札幌北高等学校合唱部 第36回定期演奏会

年に一度の札幌北高合唱部の定期演奏会の時期となった。3月下旬に入っても歩道には残雪があって春の訪れを感じれない。今年も例年と同じように合唱部から案内状と招待券が送られてきていた。年度末は何かと慌ただしい時期で落ち着いた気分で過ごすことが少ない。昨年は脚が不自由でタクシーで移動していたことを考えると今年は気分的に楽である。10年、11年、13年、15年に続いて北高定期演奏会を聴くことになった。

2017年3月27日(月) 開演:18:30  札幌コンサートホールKitara大ホール

1st Stage:[祈る] ~松下耕作品集~
2nd Stage〈OBステージ〉:[南の島の物語]~九州・沖縄の音楽を集めて~
3rd Stage:[春夏秋冬]~めぐる季節と旅立ち~
4th Stage〈合同ステージ〉:信長貴富作曲 混声合唱とピアノのための [新しい歌](2台ピアノ版)

コンサートの始めに本日の出演者全員がステージに登場して歌う札幌北高等学校校歌は在職時にも学校で聴けなかった迫力のある大合唱なのでひと際感慨に浸った。(*時代が平成になって札幌北高を退職した職員が毎年一度集まって会合を開いている折に校歌を歌うこともあって歌に親しんでいるが、在学生・卒業生が一緒になって歌うレヴェルの高い合唱は感慨一入。)

合唱部員49名(男子14、女子33)による第1ステージは格調の高い合唱曲。松下 耕(1962- )は現代日本合唱界を代表する作曲家。「祈ること」を基調にしたテーマの作品から4曲。鳥や内戦を題材にして平和と幸せを祈る詩を音で綴った作品。コンクールに向けて取り組み常日頃から言葉を大切にして歌う習慣を身に着けてきている成果が美しいハーモニーとなって聴けた。

第2ステージは東京方面からも駆け付けた約150名の合唱部OB・OGによるステージ。九州(特に熊本)・沖縄の曲から4曲。①あんたがたどこさ ②安里屋ユンタ ③おてもやん ④島唄。4曲とも自分の世代では歌詞も知っていて懐かしい民謡。混声合唱のために作曲されたものだが、良い曲は時代が流れても何らかの形で音楽が歌い継がれて行くことを目のあたりにした。(*昨年のPMFウイーンが室内楽曲として弦楽器に乗せて熊本のわらべ歌「あんたがたどこさ」を中心とした日本のメロディをアンコールに演奏した場面を思い出した。)若い学生もこの機会に日本の伝統的な歌が編曲されて新しい角度から時代をつなぐ面白さを味わったことだろう。

第3ステージはチョット堅苦しい合唱曲を離れてポピュラーな曲。制服を私服に着替えて現代のティ-ン・エイジャーらしい溌溂として心も軽くなるステージ。①蕾(コブクロ 2007) ②花火(aiko 1999) ③青い珊瑚礁(松田聖子 1979) ④秋桜(山口百恵 1997)⑤なごり雪(かぐやひめ 1974) ⑥麦の唄(中島みゆき 2014)。

大体の歌詞とメロディに親しんでいたのは③以降、①はメロディだけで②はタイトルを含めて全然知らなかった。プログラムを見なくても作詞・作曲者が分かったのは“さだまさし”と“中島みゆき”。どんなジャンルでも良い歌は歌い継がれるのだと思った。歌の紹介の仕方も巧み。マイクの使い方も上手で、話し手の声はほとんど私の耳に届いた。(*コンサートではマイクの使い方によってホールで声が通らないことが多い。私の耳のせいかとしばしば思いはするが、、、)「花火」での照明が目を引いた。Kitaraの照明装置をたっぷり使っての演出にはビックリするやら感心するほどであった。衣装や振付に工夫がなされていたが、ステージ真上と臨時の照明器具を使っての演出はKitaraの協力を得たのかなと思った。花火の雰囲気が出ていてとても良かった。舞台芸術として、単なる音楽だけでなく幅広く芸術的な試みをできる範囲で追求することは好ましい。
学校教育の中での合唱にとどまらず、歌う楽しさを人々に広く伝えている姿に心を打たれるものがあった。

最終ステージは総勢200名ほどの在校生と卒業生の合同ステージ。合唱として「新しい姿」を作り上げている21世紀の合唱。小学校・中学校・高校・大学・一般の部と合唱における日本のレヴェルはかなり高いのではないかと思っている。作曲家と合唱指導者が協力して新しい合唱曲を生み出す姿がこのステージを通して改めて感じた。

