池辺晋一郎&上杉春雄ジョイント・コンサート(ゲスト:小林沙羅)

作曲家・池辺晋一郎と医師兼ピアニスト・上杉春雄のジョイント・コンサートがKitaraで始まったのが2006年である。その後、この二人のジョイント・コンサートは2年ごとに開催されていた。06年のコンサートⅠがモーツァルト、08年のⅡがベートーヴェン、10年のⅢがシューマンの作品。一人の作曲家の作品が池辺・上杉のほかにゲストを入れて演奏された。東日本大震災後の12年は池辺が総合プロデュース&トークで藤原真理、波多野睦美、上杉春雄の出演でバッハの曲で被災者への“祈りと希望”というタイトルのコンサートとして開催。
今回は間が空いて5年ぶりのジョイント・コンサート。《フランス音楽の魅力》。

2017年4月15日(土) 1:30開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

【第1部】「これもフランス音楽!?から、これぞフランス音楽!まで」
  マショー(池辺編):ノートルダム・ミサ曲より    クープラン:恋のナイチンゲール
  ロワイエ:めまい        ラモー:ガヴォットと変奏
【第2部】「ザ・フランス音楽百花繚乱」
  アーン:クロリスに    デュパルク:悲しき歌、旅へのいざない
  フォーレ:夢のあとに (以上4曲 ソプラノ:小林沙羅)
  ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女、 映像第1集より「水の反映」(ピアノ:上杉)
  ラヴェル:水の戯れ(ピアノ:上杉)、 「マ・メール・ロワ」より 3曲(ピアノ:池辺・上杉)     
  グノー:宝石の歌 (ソプラノ:小林沙羅) 

第1部は“教会や王侯貴族のためのフランス音楽”
 マショー(1300頃ー1377)は聖職者・作曲家・詩人で中世の怪人と呼ばれる人物。オリジナルは全6曲から成る合唱曲。曲中の“キリエ”を池辺晋一郎が編曲した2台ピアノ版「ノートルダム・ファンタジー」で池辺と上杉の共演。
 クープラン(1668-1733)はラヴェルを通して親しんでいる作曲家名。クープラン家のうち最も有名なフランソワはフランス・バロック音楽を代表する人物。鍵盤楽器の名手であったフランソワの「クラブサン曲集」の1曲。愛らしい調べ。
 ロワン(1705-55)はイタリア生まれだがフランスでバッハと同時代に活躍した。エネルギッシュな音楽。
 ラモー(1683-1764)はバッハの陰に隠れていたが近代音楽の父と呼ばれていたこともあってか名前は知っていた。鍵盤音楽の大家だがオペラも作曲したそうである。舞曲で華やかな印象とともに何となく品の良い調べ。

4人の曲を聴くのは初めてだったが、曲はドイツのオルガン曲とは違うシャレたフランス風の音楽に思えた。コンサートは池辺の勧めで地元のピアニスト上杉の司会で進行。大学の作曲コースでフランス楽派を専攻した池辺のトークで新しい知識を得た。

第2部はフォーレ、ドビュッシー、ラヴェルたちがひと時代を築いた“市民のフランス音楽”
 小林沙羅がKitaraのステージに初登場して歌曲を4曲、続けて熱唱。透明で伸びやかな歌声で聴衆を魅了。彼女は東京藝術大学大学院終了後、2006年に国内デビュー。2010年にウィーンとローマで研鑽を積み、2012年にソフィア国立歌劇場でオペラ・デビュー。近年はオペラ以外での活躍も目立ち、多くの国内オーケストラとの共演でコンサートソリストとしての活動も多い。映画、ミュージカル、テレビなど多方面での幅広い活動が注目されている人気のソプラノ歌手。
今回のKitara 初出演でフランス歌曲も勉強してきたと初々しく語った。

