも何となく慌ただしさが漂って、大ホールの客席はステージ横のRAの端の方が空いているだけだった。開演時間にはほとんど満席で空席が無い状態になっていた。

2014年4月27日(日)札幌コンサートKitara大ホール 開演13:30

プログラム 
      指揮  鎌倉 亮太
      ピアノ 伊藤 千尋

 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18
 チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64

5年に一度行われる「音楽の友」の読者アンケート《クラシック音楽ベストテン》の結果が4月号で先月発表になった。(2月4日締め切りのアンケートで有効回答数2398通)
「あなたが好きな協奏曲は?」の第1位がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。第2位がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。ソチ五輪で感動の輪が広がったフィギュアスケートの浅田真央のフリーの曲としてブームになっているようなので、オリンピック後の投票だったら第1位になっていたかもしれないと言う。第3位がチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。ラフマニノフの第3番も人気ピアノ曲だが第11位。
「第2番」は重厚なオーケストラをバックに絢爛豪華なピア二ズムが展開され、甘美なメロディで聴く者を虜にする名曲。ラフマニノフは精神的に不安定な状態に陥った後に、回復してこのピアノ曲を完成したとされている。完成した1901年にモスクワで初演されて大成功を収め、のちのアメリカやヨーロッパでの活躍の契機になったと言われている。映画化された時の話題の曲でもある。19世紀から20世紀前半にかけて作曲されたピアノ協奏曲の中でも最高傑作とされ、今日でもピアニストの演奏曲として人気が高い。彼は背が高く、手も大きかったので、小さな手の人にとっては技巧的に極めて難しい曲としても知られている。

今日のピアニスト伊藤千尋(Ito Chihiro)は北海道教育大学在学中に札幌交響楽団と共演。同大学院修了後、09年ノルウェーに留学。同国の青年室内音楽祭の公式ピアニストとして活躍。現在は北海道内とノルウェー各地での演奏活動を行いながら後進の指導にも当っている。

彼女の演奏から経験豊富なピア二ズムが窺がえた。ラフマニノフ特有の豊かな叙情性と高いロマンティシズムも表現され、壮大なフィナーレも難なくこなして素人の耳には他のプロのピアニストと遜色のない演奏で音が紡がれたように思った。

オーケストラもピアニストを支えて満足のいく演奏。アマチュアでこれぐらいの演奏が無料で聴けるのだから現在の日本のオーケストラの水準は凄いと思う。指揮者については昨年の札幌西区オーケストラの演奏会の折にも書いたが、堂々とした表情豊かな指揮ぶりに感心するばかりである。

ピアノ演奏が終わると1階と2階のホール入り口数カ所に、リセプショニストに案内された約50名ほど(100名位かも?)が集まって拍手。立ち見のままでアンコール曲に聴き入っていた。こんな姿を見たのは初めて!(座席から見えない場合もあるが、、、)。 多分、大ホールが満席になったので西区の関係者が座席を一般人に開放して譲ったのではないかと思って感激した。

アンコール曲も指揮者の粋な計らいで、ピアニスト伊藤千尋と指揮者鎌倉亮太のピアノ連弾。チャイコフスキーの《くるみ割り人形》より「花のワルツ」。7分程度のピアノ連弾曲で誰の編曲かは不明。大変面白かった。立ち見の人はこれを聴くために並んでいたのだろう。

チャイコフスキーの「第5番」は今日では「第6番悲愴」を上回る人気曲。上記の「音楽の友」のアンケート「あなたが好きなクラシック音楽作品は?*ジャンルを問わず」で第5位、「あなたが好きな交響曲は?」では第8位にランクされた。

西区オーケストラはこの曲は演奏経験があるせいもあってか、無難に演奏していた。盛り上がりのある大曲で親しまれている曲で大いに楽しめた。
ピアノ協奏曲では第1楽章が終ったところでかなり多くの人たちが思わず拍手をしてしまったが、後半のチャイコフスキーでは雰囲気を読んだのか、拍手のタイミングが判ったようで安心した。
チャイコフスキーは感想を述べるまでもなく、ロマンティックな作品が魅力。鎌倉亮太は指揮でも経験を積み重ねていて、安心して見ていれる。今日はRA席から指揮の様子が良く見えて、彼の表情豊かな指揮ぶりに惚れ込んだ。ピアノ、室内楽、合唱やオーケストラの指揮、オペラの指揮などでの幅広い活動が生き生きと伝わってくる。
今日は二人の作曲家のロシア音楽を堪能できた。政治は別として、音楽に関してはロシアは素晴らしい作品が沢山ある。

オーケストラのアンコール曲は、ハチャトゥリアン:《仮面舞踏会》より「ワルツ」。(この曲も浅田真央の演技に使われ有名になった)

前回の西区オーケストラ演奏会の感想を自分なりに書いたが、私のブログを多くの人にアクセスしてもらって恐縮している。これほどの反響に私自身が驚いている。余り専門的知識は無いのに適当なことを書いているだけである。一人のクラシック好きの人間が気の向くままに書き綴っている。実際はオーケストラの一員として楽器が弾けたら何と素晴らしいことだろうと思っている。


*ペルーとブラジルの二つのホテルで坂本九の「上を向いて歩こう」の演奏に接した。“SUKIYAKI”として知られていた曲が日本の歌詞の内容に合うタイトルが付けられて再び脚光を浴びている様子だった。良い音楽は国や時代を選ばず広がっていくのだろう。 