外国人の翻訳詩を題材として信長貴富(1971- )が2000年に「新しい歌」を作曲。当初の男声版、混声版が08年に「男声・2台ピアノ版」となった。札幌北高合唱部顧問の委嘱で書かれた「混声・2台ピアノ版」という作曲家の作品が2009年3月の定期演奏会で初演されたという。
北高合唱部の特徴に合う曲を合唱部顧問・平田稔夫の集大成として200名もの歌声で力強く歌い上げられた。2台ピアノ版で聴く合唱曲は極めて珍しい。《混声合唱とピアノのための「新しい歌」(2台ピアノ版)》は音量が増えただけでなく、重厚で華やかなサウンドが迫力を生み出し魅力あふれる合唱曲となってKitara大ホールに響いた。

コンサートを聴きに来た高校生や大学生の姿が目立ったが、若いほとばしるエネルギーに接していつもの生活環境とは違う空間も楽しめた。

※1200名余の聴衆が詰めかけたコンサートの帰りに、20年前からKitaraで姿を100回以上も見かける目の不自由な年配の方に出会った。クラシックコンサートだけでなく高校生の合唱も聴きに来られていることを知って嬉しくなった。視覚障碍者で音楽を愛好する人の鑑賞力はさぞかし研ぎ澄まされたものなのだろうと想像している。いつもKitaraレセプショニストの案内を受けているが、今度帰り道でお会いした時には声をかけて一緒に手をつなぐ申し出をしようと思った。





 
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東京混声合唱団札幌公演 第二日

《六花亭 ふきのとうホール》 オープニングフェスティバル

7月5日の杮落しコンサートで始まったオープニングフェスティバルも7月31日が最終日。ひと月近くに亘ったフェスティバルも残すところ一週間足らずになった。1月末に6つのコンサートを選んでチケットを購入した。PMFのコンサートの詳細が決まっていなかったが、大体のスケジュールは見当が付いていた。最後の週にモザイク・カルテットのコンサートを鑑賞しようと予定していて、チケットはフェスティバルの期間中に手に入れようと考えていた。6月末までには全てのチケットが完売ということで見通しが甘くて残念だった。半年も前から売り出されているので、当日の演奏会に来れなくなって毎回のコンサートに空席があるのは勿体ない。キャンセルは出来なくても、何らかの工夫が出来ないものか。どこのホールでも同じような問題を抱えているのが日本のホールの実態のようである。
ともかく、今日はフェスティバル期間中の最後で6回目のコンサート。

2015年7月26日(日) 開演時間 14:00  ふきのとうホール

日本を代表する合唱団
東京混声合唱団演奏会 第二日

東京混声合唱団は1956年、東京藝術大学声楽科の卒業生が創設した日本を代表するプロ合唱団。東京、大阪での定期演奏会、国内外のオーケストラとの共演やオペラへの出演、海外公演などを含む年間200回の公演のほかレコーディングやテレビ、ラジオへの出演がある。現在の常任指揮者は山田和樹。

今回の指揮は水戸博之。Hiroyuki Mitoは1988年、北海道江別市出身。東京音楽大学卒業及び同大学院修了。これまでに合唱指揮者として東京混声合唱団との共演を重ねてN響、東京フィル定期で合唱指揮を務める。現在、京都市ジュニアオーケストラ副指揮者。

ピアノは寺島陸也。Rikuya Terashimaは1964年生まれ。東京藝術大学作曲科卒、同大学院修了。作曲のほか、ピアノ演奏やコンサートの企画、99年から北海道美幌町音楽祭の音楽監督を務めるなど多方面にわたる活動を行なっている。

〈Program〉
 ★林光(Hikaru Hayashi)編曲による“日本抒情歌曲集”より
   箱根八里(鳥居枕作詞、滝廉太郎作曲)、城ヶ島の雨(北原白秋作詞、梁田貞作曲)、
   お菓子と娘(西条八十作詞、橋本国彦作曲)、野の羊(大木惇夫作詞、服部正作曲)、
   早春賦(吉丸一昌作詞、中田章作曲)、ペチカ(北原白秋作詞、山田耕筰作曲)、
   この道(北原白秋作詞、山田耕筰作曲)
 ★生誕85年、武満徹が遺した「うた」より
   小さな空(武満徹作詞・作曲)、うたうだけ(谷川俊太郎作詞、武満徹作曲)、
   〇と△の歌(武満徹作詞・作曲)、翼(武満徹作詞・作曲)
 ★六花亭に寄せる歌
   明日(谷川俊太郎作詞、小林亜星作曲)-女声合唱
   花咲く六花亭(伊藤アキラ作詞、小林亜星作曲、信長貴富編曲)
   なんてすてきな(六花亭のみなさん作詞、小林亜星補作詞、小林亜星作曲、信長貴富編曲)
 ★日本の民謡より
   三村ぬ姉小達(沖縄童歌、林光編曲)、阿波踊り(徳島県民謡、三善晃編曲)、
   会津磐梯山(福島県民謡、寺島陸也編曲)、ソーラン節(北海道民謡、三善晃編曲)
 ★没後3年、ヒカルさんの音楽
   死んだ男の残したものは(谷川俊太郎作詞、武満徹作曲、林光編曲)、  
   うた(佐藤信作詞、林光作曲)、ねがい(佐藤信作詞、林光作曲)、
   星めぐりのうた(宮沢賢治作詞・作曲、林光編曲) 