フランスの作曲家は19世紀に入ってベルリオーズ、サン=サーンス、ビゼーなどが活躍したが、ドイツ・オーストリアと比べると後世に残る作曲家は少ない感がある。フォーレがフランス近代音楽の先陣を切った。「夢のあとに」はチェロの曲として耳にすることが多いと思うが、歌曲で聴けたのは新鮮だった。
ドビュッシーやラヴェルについては言及するまでもない。上杉春雄のリサイタルはデビュー15周年と25周年の2回聴いた。2013年のリサイタルは感動的なリサイタルで、医師とピアニストの両立を図っている高度なレヴェルの演奏がいまだ記憶に残る。近年はピアニストの活動が増えている様子。水の音と水面の輝きをイメージした曲がそれぞれ違う美しさで聴きとれた見事な演奏に心癒された。上杉は近年はバッハを得意としているようだが、どんな音楽でもカバーできる正にプロフェッショナル。

「マ・メール・ロワ」より“眠れる森の美女のパヴァーヌ”、“バゴタの女王レドロネット”、“妖精の園”の3曲。ピアノ連弾でメルヘンの世界が繰り広げられた。音楽ではマ・メール・ロワ、文学ではマザー・グースとして広く知られている。フランス語と英語の違いで池辺の説明もあった。

最後の曲はグノー(1818-93):歌劇「ファウスト」より“宝石の歌”。華やかな衣装でステージに登場した小林が得意とするオペラのアリアを披露。歌曲とは違った演唱にウットリ! 若い純真な娘が虚栄心を垣間見せながら無邪気に喜ぶ場面が描かれた。
コンサートの最後を飾るにふさわしいアリアで聴衆を湧かせた。

アンコールに「サティ:ジュ・ドゥ・ヴュ(あなたが大好き)」。ピアノのイントロで始まり、ピアノ・ソロと思わせたが、曲の感じでソプラノが入ると思った。下手のドアーが開いていて小林が歌いながらステージの真ん中に。なかなかシャレた演出だった。拍手大喝采でフィナーレ。

※Kitara のホールから外に出ると、目の不自由な人がレセプショニストに手を引かれて歩いている姿が目に入った。先月も同じ状況があった時に思ったことを直ぐに実行に移した。レセプショニストと別れた時に、彼に話しかけて帰路を共にした。地下鉄大通り駅で彼が降車するまでご一緒した。ごく自然に行動でき、帰路にいろいろ音楽の話などができて良かった。見ているだけでなくて助けになることを自然にできたことを嬉しく思った。


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BUNYA TRIO Concert Vol.4 (ピアノ・トリオ)

30年ほど札幌交響楽団チェロ奏者として活躍していた文屋治実(BUNYA Harumitsu)は以前からチェリストとして幅広い活動を展開してきた。リサイタルや室内楽のコンサートを毎年開催して、92年から現代チェロ音楽コンサートを年1回開催し、現在まで20世紀以降に作曲された90曲以上の現代音楽を演奏していることは「音楽の友」でも高く評価されている。彼は14年7月に札響を退団して、チェリストしての活動のほかに指揮者・文筆家としても活躍している。
つい先年“BUNYA TRIO”が結成されてピアノ三重奏曲の演奏会が開かれることになって注目していた。日程が折り合わずに聴く機会を逸していて今回やっと聴けた。

2017年3月28日(火) 19:00開演  ザ・ルーテルホール
 
〈Program〉
 モーツァルト:ピアノ三重奏曲 第5番 ハ長調 K.548
 トゥリーナ:ピアノ三重奏のための幻想曲 「環」 Op.91
 ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲 第2番 ニ短調 作品9 「悲しみの三重奏曲」

『ピアノ三重奏曲』として最も有名な曲としてベートーヴェンの「大公」、ドヴォルジャークの「ドゥムキー」、チャイコフスキーの「偉大な芸術家の思い出」は名曲として親しんでいる。コンサートでピアノ三重奏曲を聴く機会は多くない。カルテットに比べてピアノ・トリオは室内楽として今までは少なかった。強い関心を持ち始めたのはここ一二年である。池辺晋一郎によると、ベートーヴェン11曲、ハイドン45曲、モーツァルト7曲、シューマン3曲、ブラームス3曲、メンデルスゾーン2曲、シベリウス4曲、ラフマニノフ2曲、ショスタコーヴィチ2曲、サン=サーンス2曲、ショパン、フォーレ、ドビュッシーが各1曲。
自分であまり意識していなかったがショパン、メンデルスゾーン、フォーレ、ラヴェル、スメタナも名演奏家のオイストラフやチョ・キョンファなどのCDに入っていた。

