2013年 私のコンサート トップ・テン

2013年1月~12月までの1年間で73回聴いたコンサートの中から最も印象に残ったものを10選んでみた。(コンサートの会場は弦楽四重奏演奏会以外はすべて札幌コンサートホールKitara大ホール)

エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団(2月4日)
 〈曲目〉ベートーヴェン:劇付随音楽「シュテファン王」序曲、交響曲第7番
     ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

ロリーン・マゼール指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(4月14日)
 〈曲目〉レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
     パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番(ヴァイオリン独奏:五嶋龍)
     ベートーヴェン:交響曲第7番

佐渡裕指揮BBCフィルハーモニック ピアノ:辻井伸行 日本ツアー2013(4月25日)
 〈曲目〉メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」序曲
     ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
     ベルリオーズ:幻想交響曲

アンネ=ゾフィ・ムター ヴァイオリン・リサイタル(5月31日)
 〈曲目〉モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.379、 
      シューベルト:幻想曲 ハ長調 D.934      
      ルトスワフスキ:パルティータ、  サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番

札幌交響楽団第560回定期演奏会 指揮/ドミトリー・キタエンコ(6月22日)
 〈曲目〉ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:ヴィヴィアン・ハーグナー)
     チャイコフスキー:マンフレッド交響曲

PMFウイーン弦楽四重奏演奏会(7月9日Kitara小ホール)
 〈出演〉ライナー・キュッヒル(Vn)、ダニエル・フロシャウアー(Vn)、
     ハンス・ペーター・オクセンホーファー(Va)、 ヴィルヘルム・プレーガル(Vc)
      沢木良子(P)
 〈曲目〉ハイドン:弦楽四重奏曲第38番「冗談」
     モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番「プロイセン王第1番」
              ピアノ四重奏曲第1番K.478
     ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第15番

内田光子ピアノリサイタル (10月30日)
 〈曲目〉モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K.332、 アダージョ ロ短調 K.540 
     シューマン:ピアノ・ソナタ第2番 ト短調
     シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番 ト長調 D.894

パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマ―フィルハーモニー管弦楽団(11月21日)
 〈曲目〉ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」序曲、 交響曲第4番、 交響曲第3番「英雄」

及川浩治 ピアノ・リサイタル《不滅のベートーヴェン》(11月29日)
 〈曲目〉ソナタ第8番「悲愴」、ソナタ第14番「月光」、ソナタ第21番「ワルトシュタイン」
     「エリーゼのために」、ソナタ第17番「テンペスト」、ソナタ第23番「熱情」

ミッシャ・マイスキー チェロ・リサイタル2013(12月4日)
 〈曲目〉バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番、 シューマン:民謡風の5つの小品
     シューベルト:アルぺジオーネ・ソナタ、 ドビュッシー:チェロ・ソナタ

*「札響第563回定期演奏会」(指揮/ラドミル・エリシュカ、チェロ/石川祐支)のドヴォルジャーク:チェロ協奏曲、ブラームス:交響曲第3番のコンサート(10月12日)、尾高忠明指揮の「戦争レクイエム」(9月21日)や「札響の第9」(12月15日)も印象に残るコンサートであったが、札響のコンサートが重なるので止む無く外した。
            




     
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キエフ国立フィルハーモニー交響楽団

ウクライナのキエフ国立フィルハーモニー交響楽団はニコライ・ジャジューラに率いられて度々Kitaraに出演している。2007年に≪チャイコフスキー二大協奏曲の夕べ≫と銘打って来札。アリス=沙良・オットとジョセフ・リンがソリストを務めた魅力的なプログラムであったことを鮮明に記憶している。昨日のプログラムにあった「くるみ割り人形」も演奏した。
2度目の09年はソリストがジョセフ・リン(現在はジュリアード弦楽四重奏団の第1ヴァイオリン奏者)で「メンデルスゾーンの協奏曲」。「チャイコフスキーの交響曲第5番」、「ハチャトリアンの仮面舞踏会」を演奏。「仮面舞踏会」より《ワルツ》が浅田真央のフィギュアスケートの曲目に使われていたので、日本ツアーでの選曲がうまいと印象に残っていた。

このオーケストラの創設は1985年。東欧における名門オーケストラの一つとして評価されている。
今回のコンサートでは当初、ニコライ・ジャジューラが指揮する予定になっていたが、来日不能でアンドレイ・アニハーノフに変更になった。

アンドレイ・アニハーノフ(Andrey Anikhanov)は1965年サンクトペテルブルグ生まれ。レニングラード国立音楽院で指揮をアレクサンドル・ドミトリエフ(77年からサンクトペテルブルグ響の芸術監督・首席指揮者。同響を率いて03年にKitara登場)などに学ぶ。89年、サンクトペテルブルグ国立ミハイロフスキー歌劇場管弦楽団の常任指揮者に就任。91年から同楽団の日本公演の指揮者として活躍。92~08年、同楽団首席指揮者。11年からロストフ国立歌劇場首席指揮者。これまでに数多くのオーケストラに客演しており、09年に東京ニューシティ管弦楽団の客演指揮者就任。