今まで5回のコンサートの座席はE列かF列の8-10の座席を選んできたが今回は合唱なのでJ列9番の席にした。このホールは長方形でシューボックス型のホール。一番前の席がA列1-13番、一番後ろがM列1-17番となっている。縦13、横17で全座席数が221である。響きの良いホールでどの席でもそれほど変わりがあるわけではないが、これまでど真ん中の席で鑑賞できて楽しめた。

日本でプロの合唱団は新国立劇場合唱団と東京混声合唱団の二つのみ。合唱団の歴史は東京混声合唱団の方が断然古い。日本の小中高の学校の合唱部の充実度は世界でも抜きん出ていると思われるが、合唱団がヨーロッパと比べて職業化していない。この合唱団は現在32名で構成されているようだが、今回は小ホールでの演奏会で20名(男性9名、女性11名)による合唱。

5つのステージ。第1ステージはソロ歌手の歌声で聴くことも多い曲。2曲ほど余り耳にしない曲もあったが、抒情味あふれる美しい歌声がホールに響いた。「この道」で歌詞に時計台が出てきて、札幌が舞台の歌だという説を思い出した。
第2ステージは日本の音楽と西洋の音楽を融合しようとした武満徹(Toru Takemitsu)の作品。武満が東京混声合唱団のために作曲したそうである。無伴奏のいわゆるアカペラでの歌唱でこの合唱団のレヴェルの高さが際立った。
第3ステージは六花亭と合唱団との繋がりを歌った曲。六花亭の「六花」は六角形の雪の結晶を意味するようである。十勝の野の花を表す使い方もされている。今月に入ってコマーシャルで流れる歌でお菓子の「六花亭」を意識するようになった。今まではお菓子のメーカーは「千秋庵」、「壷屋」、「石屋製菓」ぐらいしか知らなかった。

後半プログラムの第4ステージの日本の民謡は今までに聴いたことが無い歌唱ぶりが印象的。民謡の良さが味わえて迫力がある合唱で非常に面白かった。
最後のステージの曲は聞いたことのない曲ばかりだったが、この合唱団にとっては思い出の多い作曲家の作品のようだった。「うた」と「ねがい」は1980年にポーランド支援のコンサートで取り上げた曲で、ポーランド音楽に特有の3拍子の曲。「ねがい」はポーランドのマズルカ、ポロネーズを思わせる曲でピアノの美しさも表現されていた。
今日はスタインウェイのピアノが使われていた。小型のピアノで社名が鍵盤の上方に書かれていた。

アンコール曲はプログラム前半で歌った曲と同じ曲が2曲。合唱団も2日間に亘った響きの良いホールでの公演に満足した様子。

※[追記] 日本のプロ合唱団は上記の2つの他にもあることが判った。神戸市混声合唱団もそのひとつ。「音楽の友」9月号の記事で確認した。(8月26日)


タリス・スコラ―ズ~キング・オブ・クワイア~(世界最高のアカペラ合唱団)

Kitara リニューアルオープン記念
THE TALLIS SCHOLARS

世界最高のア・カペラ合唱団といわれるルネサンス教会音楽のスペシャリスト《タリス・スコラ―ズ》。
日本ツアー15回記念コンサートで、休館が4ヶ月にわたった札幌コンサートホールKitaraの改修工事後の最初のコンサートとなった。Kitaraでの公演は99年以来2回目の公演という。99年2月、ヴァチカン・システィ―ナ礼拝堂合唱団は聴いたが、タリス・スコラ―ズは今回初めてであり、長期間の休館後の最初のコンサートなので期待度が高まっていた。

エントランスホールは入場者で混みあっていた。開演時間まで余裕があったのでチケットセンターで10月コンサートの先行発売のチケットを購入した。休館中のチケットは電話で申し込みをしてコンビニで受領するか、郵送してもらう方法で数回手続きをしていた。これからは以前のように窓口でチケットが先行発売中に購入できるので不便を蒙らなくても済むようになって一安心。