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樫本大進 & コンスタンチン・リフシッツ

樫本大進(Daishin Kashimoto)は1979年、ロンドン生まれ。7歳でジュリアード音楽院のプレカレッジに入り、その後リューベックでザハール・ブロンに師事。93年メニューイン国際コンクール(ジュニア部門)第1位。94年ケルン国際コンクール第1位、96年クライスラー国際コンクールとロン=ティボー国際コンクールで第1位(史上最年少)と輝かしいコンクール歴を誇る。20歳からフライブルク音楽院で元ベルリン・フィル・コンサートマスターのクスマウルに師事。以後、ソリストとして国際的に活躍。(日本では、96年紀尾井ホールでのリサイタルでデビュー。)10年にベルリン・フィル第1コンサートマスターに就任して音楽ファンを驚かせた。

Kitaraに初登場したのが98年10月。セミョン・ビシュコフ指揮ケルン放送交響楽団と「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲」を共演した時のワクワクした高揚感は今でも印象に残っている。
2度目は02年2月。ウラディミール・フェドセーエフ指揮ウィ―ン交響楽団と「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」を共演。フェドセーエフとは96年に大阪フィルと97年にはモスクワ放送交響楽団と日本で共演を重ねていた。
3度目はリフシッツとのデュオ・リサイタルで02年11月。当時のプログラムによると、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第32番、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番などを弾いた。

コンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz)は1976年、ウクライナ生まれ。5歳でグネーシン特別音楽学校に入学。13歳でモスクワ音楽院でデビューリサイタル。90年から国内外での演奏活動が本格化して、指揮者のスピヴァコフとの日本ツアーのソリストとして初来日。モスクワ・フィルやサンクトペテルブルグ・フィルとヨーロッパ・ツアーでも活躍。リサイタルのライブCDが96年に米国で話題となり世界的にも注目された。96年アルゲリッチの代役としてクレーメル、マイスキーと共演して世界的評価が高まった。

桁違いの才能で世界の注目と期待を担っていた若き俊英が渡り合う初共演も聴衆の期待度が高かった。2回続いたオーケストラとの共演の後だけに新鮮な印象のデュオ・リサイタルとなった。

次に樫本の演奏を聴いたのは07年9月。小泉和裕指揮東京都交響楽団 札幌特別公演で「ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲」。3回のオーケストラ演奏で3大ヴァイオリン協奏曲を一人の演奏家で聴いたのは偶然ではあるが結果的に珍しい。この頃、樫本がチョン・ミョンフン指揮シュタ―カペレ・ドレスデンと録音した「ブラームスの協奏曲」を購入して、時々耳にする。

樫本は07年から国際音楽祭を毎年開催して来日していることもあって、Kitaraでの演奏会の機会も増えてきた。
直近で聴いたのは10年3月の無伴奏ヴァイオリン・リサイタル。
DAISHIN plays BACH のタイトルで、札幌では「パルティ―タ第2番・第3番、ソナタ第2番」。CDでクレーメールの演奏を聴いたりしているが、世界最高レヴェルのヴァイオリニストによる生のオール・バッハ無伴奏ヴァイオリン曲。このバッハの名曲を集中力を欠かさずに聴けて充実感を味わったことを今でも思い起こすことができる。

それから4年。12年ぶりの樫本とリフシッツの共演。
2014年4月25日(金)19:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番 イ短調 Op.23
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78「雨の歌」
 ベートーベン:ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調 Op.96

ベートーヴェンはヴァイオリン・ソナタを10曲作っている。1798年に完成した「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番~第3番」は作品番号が12で一まとめになっている。第4番と第5番は1800年の作曲で作品番号が23と24である。1802年完成の第6番~第8番は作品番号は30でやはり一まとめ。有名な「第9番クロイツェル」が1803年の作品。それから約10年後の1812年の42歳の時に第10番を完成してヴァイオリン・ソナタの作曲には終止符を打った。

全10曲の中で「第5番」と「第9番」には、それぞれ「スプリング」、「クロイツェル」のニックネイムが付いていて最も親しまれており、リサイタルでは演奏機会が断然多い。今回のように定番が入っていないリサイタルは極めて珍しい。私自身余り記憶にない。それだけに今回のコンサートには却って期待していた。
日本で通常「ヴァイオリン・ソナタ」と呼んでいる曲で、私所有のベートーヴェンの「第5番・第9番」のCDでも、演奏者は「オイストラフとオポーリン」、「グリューミオとアラウ」、「シェリングとルービンシュタイン」、「クレーメルとアルゲリッチ」などの組み合わせである。ピアノとヴァイオリンの各部門で世界トップの演奏者がペアを組んでいる場合が多い。

ベートーヴェンは作曲者の曲名からも判るように「ヴァイオリン」と「ピアノ」を対等にして作曲している。ピアノが陰の楽器ではない。モーツァルトの曲についても同じことが言えよう。パガニーニやクライスラーのヴァイオリンの技巧をより生かしたヴァイオリン曲とは根本的に違うと思っている。
本日の演奏でも樫本とリフシッツの対等の演奏が繰り広げられた。これが最も印象に残ったことである。ソリストとして活躍していた時と多分、オーケストラのコンマスになってからのコンサートでは彼自身もこのことを意識しているのではないだろうかと考えてみたりした。それぐらい、自分が目立って演奏するより、あくまで調和を心がけて音楽つくりをしている姿に接した。

14年2月に発売された彼らの「ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集」を購入して聴き始めたが、なかなか良い曲ばかりである。今迄「第6番・第7番・第10番」が入ったCDは持っていなかった。
「第10番」はベートーヴェンが最後のヴァイオリン・ソナタとして集大成の作品にしようとした意気込みが感じられて重厚な作品に仕上がっている印象を受けた。

ブラームスの「雨の夜」はより親しまれている曲で、ヴァイオリンがリードする場面が少しは多いかなと思った。

アンコール曲は「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第3番 Op12-3 第3楽章」。アンコール曲も含めて地味な曲のプログラムの割には客の入りは多かったのではないだろうか。3階席と2階P席は発売されなかったが、9割程度の客席が埋まり1300名弱の聴衆がベルリン・コンサートマスターの樫本大進のコンサートに聴き入った。コンスタンチン・リフシッツの見事な演奏に鮮烈な印象を受けた人も多かったに違いない。全体的に派手さはないが重厚感のある演奏会であった。







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多文化共生とは何か?

