デビュー5周年記念 牛田智大ピアノリサイタル

前回聴いた牛田智大のリサイタルがデビュー翌年の13年1月。14年6月にはヴラダー指揮ウィ-ン室内管と共演してショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏。17年2月の札響名曲シリーズでは高関指揮による同じコンチェルトを弾いた。今回が札幌での2度目のリサイタル。モスクワ音楽院ジュニア・カレッジ在籍中の17歳がKitaraのステージに登場したのも4回目となった。

2017年5月13日(土) 1:30PM開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 リスト:愛の夢 第3番
 ショパン:ノクターン第13番 ハ短調、 幻想即興曲 嬰ハ短調
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調「月光」
 J.S.バッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ ニ短調
 シューマン(リスト編):「献呈(君に捧ぐ)」
 リスト:ラ・カンパネラ、  ピアノ・ソナタ ロ短調

原曲の歌曲がピアノ用に編曲され、人々に最も親しまれているロマンティックなメロディで始まったコンサート。続いての、ショパンの「ノクターン第13番」は格調が高くスケールの大きい男声的な曲。曲名は直ぐ頭に浮かばなくても馴染みのメロディ。ショパンが書いた4つの即興曲の中で最初の「第4番」は甘美で感傷的な旋律で「幻想」のタイトルが付いた有名な曲。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」は幻想的な雰囲気を持つ叙情あふれるロマンティックな第1楽章が特に印象的。第2楽章に舞曲調の曲想が入り、情熱的な第3楽章で比較的短いソナタが閉じられる。

前半の最後の曲「シャコンヌ」はバッハの〈無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の最終楽章〉が原曲。近年、ピアノ用に編曲されたブゾーニの作品を聴く機会が多い。15分ほどの壮麗で雄大な調べが超絶技巧の力強い演奏で紡がれた。1階10番ど真ん中の座席から左手と右手が交差するピアニストの運指が良く見えた。牛田の腕の見せ所を充分に味わえた。
3階の客席を除いた1600席ほどの客席が大部分埋まったが、ショパン2曲続けての演奏の間や、ソナタの楽章間の拍手も起らずにピアニストが演奏しやすい環境を作っていたのには聴衆の配慮が感じられた。今回の演奏曲「シャコンヌ」には牛田の意気込みが籠っていて、演奏終了後に歓声が沸き起こった。

リスト編曲作品の中でも演奏される機会の多い「献呈」。シューマンがクララに献呈した歌曲集「ミルテの花」からの編曲。彼らの結婚を祝ってリストが贈ったピアノ曲。余りにも華麗で華やかな曲にクララが怒ったエピソードが伝わっている。

20歳の時にパガニーニの演奏を聴いて、“ピアノのパガニーニ”を目指したと言われるリスト。ピアノ用に編曲された〈パガニーニの主題による6つの大練習曲〉の第3曲「ラ・カンパネラ」。鐘の鳴り響く音の美しいメロディ。超絶技巧を要する曲として最も有名で親しまれている。

リスト唯一のピアノ・ソナタ。難曲ぞろいのリストのピアノ曲中で難曲中の難曲と言われる曲。リヒテルとアルゲリッチのCDで聴いてはいたが、2009年のケマル・ゲキチによるKitara小ホールでの演奏で強烈な印象を受けた。(*彼は14年にも札幌公演を行った)。10年ほど前の「音楽の友」誌で日本の現役ピアニストのアンケートの集計によると「ベートーヴェンのソナタ第32番」と「リストのロ短調」が最も演奏したい曲となっていたと思う。
ゲキチの圧巻の生演奏の様子は今でも眼前に浮かぶ。昨年は6月にアレクサンデル・ガジェヴ、10月にアリス=紗良・オットの「ロ短調」を聴いたばかりで、最近はこの曲を耳にする機会が多くなって鑑賞力も高まってきた感じがしている。人間の体と感覚と魂がピアノを通して表現する力を追求した音楽で何をくみ取るかは難しい。

