札響ウインド・アンサンブル演奏会(モーツァルト:グラン・パルティータ)

垣内悠希が指揮するコンサートを聴く機会を一度は持ちたいと思っていた。彼は1978年東京生まれ。東京藝術大学、ウィーン国立音楽大学に学び、2011年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。フランス、ベルギー、ロシアなどの海外のオーケストラを含め日本各地のオーケストラにも客演している俊英の指揮者。昨年4月より札響指揮者に就任したが、定期や名曲シリーズにはまだ出演していない。偶々、ふきのとうホールでのコンサートの出演を知って六花亭札幌本店まで出かけてチケットを購入していた。

2017年4月5日(水) 午後7時開演  六花亭札幌本店 ふきのとうホール

〈出演〉札幌交響楽団木管楽器奏者&ホルン奏者
〈指揮〉垣内 悠希(Yuki Kakiuchi)
〈曲目〉R.シュトラウス:13管楽器のための組曲 変ロ長調 op.4
    モーツァルト:セレナード第10番 変ロ長調 K.361 「グラン・パルティータ」

R.シュトラウス(1864-1949)の父は宮廷オペラのホルン奏者、王立音楽学校教師であったこともあり、息子リヒャルトは幼少より音楽に秀でていた。17歳で「13吹奏楽器のためのセレナード」を書いた曲が翌年ドレスデンで初演された。その後、ミュンヘン大学に入学して哲学や美術も聴講して教養を広げた。84年マイニンゲン管弦楽団のために「13管(=吹奏)楽器のための組曲」を作曲し、ミュンヘンで自らの指揮で初演。翌年マイニンゲン宮廷管弦楽団の第2指揮者に就任して、ビューローの代理指揮者となる。86年に病気のためマイニンゲンを去り、作曲家としての道を歩んだ。

この曲の楽器編成はフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4。4楽章構成。今までに全く聴いたことのない曲で見当もつかなかった。ただ「23の独奏弦楽器のためのメタモルフォーゼン」(*1945年の作品)という彼の曲のディスクが手元にあって、シュトラウスらしいタイトルだとは思っていた。
Ⅰ.前奏曲 Ⅱ.ロマンス Ⅲ.ガヴォット Ⅳ.序奏とフーガ(*各楽章のドイツ語の翻訳は当てずっぽう?)。第1楽章は少々重々しい感じだったが、第2・3楽章は軽やかな雰囲気で第4楽章は歯切れが良い曲に思えた。30分余りの曲の良さは充分には分からなかった。

モーツァルトのセレナードの中で《第13番 弦楽のためのセレナード 「アイネ・クライネ・ナハトムジ―ク」》が最も親しまれていて演奏機会も多い。「第10番」は彼が書いた管楽アンサンブルで最大の編成であり、全曲で50分ほどの大曲。楽器編成がオーボエ2、クラリネット2、パセットホルン2、ホルン4、ファゴット2、コントラバス1(*コントラファゴットで代用される場合は「13管楽器のためのセレナード」と呼ばれることもある)。オルフェウス室内管のディスクで数回聴いたことがある曲だが、メロディには親しむまでには至っていない。午前中も一応は曲を聴いてコンサートに臨んだ。
「グラン・パルティータ」は“大組曲”の意味。7楽章構成。Ⅰ.ラルゴ-モルト・アレグロ Ⅱ.メヌエット Ⅲ.アダージョ Ⅳ.メヌエット、アレグレット Ⅴ.ロマンスーアダージョ Ⅵ.主題と変奏(第1~第6) Ⅶ.ロンド-モルト・アレグロ。
印象的なメロディが多く、多彩な楽器の音色が駆使されている。生演奏で聴く曲は良さが伝わる。第1楽章からモーツァルトらしい軽快なメロディの連続。ハーモニーも美しく心地良く聴けた。特に心躍るようなフィナーレはバロック時代の組曲パルティータの名にふさわしかった。