BUNYA TRIOのメンバーは文屋のほかは、札響のヴァイオリニスト岡部亜希子、井関楽器講師の新堀聡子。それぞれ緑と赤の色鮮やかなドレスに身を包んだ女性二人は容姿端麗な演奏家。もちろん文屋がトリオ結成で選んだ共演者で相当に腕の立つソリスト。岡部は2009年に札響入団で13年にはソロ・アルバムをリリース。ピアニストの新堀は札響メンバーを中心として様々な楽器奏者のピアノ伴奏で活躍し、オーケストラとの共演でラフマニフを演奏するなど経験豊富な実力派ピアニスト。

1788年完成の「ピアノ三重奏曲」はモーツァルトの後期三大交響曲のころの作品。歌劇《フィガロの結婚》の「もう飛ぶまいぞこの蝶々」のアリアに似たメロディで始まる第1楽章はこの曲を聴く親しみを倍加させた。チェロを室内楽器として用い、3つの楽器を対等に扱う工夫がされている感じを受けた。ハ長調でモーツァルトらしい軽快で明るい溌溂とした曲。

トゥリーナ(1882-1949)は初めて耳にする名。セヴィーリャ生まれでマドリ-ドで音楽を学び、パリに留学してフランクやドビュッシーの影響を受けたという。パリ滞在中にスペインの大御所アルベニスと知り合い、アンダルシア地方のスペイン音楽の興隆を諭されて親友のファリャと一緒に帰国。アンダルシア地方の民俗音楽に影響を受けた作品を発表し、その後マドリード音楽院教授に就任。
この作品はスペイン内乱が始まった1936年に書かれた。「夜明け」「昼」「黄昏」の3楽章構成。モーツァルトとはガラッと変わった暗い雰囲気で始まる曲に現代曲の響きを感じた。同時に当時のスペイン内乱の頃の一日の様子が見事に描かれていた。日中の賑やかなスペインの街中の人々の動きも感じられた。不安の中で生活する人々が翌日以降の無事を願う気持ちも読み取れるようであった。10分余りの曲に、フランコ政権が独裁政治を行った当時のスペインの時代背景がうかがえた。
フランコの死後、トゥリーナの作品が演奏される機会が殆ど無くなってしまったが、最近になって彼の作品が再評価されて世界中で演奏機会が増えてきているとされる。 ユニークな曲で興味をそそられた。

ラフマニノフが20歳の1893年にチャイコフスキーが亡くなった。ロシアでは偉大な芸術家の死を悼むために「ピアノ三重奏曲」を書くのが慣習になっていたらしい。チャイコフスキーはルービンシテインの死を悼んで「偉大な芸術家の思い出」を作曲した。
ラフマニノフは室内楽曲はあまり書いていない。この「ピアノ三重奏曲第2番」は現在3つの版が残されているそうだが、今回演奏されたのは1907年の第二版の楽譜。55分の大曲で第1・2楽章は長大。文字通り悲しみに満ちた鎮魂の調べ。
ラフマニノフはモスクワ音楽院在学中の試験で書いた「前奏曲」がチャイコフスキーに気に入られてプラスが4つもついた最高点を与えられていた。崇拝する恩師だったと想像される。終楽章まで悲劇的雰囲気を帯びた調べが綴られた。全体的にピアノの比重が大きく打鍵が強烈な感情移入が表れていた。ピアノ演奏も超絶技巧を含む難曲と思われたが、ヴァイオリンとチェロが地味な役割で曲を支えバランスを取りながら室内楽曲の体はなしていた。
 
演奏終了後にはブラヴォーの声もあがった。室内楽シリーズを毎回聴きに来るファンもいると思ったが、私も次回もぜひ聴きに来ようと思うほど良い演奏会であった。
演奏者は激しい感情表現に疲れたであろうが、アンコール曲に心和む「ラフマニノフ:ヴォカリーズ」。