演奏を始める前に牛田はマイクを取って、鑑賞の一助として「ファウストの4つのテーマ」を紹介した。初めて聞く有益な話で参考にして曲を鑑賞できた。①悪魔メフィストのテーマ、②ファウストのテーマ、③神のテーマ、④ファウストの恋のテーマ。リストの「メフィストワルツ第1番」も度々聴くので、同じテーマが入っていて意外に思った。今まで共通性に気づいていなかった。ゲーテの「ファウスト」はオペラでも取り上げられているが、文学と音楽の関係の広がりを実感した。
今まで漠然として聴き方をしていても、曲の持つ素晴らしさが何となく味わえたが、今回はピアニストの説明で非常に親しみが持てるリズムに一層心が躍った。
30分ほどの単一楽章が聴衆の集中力を持続させ、感動を呼び起こした演奏となった。
デビュー5年でこんな難曲に挑める能力を持つピアニストに驚きを禁じ得ない。

拍手大喝采に応えたアンコールは2曲。①ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲、②プーランク:エディット・ピアフを讃えて。

帰りにホワイエでKitaraボランティアとして10年にわたって親しくさせていただいた友人2人と久しぶりで出会った。レストランでお茶会をして時間の経つのも忘れて交流を楽しんだ。



 
スポンサーサイト

Kitaraあ・ら・かると 《3歳からのコンサートⅢ》(ピアノ:入江一雄)

コンサートでは普通は未就学児の入場は許可されていない。ゴールデンウィーク音楽祭など特別な折には、今回のように親子で楽しめる「3歳からのコンサート」も企画されている。今回は祝日の3日間Kitara主催のコンサートとして“トランペット”、“ハープ”、“ヴァイオリン”を用いる演奏会が開かれた。普段はこの種のコンサートに参加することはないが、最終日のヴァイオリンで注目のピアニストが出演するとあって急遽チケットを買い求めた。

ピアニストの名は入江一雄(Kazuo Irie)。彼は昨年から音楽雑誌を通して良く耳にする名前。東京藝術大学・同大学院首席で卒業・修了後、モスクワ音楽院に学び、ロシアのピアノの巨匠ヴィルサラーゼ(*2003年Kitara でテミルカーノ指揮サンクトペテルブルグ響と共演し、ラフマニノフの協奏曲第3番を演奏)に師事。帰国してから首都圏を中心に活躍している新進気鋭のピアニスト。3月末にはイギリスで研鑽を積んだチェリスト伊藤悠貴とデュオリサイタルシリーズを横浜みなとみらいホールで開始して、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番を弾いた。17年4月より東京藝術大学非常勤講師。

ヴァイオリンの瀧村依里(Eri Takimura)の名は初めて聞くと思ったが、入江をピアノ伴奏にするくらいの腕前の演奏家だと推測した。本日のプログラムのプロフィールで二人は1986年生まれで大学の同級生と判明。瀧村と入江は大学4年の2008年第77回日本音楽コンクールで共に第1位。瀧村は東京藝大卒業後、ウィーン国立音楽大学大学院を修了。現在、読売日本交響楽団首席奏者。

2017年5月5日(金・祝) 13:00~13:45  札幌コンサートホールKitara 小ホール
〈PROGRAM〉
 エルガー:朝の歌 作品15-2
 クロール:バンジョーとフィドル
 クライスラー:シンコペーション、 中国の太鼓
 ヴィヴァルディ:「四季」より “冬”
 モンティ:チャルダッシュ

ヴァイオリニストは東京のオーケストラに所属して、たぶんアウトリーチ活動も多く、トークに慣れているように思えた。幼稚園児を含めた小さな子ども相手に巧みにミニ・コンサートを進行した。
ヴァイオリン楽器の説明で、馬のしっぽが使われている部分をほどいた場面は私自身も初めて目にして興味深かった。鍵盤楽器のピアノ以外に子どもたちに知っている楽器の名を言わせるのも子どもの扱いに慣れていると感心した。
弦をはじく奏法を“ピッツィカート”と得意になって答える幼児もいて褒め方も上手い。弦を「こする」と「はじく」曲の説明に「バンジョーとフィドル」を演奏。この曲は初めて聴いて為になった。