大ホール・ホアイエはいつもの賑わいを取り戻して、広い空間には人々の興奮が伝わってくる雰囲気が漂っていた。売り出されたチケットはsold out.。ホアイエも大ホールも外観的には以前と変わらない状態。いつもと同じとはいえ、オープニングを待つ人々にはやや緊張感もあったように感じた。

2015年6月17日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

指揮/ ピーター・フィリップス

〈プログラム〉
 ジョスカン・デ・プレ:喜びたまえ、キリストのみ母なる乙女
 パレストリーナ:教皇マルチェルスのミサ曲
 アレグリ:ミゼレーレ
 ベルト:彼は誰々の息子だった
 ベルト、トレンテス、パレストリーナによるヌンク・ディミッティス(主よ、今こそ御身のしもべを)

1973年、ピーター・フィリップスによって創立されたタリス・スコラ―ズは年間約70回の演奏を教会やコンサートホールで行っているという。ルネサンス教会音楽において世界最高の合唱団の地位を占める。
指揮者の他にクワイア(Choir)のメンバーはソプラノ4名、アルト2名、テノール2名、バス2名の計10名(男5、女5)。

デ・プレ(1450/55頃ー1521)は15、16世紀のルネサンス時代を代表するフランスの作曲家。演奏曲は聖母マリアを讃えた作品。(約5分)

パレストリーナ(1525-94)は前回のKitaraの公演(1999年6月)でも取り上げられたイタリアの作曲家。「教会音楽の父」とも呼ばれるくらい厖大な数のラテン語による教会音楽を作曲した。このミサ曲はこのクワィア(聖歌隊)が何度もコンサートで取り上げてきた作品のひとつ。パレストリーナがシスティ―ナ礼拝堂聖歌隊に所属していた頃の作品で、声楽的な美しさが際立つ大曲。(約35分)

後半のプログラムはアレグリ(1582-1652)の《ミゼレーレ》で始まった。1999年のコンサートでも演奏された有名な曲。「ミゼレーレ」とはラテン語で「憐れみたまえ」という意味で、旧約聖書の詩編に基づく。アレグリがシスティ―ナ礼拝堂聖歌隊のために作曲した作品。この曲にはモーツァルトに関わるエピソードがある。この宗教曲はシスティ―ナ礼拝堂でしか演奏されず、筆記も持ち出しも厳禁の秘曲とされる。14歳のモーツァルトはこの曲を聴いた後、宿で記憶を頼りに五線紙に書き留め、後日もう一度聴いて訂正して完成させたという。
ポリフォニーと呼ばれる多声音楽で5声の第一合唱と4声の第二合唱が交互に歌う。第一合唱がステージ(4名)とオルガン演奏台前(1名)、第2合唱が3階席後ろの通路(4名)に配置されて歌われた。偶々、両方の歌手が見えて聴こえやすいRA席にいたので非常に興味深かった。 
タリス・スコラ―ズが18番とする作品らしく、コンサートでのホールの利用形式に工夫があって印象深い演出と思った。(約15分)

ベルト(1935-  )はエストニアの現代作曲家。「彼は誰々の息子だった」は2009年にアイスランドの首都レイキャビクからの委嘱作。イエス・キリストの直系の祖先をたどっていく新約聖書の言葉をテキストにした作品。ルネサンス音楽との共通性が強い印象の曲。(約7分)

「ヌンク・ディミッティス」はラテン語で「今こそ主よ、僕を去らせたまわん」という意味。一日の務めを終えて最後の祈りとして捧げてきた賛歌。3人の作曲家がそれぞれ聖務日課の終歌で歌われる曲を残している。現代の作曲家とルネサンス時代の作曲家の作品の聴き比べは面白い試みだと思った。
ベルトの作品は2001年の作曲。(約7分)  
トレンテス(1510頃-80)は16世紀のスペインの作曲家。(約4分)
パレストリーナ作曲の作品は前半のプログラムにも入っていた。(約4分)

「グレゴリオ聖歌」は聞いたことがあるが、無伴奏で聴くルネサンス時代のポリフォニー楽曲は素晴らしかった。人の声がまるで楽器のようであった。大ホールに響きわたる美しいハーモニー。心洗われる美しい歌声に魅了された。歌詞が解らなくても安らぎのひと時を過ごせたことに満足感を味わった。

チケットは完売のはずだが4ヶ月以上前からの売り出しで、急に来れなかった人もいたのだろうが、空席が数十席以上あったのは残念。横並びでの空席は招待券の受領者かと余計な想像もした。