12月23日(月・祝)15時開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/アンドレイ・アニハーノフ
管弦楽/キエフ国立フィルハーモニー交響楽団
独唱/アッラ・ロディナ(S), オルガ・タブリナ(Ms), オレクサンドル・ディアチェンコ(T), セルギイ・マゲラ(Bs)
合唱/札幌アカデミー合唱団
合唱指揮/長内勲

〈プログラム〉
  ベートーヴェン:「エグモント」序曲 Op.84
          交響曲 第9番 ニ短調 Op.125 「合唱付き」

ゲーテの戯曲「エグモント」のための劇付随音楽。今日では序曲のみが単独で演奏される。エグモント伯爵の祖国愛、強い信念、純真な愛などが表現されている。力強い序曲として演奏機会の多い曲。

「第九」は12月15日の『札響の第9』のブログで書いたので重複は避ける。
外国のオーケストラが「第九」の公演を12月に札幌で行うのはこの四半世紀では初めてである。半年前からチケットが発売されて一番安い席は早々に完売であった。その後のチケットの売れ行きは芳しくなかったようで、本日は空席が多くて6割程度の客の入り。札響よりオーケストラの規模が大だったが、座席がステージ横のRA席であったこともあり、札響の演奏と比べて強い印象を受けなかった。演奏終了後にあちこちから“ブラボー”の声が上がったので、感動した人は結構いたようである。
オーケストラの演奏は弦楽器、管楽器ともに力強く、バスの歌声も素晴らしかった。合唱団は単独の出演だったので合同合唱団より迫力が無かったのは止むを得ない。独唱がオーケストラや合唱に比して、聞こえ難かったのは座席のせいだろう。指揮者の指の動きが巧みで、オペラの経験も豊富なようで日本での今後の活躍も期待される。

キエフ国立フィルは27日、28日の東京オペラシティコンサートホールでの公演が残っている。28日は今日の公演と同じプログラム。
尚、今年の年末に他にも外国のオーケストラによる「第九」の公演が行われるのは注目に値する。ウクライナ国立歌劇場管弦楽団が28日は横浜みなとみらいホール、29日と30日は東京オペラシティコンサートホールで公演を行う。

大晦日に恒例のベートーヴェン全交響曲連続演奏会が今年の「第九」の締めになる。小林研一郎指揮岩城宏之メモリアル・オーケストラが東京文化会館で伝統になった公演を行う。いつの日か聴いてみたいコンサートである。

2013年に自分が聴くコンサートは今日が最後となった。
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Kitaraのクリスマス 2013

Kitaraのクリスマスは札幌コンサートホールKitaraが主催する毎年恒例のコンサートである。ホール主催の『クリスマスオルガンコンサート」も毎年行われているので、最近はどちらか1つのコンサートを選んでいる。最近では06~08年はオルガンを聴いたが、ここ数年はオーケストラの方を選んでいる。

「Kitaraのクリスマス」は井上正義が出演する年が続いたが、昨年は広上淳一が初めて登場した。今年もマエストロ広上が再び登場。管弦楽は札幌交響楽団。12月22日(日)午後5時開演。公演終了後にレストランで食事をしたり、ホワイト・イルミネイションを楽しんで夜を過ごす人々に配慮した時間設定と思われた。

〈プログラム〉
 ラールソン:「田園組曲」作品19より ロマンス
 チャイコフスキー:弦楽合奏のセレナード ハ長調 作品48
 チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」作品71a
 アンダーソン:クリスマス・フェスティバル

前半の2曲は弦楽器だけの曲。ラールソン(1908-86)はスウェーデン出身の作曲家。マエストロ広上がノールショッピング響首席指揮者を務めていた時(1991-95)に同響のメンバーから教えられた曲だそうである。広上の編曲で、北欧の白い冬の美しさが表現されている。ノールショピング響とレコーディングも行った曲で、札幌の冬景色に相応しいとして選曲したと言う。ロマンティックで綺麗な曲であった。
司会者からスウェーデンのクリスマスの過ごし方を訊かれて、〔スウェーデンのクリスマスは質素で、何にもしないで家族団らんをしながら過ごす〕と広上は語っていた。家族団らんをしながら窓から見渡す北欧の白夜の情景を想像しながら聴いた。