彼女は昨日Kitara のステージで演奏してみた時に“Kitaraホールの音の響きの素晴らしさに感動した“と語った。話には聞いていても、実際に体験して述べる演奏家の言葉を通して改めてKitaraの有難さが身に染みる。

クライスラーの「中国の太鼓」はヴァイオリンの名曲として聴く機会が多い。ピアノが奏でる太鼓のリズムで打楽器のような音も作り出せる選曲と思われた。

ヴィヴァルディの曲を通して“どんな色を連想する?”を子どもたちに問うた。色の名前をいろいろ挙げるこどもたち、多くの色の名が挙がった。曲を聴いて、“寒い、暖かい?”と訊かれて、様々な答えが飛び交った。ヴァイオリニストは曲のタイトルを教えて、“どれも正しい”と言い、戸外の寒さと暖炉で暖まる室内の様子を話す。いろんな鑑賞の仕方を伝える説明にとても感心した。

最後にステージを降りて客席に近づきながらの演奏で、ヴァイオリンの様々な奏法(速く、遅く、弾く、はじくなど)が試みられる「チャルダッシュ」。

アンコールに「浜辺の歌」が演奏されたが、さすがに小さな子どもたちは聴きなれない曲で飽きた様子。小学校の高学年以上でないと、30分も過ぎると集中力を持続させるのは難しいようであった。予想以上に子どもたちはおとなしくコンサートに臨んでいたと思った。幼児を連れたお父さん、お母さんの姿は微笑ましかった。

今日は「こどもの日」で家族連れで賑わったKitaraあ・ら・かると。コンサートのほかに楽器体験コーナーやスタンプラリーなどのイベントもあってホワイエ、中庭なども大勢の人で賑わって盛況の様子は何よりであった。

天候に恵まれたゴールデンウイーク期間中に中島公園の桜も満開で、公園内のあちこちで花見をしながら家族で憩う姿は楽しそうであった。

コンサートの帰りに公園内のパークホテルで開催されている北海道書道展に立ち寄った。Kitaraの行き帰りにはホテルの横を通るが、地下にある書道展を見に行ったのは初めてである。妻が会友として初出品になったので立ち寄ったが、500点もの作品はなかなか見ごたえがあった。

※帰宅して「音楽の友」2008年12月号で第77回日本音楽コンクールのヴァイオリン部門とピアノ部門でそれぞれ優勝した二人の名を確認した。ヴァイオリン第3位の寺内詩織とピアノ部門第3位の實川風の名は今でもよく目にする。ヴァイオリン部門の評論家によると瀧村の高度な技術力は特筆すべきと書かれていた。ファイナルではブラームスの協奏曲が指定され、カデンツァは自由だった。 ピアノ部門は第1位が二人いて入江はプロコフィエフの第2番を演奏。同じく第1位の喜多宏丞はリストの第2番。

近藤嘉宏ピアノ・リサイタル2017

2015年12月にデビュー20周年を迎えた近藤嘉宏による毎年恒例のピアノ・リサイタル。今回で彼のコンサートを聴くのも14回を数える。近年はソロ活動に加えて弦楽四重奏団との共演、国内外のオーケストラ客演,、海外でのりサイタルなど多岐にわたる幅広い活動に携わり、これまでのキャリアを着実に高めている。

2017年4月16日(日) 1:30PM開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈Program〉
 J.S.バッハ(ブゾーニ編):コラール前奏曲「来たれ、異教徒の救い主よ」
 J.S.バッハ(ヘス編):主よ、人の望みの喜びよ
 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110
 サティ:グノシェンス第1番
 ドビュッシー:「月の光」~ベルガマスク組曲より
 ラヴェル:水の戯れ
 ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
 リスト:メフィスト・ワルツ第1番 S.514

前半はバッハ、モーツァルト、ベートーヴェとドイツ・オーストリアの作曲家、後半はサティ、ドビュッシー、ラヴェルとフランスの作曲家に加えてパリの社交界で大ピアニストとしても活躍したショパン、リストの名曲を連ねたプログラム構成。