感動した聴衆からブラヴォーの声もあり、万雷の拍手に応えてアンコール曲が2曲歌われた。

今回の日本公演は全国8都市(福岡、豊田、西宮、東京、札幌、新潟、岐阜、京都)での開催。各地での聴衆を感動の渦に巻き込むことは疑いがない。







札幌北高等学校合唱部 第34回定期演奏会(2015年)

今年も最後の勤務校であった高校の合唱部から招待券が届いていた。昨年の定期演奏会は南米旅行のためコンサートは聴けなかった。今年は2年ぶりの定期演奏会。毎年3月の定期演奏会はKitaraが会場となっていたが、現在Kitaraは改装工事が行われていて休館中。Kitaraがオープンする前の会場であった札幌市教育文化会館大ホールを使用してのコンサート。娘が同校合唱部に所属していたので平成元年に妻と一緒に出かけて聴いたことを思い出す。

当時のプログラムと比べて気付いた違いは後援の欄。以前は札幌北高等学校合唱OB会と札幌北高等学校生徒会。 現在は札幌市・札幌市教育委員会、札幌合唱連盟、北海道新聞社、北海道札幌北高等学校合唱部OB会。
各学校の音楽活動に対する行政機関や民間の理解や協力の意識が高まってきた証だろうと思う。

2015年3月28日(土) 開演18:00 札幌市教育文化会館大ホール
 
〈プログラム〉
 1st Stage 谷川俊太郎と「いのち」
 2nd Stage [OBステージ] 混声合唱のための「ラプソディ・イン・チカマツ」
 3rd Stage いつかの想いへ ~ Sometime ago, sometime soon ~
 4th Stage [ 合同ステージ] 歌い継ぐうた

最初のステージに入る前に恒例の校歌斉唱が行われた。舞台に姿を見せた人の数は何と180名ほど。舞台正面に収まり切れずに横にも並んでの斉唱。2階客席から私も思わず口パク。(声が出ないように気を付けた。)

1st Stageは「いのち」というテーマに似合うスケールが大きく、温もりのある4曲。
       作詞はすべて谷川俊太郎。
 1.Prelude (混声合唱とピアノのための組曲「天使のいる構図」から) 作曲:松本望
    2015年Nコン課題曲も手掛ける作曲家は札幌北高OG(49期)で、同高百周年記念歌の作曲者。松本望は東京藝術大学大学院修士課程作曲専攻を修了後、パリ国立音楽院在院中にこの作品を男性合唱組曲として書いた。彼女は2011年の札北高定演にも委嘱作品の初演でピアノ伴奏。現在作曲家・ピアニストとして活躍中。
 2.いのち 作曲: 鈴木輝昭
    2010年度Nコン課題曲の書き下ろし作品。溌剌とした若さ溢れる曲。
 3.鳥(混声合唱のための「地球へのバラード」から) 作曲:三善晃
    生、愛、死 という普遍的なテーマ。
 4.木(混声合唱組曲「いまぼくに」から) 作曲:信長貴富
    今年度のコンクールで取り上げ、全国高等学校総合文化祭など多くの発表会で取り組んだ作品。

全体的に格調の高い高度な技量を要する曲を合唱部(男子18名、女子36名)全員が一年かけて取り組んできたことがうかがえる出来栄えであった。

2nd Stageに登場したOB・OGの人数は約120名。曲名が「近松門左衛門狂想」で意外性が大。合唱曲にこのような作品があるのかと思って興味津々であった。合唱部顧問の平田先生の解説によると作曲は千原英喜で、日本伝統の音素材と西洋の音楽を融合させた多くの作品で知られる作曲家。この作品でセリフ、囃子ことば、太鼓などを多用して、近松が描いたファンタジックな世界を再現したそうである。
「壱の段」、「弐の段」から成る。何となく浄瑠璃の世界に引き込まれ、近松門左衛門の「曽根崎心中」、「心中天の網島」などの作品が思い浮かんだ。
大変意欲的な試みであると思ったと同時に、札幌在住の卒業生ばかりでなく、東京などから駆け付けた人たちの演奏会に向けたエネルギーは相当なものだと痛感した。

3rd Stageは「恋」をテーマに2・30年前に流行した歌に想いを込めた曲の数々。
曲名が判ったのは「プレイバックpart2」と「年下の男の子」の2曲だけ。「キラキラ」と「Time goes by」はタイトルは良く知らなかったがメロディは聞き慣れていた。耳にしたメロディだが、曲のタイトルは見当もつかない「ロマンスの神様」と「糸」。“中島みゆき”は《マッサン》でも話題になった有名人だが、“広瀬香美”の名はハッキリと覚えていない。
一番印象に残ったのは歌を始める前の《語り》の上手さ。正にプロ級。芸能人顔負けの語りは知性が感じられて優れていた。現代の高校生の幅広い能力に感心した次第。楽しさも伝わってきて歌唱力も結構なもの。衣装にも工夫を凝らして好感が持てた。