小ホールのステージは13名の奏者に指揮者が加わると狭く見えた。リーダーがいる弦楽合奏と違って、楽器の種類が多い管楽合奏には指揮者がいないとハーモニーが難しいのかなと感じた。大編成でなくても指揮者の存在感のあるコンサートを味わった。
垣内はフランス在住で本拠地をフランスと日本においての活動なのだろう。コンサートガイドによると、3月も札響、オーケストラ・アンサンブル金沢、京都響、東京シテイ・フィルと4回全く違ったプログラムで全国を駆け巡っての公演活動は頼もしい限り。4月1日もKitaraで札響と共演した様子。
現在、ポンマー、エリシュカ、尾高という名指揮者で最強時代を築き上げている札響。佐藤俊太郎、垣内悠希など若い指揮者が札響に吹き込むエネルギーも潤滑剤になっているような気もする。最近、安定した実力を誇る札響オーケストラであるが、管楽器セクションの著しい実力向上の結果とも言えるだろう。今回のような管楽作品のプログラムはオーケストラ全体の向上にも繋がる試みで大いに評価したい。

今夜も満員となったホールは大いに盛り上がった。六花亭主催のコンサートではプログラム・ノートが無いが、短い解説でも聴衆にとっては有難いのではないかと思う。コンサート前のコーヒー&ケーキのサービスも悪くはないが、コンサートのサービスの在り方の工夫があっても良いと思った。

※ブザンソン国際指揮者コンクールは1951年に第1回が始まって59年の第9回で小澤征爾が優勝し、国際指揮者コンクールとして長い伝統を誇り、日本人優勝者が多いコンクールとしても知られている。93年の第43回まで毎年開催されていたが、その後は隔年開催となっている。
ブザンソンはフランス東部の都市。時計産業(高級時計製造業)で知られる。2017年9月に第55回コンクールが予定されているが、結果も楽しみである。
歴代のブザンソン国際指揮者コンクールの日本人優勝者。
 1959年 小澤 征爾   1982年 松尾 葉子   1989年 佐渡 裕   
 1990年 沼尻 竜典   1991年 曽我 大介   1995年 阪 哲朗   
 2001年 下野 竜也   2009年 山田 和樹   2011年 垣内 悠希


 

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上野星矢フルートリサイタル2016 札幌公演

上野星矢(Seiya Ueno)の名を知って初めて聴いたフルート・リサイタルが2015年2月。非常に魅力的なフルート奏者だった。《ジャン=ピエール・ランパル フルート・リサイタル》を1987年に旭川で聴いたことがあって、日本の奏者では工藤重典のコンサートは何回か聴いていた。上野のコンサートを聴く大きなきっかけも多分ランパル国際コンクール優勝者で新進気鋭の奏者ということだったと思う。札幌交響楽団の定期演奏会では首席フルート奏者・高橋聖純の奏でるソロ・パートを通してフルートの音色の格別な美しさに聴き惚れることが多い。上野星矢は国内外のオーケストラと共演を重ね、世界の舞台でリサイタルや室内楽を展開し、カーネギーホールでもデビューして活躍中のフル-ト界の俊英。

2016年11月16日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 ジョルジュ・ユー:ファンタジー
 ラヴェル(上野星矢&内門卓也編):マ・メール・ロワ
 ヴィドール:フルート組曲 作品34
 ライネッケ:フルート・ソナタ「ウンディーネ」 作品167
 ビゼー(上野星矢&内門卓也編):カルメン幻想曲

George Hue(1858-1948)はフランスの作曲家で初めて聞く名前で、綴りに関心があった。Victor Hugo(ヴィクトル・ユーゴー)は有名なフランスの小説家で、綴りから苗字の頭文字“H”は読まないラテン系の言語(仏語、伊語など)から判断できる。(*サッカーの本田(Honda)はイタリアでは“オンダ”と呼ばれている。)
話題が横道にそれたが、「ファンタジー」の世界に導かれるイントロとなった小品。