チャイコフスキーの「弦楽セレナード」はドヴォルジャークの曲と並んで有名。つい先日もスーク室内オーケストラが演奏した馴染みの曲。第1楽章が終ったところで拍手が起こるくらい聴く者の心を揺さぶるドラマティックな曲。第2楽章が魅惑的なワルツ。第3楽章は哀愁に満ちた緩徐楽章。第4楽章はロシアの民俗舞曲を使ったフィナーレ。何度聴いても美しい曲で飽きない。

休憩時間にカフェでアルザス・ワインを飲んでみたが、いつも飲むワインより甘かった。ホワイエでは20代の若いカップルが多く目について、通常目にする年輩の客より明らかに若い人たちが多かった。
今日の大ホールの客席は空席が多く、6割程度の入りだった。昨年の『Kitaraのクリスマス』は満席状態で、確かチケットは完売だった筈。昨年はソリストに清水和音を迎え、オルガニストの出演もあって盛り上がった。昨日午後3時開演のクリスマス・オルガン・コンサートのチケットは完売だった。今年の客の少なさは開演時間が一番の原因と思われる。(昨年は午後3時開演。)二日連続してコンサートに来る人は多くないと思うから、オーケストラを聴きたい人でも開演時間の関係でオルガンの方に流れた公算がある。とにかく日曜日の午後5時開演は極めて珍しい。多分、来年は見直されるのではないだろうか。

プログラムの後半はチャイコフスキーの三大バレエ音楽のひとつ「くるみ割り人形」。クリスマス・イヴの話。プレゼントに貰った人形を兄に壊されたしまった少女が夢を見る。人形が王子に変身して、少女は王女となってお菓子の国に案内されて歓迎されるというストーリー。
バレエ音楽のなかの8曲が以下のような演奏会用組曲として演奏される。
1.小序曲 2.行進曲 3.こんぺい糖の踊り 4.ロシアの踊り(トレパーク) 5.アラビアの踊り
6.中国の踊り 7.あし笛の踊り 8.花のワルツ
09年12月20日にウクライナのキエフ・バレエが札幌で上演されたが、その時のバレエの情景を想い起こしながら美しい音楽を聴いた。広上の踊り出すような雰囲気の絶妙な指揮ぶりを見ながら、ワインを飲んで心地良い気分になったのか《花のワルツ》では一段と気分が高揚した。
組曲で使われた〈チェレスタ〉、〈ハープ〉の音色も心に響いた。

最後のプログラムは昨年と同じ曲。いくつものクリスマスソングを連ねてアレンジした曲

演奏終了後にクリスマス・プレゼントということで最後に2曲。
坂本龍一:「八重の桜」より メインテーマ
グル―バー:きよしこの夜
「きよしこの夜」は会場の聴衆が全員で歌ってコンサート終了。

Kitaraで人気のコンサートとして定着していると思ったが、客の入りが悪くて華やかな雰囲気には包まれなかったのは少々残念であった。7時過ぎ、あいにく小雪が深々と降る日で急いで家路に着く人々の列が地下鉄駅まで続いた。








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尾高忠明指揮『札響の第9』 (2013)

札響特別演奏会2013 『札響の第9』

日本では12月に入ると各交響楽団が『第九』の演奏を繰り広げるのが恒例になっている。プロのオーケストラや歌手による演奏だけでなく、市民合唱団がオーケストラを従えて「歓喜の歌」を熱唱する。
月刊クラシック音楽情報誌《ぶらあぼ》の公演情報を基に演奏の実態を大雑把に調べてみた。

2013年12月の日本各地での『第九』の公演予定回数 187回
 (東京・関東 90、近畿 52、北海道・東北 13、中部 16、中国・四国 7、九州・沖縄 9)
 *プロのオーケストラ 102回、  アマチュアのオーケストラ 85回
 *公演回数の多いオーケストラ
   日本フィル 10回、大阪フィル、関西フィル 各8回、読売日響、京都響 各7回、
   東京響 6回、 新日本フィル、群響、N響 各5回
 *合唱団主体で第4楽章のみの演奏会も17回(?)は実施されたと思われる。

『札響の第9』のコンサートは毎年12月に2公演。
今年度は14日(土)、15日(日)で両日とも15時開演。
私は2日目の公演を聴いた。
 
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 op.125 「合唱つき」
指揮/尾高忠明、 管弦楽/札幌交響楽団
独唱/大隅智佳子(S), 小川明子(Ms), 与儀巧(T), 与那城敬(Br)
合唱指揮/長内勲 合唱/札響合唱団、札幌アカデミー合唱団、札幌放送合唱団

数日前は積雪ゼロの札幌も今日のコンサートに出かける時は吹雪模様。中島公園も一面冬景色。悪天候のせいか、Kitaraの大ホールも客席が埋まるまでに客足が鈍かった。開演時間迄にはようやく9割強の聴衆が集まった。