4th Stageは合同ステージ。180名もの合同合唱は迫力十分。過去15年余の間で異なる世代で複数回演奏した曲目を集めての演奏。
 1.はじめに・・・・・・  作詞:長田弘、 作曲:松下耕  
 2.なぎさの地球   作詞:大岡 信、 作曲:木下牧子
この2曲は過去のNコン課題曲。1は2000年度、2は2002年度。

 3.やわらかいいのち(混声合唱組曲「あなたへ」から) 
              作詞:谷川俊太郎、 作曲:松本望
 4.厄払いの唄(混声合唱組曲「ねがいごと」から) 
              作詞:木島始、  作曲:信長貴富
この2曲は北高が発信した曲。3は2003年東京文化会館主催の合唱作品作曲コンクールで最優秀賞を受賞した組曲。委嘱曲ではないが、北高49期の作曲者が当時大学院生の時の作品。2011年全日本合唱コンクール課題曲。(彼女は私が定年退職した1999年3月卒で、その活躍ぶりが雑誌「音楽の友」からも窺がえる。) 4は26回定演の委嘱初演。「厄払いの唄」は極めてユニークな曲で印象に残った。江戸時代に大晦日の家々を回る〈厄払い〉の口上にのせて、人々に降りかかる災難、疫病を、自分があの世に持って行こうと語りかける詞。 北高生にあった曲を委嘱してクリエイティブな音楽に取り組む意欲は素晴らしくて心より敬服します。

 5.願い -少女のプラカード(混声合唱組曲「五つの願い」から)
              作詞:谷川俊太郎、 作曲:三善晃
 6.かどで(混声合唱組曲「嫁ぐ娘に」から)
              作詞:高田敏子、 作曲:三善晃
最後の2曲は三善晃の作品。5は定演で何度も歌い継いできた曲。6は三善の平和への願いが込められた曲。

何度も演奏したい名曲を集めたこともあって今年度は例年よりも多くの卒業生が集まって定演を楽しんだ様子で何よりである。例年より収容人数の少ないホールだったせいか満席状態で2階席後方で立っていた聴衆もかなり目立った。
今日は私の誕生日だったが、お祝いをしてもらっている気分になって演奏会を楽しんだ。

※昨年の誕生日はペルーからブラジルに向かう日で、ディナー会場はブラジルのホテルの非常に大きなレストランだった。会場に入るとグランドピアノから曲が流れていた。食事を始めると間もなく“Happy Birthday to You”のメロディが流れた。「アレ!」と思ったらボーイが巨大なケーキを持って私たち日本人のテーブルにやってきた。その時はもう気付いていた。旅行会社の添乗員から贈り物も頂き、20数名の旅の仲間からも祝福されて感激した。この齢になってもお祝いをしてもらうのは良い気分である。
今日はコンサートの前に早めの夕食でワイフにいつもより豪華な食事を用意してもらったこともあり、よい気分で演奏会に臨めた。音楽で豊かになる生活を楽しめるのは幸せである。北高の関係者の皆様有難うございました。



札幌交響楽団第562回定期演奏会

ブリテン生誕100年記念

ブリテン:戦争レクイエム

英国が他のヨーロッパ諸国と比べて芸術の分野で優れた作曲家があまり排出しなかったことは不思議である。ヘンリー・パーセル(1659~95)以来の偉大な英国の作曲家はエドワード・エルガー(1857~1934)とベンジャミン・ブリテン(1913~76)である。札響の尾高忠明音楽監督はエルガーとブリテンの音楽を日本に紹介している第一人者と言える。
Britten は「青少年のための管弦楽入門」の作品が最も良く知られていた。マエストロ尾高は08年9月の札響定期でオペラ「ピーター・グライムズ」を演奏会形式で上演し大成功を収め、日本の音楽界でも話題を集めた。今回はブリテン生誕百年記念年に満を持しての「戦争レクイエム」。