「マ・メール・ロワ」はラヴェル(1875-1937)に懐く友人の子供2人のためのピアノ連弾曲として書かれた。後にバレエ版や管弦曲版に編曲された。いつも耳にするのはオーケストラ版で演奏会に備えて聴くCDはブーレーズ指揮ベルリン・フィルかインバル指揮フランス国立管である。7曲か8曲構成の曲が編曲版で演奏された。子供を神秘的で幻想的な世界に誘うラヴェルならではの音の魅力がフルートとピアノで充分に表現されていた。曲調に変化があってフルートの高度な演奏技巧も鑑賞できて良かった。

ヴィドール(1844-1937)の名はオルガン曲を通して知っていた。パリ音楽院オルガン科教授以外に作曲科教授を務めていたのは知らなかった。約20分のフルート組曲でピアノの旋律の美しさも同時に味わえた。ピアノ伴奏の内門卓也(Takuya Uchikado)もかなり優れた力量を示した。(*一緒に聴いていた妻がピアニストを褒めていた。)
内門はクラリネット奏者として名高いオッテンザマー兄弟をはじめ世界の一流奏者と共演しているというからその実力のほども理解できる。東京藝術大学作曲科卒で同大学院修士課程修了。今回のコンサートで編曲も担当しているが幅広い活動がうなずける音楽家。

ライネッケ(1824-1910)はドイツの作曲家で彼の代表作の一つが、1882年に書かれた「フルート・ソナタ」。戯曲「ウンディ-ネ」に着想を得た作品。4楽章構成の曲に物語が詳細に書かれていたが第1楽章の話の筋だけ苦労して読んでダウン! 用紙は立派だが紙面が濃紺で書かれた字が読みづらい。読み手への配慮が足りない制作者の感覚にビックリ!
「水の精」のストーリーと分ったので、あとは音楽に身を任せた。何とか演奏は楽しんだが、少々フラストレーションが堪って残念ではあった。

ビゼー(1838-75)もフランスの作曲家として極めて有名で、オペラ《カルメン》は人々に広く愛されている。劇中の魅力的な旋律を使った「カルメン幻想曲」が色々な楽器で演奏されている。私はサラサーテやワックスマンのヴァイオリン曲に親しんでいる。フルートによる「カルメン幻想曲」を聴くのは初めてだと思う。 
超絶技巧を駆使して親しいメロディが奏でられるのは楽しい。上野&内門二人の編曲による演奏は15分にも亘る熱演だった。

アンコール曲は「尾崎 豊:I Love You 」で昨年と同じだったが、初めて聴いた人には意外な選曲。

※上野は2015年秋にアメリカ国内ツアーを8か所で開催して成功を収めたようである。“Ueno”は日本人はローマ字読みで正しく読めるが、アメリカ人は戸惑ってから“ユーイノ”と発音すると思う。アルファベット読みになるからである。大リーグで活躍中の「上原」は渡米当時「ユーイハラ」と呼ばれていた。親しくなると苗字で呼ばないで、ニックネイムを使う。日本語で「ウ」で始まる語は英語では「ユ」が原則。ユガンダ、ユルグアイ、ユクレイン(Ukuraine)。
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工藤重典アニバーサリー・フルート・リサイタル(ランパルに想いを馳せて)

工藤重典がパリ音楽院で師事したフル―ト界の不滅の巨匠ジャン=ピエール・ランパル(Jean-Pierre Rampal)のリサイタルは1987年9月に旭川で聴く機会があった。ランパル(1922-2000)は1964年に初来日してから15回目にあたる87年の日本ツアー22公演で日本でのコンサート回数が当時で225回に達した。器楽界に大変革をもたらす活躍をしたと言う意味ではチェロのパブロ・カザルス、トランペットのモーリス・アンドレ、オーボエのハインツ・ホリガーなどに比肩されるヴィルトゥオーソである。彼らは楽器に新しいページを開いて音楽界全体に計り知れない影響を与えた最高の演奏家。カザルスの生演奏は聴いたことは無いが、他の演奏家のコンサートを聴いたことがある事実は嬉しくて堪らない。