ベートーヴェンの最後の交響曲となった「第9番」は1824年、53歳の時の作品で、完成に6年かかった大作である。この名曲の正式なタイトルは《シラーの頌歌「歓喜に寄す」による終結合唱を持つ、大オーケストラ、4声の独唱と4声の合唱のために作曲され、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンによって、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世陛下に最も深い尊敬の念を持って献呈された交響曲、作品125》となっている。
第1楽章は壮大なスケールを持つ楽章、第2楽章のスケルツォはリズム感が力強い。第3楽章は抒情的で平和な感じのする美しい楽章。第4楽章は凄まじい序奏に続いて、これまでの3つの楽章の主題の断片が現れてから、「歓喜の歌」が高らかに歌われて、力強いフィナーレへ。

バリトンの与那城(Yonashiro)が「おお、友よ、このような音ではなく、私たちはもっと快い、もっと喜びに満ちたものを歌い出そうではないか。」と歌い出した時はゾクっとするほど心に響いた。4人のソリストたちは二期会会員でオペラ歌手として名高い。さすが一流歌手として堂々たる歌いぶりであった。
今回は合唱団のレヴェルの高さに感動した。ヴェテランの領域に入る人たちの迫力ある合唱がとても素晴らしかった。特に男声合唱が印象的であった。
マエストロ尾高の第4楽章の指揮ぶりは力強くて、オーケストラの響きだけでなく、独唱、合唱の総合的なまとまりを作り上げていると思った。「第九」の醍醐味をたっぷり味わえた。

今回、座席を1階席一番後方のほぼ中央に選んだことが結果的に良い鑑賞ができた要因のように思えた。座席の他に、今日のコンサートに臨む心構えも好印象に繋がったように感じた。今迄数多く聴いた「第九」のうちで最も満足感を味わったコンサートの1つになった。

1950年代、カラヤン指揮のベルリン・フィルの初来日の折に「第九」の演奏会があった時の思い出を語ったベルリン・フィルの元クラリネット奏者、カール・ライスターの話。日本の合唱団がドイツ語で歌い出した時はビックリ仰天したそうである。ドイツ語で歌うのは、今日では当たり前と考えられているが、日本の音楽界も50年ほど前とは隔世の感がある。

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辻井伸行 日本ツアー 2013~14

辻井伸行 日本ツアー《ショパン&リスト》

2013年11月末から2014年3月末まで辻井伸行の全国ツアーが19公演予定が組まれている。半年ほど前からチケットの先行予約販売が行われていて各地で早々に売り切れの状態である。未だ辻井ブームが収まらない。

2009年の第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで日本人として初優勝して、ブレイクしてからの日本国民の辻井のコンサートにかける期待は凄まじい。社会現象が起きたと言っても良い。
私が最初に彼のリサイタルを聴いた08年はそれほど知名度が高くなかった。09年のリサイタルのチケットは、彼が優勝して大評判になる前に購入していた。その後、チケットの販売方法が変って座席が指定できないので購入しないことがあった。それでも12年は2回、13年も2回、コンサート通い、今回はほぼ希望通りの席が手に入った。辻井のコンサートは今回が6回目である。
今回は12年1月以来のリサイタルでショパンとリストがたっぷり楽しめた。

辻井伸行の経歴は今更書くまでもないが、クライバーン・コンクール以来の国際的活躍は目覚ましく、彼の音楽性と演奏技術もどんどん向上しているとの評価が高い。11年11月にはカーネギー・ホールの招聘でリサイタル、12年5月にはアシュケナージ指揮フィルハーモニア管の定期演奏会でロンドン・デビュー、7月にはゲルギエフの招きでサンクトぺテルブルグの白夜音楽祭へのデビュー、13年7月には英国最大の音楽祭「BBCプロムス」にデビュー。国際的にも注目されるピアニストに成長している。映画音楽も担当して、作曲家としても活躍している。

日時:2013年12月11日 午後7時開演
会場:札幌コンサートホールKitara大ホール

〔演奏曲目]
ショパン:ノクターン 第20番《遺作》
     ノクターン 第18番 
     アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
     ピアノ・ソナタ 第2番《葬送》
リスト:エステ荘の噴水
    ペトラルカのソネット 第104番
    愛の夢 第3番
    ラ・カンパネラ
    イゾルデの愛と死
    グノーの歌劇《ファウスト》からのワルツ

今回のツアーは辻井のソロ・コンサートでショパンのエッセンスが盛り込まれた作品とリストの超絶技巧を駆使した作品。

「ノクターン20番」(1830年作)は映画「戦場のピアニスト」で使われた曲で忘れ難い名曲となっている。先日この曲を及川浩治がアンコール曲で弾いた。同じ遺作で21番がアンコールで弾かれることがこの数年多かった。20番のメロデイが流れると、いつも映画の場面が目に浮かぶ。美しい曲であるが、いろいろな感情が心の中を行き交う。