正直言ってブリテンの「戦争レクイエム」について知識はなかった。ブリテンは1939年に兵役を拒否してアメリカに渡った。日本政府から紀元二千六百年(西暦1940年)奉祝曲の委嘱を受けて作曲した作品が日本での初演を拒否されたことは知っていた。「シンフォニア・ダ・レクイエム」という作品が祝典の曲に相応しくないという理由だったようである。平和主義者であったブリテンの曲が当時の日本政府の意に添わなかったことが今では容易に想像できる。
小澤征爾が10年12月にニューヨークのカーネギー・ホールでサイトウ・キネン・オーケストラと収録した“War Requiem”のCDを購入して2回ほど聴いてみたが、あまり良く曲が解らなかった。レクイエムの歌詞が解らずに聴いていても、漠然とした印象しか受けなかったのである。
実際にライブで聴いて見ないとこの大曲の感動は伝わってこない。

指揮:尾高忠明
独唱:サビーナ・ツヴィラク(Sabina Cvilak)(ソプラノ)
   ティモシー・ロビンソン(Timothy Robinson)(テノール)
   シュテファン・ローゲス(Stephan Loges)(バリトン)
コンサートマスター:大平まゆみ
          伊藤亮太郎(室内オーケストラ)
合唱:札響合唱団、札幌アカデミー合唱団、札幌放送合唱団
児童合唱:HBC少年少女合唱団 

3人のソロ歌手はいずれも外国の一流歌手で、この作品の初演当時と同じく英国人テノール、ドイツ人バリトンが歌う「戦争」はブリテン作曲当時の時代背景を強く想い起こすことになった。この2人の男性歌手は10年7月に尾高忠明指揮のメルンボルン響で共演しているとのことで、気心もお互いに知れての札響共演に繋がったようである。

曲はラテン語で歌われる典礼文の部分は、大オーケストラと混声合唱、ソプラノ独唱。オルガンつき児童合唱がホールの外の廊下から天上の声のように歌われる。一方、戦争のおぞましさを歌うオーウェンの英詩部分は別の1管編成室内オーケストラと、テノール独唱、バリトン独唱が担当する。
音響的にも視覚的にもはっきりと対比されるので、ステージを観ていると理解しやすかった。

独唱者3名の重みのある説得力に満ちた歌、150名の合唱団の堂々たる歌の迫力、児童合唱団40名のジュニア部員の清らかな歌声はそれぞれ素晴らしかった。私の座席から近いところに陣取った室内オーケストラは首席奏者が中心に構成されていたが、各パートの演奏には聴き惚れてしまった。特にオーボエの金子亜未の巧みな演奏ぶりをたっぷり聴かせてもらった。歌詞の内容は別にしても、室内オーケストラと歌手の演奏場面の曲の美しさが心に響いた。

休憩なしで90分近い演奏。今演奏会が札響初演。楽団員も終了後お互いに健闘を称えあっていた。

帰りにホアイエで大学時代の恩師ご夫妻にあった。思いがけない場所で感激の再会。とはいっても、10名足らずで毎年6月にご夫妻を囲んでホテルで会合を開いていて20年以上になる。居合わせた旧友と4人で暫く語らい、91歳になる恩師の提案でコーヒーでも飲みながら歓談しようとしたがKitaraレストランもパークホテルでも喫茶室は満員。中島公園内をゆっくり歩きながら渡り鳥のカモの話題をとりあげたり、7月のキュッヒル夫妻の公園内での様子のことを話したりしてホテルのロビーの椅子に腰をおろして暫し歓談。定例の会合とは違った雰囲気に包まれてコンサート後のひと時を楽しんだ。

こんな時間や空間を持てるのもKitaraがもたらしてくれる楽しみなのだろうと改めて思った。戦争のない平和な世界は日本では当たり前になっているが、今も戦争の脅威におびえながら暮らしている人々や子どもたちがいることに想いを馳せる瞬間も必要であろう。

            



札幌北高等学校合唱部 第32回定期演奏会

 札幌北高等学校合唱部の定期演奏会は毎年3月の春休み期間中に開催されている。この時期の開催は多くの卒業生との合同演奏が可能だからだと思う。同高校に在職中は3月末は何かと多忙で演奏会に出かけることはめったに無かった。Kitaraで開催されるようになって、同合唱部から演奏会の案内状とともに招待券が送られてくる好意もあって、最近は聴く機会が増えた。
 札幌北高合唱部はNHK全国学校音楽コンクールの北海道ブロックの代表校の実績があり、全日本合唱コンクールには2002、03、04、08、09、11年に北海道代表として全国大会に出場し、11年にはB部門で金賞を受賞している。近年は北海道のレヴェルが高くなって2012年の全日本合唱コンクール全国大会の高校部門で北海道代表校の帯広三条高校がA部門(人数32名以下)、札幌旭丘高校がB部門(人数33名以上)で金賞と文部科学大臣賞をそれぞれ受賞した(それぞれの高校の部門で全国1位を獲得したことになる)。