ランパルはウィ-ン国立歌劇場管弦楽団、パリ国立オペラ座の首席奏者を歴任して、一時パリ音楽院主任教授も務めたが、世界中でソロ活動を展開した。工藤重典はパリ音楽院でランパルに師事して、1980年第1回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールの優勝者であり、ランパルの秘蔵っ子と言えよう。

工藤重典は1999年6月、Kitara 小ホールで「工藤重典 トリオ・エスプリ・ド・パリ」でチェンバロ(ピアノ)、オーボエと三重奏団を組んでパリの仲間と室内楽を演奏した。2007年5月には「工藤重典フルート・ファンタジー」と銘打ってKitara大ホールでリサイタルを開いた。(このコンサートでのピアノ伴奏は野原みどりであった)。その他、工藤はKitaraの記念演奏会や北海道音楽界の節目となるコンサートに度々出演している。直近で聴いたのは10年2月の高関健指揮札響定期で「モーツァルト:フルート協奏曲第1番」。

2015年9月11日(金) 開演19:00  札幌コンサートホールKitara小ホール

Shigenori Kudo Anniversary Flute Recital ~フルートと共に50年

工藤重典は1954年、札幌生まれ。75年、桐朋学園音楽大学を中退して渡仏、パリ音楽院でランパルに師事。78年、第2回パリ国際フルートコンクール第1位。79年、フランス国立リール管絃楽団に首席奏者として入団。79年、パリ音楽院を1等賞で修了。80年、第1回ジャン・ピエール・ランパル国際フルートコンクール第1位。87年、リール管を退団してソロ活動を展開し、パリ・エコール・ノルマル音楽院教授に就任。
以後、04年までにリサイタルを中心に40ヶ国180以上の都市で演奏し、国内外のオーケストラとも数多く共演。1988年、《ランパル&工藤重典/ 夢の共演》で文化庁芸術作品賞受賞。
83年からランパル国際フルートコンクールの審査員。87-09年、サイトウ・キネン・オーケストラ首席フルート奏者、90年から水戸室内管首席フルート奏者。13年、オーケストラ・アンサンブル金沢の特任首席奏者。現在、パリ・エコール・ノルマル教授、東京音楽大学教授、上野学園音楽大学教授。

~工藤重典が10歳でフルートを始めて50年を記念してのコンサート~
〈PROGRAM〉
 クレメンティ:フルート・ソナタ ト長調
 モーツァルト:ソナタ ヘ長調 K.376
 シューベルト:ソナチネ 第1番 二長調
 ドビュッシー:《子供の領分》より「小さな羊飼い」
         《前奏曲第1集》より「亜麻色の髪の乙女」
         《子供の領分》より「ゴリウォ-クのケイクウォ-ク」
 サン=サーンス:ロマンス ヘ長調 Op.36
  チャイコフスキー:6つの小品 Op.51より 第6番「感傷的なワルツ」
 ツェルニ―:協奏的二重奏曲 ト長調 Op.129
  
ピアノ伴奏は工藤重典の娘、工藤セシリア(Cecilia Kudo)。彼女はフランス生まれ。フランス国内の多くのコンクールに出場して、全て第1位を獲得。8歳でフランスと日本のコンサートに出演。東京、札幌、横浜、浜松などでソロや室内楽の公演を行っている。シンガポール、ロシア、韓国における父のツアーで伴奏ピアニストを務めている。

前半の3曲の原曲はヴァイオリン曲。いずれも調性が長調で明るい曲。フルートが奏でる音は特に美しいといつも思っているが、工藤の楽器から奏でられた音は格別に美音で、最初から最後まで心地よい響きを存分に楽しんだ。
3曲とも3楽章構成で聴きごたえがあった。ピアニストは最初は曲が「フルートとピアノのための曲」と思って伴奏していたようである。それほど曲が自然で、フルート奏者の父の演奏が素晴らしいとも言えるのだろう。