《華麗なる大ポロネーズ》はポーランドの民俗舞踊の輝かしい音楽を「アンダンテ・スピアナート」の滑らかで、ゆっくりとした音楽を序奏にして組み合わせた曲で、演奏機会の多い人気曲である。

「ピアノ・ソナタ第2番」を辻井は“コンサートで弾くのが夢だった”と語っている。第3楽章の葬送行進曲だけが、全体の曲の完成2年前に作られていたようである。暗くて重い雰囲気の曲を、辻井は丁寧にゆっくりとしたテンポで曲を紡ぐ。長い行進曲の後の第4楽章は独創的な短い楽章のフィナーレ。

聴衆は行儀が良く、反応もおとなしかった。緊張感が漂っていたのか、静かな雰囲気で何となく盛り上げ方が不足する感じがした。

後半の最初はリストの《巡礼の年》から2作品。「エステ荘の噴水」は《巡礼の年 第3年》(全7曲)の第4番。エステ荘の噴水の水しぶきや煌めきを表現した作品。ドビュッシーに間違いなく影響を与えた作品と解る印象的な曲。「ペトラルカのソネット 第104番」は《巡礼の年 第2年「イタリア」》(全7曲)の第5番。ペトラルカの詩集に基づく曲で恋の喜びや苦しみが描かれていて、今までに数回アンコールに聴いたことがある。

「愛の夢 第3番」と「ラ・カンパネラ」は言及の必要が無いほど、リストの曲として演奏頻度が高く人々に広く親しまれている。誰でもが耳にしたことのあるメロディ。超絶技巧を要する演奏に、おとなしかった聴衆も歓喜の表情でブラボーの声もあがった。

歌劇の一部を編曲した曲が2曲。ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》第3幕で歌われる「イゾルデの愛と死」。ワーグナーのこの曲は聴いているが、リストの編曲を聴くのは初めてかも知れない。ドラマテイックな音楽。「グノーの歌劇《ファウスト》からのワルツ」はCDを持っているので、予め聴いてみた。この曲は「リゴレット・パラフレーズ」などと並んで有名なパラフレーズ(編曲)であり、超絶技巧の有様はやはり生で見て聴くのは大違いであった。
最後の曲として聴衆を感動させるのに充分な曲。一段と大きな拍手とブラボーの掛け声があがった。

今日では当たり前になっている交響曲や歌劇の鑑賞が出来なかった時代に、リストが交響曲や歌劇をピアノ曲に編曲して人々に紹介していた偉大さを改めて痛感するのである。

アンコールに応えて、ショパン:ノクターン 第8番
もう一曲演奏の前に辻井から言葉があった。“2011年3月11日の東日本大震災の際に音楽家としてあげれることを考えて作った曲を演奏します。”
辻井伸行:それでも生きてゆく

ソロ・リサイタルでは最近は稀な満員の客席。P席も3階席も満員状態。ただ5ケ月前に完売になってしまって、演奏会当日に来場できない人が出るのは止むを得ない。それでも完売で50席以上空席の時もあるので、今日はそれほど空きが目立たないようであった。
客層も幅広くて、小さな子供から高齢のご夫婦まで全体として女性客の姿が多く目に付いた。
上品なコンサートと言えば、言えなくもないが、もう少し熱狂的な雰囲気になっても良かったのではないかと思った。

辻井の演奏会は全国どこもチケットが完売。12月、3月と強行スケジュールが続く。毎回、真摯な態度で演奏に取り組み全力を尽くしている様子であるが、くれぐれも健康に留意して頑張ってもらいたいと思う。コンサートでは彼の心にどんどん響く応援が展開されることを切に望みたい。
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札幌交響楽団第565回定期演奏会(12月)

2013年12月の札幌交響楽団定期演奏会
 指揮/アラン・ブリバエフ
 ヴァイオリン/川久保賜紀

アラン・ブリバエフ(Alan Buribayev)は1979年、カザフスタン生まれ。99年クロアチアのロヴロ・フォン・マタチッチ指揮者コンクール、01年アントニオ・ぺドロッテイ指揮者コンクールに優勝して脚光を浴びた。スウェーデンのノールショピング響(06~11)、ダブリンのRTE国立響(10~ )の首席指揮者。これまでにヨーロッパの多くの主要なオーケストラと共演を重ねている。仙台フィル、東京響、九州響など日本のオーケストラの客演指揮でも評価が高い。札響には11年2月の名曲シリーズでの初共演に続いての2回目の共演。14年4月、日本センチュリー響の首席客演指揮者に就任予定。(*12月22日の{Kitaraのクリスマス}で札響を指揮する広上淳一は91~95年、ノールショピング響の首席指揮者を務めた。)

