Kitaraランチタイム・コンサート “モーツァルトはお好き?”Ⅱ

札幌音楽家協議会メンバーによるオール・モーツァルト・プログラム第2弾!

2014年1月28日(火) 13:00開演 
札幌コンサートホールKitara小ホール
指揮:阿部博光
管弦楽:札幌音楽家協議会室内オーケストラ

〈プログラム〉
  ディヴェルティメント 二長調 K.136
  ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 ~第2楽章 (ピアノ:高岡立子)
  交響曲 第40番 ト短調 
 
私の一番好きな作曲家はベートーヴェン。 チャイコフスキー、ショパンも好きである。ベートーヴェンの交響曲やヴァイオリン協奏曲、チャイコフスキーのピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲、ショパンのピアノ協奏曲は学生時代から好んで聴いていた。
今ではモーツァルトも好きである。彼の音楽を積極的に聴くようになったのは50歳ぐらいからだった。特に生誕250周年の2006年には毎日欠かさずモーツァルトのCDを聴いていた。交響曲は全曲、ピアノ曲、ヴァイオリン曲もほぼ全曲、管楽器の曲も含めて、かなり広範囲に亘って親しんでモーツァルトの音楽の良さが判るようになった。多分に年齢的なものが鑑賞に影響を与えていたのかなと感じている。

指揮の阿部博光は東京藝術大学卒業。日本フィルで首席フルート奏者を務め、1999年より札幌コンサートホールで阿部博光室内楽シリーズ、リサイタルシリーズを開催。近年は指揮者として、また北海道教育大学教授として北海道の音楽活動において指導的役割を果している。

2008年の札幌音楽家協議会主催によるコンサートを機に室内オーケストラが結成され、今回が8度目のステージ。本日のステージには色鮮やかなドレス姿で女性奏者が登場して、心も浮き立つ雰囲気の中でコンサートが始まった。(赤、ピンク、緑色などのドレスを身にまとった女性15名、黒色は男性2名のみ)

ディヴェルティメントはイタリア語由来の音楽用語で「喜遊曲」。気晴らしになる楽しい曲の意味。2回目のイタリア旅行から帰って16歳の時に書かれた3曲のディヴェルティメントのうち、この二長調が最も有名。第1楽章は生き生きとして明るい楽章。第2楽章は落ち着いた雰囲気の緩徐楽章。第3楽章は溌剌としたフィナーレ。

弦楽合奏の第1曲目が終ったところで、モーツァルトの衣装を身にまとった方がステージに登場。“昨日(1月27日)が私の258回目の誕生日でした”でトークを始めた。すっかりモーツァルトになり切ってユーモアを交えて曲の解説をしながらコンサートを仕切った。(札幌交響楽団の定期演奏会などでも演奏曲目についてトークを行なっていた札幌では馴染みの八木幸三氏。)不自然な感じが全然なくて堂に入っていた。

モーツァルトのピアノ協奏曲は番号が付いたものが27曲。第20番ニ短調が暗くて激情的な曲風なのに対して、この第21番ハ長調は明るくて華麗な感じの曲。第2楽章「アンダンテ」は緩やかな歌の魅力に溢れる美しい調べが印象的。ピアニストは桐朋学園大学卒業。リサイタル、札響との共演、室内楽などでの演奏活動を積み重ねて、北海道の音楽界の大先輩として活躍している方のようである。非常に丁寧な演奏に感じられた。

悲劇的な暗さに満ちた「交響曲第40番ト短調」は詩情にあふれた情熱的な曲でもある。(ト短調の調性の曲は他に第25番が有名。)第41番ハ長調「ジュピター」が明るくて壮麗な曲であるのと対照的。最後の交響曲であるこの2曲は昔から特別によく聴いていて大好きである。モーツアルトの交響曲のナンバーは41番まであるが、番号の付いていない交響曲が何曲かある。交響曲の名の付く曲は46曲手元にある。短い生涯の間に膨大な作品を残していることに驚嘆するばかりである。

第2曲目から管楽器奏者9名が加わって総勢26名の室内オーケストラ(女性23名、男性3名)。ステージ上のドレス姿が華やかだとは言え、男性奏者が少なくて少々さびしい感あり。阿部博光が指揮するコンサートは何回が見ているが、すっかり指揮ぶりが板についている印象を受けた。今後益々の活躍が期待される。