後半の聴き慣れた小品は会場が和むような曲が中心でフランスもの。ドビュッシーの3曲は原曲が有名なピアノ作品。「子供の領分」よりの2曲は前回のリサイタルでも演奏した。
今夜のコンサートで工藤はドビュッシーやラヴェルに代表されるフランスの作曲家の曲の特徴を語った。フランスの音楽は「五感に訴える音楽」であり、ドイツの音楽は「和声がしっかりした内臓の音楽」と話したのを聞いてとても納得がいった。ドビュッシーは「風、水、光、空気、川のせせらぎ、太陽の日差し」などを音にしたと言う。

サン=サーンスの〈フルートのための作品〉は聴きごたえがあった。

ツェルニ―(1791-1857)はオーストリアのピアニスト・作曲家。ピアノ教則本で知られている。「協奏的二重奏曲」はピアノとフルートの曲。4楽章から成る本格的な曲。この曲の演奏ではピアノもフルートと対等に渡り合って、セシリアもかなりステージ慣れしている印象を受けた。父が偉大過ぎるので大変だとは感じた。
親子で演奏するのは、マイスキーやアシュケナージ親子のデュオがあったが、日本人では珍しく微笑ましく感じた。

アンコール曲は4曲。「パラディス:シシリエンヌ」、「ショパン:子犬のワルツ」、「フォーレ:子守唄」、「モンティ:チャルダッシュ」。1曲目はウィ-ンの女性作曲家の曲で初めて聞いたが、ショパンとモンティのメロディは全ての人に親しまれている速いリズムでの曲をフルート編曲で吹く技はまさに超絶技巧。開場に詰めかけたファンを魅了した。

小ホール1階の客席はほぼ満席だったが2階に客を入れるために、主催者は公演間近かになってモニターの条件で某プレイガイド会員に半額で売り出した。私自身は久しぶりで日本のフルート界の第一人者の演奏を聴こうとKitara閉館中の4月に郵送でチケットを取り寄せていた。妻がインターネットを通して安い料金が魅力で申し込み一緒に出かけることになった。得をした気分もあってか、コンサートを充分に楽しんだ様子。自分自身もそんな経験が無いわけではない。今は無くなってしまったが、「北海道芸協」には今も感謝の念を持ち続けている。

※「工藤重典アニヴァーサリー・コンサート」が9月21日サントリーホールで開催される。50周年の機会に工藤自身が演奏したい曲目を選び共演者に頼んで実現する運びになった記念演奏会。日本の第一線で活躍している演奏家たちが出演する豪華なコンサート。東京在住の人にとっては珍しくて楽しいコンサートになるであろう。チョット羨ましい。盛会を祈りたい。
この情報が入った「音楽の友9月号」に面白い記事が載っていた。
工藤は子供の頃にフルートとアルペンスキーに熱中していて、将来の進路をどちらに決めるか迷うくらい両面で才能を発揮していたらしい。スキーでは将来の人生設計に不安が残るので、フルートの道を選ぶことになったと言う。正しい選択だったのだろうが、ひょっとしたらスキーでオリンピック選手になっていたかも?

小山 裕幾フルート・リサイタル

小山裕幾に注目したのは世界的な神戸国際フルートコンクールに日本人として初めて優勝した時であった。このフルート単独の国際コンクールは1985年に始まり4年毎に開催されている。第2回の89年のコンクールでエマニュエル・パユが第1位となり、その後パユは93年にベルリン・フィルの首席ソロ奏者に就任した。この大会の入賞者はパリ管、ロイヤル・コンセルトへボウ管、シカゴ響、バイエルン放送響の首席奏者に就任するなど権威ある若手の登竜門のコンクールとなっている。小山自身も昨年フィンランド放送響の首席奏者に就任した。(*17年の第9回神戸国際コンクールは神戸市で廃止の動きがあり、パユが存続を願う文書を神戸市に提出するなど廃止反対の運動も起きている。)