札幌国際プラザ外国語ボランティアとして活動して7年目に入る。今は主として札幌時計台を訪れる来館者の対応を行なっている。公益財団法人札幌国際プラザ多文化交流部は400名ほどのボランティア登録者が海外からの訪問客のニーズに応ずるべく様々な活動を行う窓口になっている。

昨日(2014年4月21日)、北海道国際交流・協力総合センター主催で札幌国際プラザが共催する「多文化共生講演会」が〈かでる2・7〉を会場にして開かれて参加してきた。講演者は多文化共生センター大阪の代表理事の田村太郎。田村氏は1995年阪神大震災直後に外国人被災者支援の活動を行って、多文化共生センターを立ち上げ、現在、センターは東京、京都、大阪、兵庫、広島の全国5カ所で活動展開。彼は甲南女子大学・大阪市立大学大学院・関西学院大学非常勤講師も務め、復興庁上席政策調査官としても活躍している。

「多文化共生」という言葉はボランティア活動を始めた時から、グループ活動が行われていて世界各地の留学生との交流会に何度か参加して彼らの文化を知る機会を得てきた。グループのリーダーたちは、留学生や家族の支援だけではなく、彼らの子どたちの学習支援も行って活動している。

表面的なことしか知識が無かったが、今回の講演会で多文化共生について認識を深めることができた。

「多文化」は英語で形容詞にして“Multicultural”(*multiは<多い>の意味)と訳されるが、「多文化共生」は“Intercultural”。(*interは<~の間>という意味を持つ接頭語なので“international”「国家間の、国際的な」という語からも容易に類推できる。)
つまり、「多文化共生」とは、いろいろな文化を持った人々と共に働いて暮らしていくこと

日本は少子化・高齢化社会になって人口が減少して、製造業や建設業だけでなく医療介護の分野でも外国人を必要としている。
スウェーデン、ノルウェーなどの北欧諸国は高福祉・高負担の社会として知られている。1970年代にベトナム人やアフリカ人を移民として受け入れてきた移民政策が今日の国家の基盤を作り上げてきたことが、日本ではメディアを通しても余り報じられていない。フランスはアラブ民族、ドイツはトルコ人を移民として受け入れてきたことは比較的に良く知られてはいる。彼らはアジア人も受け入れてきたが、今やEU地域内の労働者だけを受け入れているようである。
日本だけでなく韓国や中国も少子化・高齢化社会になって、「多文化共生」は今や世界的潮流となってきているのを、昨日の講演会を通して改めて認識した。

オランダ、フランス、ドイツなどでは移民教育の法律が2006年から施行されている。移民を必要とする対策が各方面で取られていることが、具体的に講演で語られた。日本でも政府は取り組み始めているようであるが、国民的な話題になっていない。フィリピン人やインドネシア人の看護師の問題、製造業に従事する日系ブラジル人や中国人の話題が偶に報じられるだけである。
北欧では移民政策によって女性の就業率が上昇し、世帯当たりの所得も上昇して、出生率も40年前の1.5から1.9に上がっている。これは大変、興味深い数字である。

講演のポイントは外国人を観光客として迎えるだけでなく、外国人も暮らしやすい地域づくりを目指すことであった。
外国人登録をして日本に在住していた外国人は、2012年7月から住民基本台帳法に基づいて住民登録するように変わった。彼らの日本滞在の長期化で「出稼ぎ」から「永住」へ指向が変化して、子どもの教育・就労、高齢者福祉も課題として顕在化してきている。
現在、在留外国人数は約210万人。永住資格者(10年以上の定住者)は100万人を越えて、年々増加傾向にある。外国人に対する法制度の不備や社会資源の不足が上げられるが、市民の認識が変っていないことが大きな課題ではないかと思う。
訪日外国人の数が1千万人を越えて嬉しいニュースには違いないが、今回の講演会は多文化共生を目指して活動を見直してみる良い機会になった。

資料を充分に用意してよどみなく講演する田村氏は学生相手にも講義する機会が多くて慣れているようであった。内容が極めて明晰で、時折ダジャレを入れながら巧みな話術で90分余りの講演を見事に展開した。久しぶりに聴いた長時間の講演はあっという間に時間が過ぎた。充実感の味わえるとても有意義な講演であった。
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トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ―ン 2014

《ウィ―ン・プレミアム・コンサート》

今年も昨年に続いて〈トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン〉が札幌にやってきた。
ウィ―ン国立歌劇場の協力を得て、本公演のために特別に編成された室内オーケストラ。ウィ―ン国立歌劇場、ウィ―ン・フィルのメンバーを中心にヨーロッパで活躍するアーティスト仲間たちも加わった総勢31名による編成。芸術監督はペーター・シュミ―ドル。コンサートマスターはフォルクハルト・シュトイデ。

2014年4月17日(木)19:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 ロッシーニ:歌劇《セヴィリアの理髪師》序曲
 クロンマー:2つのクラリネットのための協奏曲 変ホ長調 Op.91
         (クラリネット/ペーター・シュミ―ドル、吉田 誠)
 R.シュトラウス(プルジボタ、コヴァ―チ編):楽劇《ばらの騎士》より「ワルツ」 
                  (ヴァイオリン:フォルクハルト:シュトイデ)
 ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55《英雄》


冒頭に予定のプログラムに先だって「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ―ン」のための前奏曲「イントラーダ」が演奏された。