ソリストのアンコール曲はモーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 第1楽章より「テーマ」、
オーケストラのアンコール曲はモーツァルト:ディヴェルティメント K.138より第3楽章

モーツァルトの耳に馴染んだ有名な曲ばかりの小一時間の演奏会だったが、偶にはこんな演奏会も変化があって良いと思った。













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北海道交響楽団 第74回演奏会

2014年1月25日(土)18:30開演 
札幌コンサートホールKitara 大ホール

指揮:川越 守

〈演奏曲目〉
スクリャービン:交響曲第4番 「法悦の詩」
リヒャルト・シュトラウス:家庭交響曲

演奏曲目に惹かれて2ヶ月以上前にチケットを購入していた。演奏機会がめったに無い曲で、オーケストラの規模が大きな楽器編成での演奏会を聴いてみたい気持ちに駆られた。
 
2曲とも20世紀初頭の作品で「交響曲」と銘打たれているが、最初から最後まで続けて演奏されるのが共通の特徴。また、2曲ともに四管編成。

スクリャ―ビン(1872-1915)のこの曲は07年のPMFオーケストラの演奏曲目に入っていて曲名だけは知っていた。曲の題名から余りはっきりとしたイメージは全く湧いてこない。CDも所有していないので余り興味も無かった。小山実稚恵のコンサートでピアノ曲があることが判って、前衛作曲家としてのイメージとの違いを感じ取ったのが6・7年前のことであった。その時に関心を抱いていてジョン・オグドン(62年のチャイコフスキー国際コンクールでアシュケナージと共に第1位)が弾いたピアノ・ソナタ10曲を含むスクリャービンのピアノ曲の輸入盤CDを買って、偶に聴いているが意外と印象に残る良い曲である。

“The Poem of Ecstasy”という英語の原題の方がイメージが湧きやすい。ロマン主義から脱して神秘主義に傾倒して「エクスタシー」を表現した神秘主義的な作風の曲と言われる。
ハープ、チェレスタが多用され、ホルン、トランペットの金管楽器の活躍が目立つ4管編成のオーケストラによる単一楽章の曲。特にトランペットによる絶頂の繰り返しの演奏が印象的だった。
スクリャービンはラフマニノフと同時代の作曲家・ピアニストであるが、彼らは同級生だったそうである。

R.シュトラウス(1864-1949)については述べるまでもないが、自分の好きな作曲家には入っていない。“Sinfonia Domestica”はユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管が1938年にレコーディングしたCDを所有していて数回聴いたことがあったが、ほとんど印象には残っていなかった。
シュトラウス自身の家庭の様子を描いた曲らしい。父、母、子どもの幸せな家庭の状況がスケルツォ、子守歌、アダージョなどで示される。後半で子どもの教育をめぐって両親が言い争う場面や賑やかな家庭生活が大編成のオーケストラでドラマティックに展開される。クラシックの曲では珍しいサキソフォンが4本も使われたのも印象に残った。何と言ってもホルンが8本で北海道大学交響楽団や札幌西区オーケストラの奏者の応援があったようだ。
第4部(第5部(?)かよく解らなかったが)のフィナーレで金管楽器の躍動的な演奏がとても印象深かった。最後のクライマックスでのティンパニの音も面白かった。
曲の詳しい内容も解らないで漠然と聴いていたら、この曲の価値が理解され難いかもしれないと思った。後半の盛り上がりは凄かったが、前半の曲の流れは落ち着いていて良い音楽であったが、チョット平凡な感もあった。
シュトラウスの他の多くの曲と比べて演奏されない理由の一因が演奏者のプログラム・ノートに書かれていた。「家庭交響曲」の演奏には多くのエキストラが必要なことが判った。