来年には50歳を迎えるというのが信じられないほどの若い雰囲気を保ちつつ、卓越したテクニックと表現力で近藤嘉宏が綴る名曲の数々には歌心が溢れている。(*彼の昨日のブログには“歌のイメージを具体的に自分の中で描くことが大変重要である”と書かれていた。歌心を大切にしていることが実感できる演奏会であった。)

モーツァルトの「第8番」では珍しい短調の曲での“悲しみ”の表現が心を打つ。べート―ヴェンの「第31番」では彼が到達した人生観がしみじみと心奥深くに届く。演奏を聴いてこんな感想を抱いた。
チョット変わったタイトルや作風で知られるサテイの曲はドビュッシーやラヴェルの曲ほどには通じていない。月の光の輝く様子や水の音と輝きをイメージした曲を聴いて美しい世界に身を置いた。
ショパンの曲の魅力がふんだんに散りばめられた華麗な名曲と、超難曲であるとピアニストの運指を見ていても分かるリストの「メフィスト・ワルツ第1番」。1月に仲道郁代の演奏でも聴いたが、手の動きを見ながら鑑賞するとワクワクする。以前に舞台での寸劇「村の居酒屋での踊り」の場面付きの演奏を思い出しながら鑑賞した。悪魔的、官能的な音楽をより一層楽しめた。

見事な演奏終了後に歓声も上がった。アンコールに「ベートーヴェン:月光」が演奏されて一層大きな歓声が沸き起こった。時間があったとはいえ、アンコール曲に3楽章から成る「ソナタ」が演奏されてるのは極めて珍しくて今までの記憶にない。聴衆も大喜びで、“今日は得をした”と言う声が聞かれるほどであった。「月光」の魅力は凄いと改めて感じた。

※2年前に大病を患って以来となる妻と一緒の旅行に明日出かける。東京の桜は満開の時期は終わったようだが、4月中旬で鹿児島の桜は満開でなかったようだから、今年の春は地域によって例年とは違う様相を呈している。富士山が見渡せる地域で桜を含め春の花が楽しめれば嬉しい。2泊3日の小旅行だが、何の準備もしていないので、今回は早めにブログを書き終えた。
 

福間洸太朗のマイアミ国際音楽祭での演奏

数日前に「Twitter のハイライト」ということで私のメールに福間洸太朗(KOTARO FUKUMA)が2017年2月19日に米国フロリダ州マイアミ音楽祭に参加した時の様子がyoutubeで流され、福間のtwitterが届けられた。3月1日に電波にのり拡散し始めているようだ。「ショパン:バラード第1番」を早速聴いてみた。

福間は1982年、東京生まれ。都立武蔵高校卒業後、01年パリ国立高等音楽院に学んでディプロマ取得後、ベルリン大学・同大学院でも学んだ。14歳でジーナ・バッカウアー国際コンクールに入賞するなど、1998年にはPTNAを含む4つの国内コンクールで優勝。2003年クリーヴランド国際ピアノコンクールで日本人初優勝の快挙が注目を集めた。ベルリン在住で国際的に活躍している将来を嘱望される中堅ピアニスト。
今から5・6年前にシューマンのピアノ曲や室内楽曲を中心にCDをかなり買い求めた。その内の一枚が2004年カナダで録音された〈期待の新進演奏家シリーズ/福間洸太朗(ピアノ)〉。NAXOSのシューマン。収録曲が「アベック変奏曲」、「8つのノヴェレッテ」、「3つの幻想的小曲」。力任せに弾かない演奏でシューマンの魅力的なロマンティシズムに溢れた調べを時たま耳にする。

