三上亮(Vn)&宮澤むじか(Pf) デュオリサイタル

元札響コンサートマスター(2007-11)の三上亮と札幌在住のピアニスト宮澤むじかによるデュオリサイタル。三上は4年間の札響在籍中にNew Kitara ホールカルテットのメンバーとしても活躍。その後、東京を拠点として自由な音楽活動をしているようである。札幌には14年に〈ヴィルタス・クヮルテットwith宮澤むじか〉のKitara公演を聴く機会を持った。15年にはチェリストとのデュオや室内楽公演も聴いた。デュオとはいえ、リサイタルのような感じでコンサートを聴きに来た。

2017年4月27日(金) 7:00PM開演  ザ・ルーテルホール
〈Program〉
【第一部】
 モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ホ短調 K.304
  シューベルト=リスト:水の上で歌う 作品72(ピアノ・ソロ:宮澤むじか)
               糸を紡ぐグレートヒェン、  どこへ 
 ミルシテイン:パガニニアーナ(ヴァイオリン・ソロ:三上亮)
【第二部】 
 R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18

人気のヴァイオリニストと地元のピアニストの共演ということで会場に入った途端ドアーからロビーに通じる空間が人であふれかえっていた。このホールには先月も来ているが整理券を配って番号順に入場させているのは初めてであった。余りに混雑していて、整理券を渡している係の人の姿も見えずに受付近くに行って整理券が必要なことが判った。主催者の要領の悪い対応に少々いらつきを覚えた。2階のホールに入ると間もなく満席状態になった。やはり客席が埋まると気分も高揚する。

モーツァルトの曲は長調が大部分で軽快で明るい曲が多いのが特徴。ヴァイオリン・ソナタで短調の曲は「K304」だけである。この曲は2楽章構成。第1楽章はアレグロで悲しみが漂う陰鬱な感じの曲。謙虚で打ち解けた調べもあり、飾り気のない美しさも感じれた。第2楽章のメヌエットはメランコリーに陥りながらも気品を失わない姿も感じ取れた。巡業ピアニストとして旅をするモーツァルトの心境を思い浮かべながら聴いてみた。この曲はコンサートでもよく耳にするが、演奏前に三上のトークもあってそれを参考にしながら聴けた。

宮澤むじかは現在、札幌コンセルヴァトワール専任講師で実績を積んだピアニスト。今までにコンチェルトや前回のヴィルタス・クヮルテット室内楽公演でも演奏を聴いたことがあるが、非常に堂々とした力強い演奏で印象に残っている。
今回はシューベルト=リストのピアノ曲を3曲続けて演奏した。3曲共に原曲はシューベルトの歌曲。第1曲は初めて聴いたと思う。第2曲は聴く機会の多い曲で、シューベルトはゲーテのファウストに曲をつけた。第3曲の「どこへ?」はキーシンが弾くCDに3分ほどの曲が入っているのに気づいた。有名な曲なのだろうが、メロディには慣れていなかった。
宮澤の演奏は綺麗な歌心に包まれていた。

ミルシテイン(1904-92)はロシア国内でホロヴィッツと組んで演奏会を行っていたヴァイオリンのヴィルトオーソ。グラズノフの協奏曲でデビューし、たまたま彼のこの曲のCDを所有している。「パガニニアーナ」は“パガニーニあれこれ”という意味でミルシテインがパガニーニ作品から聴きどころを集めて編曲した。「24のカプリース」第24番を主題とする変奏など超絶技巧の旋律が次々とメドレーで綴られる曲。1954年頃にアメリカで作曲され、ミルシテインの看板曲になったという。
三上亮は無伴奏ヴァイオリン曲で難曲と思われる高度な技巧を要する曲を凄いスピードで弾き切った。彼のヴァイオリン・ソロを聴いて流石一流のヴァイオリニストで、聴きに来た価値があると思った。

R.シュトラウスが書いた唯一のヴァイオリン・ソナタは先月、漆原啓子のリサイタルでも聴いた。第1楽章は表情豊かにロマンティックでドラマティックな曲が展開される。第2楽章はアンダンテ・カンタービレ。甘美な旋律が面々と歌われる美しい緩徐楽章。第3楽章のフィナーレは情熱的な主題の数々が魅力的なメロディとなって瑞々しく展開された。
三上が昨年より貸与された1628年製のニコロ・アマティを手にして彼の紡ぎだす音も一層輝きを増しているように感じた。