北海道交響楽団はアマチュア・オーケストラとして高いレヴェルを誇っているが、プロのオーケストラに出来ないことに挑戦している姿勢を高く評価したい。今後も耳新しい大曲をどんどん聴かせてほしい。金管楽器の演奏などはボロが目立ちやすいようであるが、素人にとっては細かな専門的なことは判らないが、今日の演奏は素晴らしかった。改めてこのオーケストラのレヴェルの高さを感じた。プロに近い演奏力を持っている奏者が多いのを実感した。
外見的にヴェテランと思える奏者が十数名で、比較的にメンバーは若く、コントラバス奏者は特に若さが目立った。メンバーの交替も結構ある感じも受けた。良い意味での世代交代も上手く行っているのだろう。
川越指揮者もすっかりお元気になって指揮をとっておられる姿に安心しました。ステージに登場・退場する時のペンギン・スタイルも微笑ましかった。マイクを手にしての話はまだまだ元気でやれることを印象づけた。

アンコール曲はストラヴィンスキー:「花火」。20世紀初期の作品で26歳の若さで作曲した4管編成の曲。大編成の曲で滅多に演奏されることがないそうである。
題名も知っていて、聴いたことがあると思って帰宅して調べたら、マゼール指揮ウイーン・フィルの演奏で4分余りの曲がCDに収められていた。明日にも聴いてみたいと思う。一時的な鑑賞で終わらないで、次につなげるのも楽しいことである。







クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2013

クリスチャン・ツィメルマン(KRYSTIAN ZIMERMAN)は1956年ポーランド生まれ。75年、第9回ショパン国際コンクールに史上最年少の18歳で優勝。一躍世界の注目を浴び、特に祖国ポーランドの期待を背負った。76年、ベルリン・フィルと共演以後、精力的な演奏活動を展開し、初来日は78年。80年には音楽界に身を置く人生に疑問を抱いて演奏活動を中断した。1年半後に演奏活動を再開して、世界のトップ・オーケストラとの録音も行なって、その録音が数多くの賞を受賞。以来、世界中の著名なオーケストラと共演し、定期的に来日公演も行っている。演奏会の回数を年間50回までにしているだけでなく、音楽家としてのキャリアに関わるすべてを自分でコントロールしている。

私が初めて聴いたのが03年Kitara初登場の年であった。03年は6年ぶりの日本ツアーで全国12公演。このツアー期間中に日本での100回目のリサイタルを迎えた。
札幌での演奏曲目は「ブラームスの6つの小品」、「ベートーヴェンのソナタ第31番」と「ショパンの即興曲第2番+ソナタ第3番」。
2度目に聴いたのは10年、ショパン生誕200年記念オール・ショパン・プログラムで「ノクターン第5番」、「スケルツォ第2番」、「舟歌」、「ソナタ第2番・第3番」。初めての時の印象が余り残っていないのが不思議なのだが、2度目のコンサートは最初から最後まで印象深かった。ツィメルマンは自前のピアノを海外ツアーに持ち歩くことで知られている。近年の日本での活動から判断すると、日本にピアノを常時保管しているのではとさえ思われる。今は行なっていないが、コンサートでの調律も以前は自分で行っていた時代もあったようである。完璧主義者で、マイクを用意して録音をしながら自分自身の演奏をチェックしている様子も前回は見られた。

本日1月16日のコンサートは当初13年11月20日の代替公演。ピアニストの急性腰痛症のため延期になっていたコンサート。
ベートーヴェン後期3大ソナタ
 ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 作品109
 ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110
 ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111

50代のベートーヴェンによって書かれた3曲のピアノ・ソナタは晩年期の最後のソナタで傑作として名高い。深い広がりを持つ独創性と崇高な世界はピアニストにとって憧れの曲になっているのが解る。

第30番・第31番は共に抒情性豊かな作品で、それぞれの第2楽章はスケルツォ風で親しみ易い。第3楽章は共に重厚で独創性に富んでいる。

第32番はベートーヴェン最後のソナタであり、ベートーヴェンのピアノ音楽の集大成と言われている最も偉大な作品。ベートーヴェンの苦悩の人生で最後に精神が高揚して浄化されていく過程が巧みに表現されていると感じた。2楽章から成る珍しい楽章構成。
力強く緊張感に満ち溢れた第1楽章と、主題と5つの変奏によって苦難の人生の後にたどり着いた至高の世界が限りなく透明な美しい音楽で描かれる第2楽章とのコントラストが際立っている。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ32曲の中で俗称のある曲は親しんでいるが、後期のソナタの良さが解るようになったのは、つい最近である。