札幌で一度は聴きたいピアニストが何人かいるが、福間はその一人である。丁度よい機会だと思って聴いて観た「バラード1番」の後に「スメタナ(福間編):モルダウ」、「ショパン:英雄ポロネーズ」、「グリーグ:5つの抒情小品」。40分程度の演奏に対するマイアミの聴衆の熱狂的な反応もあって盛り上がった満足のいくコンサート。好感度の良いピアニストだと思っていたが、堂々たる演奏に日本を代表する若手の一人としてアメリカでの知名度も高いようであった。予定せずに急に耳にしたが、ホールの迫力が伝わって来る聴き方ができて予想外の収穫を得て嬉しい気持ちになった。

毎年、札幌で聴いているピアニストは小山実稚恵、外山啓介、及川浩治、近藤嘉宏である。札響との共演などで聴いてはいるが、小菅優、田村響、北村朋幹などの若手のリサイタルは是非聴きたい。金子三勇士、萩原麻未などはなかなか聴く機会が無くて残念である。今一番楽しみにしているのが反田恭介のリサイタル。8月3日の札幌公演が待ち遠しい。

仲道郁代 マイ・フェイヴァリット(デビュー30周年を彩るピアノ名曲集)

仲道郁代のピアノ演奏を初めて聴いたのが1989年4月(第302回札響定期)。山田一雄指揮札響と共演して「ベート―ヴェン:ピアノ協奏曲第4番」を弾いた。ベートーヴェンのピアノ協奏曲は「皇帝」しか聴いていなかったので、「第4番」も素晴らしい曲と印象づけられたコンサートとして忘れ難い。
2000年2月にはヤマハ・ピアノ100周年記念コンサート(Kitara大ホール)でリサイタルが開かれた。同年にはKitara札響特別演奏会として「皇帝」が演奏されたこともあった。その後、09年にソプラノとピアノのデュオ・リサイタルを聴いたが、その後はこの日本を代表するピアニストの演奏を聴く機会がなかった。出来れば本格的なプログラム構成の演奏会が好みではあったが、今回のピアノ名曲集を聴いてみることにした。彼女のコンサートを聴くのは7度目である。

Ikuyo Nakamichiは1963年、仙台生まれ。12歳の時に父親の仕事の関係でアメリカに渡り、その後、桐朋学園大学1年在学中に日本音楽コンクール優勝。1985-87年ミュンヘン音楽大学に留学。この間、ジュネーヴ国際コンクールなどで好成績を収め、国内外で活発な活動を展開。海外のオーケストラとの共演も数多く、実力と人気を兼ね備えて常に新たな試みに挑戦し続けているピアニスト。
仲道は札幌コンサートホールでは2014年から3年にわたって【Kitara Kidsミュージック&アーツクラブ】で音楽とアートのワークショップを通じ、子どもたちと温かい交流を重ねている。今回のプログラムは【Kitaraクラシック入門講座】として開催されたが一連の活動と繋がる催しの趣旨があったのかもしれない。

2017年1月21日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール
〈Program〉
 グリーグ:《抒情小曲集》より 「アリエッタ」、「蝶々」、「ノクターン」
 シューマン:《子供の情景》より 「トロイメライ」 作品15-7
 シューマン(リスト編):歌曲集《ミルテの花》より「献呈」 作品25-1 S.566
 リスト:愛の夢 第3番 変イ長調 S.541
     メフィスト・ワルツ第1番 「村の居酒屋での踊り」 S.514
 ショパン:ワルツ第1番 変ホ長調 「華麗なる大円舞曲」 作品18
       ワルツ第3番 イ短調 作品34-2 
       スケルツォ第2番 変ロ長調 作品31
       ポロネーズ第6番 変イ長調 「英雄」 作品53

仲道は作曲家と演奏曲の解説や魅力を話しながらコンサートを進めた。彼女が音楽の魅力にはまったエピソードなどを織り交ぜながら名曲(Her Favorites)を紹介した。
彼女の母は彼女が胎児のころにグリーグのピアノ協奏曲を好んで弾いていたという。その影響か彼女は北欧のショパンと呼ばれることもあるグリーグの曲に親しんだそうである。「抒情小曲集」は10集70曲ほどの中から3曲。聴いたことがあるのは「蝶々」だけ。聴く者の心にしみる短い曲を続けて演奏した。