川久保賜紀(Tamaki Kawakubo )は1979年、ロサンゼルス生まれ。ジュリアード音楽院でドロシー・ディレイと川崎雅夫に、ドイツ・ケルン音楽大学でザハール・ブロンに師事。世界のヴァイオリン界の二大師匠とも言われるディレイとブロンの指導を受けて実力をつけ、97年にエヴリー・フィッシャー賞を受賞。98年にクリーヴランド管と共演。以降、数々の北米メジャー・オーケストラと共演。
01年、スペインのサラサーテ国際ヴァイオリン・コンクール優勝。02年、チャイコフスキー国際コンクール最高位(1位なしの2位)となって、日本のマスメディアで大きく取り上げられた。
初来日は97年。国内主要オーケストラと共演の他、海外オーケストラの日本公演のソリストとして活躍。
川久保のKitara初登場は01年11月のヴァイオリン・リサイタル。ドイツ3大Bとサラサーテの作品を演奏(ピアノ:江崎昌子)。札響とは05年、08年に続いて今回3度目の共演。ベルリン在住。


〈本日12月7日昼公演のプログラム〉

ベルリオーズ:歌劇「トロイ人」より“王の狩と嵐”
ショーソン:詩曲 op.25 ~ヴァイオリンとオーケストラのための
ラヴェル:ツィガーヌ ~ヴァイオリンとオーケストラのための演奏会用狂詩曲
プロコフィエフ:バレエ「ロメオとジュリエット」より

べルリオーズ(1803~69)のオペラに関する知識は全く無い。「トロイアの人々」(=トロイ人)というオペラが昨年のMETのプログラムに載っていて、トルコ旅行で訪れた「トロイの木馬」と関連があるのかなと関心を抱いた程度であった。
静かな森に角笛が響き渡り、狩が始まって嵐が襲ってくる様子が、ホルンを中心とした管楽器や打楽器で演奏された。ブリバエフは今シーズンの札響の客演指揮者の中で一番若い指揮者であるが、大きな身体を使っての若々しい豪快な指揮ぶりが印象的であった。札響演奏歴:今回が初演。

フランスの作曲家ショーソン(1855~99)はベルギーの大ヴァイオリニスト、イザイが1896年に初演。素人でもこの「詩曲」はヴァイオリン曲として難曲と解る作品。詩情にあふれた曲。ハープも美しい響きを奏でた。

「ツィガーヌ」とはロマ(ジプシー)を意味するタイトルで、ラヴェル(1875~1937)はハンガリーの女性ヴァイオリニストのために1924年に作曲した。10分程度の曲の半分がヴァイオリン独奏。冒頭の挑戦的で長いカデンツァはロマのヴァイオリニストの即興的な雰囲気。高度な演奏技術が必要なことが判る。さすが川久保の力量が発揮された。五嶋龍が得意とする曲でもある。
08年に川久保賜紀はチェリストの遠藤真理、ピアニストの三浦友里枝とトリオを結成。室内楽でも活躍。

ソリストのアンコール曲は「バッハ:無伴奏パルティ―タ 第3番ブーレ」。

シェクスピアの悲劇を素材にしてプロコフィエフ(1891~1953)がロシア革命が始まった翌年の1918年にアメリカに亡命した後、1932年に祖国に戻って復帰後の初の大作がバレー音楽「ロミオとジュリエット」。文学や映画などでストーリーは知っていても、音楽の第1組曲全7曲と第2組曲全7曲のうち、8曲が抜粋されて演奏され、組曲の順序も違うので曲に親しんでいないと場面が一致し難い。デュトワ指揮N響のCDを持っているが、やはり曲順が違っていてメロディが自分には定着していないこともあって曲を堪能するまでには至らなかった。唯、各曲は洗練された音楽で単調でなく変化に富んでおり面白い。指揮者も特徴の出しやすい曲かと思った。
ブリバエフは小気味の良いメリハリの効いた指揮ぶりであり、しなやかな手つきで各奏者への細かな指示を出していたように見えた。彼はオペラ指揮の経験もありそうで、俊英の指揮者としてこれからの活躍が期待できる逸材ではなかろうか。とにかく若々しくてエネルギーが与えられる指揮者である。

今日のプログラムは昨夜、日本で行われたフィギュア・スケイティングのグランプリ・ファイナル男子で羽生結弦が「ロミオとジュリエット」の曲に乗り、素晴らしい演技を見せて優勝した情景が思い浮かんでグッドタイミングであった。

*演奏会終了後、札響を応援する「札響くらぶ」のXmasパーティがテラスレストランKitaraで行われた。札響くらぶは1995年に創立された組織で会長職は札幌市長就任後も上田氏が務めている。私は数年前に加入したが、今晩は偶々席が上田会長と隣り合わせになって、しばらく音楽の話などで親しく懇談できる機会があった。他の数名の会員やヴィオラ奏者の青木さんとも交流が出来て楽しいひと時を過ごした。