ツィメルマンは病み上がりで心配していたが、思ったより健康は回復していた様子だった。評論家との昨夏の対談で今回の後期三大ソナタの演奏には不安が付きまとっていたと言う。世界最高峰のピアニストにしても、そのような感情を抱くとは意外な感じがした。
演奏に当って楽譜をピアノの台に置いて時折譜面を自分でめくっていたが、暗譜はしていても慎重を期したのか理由は判らなかった。演奏中に左手が空いた時に指揮者がするような手の振りを偶々していたのが興味深かった。

今日の客の入りは1・2階の客席の9割程度の1200名ほどであった。落ち着いて、じっくり鑑賞している聴衆が大部分であった。熱狂的な雰囲気に包まれることはなかったが、演奏終了後に万雷の拍手が続いて暫く鳴り止まなかった。ツィメルマンはステージに何度も出て来て丁寧なお辞儀をして感謝の意を表したが、アンコール曲の演奏はなかった。彼自身もそれなりに満足できる演奏になったのではないか。華やかで大衆受けする曲とは違うので感動の伝わり方は人それぞれだろうが、静かに人の心に広がっていく音楽の素晴らしさが感じ取れた。

ツィメルマンは録音を多く行なっていてもリリースされている曲は極めて少なく、私の手元にも協奏曲のCDしかないので、演奏会場でソナタの録音盤を買い求めたかったが無かった。リリースを容易に許可しないアーティストであることを改めて知った。

13年日本ツアーでキャンセルになった公演が12月に5公演、1月に5公演が延期公演になっている。残る公演は20日の東京と23日の横浜のみ。無事に開催されて日本のファンの満足が得られそうである。
この10年間で日本でのリサイタルが130回には達しているというから、このピアノの巨匠が如何に日本のファンを大切にしているかが判る。今回の延期公演が可能になるアーティストも珍しくて、有難く思うばかりである。

田部京子 CDデビュー20周年記念特別ピアノリサイタル

田部京子(Kyoko Tabe)は1967年北海道室蘭市生まれ。東京藝術大学付属高校在学中に最年少で日本音楽コンクール優勝。東京芸術大学に進学後、ベルリン芸術大学に留学して同大学および大学院を修了。エピナール国際コンクール第1位、シュナーベル・コンクール第1位、ミュンヘン国際音楽コンクール第3位など輝かしい受賞歴を誇る。国内外の多数のオーケストラと共演。97年、カーネギーホール・ワイル・リサイタルホールでニューヨーク・デビュー。00年バンベルク交響楽団の日本ツアー、01年アルバン・ベルク四重奏団との室内楽ツアーで共演。演奏活動や録音活動の他に、06年より上野学園大学教授(演奏家コース)も務めている。
CDが30枚以上リリースされ、その多くが国内外で特選版に選出されるほか、カルミナ四重奏団との共演盤は08年度レコード・アカデミー賞を受賞。カルミナ四重奏団との共演は日本の室内音楽界の話題をさらっている。

私が初めて田部のコンサートを聴いたのが99年でKitaraに初登場。故郷が同じで注目していたピアニスト。演奏曲目は吉松隆:プレイアデス舞曲集、シューマン:交響的練習曲、シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番。この時にプレイアデス舞曲集のCDを購入して、演奏家から初めてサインを貰ったことを以前ブログに書いた。

02年にドイツのワイマール歌劇場管弦楽団との共演で「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番」、10年に札響夏の特別演奏会で「グリーグのピアノ協奏曲」を演奏。今回が4度目のKitaraでのコンサート。

期日:2014年1月12日(日) 13:30開演

〈プログラム〉
 吉松隆:プレイアデス舞曲集 より
       前奏曲の映像、線形のロマンス、鳥のいる間奏曲、真夜中のノエル
 メンデルスゾーン:無言歌集第2巻 Op.30 より
            慰め、ベニスのゴンドラの歌第2番
 ブラームス:4つのピアノ小品 Op.119
           第1曲 間奏曲 ロ短調、  第2曲 間奏曲 ホ短調
           第3曲 間奏曲 ハ長調、  第4曲 ラプソディ 変ホ長調
 佐村河内 守:ピアノのためのレクイエム イ短調
 シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960

15年前のリサイタルの時のプログラムと吉松、シューベルトの曲は同じ。

「プレイアデス舞曲集」は虹の7つの色、いろいろな施法の7つの音、3拍子から9拍子までの7つのリズムを素材にした「現代ピアノのための新しい形をした前奏曲集」への試みであると吉松隆は書いている。99年のリサイタルで初めて聴いた時に現代音楽とは思えぬメロディに感動して、CDをコンサート会場で買い求めた。その後、何度か聴いているが、透明で美しい抒情的な作品。吉松は1953年、東京生まれの作曲家。

メンデルスゾーンの「無言歌集」は全48曲から成るピアノ小品。アメリカの音楽雑誌で絶賛され、国内外で高く評価されている曲集と言われる。93年にスイスで録音されたCDを所有しているが、「春の歌」、「狩りの歌」、「タランテラ」などは有名で馴染みのある曲。自分もカセットでよく耳にして親しんでいた曲と後で判った。
今日の曲目「ベニスのゴンドラの歌 第2番」は甘く美しい曲であるが、「ベニスのゴンドラの歌 第1番」が人々により親しまれている曲である。

ブラームスの「4つのピアノ小品」はピアノ作品で最後に作曲された曲。3曲の間奏曲は内省的で心の奥に届くような作品。ラプソディだけはスケールの大きさを感じる曲。
ブラームスの協奏曲は別にして、ソナタや小品には殆ど親しんでいなかった。アファナシェフやクライバーンのCDを持っていて偶に聴く程度であったが、最近はコンサートでも聴く頻度が増えて少し親しめるようになった。

佐村河内(さむらごうち)は昨年から急に注目され出した作曲家で、「交響曲第1番《HIROSHIMA》」はCDを買って、4月のKitaraでのコンサートのチケットも既に手に入れている。「ピアノ・ソナタ第1番&第2番」の話題は知っていたが、「ピアノのためのレクイエム」のことは全然知らなかった。
東日本大震災で母を失った石巻の一人の少女に捧げられた曲を、昨年3月10日に田部が石巻小学校体育館で初演を行ったのを今回初めて知った。札幌初演となる演奏で心を落ち着けてこの鎮魂歌に聴き入った。

休憩時間中に演奏終了後のサイン会に備えて、「ブラームス 後期ピアノ作品集」と「シューベルトのピアノ・ソナタ第21番ほか」の2枚のCDを購入した。

シューベルトは他の作曲家に比べてピアノ曲のCDは殆ど持っていなかった。ラドゥ・ルプーのKitara出演の折にソナタ集を購入して演奏会に備えていた。残念なことに札幌公演がキャンセルになって、一昨年、東京まで聴きに出かけた。その時に聴いたシューベルトにすっかり魅せられてしまった。その後、アリス=沙良・オットや内田光子を聴いたりして更にシューベルトのピアノ曲の素晴らしさに気づき始めた。
今回、シューベルト弾きとアメリカで評判になったと言われる田部京子の演奏に期待していた。99年のリサイタルの曲目に「第21番」が入っていたとは気付いていなかった。その頃はシューベルトより「吉松のプレイアデス」に強烈な印象を受けたのであった。

「ピアノ・ソナタ第21番」はシューベルトが亡くなる2ヶ月前、1828年9月に作曲された最後のピアノ・ソナタである。落ち着いた深い情感が全楽章に満ちている抒情性豊かな作品で、最後まで深く心に静かに染み入る演奏であった。絢爛豪華な演奏より、重厚で抒情性豊かな演奏を得意とする田部は一貫して自分の言葉で静かに語りかける演奏にかけては他のピアニストに無いものを備えているのではないかと思った。

演奏が終わるとあちこちから一斉に“ブラボー”の掛け声が上がって聴衆の感動が伝わってきた。
〈アンコールに3曲〉
 シューマン:トロイメライ、 カッチーニ(吉松隆編曲):アヴェ・マリア
 シューベルト(吉松隆編曲):アヴェ・マリア序奏

アンコール曲も含めてホールに詰めかけた聴衆の心深くに届く静かな音の響きは感動的で、演奏終了後のサイン会に並ぶ人の列にも見て取れた。私も室蘭出身で応援していること、99年のリサイタルやシューベルトの感想を述べると顔を上げて対応してくれ、2枚のCDに日付を入れて丁寧にサインしてくれた。“次のコンサートをお待ちしています”と言うと“9月の札響に出演します”と答えてくれた。熱心に対応してくれる姿に恐縮したほどであった。ファンへの対応にも人柄の良さを感じて好感度も増した次第である。
        



Kitaraのニューイヤー2014

2014年の≪Kitaraのニューイヤー≫はヨハン・シュトラウス2世のワルツやポルカを中心に、世界の歌劇場で活躍するソプラノ・幸田浩子を迎えて、高関健指揮札幌交響楽団の演奏で華やかにKitara大ホールで幕を開けた。

2014年1月11日(土) 15:00開演

高関健は12年3月、9年間務めた札響正指揮者の任を終え、客演指揮者として13年2月に札響名曲シリーズに出演して以来の札響客演。13年2月にはサンクトペテルブルグ・フィル定期演奏会を客演指揮して大絶賛を受けた(この時、高関はフェイスブックで写真を載せてツィッターしていた)。14年4月より京都市交響楽団常任首席客演指揮者に就任予定。

幸田浩子は07年1月、フランツ・リスト室内管弦楽団ニューイヤーコンサートでKitaraに登場。J.シュトラウスの《こうもり》より「侯爵様、あなたのようなお方は」、ワルツ「春の声」、レハールの《メリー・ウィドウ》より「ヴィリアの歌」を歌った。

〈本日のプログラム〉
 ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲 
              喜歌劇「こうもり」より“侯爵様、あなたのようなお方は”*、
              トリッチ・トラッチ・ポルカ、 ポルカ「クラップフェンの森にて」 
 レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より ヴィリアの歌*
 ヨハン・シュトラウス2世:皇帝円舞曲
            ーーーーーーーーーーーーーーーーーー    
 ヨハン・シュトラウス2世:芸術家のカドリーユ、  ワルツ「春の声」* 
              ポルカ「雷鳴と稲妻」、 アンネン・ポルカ
 ジーツィンスキー:ウイーン、わが夢の街*
 ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「恋と踊りにときめき」
              ワルツ「美しく青きドナウ」
                                    *ソロ:幸田浩子               
                                        
ヨハン・シュトラウス2世(1825-99)はワルツ一家の一人でワルツ王。18歳の時に私がクラシック曲として最も親しみ始めて何度も聴いた曲が「ウィ―ンの森の物語」と「美しく青きドナウ」。今では正月に耳にするぐらいの曲だが、J.シュトラウスの名曲中の名曲。

先日NHKニューイヤーオペラコンサートでライナー・キュッヒルが毎年12月31日と1月1日に「こうもり」をウイーン・フィルが演奏する理由を“物語が面白くて、音楽が美しい”からと語っていた。大晦日の夜の出来事が描かれているので、今日では大晦日に全曲が演奏されるのが恒例になっている。シュトラウスが書いた18の舞台作品の中で最高傑作とされるオペレッタ。豪華絢爛で楽しいオペレッタに相応しい華やかな「序曲」。作品に登場する美しいメロディが織り込まれていて、まとまった曲になっているので、この序曲は演奏会で単独で演奏されることが多い。ところで、「こうもり」は主人公の友人であるファルケ博士のあだ名。

「侯爵様、あなたのようなお方は」は何度か聴いていても題名は余り覚えていなかった。1月3日のNHKオペラコンサートで幸田が素晴らしい歌唱力で歌ってとても印象的であった。7年前にも聴いていたとは記憶になかった。喜歌劇「こうもり」は実演や映画で見たことがあるので、女優に扮した女中が侯爵に扮したご主人に向かって歌う場面は思い出すことができる。
ソプラノ歌手として絶頂期にある幸田浩子は表情豊かな演技力と歌唱力で、彼女の歌声が高らかにKitaraのホールに響き渡った。

「トリッチ・トラッチ・ポルカ」はおしゃべりなご婦人方の様子を描いた軽快なポルカ。
「クラップフェンの森にて」は題名も知らず馴染みのない曲。ウィ―ン郊外にある静かな森の情景を描いたポルカだそうである。