《六花亭 ふきのとうホール》 オープニングフェスティバル
 
フルートの新鋭  小山裕幾リサイタル

2015年7月24日(金) 開演時間 19:00  ふきのとうホール

小山裕幾(Yuki Koyama)は1986年、新潟県長岡市生まれ。99年第53回全日本学生音楽コンクール全国大会(中学校の部)第1位、02年第56回全日本学生音楽コンクール(高校の部)第1位、同年第7回びわ湖国際フルートコンク-ルにて高校生の部第1位。04年第73回日本音楽コンクール第1位。05年第6回神戸国際フルートコンクールで日本人初の第1位。
オーレル・ニコレ、エマニュエル・パユらに師事。日本各地でリサイタルを開催。N響をはじめ首都圏の国内主要オーケストラとの共演を重ねる。10年慶應義塾大学理工学部卒業。10年9月からスイス・バーゼル音楽院にて研鑚を積む。14年、フィンランド放送交響楽団首席フルート奏者に就任。

斎藤 龍(Ryu Saito)は1981年、神奈川県出身。東京藝術大学卒業。同大学院修士課程修了後、チューリッヒ藝術大学大学院に学ぶ。第16回ブラームス国際コンクール第3位。これまでに神奈川フィル、東京フィルなどと共演。東京文化会館でデビュー・リサイタル。ベートーヴェン・ソナタ全曲演奏会プロジェクトをはじめ、ドイツやスイスでもリサイタルを開催。ピアノトリオやピアノカルテットを組み室内楽でも積極的に活動。10年より15年まで東京藝術大学非常勤講師を務め、現在は沖縄県立芸術大学非常勤講師。

〈Program〉
 テレマン(1681-1767):幻想曲 第7番 二長調
 ゴーベール(1879-1941):フルートソナタ 第1番
 シューベルト(1797-1828):ソナタ 第4番 イ長調 D574
 C.P.E.バッハ(1714-88):ソナタ イ短調
 ヴィドール(1844-1939):組曲 作品34
 シュールホフ(1894-1942):フルートソナタ
 
今夜のコンサートに先立って、7月11日に小山は故郷、長岡市で《フィンランド放送交響楽団首席フルート奏者就任記念 小山裕幾フルート・リサイタル》を開催して凱旋公演を行った。本人にとって一生忘れ難いコンサートになったと思う。

テレマンはバッハやヘンデルと同時代の作曲家。彼は家庭用音楽をたくさん書き残した。当時の代表的な楽器、リコーダーを用いた作品が多くある。現在はフルートを演奏する作品でその名を聞くことが多い。エマニュエル・パユのリサイタルの時に作曲家の名を聞いて覚えていた。2008年のパユの《無伴奏フルート・リサイタル》でのテレマンの「無伴奏のための12の幻想曲」全曲とジョリヴェの「5つの呪文」の演奏は忘れられない思い出。
「第7番」は2楽章構成で無伴奏。第1楽章はフランス風序曲スタイル。第2楽章は軽快なプレスト。

ゴーベールの名は初めて耳にする。 フルートのヴィルトゥオーソや指揮者として知られ、フルートの作曲家として活躍したというフランス人。曲は3楽章構成。20世紀の作曲家の作品であるがとっつきにくさは無い。

シューベルトが1817年にヴァイオリン・ソナタとして作曲した曲のフルート編曲版。先日の郷古廉&津田裕也のデュオで原曲は聴いたばかりだった。今日はコンサートに出かける前にYouTubeでクレーメルとアファナシェフの演奏を聴いてみて、先日のコンサートの模様を思い浮かべた。編曲が行われた時期は不明。
ピアノパートは殆ど同じなのだろうがヴァイオイオリンとフルートでは印象が異なるのは当たり前なのか。管楽器と弦楽器では曲の印象が違った。ヴァイオリン曲の方が親しみ易い感じがした。