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ミッシャ・マイスキー チェロ・リサイタル2013

ミッシャ・マイスキー(MISCHA MAISKY)は1948年、旧ソ連、ラトヴィア共和国のリガ生まれ。レニングラード音楽院に入学、モスクワ音楽院でロストロポーヴィチに師事。旧ソ連全土でコンサート活動。反体制的人物とみなされて獄中に繋がれ、2年余り演奏活動が出来なくなり強制労働を余儀なくされた。72年11月、出国許可が下りてアメリカに渡り、ピアティゴルスキーに師事。伝説のチェロの巨匠二人に師事した唯一のチェリスト。73年、イスラエルに移住。カサド国際チェロコンクールで優勝。ピッツバーグ交響楽団との共演でカーネギーホール・デビュー。
75年以降、アメリカ及びヨーロッパのトップ・オーケストラとの共演や室内楽の超一流演奏家との共演を続けている。初来日は86年、以降毎年のように来日して公演を行なっている。ベルギー在住。

Kitaraでの初登場は開館した翌年98年5月、マリス・ヤンソンス指揮ピッツバーグ交響楽団の演奏会。ソリストとして≪シューマン:チェロ協奏曲≫を弾いた。

2度目のKitaraは02年10月、リサイタルで≪ベートーヴェン:「魔笛」の主題による7つの変奏曲≫、≪シューベルト:アルぺジオーネ・ソナタ≫、≪メンデルスゾーン:チェロ・ソナタ第2番≫、など。
待望のリサイタルで彼の弾くチェロの魅力に心を揺さぶられて、直ぐベートーヴェンのソナタや当日の演奏曲目のCDを購入して聴いたのを思い出す。この時のピアニストがセルジオ・ティエンポで、同年発売されていたメンデルゾーンのソナタが入ったマイスキーの輸入盤を一足早く手に入れていたことに当日買ったプログラムを後で読んで気付いた。他愛もない話だが輸入盤が日本盤より千円以上も安かったのが今でも不思議に思っている。

3度目に聴いたのは、来日25周年を記念しての11年10月のコンサートであった。〈ミッシャ・マイスキー チェロ・コンサート〉として娘さんのリリーと共演した。グラナドス、アルベニス、ファリャ、カサドの曲をピアニストがチェロと対等に渡り合っていたのが印象に残っている。ヴァイオリニストの息子さんが急遽出演できなくて、父がバッハの無伴奏チェロ組曲第1番を演奏した。

〈本日のプログラム〉
 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV.1009
 シューマン:5つの民謡風の小品集 Op.102
 シューベルト:アルぺジオーネ・ソナタ イ短調 D.821
 ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ

マイスキーは15年前と変わらぬ姿でステージに登場。衣装も独特なもの。音楽に対する姿勢も一貫して変わってない印象。前回はプログラム変更で「バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番」を弾いたが、今回は第1番と並び最もよく演奏される第3番。CDで聴くカザルスやヨーヨー・マとは違った個性的な演奏。チェロの魅力が存分に生かされた音色が朗々とホールに響き渡る様にウットリ。まるで楽器で歌を奏でているようである。ロマン派の作品であるかのような感じを受ける演奏がミッシャ・マイスキーの特徴かも知れない。

シューマンの民謡風のメロディは変化に富んで面白かった。第4曲と第5曲のピアノとチェロのやり取りは迫力があった。ピアノは前回と同じくミッシャの娘、リリー・マイスキー(Lily Maisky)。有名なヨーロッパの音楽祭などにも参加し、ソロ・室内楽の両方で活躍している様子。

後半の「アルぺジオーネ・ソナタ」は去る3月のピリス&メネセスのコンサートで聴いた。その経験があって今回は鑑賞の仕方が向上したように思った。チェロより音域の高いアルぺジオーネの特徴が判っていたので、低音域の楽器とは違う聴き方が出来た。もちろん、マイスキーの演奏に魅せられたと言っても良い。正直に言って、アルぺジオーネという楽器よりチェロの楽器の持つ美しさの方が断然好きである。

ドビュッシーの「チェロ・ソナタ」は耳にしたことが無かったと思うが、ピアノ曲から想像できる彼独特の変化に富んだメロディ。フランス風のエスプリが巧みに表現されていた。ピッチカート奏法などの幅広い奏法も印象的であった。「ピアノとチェロのためのソナタ」という題名が相応しい曲。

万雷の拍手に応えてアンコール曲を5曲も演奏してくれた。
 ①スペイン民謡/カザルス編曲:鳥の歌
 ②シチェドリン:アルべニア風のスタイル
 ③リヒァルト・シュトラウス:朝に
 ④ファリャ:火祭りの踊り
 ⑤ブラームス:ヒバリの歌