ロッシーニ(1792-1868)のこの序曲は単独で演奏される機会の多い曲。オペラは2004年2月に錦織健プロデュ―スによる全2幕を現田茂夫指揮神奈川フィルの演奏で観たことがある。2000年8月にミラノのスカラ座を訪れて館内の廊下にあったROSSINIの彫像の前で記念写真を撮ったのも忘れられない思い出となっている。「セヴィリアの理髪師」はモーツァルトの「フィガロの結婚」の前編にあたる作品となっていて親しまれている。 

クロンマー(1759-1831)は初めて名を聞く作曲家。モーツァルトと同世代のチェコ人で、存命中はハイドンと並び称される弦楽四重奏曲の大家で、近代以降はクラリネットの作曲家として知られているそうである。

ペーター・シュミ―ドルは元ウィ―ン・フィルの世界的なクラリネット奏者。PMFとトヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウイーンの両方のイヴェントでの貢献度が広く知られている偉大な音楽家。
吉田誠は1987年兵庫県生まれ。06年東京芸術大学入学後、フランスに留学。08年同国の音楽院を卒業。その後、パリ国立高等音楽院、ジュネーヴ音楽院で研鑚を積む。その期間に国内外の管楽器コンクールに入賞を重ね、クラリネット奏者として国内主要オーケストラとも多数共演している履歴を持つ。
世界のシュミ―ドルと堂々と渡り合って共演している姿は頼もしい。素晴らしい技量を発揮して美しい音色をホールに響かせたことは言うまでもない。彼にとって、今回の経験は何事にも変え難いものであったに違いない。

R.シュトラウス(1864-1949)の楽劇「ばらの騎士」は有名な作品。東京ではしばしば上演されていて楽劇の中の歌もコンサートで歌われているようである。METライブ・ビューイングで鑑賞する機会があればと思っていた。
このオペラの知識は殆ど無いが、この「ワルツ」は楽劇「ばらの騎士」のテーマ音楽だと言う。多くの編曲が成されているようで、綺麗な曲であった。
フォルクハルト・シュトイデ(Volkhard Steude)は1971年ライプツイヒ生まれ。99年にウイーン・フィルのコンサートマスターに就任して現在に至る。トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ―ンのコンマスは毎年彼が担っている。02年にシュトイデ弦楽四重奏団を結成して、今年の11月に同団を率いてKitaraに再び登場予定。彼の紡ぐヴァイオリンの音色はこの上もなく美しく、この「ワルツ」は胸がときめくようであった。

ベートーヴェン(1770-1827)の大曲である「第3番」はナポレオンに献呈する予定を取りやめたエピソードが余りにも有名である。スケールが大きな第1楽章。壮大な葬送行進曲で名高い第2楽章。第3楽章のスケルツォではホルンの三重奏が活躍し、第4楽章では「プロメテウスの創造物」のテーマを基にいろいろな変奏が繰り広げられて聴きごたえがあった。
室内オーケストラで2管編成ではあっても迫力があって、全体の音の響きは強弱が極めて巧みに表現されていて劇的効果が生み出されていた。各楽器奏者の音のバランスが取れていて完成度が高いと思った。
いくつかのオーケストラのメンバーの集まりであるが、短期間でこのような音楽を作り出すレベルの高さを肌で感じた。

アンコール曲に「ヨハン・シュトラウスⅡ世の皇帝円舞曲」を演奏した。演奏前にコントラバス奏者が上手な日本語で曲名を告げて「これで御仕舞です」と言った時には思わず客席から笑いも起こった。演奏に10分も要する曲を約1500名の聴衆は楽しく満足した様子で聴き入った。最後にはお互いに手を振りながら別れを惜しんだ。このオーケストラと観客が相互に親しみの感情を持てるのはとても好ましい状況であると思った。




            
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METライブビューイング2013-14 《イーゴリ公》 & 《ウェルテル》

MET Live Viewing 2013-14 第6作 ボロディン 《イーゴリ公》
先週、ボロデイン《イーゴリ公》を観てきた。ロシアでは定番のオペラと言われるが、アメリカでは馴染みの作品ではなく、METではほぼ100年ぶりの上演だったそうである。ロシア語上演。
「だったん人の踊り」は有名な曲でしばしば聴く機会があるが、オペラ作品の中では親しんでいないので鑑賞してみることにした。

ロシア五人組の作曲家の一人であるアレクサンドル・ボロディン(1804-57)は化学者であったが作曲活動も行った。彼の唯一のオペラ《イーゴリ公》は未完成のまま、作曲者が亡くなってしまったので、彼の友人のリムスキー=コルサコフとグラズノフが補筆して完成された。1890年にサンクトペテルブルグで初演された。
「12世紀キエフの王イーゴリ公がホロヴェッ人(=だったん人)討伐に向かうが敗北し捕虜となる。最後には脱走を果して故国に帰還するという英雄劇」

時代を19世紀に移して新演出で上演。イーゴリ公の心理描写に重点を置いた演出。舞台とセット映像がユニークであった。オペラに詳しくないので出演歌手の名前は初めて聞くものばかりだった。ただ、指揮者はジャナンドレア・ノセダで有名なイタリア人指揮者。ゲルギエフの薫陶を受け、ロシアの作品にも通じているらしい。2007年からトリノ王立歌劇場の音楽監督を務め、10年には日本でも同歌劇場管を率いてイタリア・オペラの上演を行っている。世界のメジャー・オーケストラとも数多く共演し、N響にも客演指揮をしている。

ロシアのバス・バリトンのアブドラザコフはイーゴリ公の苦悩を素晴らしい歌声と演技で表現。何と言っても圧巻だったのはコーラス。110名の合唱団のコーラスは素晴らしかった。普通は第2幕で演奏される「だったん人の踊り」が第1幕で歌われた。舞台いっぱいに咲き乱れる12,500本もの真っ赤なケシの花畑で踊る大勢のダンサーの踊りがコーラスで展開された。イーゴリ公の至高の境地か? イーゴリ公の理想郷が幻想となって表現されているのかなと思った。