ステージのライトが照り付けて30度を越す中で満席の聴衆に気分も高揚しての熱演。“北海道はいいですね!”と言ってアンコールに2曲。①ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女  ②モンティ:チャルダッシュ。

次回の三上のコンサートに是非来ようと思わせるコンサートだった。帰りにミニ・バー“Old Classic”に立ち寄って珍しいデュ・プレの
映像(1962年)を見て感激した。彼女が17歳当時の白黒の貴重な映像だった。帰る頃にお世話になっている札響くらぶのメンバーに会えて交流できたのも嬉しかった。


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川村拓也・佐野峻司(北大医学部学生)ヴァイオリン&ピアノ デュオリサイタル

今回のコンサートを聴いてみようと思った切っ掛けは「川村拓也」の名である。Kitaraで手にするコンサ-トのチラシで目にする名であった。PMF2016のアカデミー生の名簿で北海道大学に学ぶ学生の名があって珍しい経歴のアカデミー・メンバーに注目していた。同じ人物と判明した。ピアニストの名は彼の中学・高校時代から聞いていて、その後の進路は知らなかった。現在、二人とも北大医学部学生と知って、医師と演奏家を目指す頼もしい存在が市内にいることを知って好奇心が沸いた。このチケットを購入して佐野峻司の北大定期演奏会出演を知り、去る5日の北大定期演奏会をも久しぶりで聴くことになったのである。(*チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番の演奏は演奏家を目指すにふさわしい堂々たる輝かしものであった。)

2016年11月25日(金) 午後7時開演  札幌コンサートホールKitara 小ホール

〈Program〉
 フォーレ:子守歌 ニ長調 作品16
 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番 ニ短調 作品27-3「バラード」
 ショーソン:詩曲 作品25
 グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調 作品45
 スカルラッティ:ソナタ K.427、L.286
 リスト:パガニーニによる超絶技巧練習集より 第3曲「ラ・カンパネラ」
 ショパン:舟歌 嬰ヘ短調 作品60
  R.シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 作品18

前半4曲、後半4曲のプログラム。予定のプログラムに追加されたフォーレとスカルラッティは小品。

イザイはバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタとパルテイータを範として6つの曲を書いた。15年ぐらい前に加藤知子のCDを買い求めて数回は耳にしていた。「第3番」は単一楽章の短いソナタ。ラプソディックで現代的な曲。演奏会では久しぶりぶりで聴いた。川村は高度な技巧が要求される曲をプロ並の演奏で弾いた。
ショーソンの「詩曲」はオリジナルはオーケストラとヴァイオリン曲。ハイフェッツの演奏で聴き親しんだ。最近のコンサートではピアノ伴奏での演奏で何度か耳にする。
グリーグが書いた3曲のヴァイオリン・ソナタの中で「第3番」が最も魅力的でロマンティックな曲。北欧の自然と民族的な雰囲気が漂う作品。ピアノとヴァイオリンの持つ魅力が対等に表現された曲として美しいメロディに心が惹かれる。

二人ともに3・4歳より楽器を弾き始め本格的な音楽家としての経験を積んでいる。川村はHBCジュニアオーケストラのコンマスを務め、その後は札幌フィルハーモニー管弦楽団に所属して11年にはコンマスに就任。札フィルはここ数年は毎年のように聴いているのでステージ姿は見ていることになる。ソリストとして札響とも共演し、リサイタルやコンチェルトなどでの活躍も多い。学業との両立が難しくなる時期だが、本日の演奏ではプロ級の演奏の力量を示した。

後半のイントロとなったスカルラッティはバッハ、ヘンデルと同じ年生まれのイタリアの作曲家。彼のソナタは単一楽章の小曲。555曲の作品があるので曲の区別がつかない。この曲は1分程度の曲だったがとても力強い演奏。
リストとショパンの曲は言及の必要のないほど人々に親しまれている名曲。それぞれ素晴らし演奏で心を揺さぶられた。佐野峻司はプロとして通用する実力あるピアニストと言える。彼のピアニズムにはぞっこん惚れ込んでファンになった。
学業が疎かにできない時期を迎えて公演は減るかもしれないが、リサイタルを是非聴いてみたいピアニスト。