※「ピアノ・トリオ」という言葉で思い出した。来月中旬にKitaraに数年ぶりに登場する池辺晋一郎が「音楽の友」2016年5月号に書いた記事が印象に残っている。
楽譜の符号でpはピアノと誰もが分かる。ppが「ピアニッシモ」と分かる確率も低くないだろう。pppとなると音楽を専門的に学習している人以外にとっては難しい。私も分からなかった。正解は「ピアニッシシモ」、または「ピアノピアニッシモ」。池辺は高校時代の音楽のペーパーテストでうっかりいして「ピアノトリオ」と答えたという。当時の音楽教師の声楽家が余りにおかしい答えに〇をつけたという。その音楽の大家と亡くなるまで付き合いのあった池辺は高校時代の話を持ち出されて“キミは高校時代からおかしな奴だったぞ”と言われたそうである。頓智が効き駄洒落が得意で話好きな池辺にまつわるエピソード。

※昨日は私が78歳を迎えた誕生日。コンサートに出かけるので少し早めに祝いの夕食を済ませて出かけた。コンサートの帰りにクラシック・バーに立ち寄った。店に入るとテレビにカラヤンの映像。カラヤン&ベルリン・フィルのCDは多く持っているが、映像で観たことはない。マスターが「チャイコフスキーの第5番」をかけてくれた。1973年10月の演奏。映像で見れるようになったのはつい最近のことらしい。当時のカラヤンのダイナミックな指揮ぶりに見惚れた。カメラワークが現在のデジタルコンサートでのものとは違っていた。ベルリン・フィルハーモニーのP席から撮った場面、弦楽器奏者、木管楽器奏者をまとめて映す方法、聴衆の姿も映るがカラヤンが中心となる映像つくり。ホール内が異常に明るくて特別な工夫で当時の演奏会の模様を再現したようであった。
誕生日の贈り物をもらった良い気分に浸れた。忘れ難い思い出に残る誕生日になった。

リスト音楽院教授陣(M・ペレーニ他)による第20回記念ガラコンサート

〈第20回リスト音楽院セミナー〉
札幌コンサートホールが1997年の開館以来、毎年開催しているリスト音楽院セミナーが20周年を迎えた。セミナーの折に、これまでピアノやチェロの教授のデュオやリサイタルが開かれてきた。セミナーのボランティアとして7・8年前に教授陣や受講生のための受付として2回ほど活動したこともあり、彼らのリサイタルも何回か聴いたことがある。
昨年はミクローシュ・ペレーニのチェロ・リサイタルを久しぶりに聴く予定が体調不良で断念せざるを得ず残念至極であった。昨年2月は7回予定のコンサート鑑賞が2回だけに終わった。今年は慎重を期して15日と16日の2回のコンサートのチケットは数日前に購入した。

2017年2月15日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

ピアノ/ シャーンドル・ファルヴァイ、 イシュトヴァーン・ラントシュ
チェロ/ ミクローシュ・ペレーニ、   ハープ/ アンドレア・ヴィーグ

二人のピアニストは各々リスト音楽院に学び、ラントシュは94-97年、ファルヴァイは97-2004年にわたってリスト音楽院学長を務めた。彼らは演奏活動と教育活動の両面で活躍し、コンクールの審査員も務めている。ヴィーグは13年11月よりリスト音楽院学長に就任している。
ペレーニは今や世界のトップ・チェリストとして知られ、近年は毎年のように東京でリサイタルを開催している。80年よりリスト音楽院教授。07、09、11年に続いて6年ぶりに彼の演奏を聴いた。

〈Program〉
 J.S.バッハ(コダーイ編曲):前奏曲とフーガ ニ短調 BWV539 (チェロ、ピアノ)
 シューベルト:即興曲 変ロ長調 作品142-3
         即興曲 変ホ長調 作品90-2 (ピアノ・ソロ)
 ワルター=キューネ:チャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」
                       の主題による幻想曲(ハープ・ソロ)
 コダーイ:ハンガリーのロンド(チェロ、ピアノ)
 ドビュッシー:前奏曲集 第2集より 5曲(ピアノ・ソロ)
 ブルッフ:コル・ニドライ 作品47(チェロ、ハープ)
 パガニーニ:ロッシーニの歌劇「エジプトのモーゼ」の主題による変奏曲(チェロ、ハープ)
 ドビュッシー:小組曲 (ピアノ連弾)

バルトークとともにハンガリーの大作曲家コダーイはチェロの名手でもあり、バッハのオルガン曲をチェロとピアノのためにいくつか編曲している。ペレーニ&コチシュ(*昨年11月逝去)が編曲版をCD録音しているそうである。オルガン曲もチェロが入ると趣が変わって違った聴き方ができる。

シューベルトの「4つの即興曲 作品90と作品142」は親しみやすい曲。ハンガリーのピアノの巨匠シフのCDで聴き続けて、シューベルトのピアノ曲の中では“気に入りの曲”になっている。近年は演奏会で聴く機会も多くなった。ピアノの鍵盤を動き回る運指にも見入った。

「エフゲニー・オネーギン」はオペラ以外にオーケストラで一部分を聴くことがあったが、ハープによる演奏は珍しかった。ハープの持つ美しさや華やかさが際立った音楽を楽しめた。

ハンガリー民謡を収集してハンガリーの国民音楽をバルトークとともに作り上げたコダーイは今年は没後50年となる。「ハンガリーのロンド」は原曲の管弦楽のための作品をペレーニがチェロとピアノのために編曲して2017年に出版されるそうである。世界に先駆けて日本での初演だったのかも知れない。

ドビュッシーの前奏曲集は1・2集各12曲で全24曲構成。誰もが耳にして親しまれている「亜麻色の髪の乙女」は特別で、他の曲は何度聴いてもタイトルは全く浮かんでこない。タイトルなしで先入観を持たずに聴いたほうが良い聴き方かもしれないと思うようになった。ドビュッシー独特の色彩感に富んだ豊かな音色を想像力を働かせて聴いてみた。自然の風景の中に人間の孤独が描かれていたり、スペインや東洋の異国情緒が漂う調べとともに人の味わう感情が表現されているように思った。

「コル・ニドライ」は一度コンサートでチェロ曲として聴いたことがあるような気がする。ヘブライ語で「神の日」を意味するタイトルだそうだが、曲は重々しくなく明るい美しい旋律を持った作品で、チェロの人気作品のようである。チェロとハープの二重奏で演奏された。

日本語のタイトルがいろいろあって同一曲で何度か耳にしているのだが、違う曲かと勘違いすることがある。コンサートでは1・2度聴いたくらいである。手元にあるCDはシュタルケルとフルニエの両巨匠のチェロ小品集で「パガニーニ:モーゼ幻想曲」、「パガニーニ:ロッシーニの《モーゼ》の主題による変奏曲」となっている。タイトル名は違うが同一の曲で魅力的な作品。
ロッシーニの歌劇《エジプトのモーゼ》の中の旋律を主題として用いた変奏曲をヴァイオリン曲としてパガニーニが書いた。原曲はヴァイオリンのG線のみで演奏される作品。ピエール・フルニエがチェロ曲に編曲してチェロのレパートリーとなっている。
チェロとハープの二重奏で演奏され名演となった。客席を埋めた聴衆の感動を呼び起こした。

最後のプログラムはピアノ連弾。ピアノ2台が並列して、譜めくりストも2人。2階ほぼ中央から見る興味深い連弾だった。連弾曲は鑑賞しやすい単純明解な曲。〈小組曲〉は全4曲で各曲3部形式で、ドビュッシーの若いころの作品。「小舟にて」、「行列」、「メヌエット」、「バレエ」。前奏曲集など他のピアノ曲とは明らかに違う作品だが、若さが横溢して美しい曲が綴られた。今まであまり聴いたことの無い曲を味わった。

第一線で活躍する音楽家4人がステージに登場したガラコ・ンサートは素晴らしかった。補助席まで用意された大盛況に教授陣にも聴衆の満足度が伝わったのか、アンコール曲が2曲も披露された。
小型オルガンも用意され、ピアノ、チェロ、ハープの4つの楽器による演奏は極めて印象深いものとなった。
アンコール曲は①J.S.バッハ(コダーイ編):前奏曲とフーガ ニ短調 BWX853 ②リスト:悲歌 第1番。

11日のウィンター・オルガンコンサートが“ハンガーリの贈りもの”となったが、第20回記念ガラ・コンサートと合わせてリスト音楽院教授が5人も登場する画期的なイヴェントになった。ハンガリー・オーストリア帝国として一時代を築いた歴史のある国の文化が今日も息づいているのは感慨深い。19日まで続くリスト音楽院セミナーの成功を期待する。

※2000年8月のイタリア・ギリシャ観光を思い出した。当時はイタリアからギリシャに何故か直行できずにローマのレオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港からハンガリーのブダペスト国際空港に立ち寄ったことがいまだに記憶として残っている。ブタペスト空港内の土産店で買い求めたハンガリーの小物の民芸品が今も飾り戸棚に入っている。空港でフロリダのNaples(ナポリ)から来た高校生と空港内で待ち時間に話し合った思い出も今思えば懐かしい。(*アメリカにはヨーロッパの都市名と同じ地名が数多くある。フロリダにはヴェニスという地名もある。) 過去を思い出して懐かしさにふける日々が多くなった。



 

チェコ・フィル・ストリング・カルテット2017

昨年に続いてのチェコ・フィル弦楽四重奏団のコンサート。
クラシックの名曲をちりばめた珠玉の名曲集コンサート Vol.3

前回のリーダーだったチェコ・フィル・コンサートマスターに代わって、今回はチェコ・フィル・第2アシスタント・コンサートマスターを務めるマグダレーナ・マシュラニョヴァーが第1ヴァイオリンを担当した。他の3人のメンバーは前回と同じ。

出演/ マグダレーナ・マシュラニョヴァー(Vn)、 ミラン・ヴァヴジーネク(Vn)
    ヤン・シモン(Va)、ヨゼフ・シュパチェク(Vc)
〈PROGRAM〉
 モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジ―ク 第1楽章、  バッハ:G線上のアリア、
 バッヘルベル:カノン、 ハイドン:セレナード、  シューマン:トロイメライ、
 レスピーギ:シシリアーナ、  マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ~間奏曲、
 クライスラー:愛の喜び、  チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ、
 ハチャトゥリアン:剣の舞、  シュトラウス2世:美しく青きドナウ、 エルガー:愛の挨拶、
 リスト:ラ・カンパネラ、  サン=サーンス:白鳥、  ショパン:ノクターン第2番、
 モンティ:チャールダーシュ、 ビートルズ:イエスタデイ、 グレン・ミラー:ムーンライト・セレナーデ、
 ピアソラ:リベルタンゴ、  エリントン:A列車で行こう

弦楽四重奏団演奏会はKitaraでは近年、本格的な弦楽四重奏曲を中心にして小ホール(定員453名)が使用されている。チェコ・フィルのメンバーは多種多様な室内楽を組織しているが、チェコ・フィル・ストリング・カルテットは1992年結成以来、クラシック音楽のみならずポピュラー音楽の人気作品までレパートリーに取り込んでいる。初来日は2007年。札幌は2014年初来札後3回目の公演。最初の札幌公演が人気が高くて北海道公演も今回は釧路でも開催される。聴きなれた名曲ばかりで今回も大勢の客で賑わった。

リーダーが女性の第1ヴァイオリニストで、きれいな日本語で挨拶をしながら時折英語で話し、団員も自己紹介しながら和やかにコンサートが進められた。前回のリーダーほど多弁でなかったが、適度な言葉をはさみながら前回同様の進行状況であった。みなさん日本食が好きで、料理名を上げるたびに会場が湧いた。リーダーは“私はお酒が好きです”と言ったが、たぶんビールだと思った。(*チェコは国民一人当たりのビールの消費量は世界一である。)

前回と同じく前半10曲、後半10曲。原曲が弦楽四重奏曲や弦楽合奏曲のもあったが大部分は原曲をストリング・カルテット用に編曲しての曲。人々の耳に親しんだ名曲ばかりで、いちいち曲の言及は避ける。曲にまつわる知らなかったことなどを書き留めて置く。

「3声のカノンとジーグ」のカノンの部分のみが「バッヘルベルのカノン」として有名になった。カノンとは、主題(第1声部)が奏でる旋律を他声部が間隔を置いて正確に模倣する形式のことだと知った。

ハイドンの弦楽四重奏曲第17番第2楽章アンダンテ・カンタービレは「ハイドンのセレナード」として長く親しまれてきたが、後の研究により、同時代のホフシュテッターの作と判明した。

イタリアのシシリア島の舞曲「シシリアーナ」は数多くの作曲家が同名の曲を書いている。レスピーギの曲は知らないと思っていたら、この曲は彼の「リュートのための古風な舞曲とアリア(全4組曲)」の中の第3組曲の第3曲と判明。小澤征爾指揮ボストン響のCDもあってKitaraのコンサートでもかなり以前に聴いたことがあった。

原曲がヴァイオリン曲や管弦楽曲は聴きやすいが、「白鳥」はチェロで聴くことが多くて、この曲ではチェロのパートが目立った。
全体としては主旋律は第1ヴァイオリンが歌うことが多い。そんなことでヴァイオリンの原曲では違和感は全然なかった。
ショパンのノクターンはやはりピアノでないと曲の味わいが半減すると感じた。

最後のポピュラー音楽4曲の中で「イエスタデイ」には陶酔するほどの感銘を受けた。50年前に一世を風靡した音楽が名曲として一層の味わい深い曲として聴けた。クラシック音楽と言っても何の違和感もないと思った。
1965年のアルバム「HELP!}に収録されたポール・マッカートニーがギターとヴォーカルを担当、弦楽四重奏を伴奏に使ったという。
(*他のメンバーは録音に参加。していない。)

アンコール曲は①ロッシーニ:「ウイリアム・テル」序曲、 ②ニーノ・ロータ:ロメオとジュリエット。
2曲で終わりかと思ったら、メンバーがリーダーの肩を抑えて引き留めてもう1曲。これも演出で、マグダレーナは“皆さん、お楽しみいただけましたでしょうか。最後に、皆さんよくご存じの曲を演奏します”と日本語で説明したのも見事。CDの宣伝もしていた。日本語は難しいと言いながらも巧みな日本語を使って日本人の好感度は大であった。
③シュトラウス1世:ラデツキー行進曲。
チェロ奏者が笛を吹き、聴衆の手拍子も入って楽しい雰囲気のうちに終了。帰りのホワイエではサイン会に並ぶ人たちも結構いた。

8時半ごろに演奏会が終わったので、3ヶ月ぶりに名曲 mini Bar OLD CLASSICに立ち寄った。前回はライヴで内田光子のモーツァルト協奏曲を聴いて、Barではコンセルトへボウでの内田光子のベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を聴いて不思議な気分を味わった。今回も同じようなことを経験した。マスターがチェコ・フィルの「ドヴォルザーク:交響曲第4番と第3番」をかけてくれたのである。数日前のクラシカ・ジャパンの映像で場所は由緒あるドヴォルザーク・ホール。CDはあるが1回耳にした程度である。聴いて観るとなかなか良い。演奏しているメンバーの中に今日のリーダーを務めたマグダレーナ・マシュラニョヴァーの顔を数度テレビが映し出すので嬉しくなった。チェロ奏者の中にモヒカンの人を見つけてビックリ。若いメンバーの姿も多く目についた。
指揮者ピエロフラーヴェクは90年チェコ・フィル首席指揮者に就任したが2年後に辞任、93年にはプラハ・フィルを創設してKitara にもプラハ響やプラハ・フィルを率いて3度登場している。数年前にチェコ・フィルのシェフに就任して今や世界の巨匠としてメジャー・オーケストラを指揮している。10年以上も経過していて、見たことのある指揮者だと思ったがすぐには気づかなかった。チェコ・フィルを率いて札幌公演を実現してもらいたいものである。愛弟子のヤクブ・フルシャを育て上げたが、来日ではドヴォルジャークは定番の曲でなく若い番号の交響曲を披露してもらえると嬉しい。







 

プラジャーク弦楽四重奏団2016

〈Kitara弦楽四重奏シリーズ〉

弦の国、チェコが誇る伝統のアンサンブル、プラジャーク弦楽四重奏団が2年ぶりのKitara登場。前回はシューベルト、ヤナーチェク、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲を演奏した。今回は第1ヴァイオリンが若き女性に交代した。2003年の来札時も2夜にわたっての連続演奏会だったが、今回も別プログラムで2夜の演奏会で第1夜を聴いた。

2016年11月30日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈出演〉 第1ヴァイオリン/ ヤナ・ヴォナシュコーヴァ、第2ヴァイオリン/ ヴラスティミル・ホレク
      ヴィオラ/ ヨセフ・クルソニュ、 チェロ/ ミハル・カニュカ
〈プログラム〉
 モーツァルト:弦楽四重奏曲 第20番 ニ長調 「ホフマイスター」 K.499
 ブルックナー:弦楽四重奏曲 ハ短調 WAB.111
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 「ハープ」 作品74

モーツァルトが書いた23曲の弦楽四重奏曲のうち所有しているCDは第17番「狩り」のみ。ストリング・カルテットの演奏会では聴く機会の多い作曲家だが記憶に残る曲が殆ど無い。モーツァルトのフルート、オーボエ、ピアノの四重奏曲や弦楽五重奏曲、クラリネット五重奏曲のCDは手元にある。彼の協奏曲のCDはピアノ、ヴァイオリンは当然ながらフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペットと揃っている。自分でも振り返ってみて不思議に思うが、多分ハイドンやモーツァルトの弦楽四重奏曲は曲数が多くてタイトルのない曲に親しめなかったのだろう。
「第20番」が楽譜出版社のホフマイスターの依頼による作品であることから名称が付いたらしい。モーツァルトらしい美しい旋律も余りないので余韻が残らない。生で聴くカルテットはCDとは比べものにならないほど心地よい。一過性の曲になってしまうのは残念ではある。

ブルックナーの弦楽四重奏曲を意識して聴いたのは多分初めてである。彼の38歳の作品というが従来のカルテット曲と違う味が出ていて面白かった。新鮮な気分で曲が鑑賞できた。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は初期の6曲を除いて、度々コンサートの前後に繰り返し聴いて今では結構親しんでいる。ベートーヴェンの手による曲はサロン的な気分ではなくて厳しい深い音楽になっているので一層心に響くものがある。彼が残した16曲の弦楽四重奏曲のうち「第7-11番」は中期、50代に書かれた「第12-16番」が後期作品とされコンサートで取り上げられる機会が多い。
「ラズモフスキー3曲」の後に作曲された《運命》、《田園》の波に乗って、「第10番」は1809年38歳の時に〈ピアノ協奏曲・皇帝〉、〈ピアノソナタ・告別〉と同時期に書かれた。3曲の調性が同じ「変ホ長調」というのも面白い。
「第10番」を作曲した時期は戦乱の外的要因もありベートーヴェンの心も動揺していたとされる。しかし個人的な恋愛感情に包まれる状況も曲に反映しているようにも感じた。激しい感情の揺れがなく透明で安らかな表情が感じ取れる曲になっていた。
「ハープ」の呼称が付いているがピッツイカートによる演奏法がハープの音に似ていることから付いているように思えた。

客席後方は埋まっていないようだったが、カルテットが大好きな聴衆の集まりで曲への集中度が高くて、演奏終了後のマナーも控えめながらも拍手に心が籠っていて良い演奏会となった。カーテンコールが続いて、アンコール曲も2つの楽章。「ハイドン:弦楽四重奏曲 第66番 ト長調 作品77-1 第3楽章」と「同曲 第2楽章」。

※Kitaraは1997年開館で来年20周年を迎える。開館当初より自主運営事業で〈古楽演奏〉や〈弦楽四重奏シリーズ〉を主催して独自のプログラムを展開してきている。
今回のブラジャーク四重奏団の招聘も画期的な事業で、第2夜はロータス・カルテットの山碕智子を加えての弦楽五重奏曲を含む演奏会。「音楽の友コンサート・ガイド」によれば12月2日~9日まで神奈川、東京、京都、大阪でもこのカルテットのコンサートが組まれている。Kitaraが発信して他に広がっているのだとすると嬉しいことだと思う。

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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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