一人の人間としてのイーゴリ公を掘り下げて描いた作品。現代社会でも通じる人物像が描かれており、最後の場面で英雄が再起を目指す場面は観る者の心に響く。歴史絵巻と心理劇を組み合わせた演出は興味深かった。

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MET Live Viewing 2013-14 第7作 マスネ 《ウェルテル》

今日4月16日はゲーテの文芸大作「若きウェルテルの悩み」をフランスの作曲家マスネ(1842-1912)がオペラ化した作品を鑑賞してきた。フランス語上演。
フランスの作曲家のオペラ作品として人気の高いのが「マスネのウェルテル」の他に「ピゼーのカルメン」、「グノーのフアウスト」、「ドビュッシーのぺリアスとメリザント」、「オッフェンバックのホフマン物語」等があげられる。
2011-12シーズン第6作に「フアウスト」がMETで上演されて観た。

マスネのオペラは21012-13シーズン第10作「マノン」をネトレプコ主演で昨年鑑賞したばかり。マスネは約40ものオペラを作って19世紀末から20世紀初頭にかけて大変人気を博したらしい。現在では上記2作品の他にヴァイオリン独奏曲として有名な《タイスの瞑想曲》が間奏曲に使われる「タイス」も知られている。

オペラ《ウェルテル》は登場人物が少なく、舞台装置も大きくなくて上演できる、どちらかといえば小劇場向けの作品と言えるかも知れない。ストーリーは永遠の恋の悲劇。18世紀末のドイツで暮らす詩人ウェルテルは大法官の令嬢で従妹のシャルロットに一目惚れする。彼女には親が決めたいいなづけのアルベールがいた。アルベールとシャルロットが結婚した後も、ウェルテルは恋の炎に身を焦がし彼女のことが諦めきれない。クリスマスイヴの夜、シャルロットは彼の手紙に心が揺らぐが、愛を告白する彼を突き放してしまう。絶望したウェルテルは自分の部屋で銃を手にして自殺を図る。シャルロットが瀕死のウェルテルを発見するが、彼は彼女に抱えられて静かに息を引き取る。

報われない恋に身を焦がす青年の苦悩をヨナス・カウフマンが情緒たっぷりに見事な歌唱と演技を披露する。カウフマンは「フアウスト」と「パルシファル」に続いてMETビューイングで観るのが3回目だが、毎回ただ感動するのみ。歌唱力も演技力も凄い。他のオペラ歌手の追随を許さない程の圧倒的な印象を与えてくれる。幅のある高音域の歌声や声量は聴き惚れるばかりであるし、色々な感情表現が実に素晴らしい。第3幕での「春風よ、何故に私を目覚めさせるのか?」が印象的なアリア。

フランスを代表するメゾソプラノのソフィ・コッシュの名は初めて聞くが、シャルロット歌いとして名高いそうである。カウフマンとこの役で共演するのは、パリ、ウィ―ンに続いて今回が三度目と言う。彼女のMETデビューとなったが、コッシュもカウフマンと堂々と渡り合って、後半の全身全霊で熱唱する二重唱は本当に素晴らしくて感動的であった。

フランス語上演で言葉を大切にして、音楽が言葉をかき消さないような配慮からか、オーケストラも室内楽的だったり、ソロ演奏があったりして、歌手を前面に出す音楽作りのようであった。
映像やフレームの効果的な使用など、新演出での工夫も印象に残った。


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デイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

〈Kitaraワールドオーケストラシリーズ〉

チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団がKitaraに初登場したのは1999年6月。Kitaraスイスの名門オーケストラシリーズの一環で、99年5月のスイス・ロマンド管弦楽団に続いての来演であった。
ディヴィッド・ジンマン指揮で当時のプログラムは次のようになっていた。オネゲル:《パシフィック231》-交響的運動第1番、メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏/竹澤恭子)、ベートーヴェン:交響曲第7番。当時、ジンマンとトーンハレはベートーヴェンの交響曲全曲録音で話題を集めていて日本ツアー8公演の全てでベートーヴェン・プログラムが入っていた。自分も第7・8番のCDを何回も聴いていたのを今でも思い出す。
 
最近、ジンマンがN響と共演するプログラムをテレビで数度見て懐かしい思いをしていた。今日は15年ぶりに同じコンビで戻ってきたのだから何か感慨深いものがある。

David Zinmanは1936年生まれのアメリカ出身の指揮者。偉大な指揮者ピエール・モントゥーの助手をつとめた後、67年フィラデルフィア管を振ってアメリカ指揮デビュ―して以来、世界のメジャーオーケストラを客演指揮してキャリアを積んだ。1995年チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の音楽監督に就任してから現在の任にある。
同管と録音を数多く行い、海外公演でも注目を浴びて今日に至る。

1868年創立のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団はスイスで最も古い歴史を持つオーケストラ。1965年ルドルフ・ケンプが首席指揮者に就任してヨーロッパ有数のオーケストラになったと言われる(~72)。その後ゲルト・アルブレヒト(75-80)、クリストフ・エッシェンバッハ(82-86)、若杉弘(87-91)、クラウス・ペーター・フロール(首席客演91-95 *彼は12月の札響定期に出演予定)に続いて、95年からディヴィッド・ジンマンが音楽監督兼常任指揮者を務めている。日本で人気の楽団である。

ギドン・クレーメル(Gidon Kremer)は1947年、ラトヴィア生まれ。モスクワ音楽院でダヴィッド・オイストラフに師事。69年パガニーニ国際コンクール、70年チャイコフスキー国際コンクールで優勝。現在では世界トップのヴァイオリニスト。独特な音楽活動で唯一無二の存在。現在、ソリスト活動は行っていないようで、自ら立ち上げた「クレメラータ・パルティカ室内管弦楽団」との共演が目立ち、室内楽での活躍が多い。Kitaraに数回登場しているが、初めて聴いたのが2001年5月。同室内管とハイドン、モーツァルト、シューベルトの曲も演奏したが、シュニトケなど現代曲を紹介していた。ヴァイオリンが表に出て演奏していたので、その技巧に満足感を得たのは覚えている。
彼のCDはバッハやベートーヴェンものでしばしば聴いているが、近年の演奏会ではロシアや東欧の現代作曲家たちの作品を多く」取り上げているように思われる。2011年4月の「ギドン・クレーメル・トリオ」の公演が中止になって残念であったが、久しぶりに、しかも馴染みのヴァイオリン協奏曲を聴けるのを楽しみにしていた。

〈本日のプログラム〉
 R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28
 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調「トルコ風」K.219
 ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 作品98

今年はR.シュトラウス(1864-1949)の生誕150周年に当たるので、彼の作品がコンサートなどで取り上げられる機会が増えるかも知れない。
シュトラウスのオーケストラ作品には《交響詩》が多い。14世紀のドイツに実在したと言われるいたずら者、オイレンシュピーゲルを題材にして、ユーモアとアイロニーに溢れた世界を描いた。いたずらを重ねた主人公が最後には捕えられて絞首台に送られてしまう。しかし、彼は永遠に物語の中で生きている。
4管編成で約100名の大管弦楽。ホルン、クラリネットを中心とした管楽器や打楽器が活躍して、とても面白かった。日本人のクラリネット奏者(Junko Otani)が大活躍したが、他に日本人と思われる楽団員が6名もいた。

モーツァルト(1756-91)全5曲のヴァイオリン協奏曲の中で最も親しまれている。第1楽章は堂々とした音楽。第2楽章は緩徐楽章。第3楽章では甘美なメヌエットと勇ましいトルコ風の行進曲が対照的な音楽。5曲のヴァイオリン協奏曲が全部モーツァルトが10代の頃に書かれたというのには改めて驚く。
弦楽器奏者28名、管楽器奏者4名という小編成のオーケストラは意外であったが、もちろん演奏には何の違和感もなく、クレーメルの楽譜を読みながらの丁寧な演奏を堪能した。一味違う充実感を得たのはオーラが発しているソリストの所為だったのかも知れない。
ソリストのアンコール曲はイザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番 第1楽章 オーロラ。弓を弾きながら、同時にピッチカート奏法で音を出すのは凄い技法。二つの楽器を操っているように思えた。

ブラームス(1833-97)の交響曲は4曲とも親しまれているが第1番、第4番の人気度が高い。第1番の人気度が断然上回ると思うが、この第4番と作曲の過程と内容に好みが少し左右されるのではないかと思っている。
この作品は彼が52歳の時の作品であるが、まるで晩年の作であるかのように回顧的で人生の最後を迎えている風情が漂っていると言われることがある。作曲技法的には円熟した作品と評価されている作品。
今日は久しぶりで指揮者の真正面のP席から鑑賞。ジンマンのダイナミックで安定感のある指揮ぶりを十分に心に焼き付けた。ジンマンとトーンハレ管との最後の国際的ツアーとなるので、指揮者自身も感慨深い想いで指揮している様子が聴衆にも伝わってきた。
演奏終了後の万雷の拍手は割れんばかりであった。客の入りは6割程度で多くはなかったが、いつもより幅広い年齢層の聴衆が目に付いた。ジンマン自身もオーケストラの演奏に最後は拍手を送っていたので満足したようだった。

オーケストラのアンコール曲は2曲。「ブラームスのハンガリー舞曲第1番」と「スイス民謡 エヴィヴァエソチ」。
最後の曲を演奏する前にジンマンが客席に向かって曲名を言ったのだと思うが聞きとれなかった。でも、親しみが込められての発声であると感じた。彼の日本への好感度は高いらしい。「スイス民謡」はいろいろな楽器が特徴を出して演奏された。特に打楽器奏者が自分自身の膝を使っての演奏に客席が湧くほど盛り上がった。最後を飾るに相応しい選曲となって楽しくて温かい雰囲気が会場に広がった。
楽団員がステージを下がるまで拍手を送る客も多数いた。中には客席の女性と握手をしている打楽器奏者もいた。一番最後にジンマンが再びステ―ジに出てきて別れを惜しむ場面はなかなか良かった。

帰宅して1999年にKitaraで演奏した楽団員をプログラムで大雑把に確認してみたら、30名が重複していた。(今回のプログラムは日本公演をサポートするJTグループが無料で入場者に配ってくれたようで有り難かった。)彼らに15年前のKitaraの音響との違いを直接に訊いてみたい気がした。多分Kitaraの職員が印象を聞いていることを期待する。

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ピアノ名曲ベスト2014 近藤嘉宏ピアノ・リサイタル

毎年恒例の近藤嘉宏のピアノ・リサイタルが日曜日の午後、KItara大ホールで開かれた。

2014年4月13日(日)13:30開演

〈プログラム〉
 シューベルト:即興曲第4番 変イ長調 Op.90-4
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」
 ショパン:スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39
      ワルツ第3番 イ短調 Op.34-2「華麗なる円舞曲」
      ワルツ第6番 変二長調 Op.64-1「子犬のワルツ」
      幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66
 サン=サーンス:死の舞踏 Op.40(リスト=ホロヴィッツ編)
 フォーレ:ノクターン第1番 変ホ長調 Op.33-1
  リスト:ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調

シューベルト、ベートーヴェン、ショパン、リストは馴染みの曲ばかり。近藤嘉宏は40代後半とはとても思えない端正な容姿で若々しい。彼のしなやかな手から奏でられるメロディは一層美しさを増す。前半3曲。後半6曲。聴き惚れている間に時間が過ぎるのが早かった。

サン=サーンス(1885-1921)の「死の舞踏」の原曲は元は歌曲、管弦楽曲として作られたそうである。管弦楽曲として題名は聞いたことがあるが、ピアノ曲として初めて聴いたが、とても面白かった。リストのピアノ編曲版を元にホロヴィッツが更なる編曲を施したとされる。
「午前0時の時計の音とともに骸骨が現れ不気味に踊り初め、次第に激しさを増してゆくが、夜明けを告げる雄鶏の声が響き渡るや否や墓へと逃げ帰り、辺りが再び静寂に包まれるまでの様子が描かれている。」

フォーレ(1845-1924)の書いた全13曲のノクターンはCDを持っていて一度は聴いた筈だが、メロディは当たり前だが全く覚えていなかった。フォーレらしい落ち着いた情感のある曲だが、この曲はどことなくメランコリック。でも味わい深かった。

手の動きが一段と激しくなるリストの曲では、近藤も身構えて身体を動かしやすい状態にして鍵盤に向かっていた。

近藤は各作曲家の曲の演奏が終わる度に、満面に笑みを浮かべてホールの各ブロックの聴衆に軽く会釈したが、その姿も印象的であった。

全9曲の演奏が終わってアンコール曲を弾く前に彼は“Kitaraで演奏するのを楽しみにしていた”と語った。小山実稚恵、及川浩治、外山啓介も毎年Kitaraでリサイタルを開催している。特に近藤、及川、外山は大ホールで低料金で楽しめる。私のブログにアクセスがあるのは女性ピアニストより男性ピアニストが断然多い。多分、大部分は女性のファンなのかも知れないと思っている。

アンコール曲は
 リスト:「愛の夢」、超絶技巧練習曲集より第4曲「マゼッパ」

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札幌交響楽団第568回定期演奏会(2014.4)

2014ー2015シーズンの幕開け。今シーズンの終了後に尾高忠明音楽監督は長年務めた札幌交響楽団の任を退き、後進に道を譲ることが3月に発表された。

シーズン開幕の4月の定期演奏会の指揮者は2008年から札幌交響楽団首席客演指揮者ラドミル・エリシュカに固定されている。ドヴォルジャークやヤナーチェクのチェコ音楽シリーズが一段落ついて、今シーズンから新しいプログラム構成になるのも新鮮である。

2014年4月12日(土) 14:00開演(今シーズンから土曜日の演奏会開始時間が1時間早まった) 
 〈プログラム〉
  ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」op.9
  ヴォジーシェク:交響曲二長調 op.24
  チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調op.74「悲愴」
 
ベルリオーズ(1803-69)はロマンに溢れる標題音楽を多く作曲した。この序曲は彼のオペラ作品の旋律を使って、1844年に作曲された。彼の14曲ほどの序曲のうちで、最も多く演奏されて親しまれている。
イングリッシュ・ホルンが奏でる甘美なメロディが低音域弦楽器を伴奏にして歌われる。その後カーニヴァルの場面で威勢よく賑やかな音楽が展開される。生き生きとした舞曲で絢爛豪華なフィナーレ。

ヴォジーシェク(1791-1825)はチェコの作曲家だそうだが、初めて聞く名前である。シューベルトと同時代の作曲家のようだが、曲を聴いてみると何となくベートーヴェンを目標にして音楽を志した印象を受けた。明るくて活発な第1楽章。ボヘミアの田園の雰囲気が感じられる第2楽章。ドラマティックな第3楽章に続いて、第4楽章は力強いフィナーレ。
一度聴いてみただけであるが印象は悪くない。日本では余り知られていない作曲家がチェコには他にも沢山いるようである。

エリシュカはチェコの作曲家以外で今迄にもモーツァルト、ベートーヴェンやブラームスの曲も演奏してきた。今回はどんなチャイコフスキーの演奏になるのか注目された。

チャイコフスキー(1840-93)の7曲の交響曲の中で最後の作品となった「第6番」。1893年8月末に完成された曲は10月28日にチャイコフスキー自身の指揮でペテルブルグで初演。彼は9日後の11月6日にコレラのために死去。この交響曲の《悲愴》というタイトルは、初演の後でチャイコフスキーの弟の提案で「パセティック(悲愴)」の標題が付いた。
第1楽章がコントラバスの音と共にファゴットの奏でる暗い旋律で始まるのが改めて印象的。第1ヴァイオリンとチェロの甘美で哀しみを含んだテーマも心に響く。第2楽章にはロシア民謡の調べがあり、快活なようで暗い哀感が出ている。第3楽章はスケルツォと行進曲を組み合わせたような構成の楽章。熱い雰囲気を想わせるが、必ずしも快活ではない。第4楽章はパセティックというタイトルに相応しく、重く打ちひしがれた絶望感に満ちたフィナーレ。

最近、第3楽章の終了時に曲が終ったと勘違いして拍手が巻き起こることがあったが、本日は演奏方法も少し違った所為もあり、札響定期演奏会ということもあって聴き慣れた曲で楽章間での拍手は無くて良かった。
エリシュカの指揮ぶりは腕の振りでオーケストラをコントロールして彼自身の目指す音楽作りが出来ているように思った。チェコの音楽紹介では非凡な力を発揮していたが、どんな作曲家の曲でも聴かせる力量を見せてくれた。彼自身も演奏終了後にガッツポーズをしていたが珍しいことであった。彼自身も満足した様子が見て取れたのである。

エリシュカは聴衆の万雷の拍手が鳴り止まずにステージに何度も登場。そのたびにオーケストラ団員に起立を求めるが楽団員もエリシュカへオーディエンスと共に拍手する回数が今迄にないくらい多かった。マエストロは自分よりオーケストラに拍手をしてほしいという仕種を何度も示した。札響の演奏にはいつも満足しているようであるが、今回は特別に感激してしている様子であった。