クララとの9年にわたる恋が実って結婚に至ったシューマンが結婚前夜にクララのために書いた歌曲。リストから贈られたピアノ独奏用の編曲が余りにも華やかだったので、クララは“私たちの愛をこんなにゴージャスにして”と怒ったという。この彼女の反応は初耳であった。
「トロイメライ」と「愛の夢」は「夢」が共通している。「夢」や「憧れ」を4度や6度の音程の違いで表現する話は興味深かった。
仲道はミシガン州に滞在していた折にホロヴィッツの演奏を聴く幸運に恵まれたという。(*彼がニューヨーク以外で演奏する機会は稀有のことであり、演奏会のチケットを手にするのも容易ではない時代であった。)彼の弾いた2音を聴いただけで涙がこぼれたという。2音だけで人の心を動かす音楽に出会って彼女の人生の行方が決まった。ホロヴィッツの「トロイメライ」演奏に感銘を受けたエピソード。

「メフィスト・ワルツ第1番」はリストならではの超絶技巧が凝らされたピアノ独奏曲。演奏する姿を観ながら今ではすっかりこの曲の魅力に取り込まれている。10分余りの運指の速さにピアニストの技量と表現力に魅了された。演奏終了後に歓声が沸き起こった。

後半のプログラムはショパンの曲。彼がワルシャワを離れ、ウィーンに移り、ウィンナー・ワルツとは違う独自の芸術的香りに満ちたワルツを作り上げていく様子が語られた。パリへ移住した後も故国ポーランドに想いを馳せながら過ごした作曲家の人生は曲とともに人々の心を打つ。ショパンの人生の一端を初めて聞いた子どもたちもいたように思う。対照的な2曲のワルツの紹介も良かった。
ショパンが残した4曲のスケルツォ。交響曲の第3楽章に使われていた曲調でショパンが独自のジャンルを作り上げた。「第2番」は聴く機会が多くて4曲中で最も親しまれている。緊迫した雰囲気を持ち、ドラマティックな展開で魅力的な作品。仲道はこの曲を“黒いマント”と何度か呼んだ。

「ポロネーズ」や「マズルカ」はポーランドの民族舞曲。ポロネーズは全16曲のうち、タイトルがついた「第3番 軍隊」、「第7番 幻想ポロネーズ」の他に、「第6番 英雄」が有名である。最も有名で演奏機会の多い第6番は「英雄ポロネーズ」として親しまれている。勇壮な行進曲で2列となって戦争に備えて堂々と行進する姿が印象的である。ポーランドは他国に支配される不幸な状況下に置かれてきた歴史がある。ショパンとポーランドは音楽では切り離せない繋がりである。

アンコール曲は3曲。①ショパン:エチュード「革命」、 ②ショパン:エチュード「別れの曲」、(*「別れ」は短調が多いのが当然と思っていたが、この曲は長調と説明があった。明るい曲として長年にわたって聴き親しんでいるが、改めて調性を意識した。) ③エルガー:愛の挨拶。

チケットは完売であったが、1階席中央の数列で空席が何席も続いているのが気になった。1階席の端や2階バルコニーも埋まっている中でチョット嫌な感じがした。招待券が無駄になっているとしたら勿体ない。


※先週の「クラシック音楽館」(1月15日)の放送で10:30pm~11:00pmまで仲道郁代がゲストでプレイエル(1827年製)とスタインウェイの2台のピアノを使って興味深い演奏を行った。(*彼女は自宅にピアノを4台所有しているはずだから彼女所有のピアノで演奏したと思った)。ピアニストのデビュー30周年を祝ってのオール・ショパン・プログラム。演奏曲は「ノクターン op.9-2」、「練習曲 op.10-3」、「前奏曲 op.28-7」、「練習曲 op.25-1」(以上プレイエル)、「幻想即興曲」、「ワルツ op34-2」(以上スタインウェイ)。ショパンが使っていた時代のピアノと現代のモダン・ピアノでの響きの違いが出ていて面白かった。
プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR