青木晃一ヴィオラリサイタル

文化庁委託事業〈平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業〉
     新進演奏家育成プロジェクト リサイタル・シリーズSAPPORO11

3年前の札響12月定期公演終了後に〈札響くらぶ・クリスマスパーティ〉が開催された折に、会に参加していた青木晃一さんに会う機会があった。Kitaraホールでのステージ姿は毎月のように見慣れていたが、若い演奏家の溌剌とした品のある対応に好印象を受けていた。9月の〈札響くらぶ交流会〉で今回のリサイタルの案内を受けてチケットをその場で購入していた。(*本人が会場で16日と18日のコンサート出演のチラシを配っていた。)

2016年12月16日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

青木晃一(Koichi Aoki)は兵庫県姫路市出身。桐朋学園大学、ケルン音楽大学、同大学院修士課程に学ぶ。ドイツ留学中に数多くの国際音楽祭に参加。デュッセルドルフ響などで副首席奏者、幾つかのオーケストラアで客演首席奏者を務める。ドイツを中心にソリスト、室内楽奏者として活躍。2012年、札幌交響楽団に入団。現在、ヴィオラ副首席奏者。

ピアノは田島ゆみ。2008年、ドイツ・フライブルク国立音楽大学大学院修士課程を修了。ヨーロッパ各地でピアノデュオ、室内楽活動を展開し、ドイツ国内の音楽祭にも参加。11年余のドイツ滞在の後、2014年帰国して札幌を拠点に活動。札響首席奏者たちとの共演をはじめ、様々な室内楽コンサートで活躍し、2015年以降PMFコンダクティング・アカデミー・ピアニストを務めている。

〈PROGRAM〉
 J.S.バッハ:無伴奏ヴィオラ組曲 第6番 ト長調 BWV1012
 バックス:ヴィオラとピアノの為のソナタ
 ヒンデミット:無伴奏ヴィオラ・ソナタ(1937)
 ブラームス:ピアノとヴァイオリンの為のソナタ第2番 変ホ長調 作品120-2

バッハ(1685-1750)の無伴奏チェロ組曲はカザルスのCDを所有していて、去る9月に堤剛のリサイタルで聴いた。ヴィオリストが中心のヴィオラのCDはバシュメットと今井信子のものしか所有していない。ヴィオラ・ソロが入るコンサートもバシュメットと今井によるものだけである。そういう意味で今回の青木のリサイタルは私にとって極めて稀なコンサートである。
無伴奏チェロ組曲第6番はバッハが考案した5弦楽器ヴィオラ・ポンポーザのために作曲されたとされる。今回はこの曲がニ長調からト長調に移調して演奏された。最も高度な技巧が必要とされる「第6番」がチェロの響きとは違うが、バロック音楽特有の雄渾壮麗な曲として興味深く聴けた。

バックス(1883-1953)は初めて名を聞く作曲家。プログラムノートによるとアイルランド民謡が取り入れられた曲。現代曲ながら、抒情的な旋律を持ち親しみやすい。第2楽章のスケルツォでのリズミックなピアノ伴奏に合わせてのヴィオラの響きも印象的。ピアノの魅力も充分で味わい深かった。

ヒンデミット(1895-1963)は有名な現代作曲家として、彼の曲はPMFではしばしば取り上げられていた。ヴァイオリン奏者・ヴィオラ奏者として活躍したとは知らなかった。ヴィオラという楽器を愛し続けて、4つの無伴奏曲を含む7つのヴィオラ・ソナタを遺したという。解説には音楽史上最大の“ヴィオラ作曲家”と書かれていた。この曲が書かれた頃、ヒンデミットはナチスから社会的地位を奪われてドイツでの音楽活動が困難で、アメリカ演奏旅行中の列車の中で書かれた作品だそうである。
ヴィオラの楽器の特性と技巧が最大限に生かされた作品。ヒンデミットならではの現代曲と言える感じがした。

ブラームス(1833-97)の作品120はバシュメットのdisc(*1992,Torontoでの録音盤)に入っていて、今回の演奏会に備えて久しぶりに聴いてみた。「第2番」は特に魅力的な曲だった。このヴィオラ・ソナタ第2番が「クラリネット・ソナタ第2番」としてカール・ライスター(*カラヤン時代のベルリン・フィル奏者)のCDにも入っていることを知ってビックリした。両方の曲を各4回ほど聴いてみたが、弦の方が自分の好みに合っていて、とても気に入った。
第1楽章はアレグロ・アマビーレで美しい旋律の変奏が幸福感を漂わせる。第2楽章はスケルツォ的な感じのアレグロ・アパッショナート。第3楽章はアンダンテ・コン・モートで変奏曲の形式。第5変奏で見事なフィナーレ。
生の演奏を聴いてブラームスの室内楽曲の素晴らしさを味わった。

ヴィオラはオーケストラや室内楽では地味なパートを担当して目立たない楽器。チェロよりも小回りが利く楽器でヴァイオリンに近い運動性を持つが、ヴィオラのためのオリジナル作品が少ないために馴染みの曲が圧倒的に少ないのが実情である。
今回は〈新進演奏家育成プロジェクト〉としては実績を充分に積んだヴィオリスト青木晃一の出番が遅すぎた感さえした。「ヴィオラ・リサイタル」に相応しいプログラムのもとで彼のヴィルトオージティが遺憾なく発揮された聴き応えのある演奏会であった。

演奏終了後の聴衆の盛大な拍手に応えてアンコール曲が2曲演奏された。
①メンデルスゾーン:歌の翼に  ②レ―ガ―:子守歌
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堤 剛 バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会

〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉

堤 剛(Tsuyoshi Tsutsumi)は1942年、東京生まれ。日本のチェロ界というより名実ともに音楽界全体を〉代表する重鎮。1961年アメリカ・インディアナ大学に留学してシュタルケルに師事。63年カザルス国際コンクール第1位。インディアナ大学教授(1988-2006)、桐朋学園大学学長(2004-2013)を歴任。現在は霧島国際音楽祭音楽監督、サントリーホール館長を務めながら演奏活動も続ける偉大なチェリスト。
彼が1960年N響海外演奏旅行(70日間)のソリストとして中村紘子らとともに同行して欧米各地で公演を行なった報道はつい先ごろもなされCDもリリースされるようである。その後の堤の世界各地のオーケストラとの共演、リサイタルの活躍は述べるまでもない。

私が初めて彼のコンサートを聴いたのは1988年10月にスラットキン指揮ロンドン・フィルとの共演で「ドヴォコン」を弾いた。2回目は89年7月ダン・タイ・ソン、ヨーゼフ・スーク、堤剛の〈トリオの夕べ〉で「ノットゥルノ」、」「ドゥムキ」「大公」を聴いた。3回目は93年4月の札響定期で外山雄三指揮で「ショスターコーヴィチ第1番」だった。その後、20年以上も聴く機会がなかったのが不思議である。今回のプログラムでは忙しい職務の中でチェロを弾き続ける彼の人生の意気込みを肌で感じたい。

2016年9月11日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 
     第1番 ト長調 BWV1007、 第5番 ハ短調 BWV1011、    
      第2番 ニ短調 BWV1008、  第6番 ニ長調 BWV1012、
     第4番 変ホ長調 BWV1010、 第3番 ハ長調 BWV1009

バッハの無伴奏チェロ組曲は2000年頃にヨーヨー・マの第1・3・5番を購入し、その後カザルスの全曲盤を購入し、間もなくマイスキーの第2・4・6番を手に入れようと思ったが店頭で見つからなかった。やむなくマイスキーの第1・3・5番のCDを手に入れることになった。CDで一時よく耳にしたが演奏会で聴く機会は無かった、近年は家で聴くこともめったになかった。国内では上森祥平をはじめ海野幹雄、宮田大などの無伴奏チェロ組曲の演奏会が盛んに開催されるようになったようである。今回は日本の大御所・堤剛のリサイタルで聴き逃すわけにはいかなかた。

6曲から成る組曲の構成はアルマンド、クーラント、サラバンド、ジークという基本的な4つの舞曲に加えて第1曲に個性的な前奏曲と愛らしい自由な挿入舞曲がついている。挿入舞曲は第1・2番は1対のメヌエット、第3・4番は1対のブーレ、第5・6番は1対のガボット。極めてシステマティックで感心するほどの巧みな構成。

堤は以前の演奏会で曲の順番通りに演奏したが、後半に向かうほど高難度な技巧が凝らされた曲の演奏に後半は息切れがするほどであった体験に基づいて、曲の順番を入れ替えて今回の演奏会に臨んだようである。

第1番は曲集の冒頭を飾るにふさわしい清々しい音楽。最初の前奏曲が各曲の特徴を決定づけるものになっている。ドイツ起源のアルマンド、フランス起源のクーラント、スペイン起源のサラバンド、イギリス起源のジ―グが軸になって展開され、メヌエット、ブーレ、ガボットと呼ばれる舞曲が入るが細かいことは残念ながら区別できない。

2曲づつまとめて演奏して20分の休憩時間を2回入れて14時開始の演目の終了時間が17時20分。正味160分を要した演奏。カザルスの全曲演奏の時間は約130分だったので、前奏曲に味付けをしたり、繰り返しなどのメロディが増えているのかどうかは分らない。
チェリストの想いが伝わってくる演奏で何とか集中力を切らさないように努めて最初から最後まで聴けた。バッハの世界に入り込んで大曲を弾き切る堤剛の偉大さに驚嘆した。名実ともに日本の音楽界を代表する大家のKitara公演で聴衆の期待も大きく、かなり多くの音楽愛好家が客席を埋めた。演奏終了後の聴衆の反応も凄かった。
全力を使っての演奏で疲労困憊だろうと誰もが想像してアンコール曲はないだろうと思った。ところが2曲も演奏してくれた。体力、精神力も合わせて持ち続けて演奏力を維持していくのは至難の業ではないかと思った。音楽に見せた彼の姿勢に改めて感服した。
アンコール曲は「プロコフィエフ:マーチ」と「カザルス:鳥の歌」。

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宮田 大 チェロリサイタル

宮田 大は2009年ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで日本人として初優勝して話題を集めた。Kitaraには2012年12月、読売日響の創立50周年プログラム「3大協奏曲」で辻井、成田とともに出演し、「ドヴォルジャークの協奏曲」を演奏して聴衆の大喝采を浴びた。昨年は《Kitaraのクリスマス》で広上淳一指揮札響と共演して「ドヴォコン」を再演。今回は初めてのリサイタル。

以前のテレビ放映でDAIは3歳から両親が用意した特別に小さな楽器チェロを弾き始め、幼少の頃からチェロ一筋の特別な音楽教育を受けていたことは知っていた。9歳から出場するコンクールは全て第1位で2005年第74回日本音楽コンクールにも優勝。
去る5月17日「徹子の部屋」にゲスト出演して興味深い話が聞けた。チェリストの父、ヴァイオリストの母の下でチェロを始めたが、飴を左手に載せて練習して成功したら練習後に食べるという方法もあって子供ながらに楽しんでいた事。バレーボール部でセッターとして活動した事。栃木・東京間を新幹線で通ったことも話していて面白かった。16歳で小澤征爾指揮で協奏曲を演奏し、26歳で再びハイドンのチェロ協奏曲を共演した思い出も語った。小澤には自由に弾くことを教えられたという。チェロは左手に重心がかかリ左指で弦をはじく力を必要とするせいか、彼の左腕の筋肉は凄い固さで黒柳徹子も驚いていた。この時はとにかく世界的な才能を育んだ両親の愛も伝わってきた。

2016年6月5日(日) 開演13:00  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 サン=サーンス:白鳥 「動物の謝肉祭」より
 ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
 ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ ホ短調 Op.14-5
 ポッパー:ハンガリア狂詩曲
 プロコフィエフ:チェロ・ソナタ ハ長調 Op119

独立したチェロ作品として親しまれている「白鳥」。マイスキーのチェロ名曲小品集のCDで親しんだ。もともとは14曲のの小曲から成る組曲「動物の謝肉祭」の第13曲。美しいチェロの旋律が水上を滑る白鳥の姿を描いている。

ラヴェルのピアノ曲として最も親しまれているが管弦楽曲にも編曲されている。実に美しく優しい旋律を持つこの作品がチェロの楽器で奏でられるのに全く違和感はなかった。心に沁みるメロディにウットリ! ピアノ曲で聴く以上に心に響くものを感じた。

ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲は演奏される機会は多いが、「チェロ・ソナタ」を聴いたのは初めてかもしれない。10分程度のソナタは心地よく聴けた。

ポッパー(1843-1913)は記憶には無かった作曲家。今日の演奏会はソナタだけの予定プログラムの変更があるようだったので手元にあるチェロ名曲小品集のCD2枚(マイスキー、シュタルケル、藤原真理)を聴いてみた。こんな時でもないと聴く機会が余りない。「ハンガリー狂詩曲」が名曲集に含まれていて、シュタルケルが弾いていた曲で何度か耳にした懐かしいメロディが流れた。作曲家名はすっかり忘れていた。彼はチェロの名演奏家・作曲家だった。プラハ生まれでウィ‐ン・フィルの首席奏者を務めたという。ブタペスト音楽院で教鞭をとったこともあって、ハンガリー音楽と出会ったようである。
曲にはロマの情熱的な民俗音楽が表現されている。リストがピアノ曲に使った旋律がフィナーレで超絶技巧を駆使して現れた。圧倒的なフィナーレとなった。

ドビュッシーとR.シュトラウスのチェロ・ソナタが収録された宮田のCDをコンサート開始前に購入した。ポッパ―作曲の小品とアンコール曲に弾かれたラフマニノフのヴォカリーズが収められていたのは全くの偶然であった。

後半のプログラムは本日のメイン、プロコフィエフのソナタ。 多分、初めて耳にする曲。ピアノやヴァイオリン曲と同様に新しい音楽作りを行なったプロコフィエフらしい特徴のある曲であるが、案外と親しめそうな30分程度の曲。
曲の最初からピッツィカート奏法が使われて随所に20世紀作曲家による晩年の作品と思える作品。ここ何年も聴いていないが、プロコフィエフが亡くなった年の前年に1952年に完成した「チェロと管弦楽のための協奏曲」というロストロポーヴィチのCDが手元にあった。明日にでも聴いてみようと思う。

“人間の声に似た音を出すチェロを通して自分の言いたいことを伝えれる”とテレビ出演で語っていた宮田は思い通りの演奏を伸び伸びと展開した。
ピアノは7年前からペアを組んでいるというベルギー出身のジュリアン・ジェルネ(Julien Gernay)。彼はパリ国立高等音楽院でベロフに学び、プレスラー、シュタルケルにも学んでピアノと室内楽でプレミア・プリを得て卒業。世界中の主要なホールでのコンサートに出演して活躍中。

予定のプログラムが終了したのが2時半。1階はほぼ満席で2階正面の席を含めて集まった900人弱の聴衆は演奏終了後に大歓声を上げた。アンコール2曲の後に、“仕事とは思っていないが2時間の枠内でもう1曲”と言って、サントリーホール30周年記念で弾く予定のバッハの無伴奏チェロ組曲を演奏し、最後に日本人作曲家の曲をジェルネと一緒に演奏してコンサートを締めくくった。アンコール曲が4曲も披露されて聴衆は大喜びだった。

アンコール曲は①グラズノフ:吟遊詩人の歌、 ②ラフマニノフ:ヴォカリーズ、 ③バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番“プレリュード”、④植松伸夫:サヤルカンドにて。

帰りのサイン会が行われたホワイエには多くの人が並んで列をなした。 並んだ行列を見ると周囲は殆どご婦人ばかりでビッリ! 宮田は一人一人に丁寧な対応で人柄が出ていると思った。私もいつものように二言、三言。〈徹子の部屋〉の感想を述べると握手される手に力が入っていた。音楽家としてだけでなく、人間としてあらためて好印象を受けた。

宮田は国内外のオーケストラと共演し、クレーメル、バシュメット、ヴェンゲーロフ、デュメイなど著名なソリストとも共演を重ね、国内外の音楽祭にも出演している。現在、水戸室内管のメンバーとしても活躍して、忙しいスケジュールが待っているが、また来年以降の札幌での公演を期待したい。


イシザカ・ダンジュウロウの世界

昨日オープンした六花亭札幌本店の10階建てビル(6階~8階がコンサートホール)に初めて入った。ビル入り口の間口は広くはない。1階に2台のエレべ―タ―があり、6時半過ぎで乗り合わせる人も多かった。6階のボタンを押したが点灯しない。当分の間、5階が受付になっているようだった。5階の受付を通って部屋に入るとコーヒーやお茶の無料サービス。6階のホールに移動する前の特別な接待がなされていた。ショートケーキのサービスもあってビックリ! 開演前のサービスらしい。ひょっとしたら、オープンフェスティバルの期間中ずっとサービスが提供されるのかも知れない。時間に余裕を持ってゆったりと過ごす心構えで来館したらどうだろう。尚、7月のコンサートのチケットは全て完売というから超人気である。

木のぬくもりがあって素敵なホール。座席の幅が広くて脚の長い人は特に楽である。座っている人の前を通るのに支障のないような空間が充分にある。座り心地の良い椅子に座って2時間余りをゆったりとした気分で過ごせる快適なホール。入り口が一つだけで退場時に混みあうが、このくらいの不便は止むを得ない。

ふきのとうホールでの室内楽第1弾が始まった。

2015年7月6日(月) 開演時間 19:00~   ふきのとうホール

イシザカ・ダンジュウロウ(Ishizaka Danjulo)は1979年、ドイツ生まれ。4歳からチェロを始める。98年カサド、99年ルトスワフスキ、01年ミュンヘン、02年ベルリン・フォイアーマンと全ての国際コンクールに優勝して国際的な注目を集める。04年N響と共演して日本デビュー。日本では「石坂団十郎」として有名であったが、今回カタカナの名前で札幌登場。これまで多くの世界的な指揮者、オーケストラ、ソリストと共演。11年からドレスデン音楽大学教授。

ピアノのシャイ・ウォスナ‐(Shai Wosner)は米国はじめヨーロッパのオーケストラと共演。モーツァルト生誕250周年記念音楽祭ではウィ-ン・フィルと共演。07年からBBC響に定期的に客演し、プロムス音楽祭にも出演。ハーグナー、エーベルレなどのヴァイオリニストとは頻繁に共演。室内楽出演も数多いピアニスト。

〈Program〉
 ベートーヴェン(1770-1827):チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 作品5-1
 シューマン(1810-1856):民謡風の5つの小品 作品102
  コダーイ(1882-1967):チェロ・ソナタ 嬰ハ短調 作品4
 グリーグ(1843-1907):チェロ・ソナタ イ短調 作品36
 
前半は古典派とロマン派の作品。ベートーヴェンの時代にはチェロが独奏楽器として使用される機会が少なかった。ベートーヴェンはチェロ・ソナタは5曲しか残していない。2週間前にKitaraでチェコのミハル・カニュカが5曲全曲演奏会を開く珍しいコンサートがあった。第3番が一番有名だが、先月はじめて第1番を聴いた。チェロとピアノが対等に弾く曲は第3番以降で、第1番はどちらかと言えばチェロが控えめな演奏の印象だった。ベートーヴェンが20歳の時の作品。
ダンジュウロウの楽器から奏でられたチェロの音色は際立っていた。ピアノの活躍は確かにあったが、チェロの魅力ある響きが最初から心に響いた。もう最初から「イシザカ・ダンジュウロウの世界」に入った感じだった。多分、演奏会で聴くのは2度目で聴きやすかったのかも知れないが1曲目から彼の魅力にはまった。

シューマンの「民謡風の小品」はユーモアもあり、楽しい雰囲気の曲だった。帰宅して気付くとその作品のCDが全集の中に入っていた。

コダーイはハンガーリーの作曲家で、その名を知っている程度の知識しかない。20世紀初頭の現代音楽の雰囲気を持った作品。

グリーグはノルウエーが生んだ最も有名な作曲家としてその作品は知られているが、管弦楽曲、ピアノ曲、ヴァイオリン曲はCDを何枚か持っていて親しんでいるが、「ピアノとチェロのためのソナタ」は聴いたことが無かった。グリーグが1883年に作曲した作品。
早速CDを買って親しんでみたいと思えた曲であった。

「石坂団十郎」は一度聴いてみたいと思っていたチェリストであったが、今回やっと実現した。彼の奏でるチェロの音色は実に凄かった。世界一流の心に響く音色だった。「イシザカ・ダンジュウロウの世界」が少し見えた感じがした。

アンコール曲は「グリーグ:間奏曲」。聴衆の拍手に応えてもう1曲アンコール曲を披露したが、曲名不明。

※イシザカ・ダンジュウロウの使用楽器は日本音楽財団貸与のストラディヴァリウス1696年製作の“ロード・アイレスフォード”とクロンベルク・アカデミー貸与のW・シュナ‐ベル1997年製作。本日はどちらの楽器を使用したかは判らない。




ミハル・カニュカ チェロリサイタル(ベートーヴェン全曲演奏会)

〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉
ミハル・カニュカ チェロリサイタル

チェコ&スロヴァキア随一の実力派ソリストで、プラジャーク・カルテットのメンバーでもあるミハル・カニュカが世界的なチェロ奏者と評価されて、今回Kitaraのステージにリサイタルのソリストとして初登場した。

カニュカはプラジャーク弦楽四重奏団メンバーとしてこれまでKitaraに9回出演した。昨年6月の札響名曲シリーズにソリストとして登場し、チャイコフスキーの「ロココの主題による変奏曲」を演奏して万雷の拍手を浴びた。

2015年6月24日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

ベートーヴェン  チェロ・ソナタ全曲演奏会

Michal Kankaは1960年、プラハ生まれ。プラハ音楽院で学び、82年チャイコフスキー国際音楽コンクールで上位入賞。83年プラハの春国際音楽コンクールで第1位。86年ミュンヘン国際音楽コンクールで最高位(第1位なしの第2位)。ヨーロッパのトップオーケストラと共演を重ねており、世界各地でリサイタルを開いている。

ピアニストの三輪 郁(Iku Miwa)は1968年、東京生まれ。ウィ-ン国立音楽大学を首席卒業。同大学院を最優秀で修了。89年パルマ・ドーロ国際コンクール第1位、シューベルト国際や第1回浜松国際で上位入賞。ドルトムント・フィルや東京フィル、都響などの国内外のオーケストラと共演。ライナー・キュッヒルやラデク・バボラークなどとも共演。室内楽の他にもリサイタルも行い幅広い活動を展開している。

《プログラム》
 チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 作品5-1、 チェロ・ソナタ第2番 ト短調 作品5-2
 チェロ・ソナタ第3番 イ長調 作品69
 チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 作品102-1、チェロ・ソナタ第5番 二長調 作品102-2

ベートーヴェンの時代はチェロが独奏楽器として使われる機会は少なかったが、彼は「ピアノとチェロのためのソナタ」を5曲作曲した。
「第1番」と「第2番」はベートーヴェンが26歳の1796年に2曲セットで作曲された。宮廷におけるヴィルヘルム2世の御前での演奏のために作曲された曲といわれ、ピアニストでもあったベートーヴェンがチェロよりもピアノの活躍が多い作品に仕上げた。CDも持っていなくて初めて聴くのではないかと思った。作品は長調と短調で対照的な曲になっていた。想像以上に、ピアノパートは強い打鍵で、リズムも速く、手を休める暇もないくらいの忙しさ。チェリストよりピアニストの負担が多い曲で録音も他と比べて少ないのが判った感じ。2曲とも2楽章編成で演奏時間は各20分。とにかく全曲演奏会だからこそ聴ける機会になった。
 
「第3番」は5曲のなかでも最も親しまれている作品。他の作品が2曲ずつまとめられているのに対して、単独の作品番号になっている。ベートーヴェンの創作意欲が高く、名作が生まれた時期の作品。(*作品67は「運命」、68は「田園」)。ヴィルトゥオーゾがペアになったCD(ロストロボーヴィチとリヒテル、アルゲリッチとマイスキー)で聴く機会が多い。ピアノとチェロが対等の役割で活躍する曲。比較的に聴き慣れた旋律も出てきて演奏終了後は拍手大喝采。(約25分)

長時間演奏(正味100分)に鑑み、作曲時期とメイン曲を考慮してか、3部に分けて、休憩時間が2回設けられた。
「第4番」と「第5番」は1815年に作曲された。「第4番」は「ピアノとチェロのための自由なソナタ」と題されている。ベートーヴェンの主要作品が殆ど完成された後で、自由奔放な形式になっているのが特徴。一応、前半の2部と後半の3部をわけて2楽章構成か。(約15分)
「第5番」は急ー緩ー急の3楽章構成。ベートーヴェン最後のチェロ・ソナタで全5曲中で唯一の緩徐楽章のある曲。第3番のスケールの大きさや第4番の穏やかさを併せ持つ内容豊かな作品とされ、上記のヴィルトゥオーゾの録音もある。(約20分)

《ベートーヴェン チェロ全曲演奏会》を企画しても実現は困難だと思われるが、今回カニュカの決断で実を結んだと思う。ピアニストの三輪郁の協力なしには難しかったのではと演奏を聴いている中で思った。演奏家のエネルギーも称賛ものだが、聴衆の集中力も大変なものである。改めて二人の音楽家に敬意を表したい。

エネルギーを使い果たして“アンコール曲はなし”かと思ったが、演奏曲の中から「アダージョ」を再び演奏して21時25分終了。今晩のコンサートで注目したのがピアノがベーゼンドルファーだったこと。

※ミハル・カニュカは7月7日「七夕チェロ・リサイタル」で東京の日経ミューズサロンに登場して、バッハ、シベリウス、コダーイなどの無伴奏の作品を演奏する予定になっている。









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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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