レハール(1870-1948)はハンガリーのオペレッタの作曲家。《メリー・ウィドウ》は《こうもり》と並ぶオペレッタの傑作。「ヴィリアの歌」は“おお、ヴィリア、森の妖精よ! 私をつかまえ、お前の恋人にしておくれ”とハンナが故郷を思いながら恋心を歌うアリア。この喜歌劇で最も有名な曲を幸田は美しい澄んだ声で歌い上げ、聴衆から一段と大きな拍手喝采が沸き起こった。

前半最後の「皇帝円舞曲」はオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフⅠ世の即位40周年記念祭のための祝典曲。明るく堂々とした音楽で風格のあるワルツ。

後半最初の曲「芸術家のカドリーユ」は聴いたことがない。カドリーユと呼ばれるダンスは2組または4組の人が四角になって踊る舞曲で、スクエア・ダンスのようなものらしい。ヨハン・シュトラウス2世は500曲ほど作曲しているが、70曲以上ものカドリーユを作曲していて、自作をもじったものや、他人の曲から借用したメロディを使ったものが沢山あるそうである。
メンデルスゾーンの「結婚行進曲」に始まってモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトやショパンなどの有名な作曲家たちの作品をもじったパロディ。冗談音楽のつもりかも知れないが、とにかく面白かった。

「春の声」では待ち望んだ春がやってきて、ひばりやナイチンゲールが楽しく鳴く様子が歌われる。コロラトゥラの歌声が美しい旋律とともに心に響く。いつ聴いても春の喜びが伝わってくる名曲。管弦楽曲として演奏されることが多いが、原曲版は歌付きであると指揮者の解説があった。ニューイヤーコンサートでの定番でもある。

ジーツィンスキー(1879-1952)の名は知らなかった。「ウィ―ン、わが夢の街」の題名は聞いたことがあって、確認してみたら、90年のニューイヤーコンサートで鮫島有美子がリサイタルのサブタイトルに使っていた。ウイーン賛歌の名曲でウィーンの代名詞と言えるのだろう。
幸田はウイーンで過ごした日々を思い出しながら精一杯心を込めて歌ったに違いない。
7年前より、どういう訳か判らないが今日は断然、強い印象を受けた。今度はリサイタルを聴いてみたい。彼女の今年のスケジュールによるとリサイタルを各地で行う予定になっている。歌手のコンサート出演では代役が必ず用意されているというが、今回は出演者が予定通りで良かった。寒波が襲っている状況の中、無事スケジュールを滞りなく終えてほしいと願う。

「雷鳴と稲妻」、「アンネン・ポルカ」は馴染みのポルカであるが、「恋と踊りにときめき」は初めて聴いた。

「美しく青きドナウ」はウィンナ・ワルツの代表作とも言える名曲で、オーストリアの第2の国歌とも呼ばれるほどオーストリアで愛されているワルツ。この曲がここ数年ニューイヤーコンサートで最後に演奏されていると気付いた。

アンコ‐ル曲にヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」を演奏して、聴衆の手拍子でコンサートを締めくくった。

《Kitaraのニューイヤー》で全曲がウイーン風の曲だったのは初めの経験であった。今迄は客の入りも多くなく、むしろ少な目で寂しい感じがしていた。客演指揮者が選曲するとどうしても生真面目なプログラムになるのかも知れないが、以前からニューイヤーコンサートは定期コンサートとは違って、年の初めで肩の凝らない楽しい曲ばかりの演奏でウイーン・フィルと同じようなスタイルで良いと考えていた。
今日の指揮者は札幌の事情に詳しい高関健であり、選曲も工夫が凝らされていて、まずまずの客の入りであった。高関指揮の場合は彼特有の楽器配置で、新鮮味もあった(コンサートマスターがいつもの人と違うので客演か新しいコンマスかと思った?)。普段オーケストラの演奏には使わない珍しい打楽器が頻繁に使用された曲の演奏も興味深かった。
ともかく、今年は指揮者の適度なトークも入って、歌手へのインタヴューもあり、プログラミングの良さもあって近年の「Kitaraのニューイヤー」では一番楽しかった。



NHKニューイヤーオペラコンサート2014

Eテレの正月番組欄で偶々オペラコンサートを見つけたので聴いてみた。第57回というから昔から放映していたのだろうが、全く知らなかった。NHKホールからの生放送番組。1月3日 7:00PM~9:00PM