1曲は弾いてくれると期待していたが、ブラボーの掛け声などの歓声が高くなり、一段と大きな拍手に応えて次々と曲を披露。観客の反応に疲れも忘れて心も高揚したのか凄いサービス。楽しみながらの情熱的な演奏が素晴らしい。演奏終了後、サイン会に並ぶ人の長い列が続いていた。
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千住真理子&スーク室内オーケストラ

千住真理子は全日本学生音楽コンクール小学生の部全国1位。NHK交響楽団と共演し12歳でデビュー。日本音楽コンクールに最年少15歳で優勝。パガニーニ国際コンクールで最年少で入賞して当時日本中の話題を集めた。慶応義塾大学卒業後、今は亡き巨匠シノーポリに認められて、87年ロンドン、88年ローマ・デビューを飾った。その後、国内外の音楽活動のほか多彩な活動で注目を浴びた。
Kitaraには01年プラハ交響楽団との共演で初登場して、メンデルスゾーンの協奏曲を熱演。翌年は日本フィルと共演で来札した折はヴァイオリンの小品名曲集。20代の頃、スランプに陥っていた時期があったようだが、02年秋、ストラデイヴァリウス「デュランテイ」との運命的な出会いが彼女の転機となったと言われている。その後の演奏活動はより活発になり、プラハ響、ハンガリー国立フィル、ベルリン室内管、スーク室内オーケストラの日本ツアーのソリストとしても活躍を続けている。

05年にはベルリン室内管弦楽団とKitaraで共演。バッハの協奏曲などを演奏。昨年2月のワルシャワ国立フィルとの共演による「チャイコフスキーの協奏曲」の演奏では、久しぶりに千住の演奏に接して懐かしかった。今年1月にも、プラハ響のソリストとして「メンデルスゾーンの協奏曲」を華やかに演奏。

〈本日のプログラム〉
 グリーグ:ホルベルク組曲
 バッハ:アリオーソ
 カッチーニ:アヴェ・マリア
 ヘンデル:歌劇「リナルド」より“私を泣かせてください”
 クライスラー:愛の喜び
 バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
 チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調 op.48

たまたま所有しているCDの解説によれば、ノルウエーの作家・ホルベルク(1684-1754)の時代の音楽をグリーグ(1843-1907)がバロック様式でロマン派音楽らしい抒情味あふれる組曲に仕上げた。前奏曲、サラバンド、ガヴォット、エア、リゴドンの5曲から成る。
スーク室内オーケストラは弦楽器(第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1)+チェンバロ(バッハの協奏曲のみ)の小編成。

「アリオーソ」から「愛の喜び」までのヴァイオリン小品集を千住真理子がオーケストラと共に演奏。彼女の話によると、オーケストラと相談してクリスマス・シーズンに相応しい静かで、ゆったりとした曲ばかり選曲。彼女が持つ清楚さが全身から伝わる清潔感が溢れる清らかで美しい旋律がホール全体に広がった。昨日2日の朝日新聞夕刊の文化欄で千住真理子に関する音楽の記事が載っていた。彼女の亡き母への想いが伝わる記事だったが、今回の全国ツアーが《亡き母に捧げるコンサート》のような印象を受けた。
クライスラーの曲の演奏後の拍手喝采の大きさは良く知られた名曲の素晴らしい演奏と千住真理子ファンの多さを物語っていた。聴衆の感動が収まるのにしばらく時間がかかるほどであった。

前半最後のバッハの協奏曲はコンサート・マスター、マルティン・コスと共演。二つの独奏ヴァイオリンによる音の織りなす調べの美しさはこの上もない。

アンコール曲はパッヘルベル:カノン。馴染みの曲ではあったが、作曲家の名に親しんでいなかった。演奏形態も珍しくヴァイオリン3、チェロ1、コントラバス1だった。以前カセットで良く聴いていたことが判った。調べてみたら、原題は「三つのヴァイオリンと通俗低音のためのカノンとジーグ」。バッハ一家とも親交が深くて、バッハ自身にも音楽的影響を与えたらしい。

千住は前半だけのステージだったが、演奏の合間に巧みなトークも入って、話も簡潔・明瞭でヴァイオリン演奏と共に彼女の人間味も表れていて良かった。

後半のプログラム「弦楽セレナード」はチャイコフスキーが西欧のバロック音楽や古典派音楽を弦楽器によって表現した作品。ロシア風の哀愁、西欧風の優美さや華やかさが伴い、ドラマティックに曲が展開された。
アンコールに応えて〈ドヴォルザーク:ユモレスク〉。

12月に入って最初のコンサートであったが、心に静かに染み入る音楽に浸ることができて心地よい一夜であった。
 



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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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