R.シュトラウス唯一のヴァイオリン・ソナタは14年、大谷康子のKitara初登場のステージで聴いて凄く印象に残ったヴァイオリン曲。R.シュトラウスの作品はこの20年くらいで交響詩を中心に多く聴くようになった。彼は交響詩やオペラなどの壮大な作曲家として知られる。彼のヴァイオリン協奏曲のCDを持っていたが、そこにヴァイオリンソナタがカップリングされていることに長い間気付いていなかった。15年前に手に入れたサラ・チャン&サヴァリッシュのCDだった。どちらかというと、最初はR.シュトラウスは苦手な方だったが、大谷の演奏を聴いて意外と親しみやすい曲だと思い直したのである。その時にも自分が以前聴いたことがあるとは想像もしなかった。
今回のプログラムを見て、ふとCDの棚で見つけたヴァイオリン曲を見つけて約15年ぶりに聴いてみた。

若々しい溌剌としたエネルギーに満ち溢れる曲がピアノの主導的な展開で始まった。ヴァイオリンとピアノが対等な掛け合いを見せるはずだったがピアノの音量がかなり高くヴァイオリンの響きがところどころかすんで聴こえた。
プログラム前半の川村は絶好調だったが、後半は二人の音のバランスが取れていないように感じた。

札幌で活躍中の異色の音楽家のコンサートとあって若い人を中心に幅広い年齢層の客が詰め掛けて9割以上の客席を埋めた。3楽章からなるソナタの知識がなくて、2曲ともに第1楽章の終りで拍手をする人が多かったのは止むを得ないところか、、、

アンコール曲は「ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏」。

演奏終了時間が大ホールと小ホールが同じ時間になって、帰路につく公園内が混み合った。中島公園駅に留まった電車内も混んでいていつもと違う様子。何事かと思っていて気付かなかったが、帰宅してテレビで羽生結弦の姿を見て判った。フィギュアスケートのグランプリシリーズ最終戦NHK杯が開催された真駒内から帰宅途中の人々だった。
 



反田恭平(piano)X上野耕平(saxophone)デュオ・コンサート

話題の若手演奏家がKitaraに初登場。反田恭平(Kyohei Sorita)の名は2012年第81回日本音楽コンクールの様子をテレビで見ていた折に知った。当時の彼は高校3年生でピアノ部門優勝に輝いた。昨年Twitterを通して彼の活動ぶりを知った。デビューアルバム「リスト」の発売の情報を得て8月に直ぐ購入したが素晴らしいピアノの音色に感動した。モスクワ音楽院に在学しながら日本ではバッティスト―ニ指揮東京フィルと共演して大反響を呼び起こした。ロシアと日本を行き来しながらコンサートやテレビで大活躍中である。
札幌生まれの反田は未来のヴィルトオーゾとしてKitara Club の情報誌第60号(Winter2015)に紹介された。

上野耕平(Kohei Ueno)の名は知らなかったが、話題沸騰のサキソフォン奏者。2日前の日曜日、NHKEテレ夜の番組〈コンサートプラス〉で演奏を披露した。バッハの「無伴奏フルートのためのパルティ-タ」をサキソフォンで吹いた。ヴァイオリンで馴染みの曲だが管楽器での演奏も味があって良かった。難易度の高そうな舞曲を4曲続けて吹いた。

〈PROGRAM〉
  シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70(Duo)
 リスト:愛の夢ー3つの夜想曲より 第3番 変イ長調(Piano)
     巡礼の年報 第2年への追加 「ヴェネツィアとナポリ」より 第3曲「タランテラ」
 デザンクロ:プレリュード、カデンツァとフィナーレ(Duo)
  ボノー:ワルツ形式のカプリス(saxophone)
 グラズノフ:サキソフォン協奏曲 変ホ長調(Duo)
 ガーシュイン(長生 淳編曲):ラプソディ・イン・ブルー(Duo)

シューマンのこの曲は室内楽で何度か聴いたことがある。サキソフォンがクラシック音楽に用いられるのは稀である。原曲はホルンとピアノ。
上野は1992年、茨城生まれで東京藝術大学器楽科卒。須川展也に師事。12年前にKitaraで開催された東日本吹奏楽大会に参加したと話した。2014年アドルフ・サックス国際コンクールで第2位。15年の日本フィル9月定期で山田和樹と共演。クラシックサキソフォンの注目度を一気に高めている。