 北海道札幌北高等学校は2012年に創立110周年を迎えて10月3日 Kitara大ホールで記念式典・演奏会が行われた。記念演奏会では卒業生のプロの音楽家によるヴァイオリン独奏、ピアノ独奏、二重唱などが披露され、合唱部、吹奏楽部によるそれぞれの演奏に続き、吹奏楽部・合唱部の合同演奏が行われて最後に校歌斉唱で110周年を祝った。
 ここで特記したいのは、吹奏楽部・合唱部によるエルガーの≪威風堂々第1番≫とヘンデルの≪メサイア≫から“Hallelujah”の合同演奏であった。エルガーの「威風堂々」は第1番~第6番まである行進曲集で、なかでも第1番は有名である。札幌北高では入学式、卒業式の入場時に吹奏学部が演奏している。学校行事の際にこの曲を使っている学校も多いと思うが、「威風堂々第1番」の演奏会用行進曲のトリオ、つまり中間部の旋律はイギリス王室の戴冠式に使用され合唱作品としても改変されて英国では第2のイギリス国歌と呼ばれるようになっている。110周年の記念演奏会では合唱付きの「威風堂々第1番」が演奏されたのです。感動しました。私の在職時には吹奏楽部の演奏だけと記憶していたのです。何年前から合同演奏になったのかなと思っていましたが、Kitaraでの100周年記念式典でもこの曲が演奏され、当時は会場で聴いていたのですから自分の記憶も当てにならないと痛感しました。創立100周年記念式典・演奏会のCDが贈呈されていて手元にありました。今日の演奏会前に早速聴いてみましたが10年振りでしょうか。昨年の生の演奏の方が心に響いたのは言うまでもありません。時と場所と鑑賞時の気持ちの持ち方の違いで曲の味わい方も変わってくるのを改めて感じました。
いずれにしても入学式・卒業式が合唱付きの演奏の中で入場が行われるのは、格調が高くて入学生・卒業生はもちろん父母にとっても感激の度合いが高まるのではないかと思ったりします。

いろいろな行事で活動している合唱部の一年の集大成が定期演奏会でしょう。

第32回定期演奏会のプログラム:
 1st Stage:松下耕 無伴奏作品集
 2nd Stage(OBステージ):高田三郎 名曲集
 3rd Stage:伝えたいことがある~J-POPに想いをのせて~
 4th Stage(合同ステージ)混声合唱曲「季節へのまなざし」

 1年生~3年生(男19名、女36名)。 回を重ねると単調に陥りやすい演奏会をいろいろな工夫で乗り切っている様子が感じ取れた。ステージと客席の会場を使っての3群合唱の輪唱形式の曲。手拍子・足拍子を交えた合唱曲。無伴奏で歌うのは今日では当たり前だろうが難しさが伴うだろうと思った。

 OBステージ。過年度の卒業生が約100名(男女各50)。市内在住の他に東京などから駆け付ける人もいて練習に使う時間も十分でなくて大変と思うが、よくこれだけの結果が残せると思うくらいの出来。100名もの美しい声量でのフィナーレは圧巻。限られた時間でこれだけの成果を残せるのは現役時代に育んだ基礎がしっかりしていることと合唱に寄せる想いの強さではないだろうか。

 今まで何回かの演奏会では個人的に最も楽しめたStage。音楽を心から愛して、言葉を大切にして歌うことに喜びを見い出し、楽しく歌っている様子が文字通り“伝わって”きた。槙原敬之の「どんなときも」、坂本九・ウルフルズの「明日があるさ」、プリンセス・プリンセスの「Diamonds」、SMAPの「夜空のムコウ」、小田和正の「言葉にできない」。振付も衣装も含めて総合的に聴衆を楽しませてくれた。普段クラシック音楽ばかり聴いているが、偶にこんな音楽に出会うと違った楽しみ方ができて良かった。背の高い格好良い指揮者とピアノ伴奏者も大きな役割を果たしていた。

 在校生と卒業生合同の約150名が心を一つにして歌う姿は素晴らしかった。今年の北海道の冬は長くて春が遠い感じであるが、合唱曲「季節へのまなざし」を違った角度から鑑賞した。合唱部の卒業生が帰ってくる場所があることは掛け替えのない拠り所であると思う。合唱部を育ててきた先生のご苦労も偲ばれた。大きな指揮ぶりが完全に板について素晴らしい合唱部を作り上げている現在の顧問が化学の教科担当ということも興味深いことです。在校生と卒業生の合同演奏会が今後も続いて行くことを心から願っています。

 元在籍していた学校との繋がりを求める気持ちが増すようになった昨今、旧職員も含めて交流が持てるのは嬉しいことである。
 
 

 
 
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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