エリシュカは数年前と変わらない重厚でエネルギーに満ち溢れた指揮ぶりで、今後も益々活躍が期待される。11月には定期演奏会と名曲シリーズで札響に再登場する予定。札響演奏会の折に日本での他のホールでの出演機会も増えている様子で喜ばしい。

追記:札響の4月号プログラムに「尾高忠明音楽監督の10年」の連載記事で「悲愴」に関する記事が載っていた。マエストロ尾高は札響在任中にこの名曲を大切な節目に繰り返し演奏してきたと言う。(正指揮者就任の1981年、ミュージック・アドヴァイザーとして復帰したシーズンの99年の東京公演、定期演奏会の2公演化の05年、ヨーロッパ・ツア―の11年など)
札響はシベリウスを得意にしていると思っていたが、尾高音楽監督のお蔭で「悲愴」は札響の18番になっていることを認識した次第である。
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前橋汀子 バッハ無伴奏ソナタ&パルティータ全曲演奏会

3月15日のマリア・ジョアン・ピリス、17日の藤村実穂子のコンサートから約3週間が経って、今日4月5日は久しぶりのKitaraでのコンサート。実はこの期間中は南米旅行に出かける計画があって、コンサートを聴く予定は入れていなかった。
3日に帰国したばかりで身体が充分に回復していなかったが、何とかコンサートには出かけた。体調が余り優れない時でも音楽を聴くとリフレッシュできる経験を積み重ねているので、クラシック音楽の私の生活に果たす効果は絶大である。

前橋汀子のコンサートは最近は“アフタヌーン・コンサート”として開催されていて、曲目が小品の演奏が多かった。親しみ易いとは言え、何となく物足りなかった。昨年の秋のコンサートの折に、「バッハの無伴奏全曲演奏会」のチケットを早々に買い求めて、本日の演奏会を楽しみにしていた。

〈オール・バッハ・プログラム〉
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト短調 BWV1001
 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番 ロ短調 BWV1002
 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
---------------- 休      憩 -------------------
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV1003
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV1006

J.S.バッハ(1685-1750)は18歳の時にワイマール宮廷のヴァイオリニストとなり、一旦他に移って5年後にワイマールに戻り宮廷楽師兼オルガニストとなった。1717年にケーテンの宮廷から楽長に拝命されてケーテンへ赴任。1717-1723年の《ケーテン時代》と呼ばれる時期に「ブランデンブルグ協奏曲」、「管弦楽組曲」等が作曲されている。「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ及びパルティータ6曲」は「無伴奏チェロ組曲」と共に1720年の作品である。

バッハの「ヴァイオリン協奏曲」は演奏会で聴く機会も多く親しんでいる。「無伴奏のパルティ―タ」はクレーメルのCDで良く聴いていた。ヒラリー・ハーンのCDも魅力的である。演奏会ではアンコール曲に「パルティ―タ第2番シャコンヌ」が取り上げられて耳にすることもある。

「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」や「パルティ―タ第1番」をコンサートで聴いた記憶は鮮明でない。「無伴奏ソナタ」はエネスコの1948年頃録音の古い音源のCDが手元にあるくらいでそれほど親しんでいない。そんな訳で今回のプログラムはとても魅力的で楽しみにしていた。

3つのソナタはとても純粋な感じの曲で聴きやすい。緩ー急ー緩ー急の4楽章構成。典型的な「教会ソナタ」と呼ばれる。各曲の第2楽章がフーガであるのがバッハの特徴かと思った。

「パルティータ第1番」はアルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレという4つの古典舞曲の組曲。軽快で躍動感に富むが、荘重な感じも持つ。

「パルティータ第2番」は全6曲の中で最も広く親しまれている曲。アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、シャコンヌの5楽章構成。4つの楽章の後の重厚長大な「シャコンヌ」が有名。この壮麗な第5楽章は全曲の約半分の演奏時間を要し、高度な演奏テクニックが必要な難曲としても知られる。しばしば単独で演奏され、アンコール曲として弾かれることも多い。又、オーケストラ曲やピアノ曲に編曲されていて演奏される機会が極めて多い。

「パルティータ第3番」は他の2曲のパルティータとは違って前奏曲と6つの舞曲から成る。プレリュード、ルール、ガヴォットとロンド、メヌエットⅠ、メヌエットⅡ、ブーレ、ジーグの7楽章構成。全体に明るい雰囲気の軽快な作品で、第2番と並んで広く親しまれている。

パルティータ(組曲)はドイツのアルマンド、フランスのクーラント、スペインのサラバンド、イギリスのジーグなどのヨーロッパ諸国の色々な舞曲を連ねて「室内ソナタ」の形式になっている。

前半75分、休憩20分、後半70分と3時間にも及ぶコンサート。午後3時開演で終了時間が6時。
前橋汀子の驚異的な集中力と体力には感服した。一応ステージの譜面台に楽譜を置いてあったが、楽譜は開かずに前半、後半の各3曲を一気に弾き切った。伴奏を伴わない一挺のヴァイオリンのみを用いながら、まるで伴奏つきの多声的な音楽が展開された。
全身全霊を注いで奏でた前橋の渾身の演奏に対して、珍しく予備席まで使われて小ホールの客席を埋めた満員の聴衆から演奏終了後には万雷の拍手がおくられた。“ブラボー”の声も上がって、アンコール曲を期待した人もいたようだったが、今日のプログラムの内容では無理であった。
家路に着く人々の口から洩れる感動の言葉が耳に心地よく響いた。私自身も充実感を味わえ、蓄積していた旅の疲労感も解消できた気がした。



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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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