前半は3曲。休憩後の後半は3曲。フルートの心得のある人は別にしてポピュラーな曲は無いが、ある意味では聴きごたえのある選曲。

C.P.E.バッハは大バッハの次男。父よりもテレマンの作曲様式を受け継ぎ古典派音楽の基礎を築いたと言われるドイツの作曲家。無伴奏の曲は息継ぎが大変だろうと思う。前半の無伴奏曲が7分間休みなし。後半のバッハの無伴奏曲も12・3分の曲。08年のパユのコンサートではピノックとマンソンの二人の共演者が出演できなくなり結果的にパユ単独でのコンサート開催で無伴奏リサイタルだった。若かったから(当時37・8歳)キャンセルしないで頑張れたのだと思う。若くても管楽器奏者の無伴奏曲の演奏は大変だと思う。3楽章構成で比較的に長い曲を小山は難なくこなしているように思えた。

ヴィドールはフランスのオルガン奏者、作曲家。彼の「オルガン交響曲」はKitaraのオルガンで何度か聴いたことがある。
4楽章構成。第1楽章はモデラート、第2楽章はスケルツォ、第3楽章はロマンス、第4楽章フィナーレ。楽章ごとに曲の雰囲気が伝わる。20分弱の曲。

シュールホフ作曲の「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」は昨日聴いたばかり。初めて聞く作曲家の作品を2日続けて聴くのは極めて珍しい。彼はチェコの作曲家、ピアニスト、指揮者。あらゆるジャンルの作品を書き、200もの曲を遺した。
4楽章構成で20分強の曲。民謡風のメロディが親しみ易い。スケルツォで独特な雰囲気を醸し出し、アンダンテで曲調に変化を生み、激しいリズムでのフィナーレ。現代曲でも理解しやすい曲。

小山裕幾は技巧を駆使しての演奏で、疲れも見せずに玄人好みのプログラムを弾き切った。今回のような重量感のあるプログラムでコンサートを開くことは簡単ではないような気がした。
ピアニストもピアノ伴奏の域を超えた領域での演奏は実力が問われる。フルートの高度な技量が発揮される場面ではピアノのテクニークも必要とされる。齋藤龍の健闘も光った。
ピアノはいつものピアノとは違って今日はベーゼンドルファーが使用された。
 
アンコール曲は「ボルヌ:カルメン幻想曲」。
アンコール曲は十数分もかかる「カルメン幻想曲」で聴衆も大喜び。演奏が終わると感動の溜息を伴った一際大きな歓声が沸き起こった。ビゼーのオペラ「カルメン」を要約したワックスマンのヴァイオリン曲が親しまれているが、フルート用にボルヌが作曲したようである。聴衆はすっかり満足した様子で会場を後にした。

ミニコンサート(by 金子亜未)in Steinway Studio

昨日の午後は北海道教育大学岩見沢校の芸術・スポーツ文化学科の学生約30名を対象にしたKitara案内活動に携わった。小ホール・大ホール・楽屋を16:30~17:30の時間帯で8名のボランティアで対応。ビジネス専攻の必修講座の一環としての見学。5グループに分けて短い時間で効率的に案内。2008年に彼らを案内する活動に従事したことはあるが、小編成のグル―プに分けてより丁寧な対応に変わってきている。ただ、今回は午後2時から大ホールでコンサートがあったためだろうが、いつもは1時間半かける案内を1時間で行うことで要点を押さえて小ホール、大ホール、楽屋、ホアイエを案内。将来は芸術・スボーツ関係のビジネス分野で活躍しようとする意欲を持った学生なので熱心に学習していた。

この日は18:00から最後の職場を共にした同僚との年1回の会合もあって少々忙しい日程をこなした、翌28日は9:00~12:30まで時計台でのボランティア活動に従事した。(今回の時計台活動では特に印象に残る出来事があったが、別な機会に書いてみたい)。午後はミニコンサートとタイト・スケジュールになってしまった。