2時間番組の前半は〈花が誘う歌物語〉で《カルメン》、《蝶々夫人》、《ばらの騎士》のオペラ名場面を花の香りとともに楽しめるアリア。日本のオペラ歌手の独唱がゲストの假屋崎省吾が生けた超豪華な花の舞台をバックに展開された。

ウィ―ン・リング・アンサンブルが特別出演して、ヨハン・シュトラウスの歌劇《こうもり》から「こうもりカドリール」と「チャールダッシュ ふるさとの調べよ」の2曲。チャールダッシュのアリアを腰越満美が熱唱。ゲストのライナー・キュッヒルが司会者の質問に答えて、「ウィ―ン・リング・アンサンブルの日本での公演は今回が24回目。ウィーンで12月31日と1月1日に毎年《こうもり》を演奏するのは、このオペラには名曲が沢山あり、物語が面白くて、音楽が素晴らしいから」と日本語で話した。
《こうもり》からもう2曲。「夜会は招く」を福井敬、「侯爵様あなたのようなお方は」を幸田浩子。


後半は下野竜也指揮東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で堀内康雄、中村恵理、錦織健などのオペラ歌手がアリアを歌った。藤原歌劇団合唱団や二期会合唱団の出演もあってホールも盛り上がった様子。

世界的なメゾソプラノ歌手藤村実穂子がR.シュトラウスの《ナクソス島のアリアドネ》からアリアを圧倒的な歌唱力で熱唱した。
彼女は大晦日のEテレの2時間半に亘る〈クラシックハイライト2013〉として1年を振り返っての番組の中で、チョン・ミョンフン指揮フランスのオーケストラとの共演で《カルメン》からアリアを数曲歌うのを聴いたばかりだった。今日の日本でのコンサート出演は意外性があり注目して傾聴した。

最後に本日の出演者全員で《椿姫》より「乾杯の歌」をグラスを手にして高らかに歌って今年のオペラ・コンサートが華やかな舞台での大合唱で終わった。
来年からこのオペラ・コンサートの番組は見逃さないようにしたい。

ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート2014

毎年恒例のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートの生中継を見ている最中である。ヨハン・シュトラウスⅠ世、Ⅱ世やヨーゼフ・シュトラウス以外の初めて聞く名前の作曲家の作品も紹介されている。楽器演奏しながら歌う場面もあったのは興味深かった。
今年の指揮者ダニエル・バレンボイムはベルリン・シュターツカペレを率いて05年にKitaraに登場し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を弾き振りしたのを思い出す。バレンボイムをピアニストとして親しんでいたので、ピアノを弾いてくれたことが当時は嬉しかったものである。
バレンボイムは現在では世界最高の指揮者の一人でウイーン・フィル・ニューイヤーコンサートには09年に続いて2回目の登場。平和を祈念する曲を柱にしたプログラム作りで、ユニークで活気のある演奏会となった。

ウィーン・フィルは今日では毎年のように来日して、昨年のティ―レマン指揮の公演が30回目だったようである。私はKitaraが開館した年の97年に初めて聴く機会があって感激したのを昨日のことのように鮮明に覚えている。オーケストラとして聴いたのはその時だけである。91年からのPMFで毎年のようにウィ―ン・フィル奏者が札幌を訪れているので、キュッヒルを始め顔なじみの奏者がかなりいる。

今日の生中継で前半の演奏終了後の休憩時間中を利用して感動的なシーンが放送された。数名のウィーン・フィル奏者が東日本大震災の被災地を訪れて音楽で貢献しようとして活動している様子が放映された。ヴァイオリンのダニエル・フロシャウワー、ヴィオラのハインリッヒ・コル、コントラバスのミヒャエル・ブラデラー、クラリネットのペーター・シュミ―ドルたちが岩手県の山田町の中学校で演奏活動を行ない、数百名の全校生徒が合唱して、お互いに交流していた。ブラデラーが日本語で挨拶して中学生を激励している場面は微笑ましく心を動かされた。昨年のPMFやトヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンでも札幌で活動し、今年もまた来札する演奏家を身近に感じてブログに書いてみようと思った次第である。
プロフィール

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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