反田はCDで収録されていた「愛の夢 第3番」と「タランテラ」の対照的な曲を演奏。2曲続けて演奏したが超絶技巧を披露する「タランテラ」は聴衆の度肝を抜くような演奏となった。演奏後に一段と大きな歓声が上がった。
彼は関東・関西では人気の高い若手ピアニスト。1月のサントリー公演のチケットは完売。浜離宮朝日ホール8月の3公演も完売となり追加公演も開催された超人気のピアニスト。まだ道内での知名度は高くないようである。今回の公演はKitaraクラブ会員拡大のためにクラシック音楽の裾野を広げている上野耕平に焦点を当てたプログラムになったような感じがした。

リストのピアノ曲以外は反田はピアノ伴奏を担って、主役は上野。サキソフォン・リサイタルの感がしないでもなかった。それは別として素晴らしい演奏会ではあった。サキソフォンの演奏がメインだがピアノにも相当な技量が必要とされる曲。

グラズノフはロシアの偉大な作曲家。一昨日のクラシック音楽館でも「グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲」が演奏された。グラズノフが「サクソフォン協奏曲」も手掛けていたと知って驚いた。

上野は前半のプログラムでは1曲目でテナー・サキソフォンと2曲目にアルトサキソフォンを用いた。後半では大きさの違う3本のサクソフォンを予めステージに運んでいた。3本目の楽器はソプラノで一番小さい楽器。
「ラプソディ・イン・ブルー」はよく知られた名曲で親しまれている楽曲。サキソフォンとピアノで聴く音楽は初めてである。2番目の大きさのアルトサクソフォンを中心にして時折ソプラノやテナーに持ち替えての演奏は圧巻であった。何十回となく聴いていた「ラプソディ・イン・ブルー」でこんなに楽しく面白く聴けたことはない。そういう意味では今回のコンサートは大満足であった。
惜しむらくは反田恭平のピアノ・ソロがもっと聴きたかった。彼のピアノ・リサイタルを心待ちにしたい。

P席とRA、LA席は販売せずに前売券は完売、当日券のみの売り出しで1000名以上の客は入ったと思われる。Kitara会員限定コンサートとして開催された格安料金でのコンサート。これを機会に会員が増えてくれば良いのだが、、、。

コンサート会場は一気に盛り上がって帰りのサイン会に並ぶ行列は凄かった。管楽器関連の賑わいは普段のクラシックコンサートと少々違う賑わいを見せていた。





石川祐支&大平由美子 デュオ・リサイタル

石川祐支(cello)&大平由美子(piano)デュオは2014年9月以来の2年ぶりのリサイタル。前回は重量級のプログラムで少々力みがあった感じがした。今回もベートーヴェンとブラームスのソナタの入るプログラムで重厚感があり、二人は共演を重ねて経験を積んでいて期待できそうである。

2016年11月4日(金) 7:00PM開演 札幌コンサートホールKitara小ホール
 
〈Program〉
 ストラヴィンスキー:イタリア組曲(チェロとピアノ版)
 ベートーヴェン:ピアノとチェロのためのソナタ第2番 ト短調 作品5-2
 ドヴォルザーク:「ボヘミアの森」より “森の静けさ”
 ブラームス:ピアノとチェロのためのソナタ第1番 ホ短調 作品38

ストラヴィンスキー(1882-1971)は〈3大バレエ〉で有名な現代作曲家である。「イタリア組曲」の原曲がバレエ音楽「プルチネッラ」とは知らなかった。アバド指揮ロンドン響による全曲のCDを所有している。管弦楽のための「プルチネッラ組曲」は演奏会で聴いたことがある。室内楽のために5曲から成る「イタリア組曲」として発表されたのが1932年という。
チェロの巨匠ピアティゴルスキーの意向を汲んで書かれたのでチェロ作品として難曲中の難曲と知られているそうである。色々な技巧が駆使されていて石川の演奏は見事で魅力的であった。バレエ音楽の雰囲気もあるが、特に第4曲“タランテラ”での超絶技巧が目を引いた。大変面白い曲として聴けて楽しかった。