札響首席オーボエ奏者の金子亜未のミニリサイタルは是非聴いておきたかったので、何ヶ月も前から計画に入れていた。

2015年6月28日(日) 14:00~14:45  井関楽器札幌3F スタインウェイスタジオ

金子亜未(かねこ あみ)は1990年、千葉県出身。2012年東京芸術大学管打楽器科を首席で卒業。2010年、第79回日本音楽コンクールオーボエ部門第3位。第28回日本管打楽器コンクールオーボエ部門第1位。2012年7月、札幌交響楽団オーボエ首席奏者として入団。同10月、第10回国際オーボエコンクール軽井沢第2位(*日本人最高位)。
13年7月、札響夏の特別演奏会で「モーツァルト:オーボエ協奏曲」にソリストとして出演。室内楽で14年9月、弦楽三重奏団レイラと共演して「モーツァルト:オーボエ四重奏曲」などを演奏。3週間前の6月7日にはアマチュア・オーケストラの札幌シンフォニエッタと共演してモーツァルトのオーボエ協奏曲を含めセレナード、交響曲第40番などの演奏にも加わってアマチュアのレヴェル向上に貢献。
札響の公演では毎回ソロ・パートで聴衆を魅了する演奏を展開している逸材のオーボエ奏者。今回は彼女のソナタを初めて聴く機会を得た。

〈Program〉
 ドニゼッテイ(1797-1848)::ソナタ へ長調 op.50
 ヘンデル(1685-1759):ソナタ ト短調 Op.1-6 HWV364a
 ポンキエッリ(1834-1886)::カプリッチョ
 シューマン(1810-1856):アダージョとアレグロ 変イ長調 op.70

ドニゼッテイは「愛の妙薬」などオペラの作曲家として名高い。この「ソナタ」はオペラの雰囲気を持った曲の調べ。

ヘンデルの作品は原曲がヴァイオリン曲でオーボエ曲に編曲したものを演奏。金子亜未は小学生の時にオーボエを吹き始め、管弦楽に加わっていたと言う。高校で初めて演奏したソロがこのヘンデルの曲で印象深い作品として今回のプログラムに入れたと語った。高校の時は楽な気持ちで演奏したが、“話す方が緊張する”と今回の印象を述べた。

ポンキエッリはその名を初めて聞くが、演奏前にピアノで聴いた調べは何となく聞いたことがありそうな親しみのある曲。曲名も面白そう。オペラ「ジョコンダ」からの1曲という。

シューマンの曲名は何処かで聞いたことがある気がした。休みなく吹き続ける高難度の演奏曲に思えた。何となくシューマンらしい曲で聴くのは初めてではないと思った。帰宅してシューマンの作曲した記録を見たら、この曲が手持ちのCDにあることが判った。器楽曲で所有しているらしいが、直ぐには判らない。

オーボエはフルートと共に一段と美しい音を奏でる。あっという間の45分間。毎回、伴奏を担当する新堀聡子のピアノの腕も確かなものと感じる。満足感にみちたコンサートとなった。

PMFの折にウィ-ン・フィルのマルティン・ガブリエル(2002年)や宮本文昭のリサイタル(2006年)などでオーボエのソロは聴いたことがあったが、オーボエ奏者のリサイタルを聴く機会はめったに無い。
オーボエ奏者がリードを自作する話を金子が話したが、10年ほど前の宮本の話を覚えていて思い出した。こんな話を聞けるのも特別な機会ならではである。
サロンの雰囲気を持つコンサートの良さが味わえ、ソリストを身近に感じれるミニコンサートもKitaraとは違う楽しさがある。

アンコール曲は「ガブリエルのオーボエ」。ブログを書いていて気が付いたのであるが、上記のガブリエルと同一人物の曲かと、今、ふと思ってみた。確かなことは判らない。


プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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