ベートーヴェンの「第2番」のCDは持っていない。第3~5番はロストロポーヴィチ&リヒテル、マイスキー&アルゲリッチのCDは持っているのだが、初期の作品は聴いたことがなかった。
曲は2楽章構成。第1楽章がアダージョの長大な序奏と、それに続く流麗なアレグロでスケールが大きい楽章。第2楽章はロンド形式で表情豊かな曲作り。チェロもピアノと対等な役割を担うがピアノ・パートが際立った演奏技巧を披露する曲。第3番以降のチェロ・ソナタと遜色のない曲だと思えた。

ドヴォルザークはピアノ二重奏曲「ボヘミアの森より」6つの描写的小品を書いていて、その後に第5曲「静けさ」をチェロのピアノのための二重奏曲に編曲した。5分余りの曲でドヴォルザークならではの美しい旋律。原曲の第5曲のみカセットかCDで聴いていることが判った。

ブラームスのチェロ・ソナタはデュ・プレ&バレンボイムのCDがあるので今日の午前と午後2回聴いておいた。3回目に耳にした生演奏が、やはり生き生きとした演奏となって聴きごたえが違った。
「第1番」を書き始めたのは29歳の時だったが、この頃は悩み事が多くて作曲が思うように捗らなかったようである。30歳でウィ―ンのジングアカデミーの指揮者に就任したが、満足のいく職でなくて8ヶ月後に辞任した。故郷ハンブルグのフィルハーモニック指揮者を目指したが、実現しなくて悩んでいたらしい。曲の完成は3年後であった。
このソナタからは、若き日のブラームスの心の葛藤や秘めた思い、激情、故郷への郷愁などが綴られている。チェロの物悲し気な旋律が心に響き渡る。チェロとピアノが激しく対立しながら曲を彩る。ブラームスらしいドラマ性を感じさせる曲作りであると思った。

このデュオは人気があって多くの聴衆を集める。演奏終了後には盛大な拍手が送られた。
アンコール曲は「ドヴォルザーク:母の教え給えし歌」。

今回のコンサートはCD発売記念として開催された。終演後のサイン会で多くの客がホワイエに列を作っていた。
石川祐支が札響首席チェロ奏者に就任してから11年、オーケストラのチェロのソロ・パートでも素晴らしい音色を毎回響かせている。札響になくてはならない存在で、他のオーケストラと共演してのコンチェルト演奏、室内楽での活動などで私自身聴く機会が結構ある。
大平由美子はベルリン芸術大学卒業後、2008年に帰国するまでベルリンで幅広く活動していた。彼女のプロフィールを読むといつも私の学生時代を思い出す。当時ラジオを通して歌声を聴いていたドイツ・リートの20世紀伝説の歌手、シュワルツコップやフィッシャー=ディースカウの許で彼女は伴奏法などを学んでいたというからピアノの実力のほどが推し量れる。同時に親近感も沸く。現在は札幌在住で地元の音楽界に多大な貢献をしている。
石川と大平の相性も良いようであり、今後も定期的にデュオが続いていくことを期待する。

※昨年11月4日はピリス&メネセスのデュオ・リサイタルの日であった。私は心臓のバイパス手術を受けた日で翌日までICUで昏睡状態にあり、親戚にチケットを譲って聴いてもらった。医学の進歩は驚くべきもので今では月10回ほどのペースでKitaraに足を運べるほどに健康を取り戻している。音楽は心を安らかにして気を楽にしてくれる。私にとってクラシック音楽は健康の源である。


ウラディーミル&ヴォフカ アシュケナージ ピアノ・デュオ 2016

2014年3月以来のアシュケナージ親子の札幌公演。ウラジーミル・アシュケナージは昨年11月には指揮者として札響定期に登場して鮮烈な印象を残した。2011年に始まった長男ヴォフカとのデュオによる日本公演も定期化しているようである。2年ぶりに聴けるピアノ・デュオを楽しみにしていた。

2016年5月11日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈PROGRAM〉
 グリンカ(リャプノフ編曲):幻想的ワルツ ロ短調
 スメタナ:モルダウ
 ラヴェル:スペイン狂詩曲
 ラフマニノフ:交響的舞曲 op.45
 
グリンカ(1804-57)はロシア国民楽派の祖と仰がれる作曲家。彼の作品は《歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲》しか知らなかった。「幻想的ワルツ」は近代ロシアのワルツの原点として愛好されているという。1939年に作曲されたこの作品の原曲はピアノ独奏曲。今回の2台ピアノ版はロシア国民楽派末期の作曲家・ピアニストによる編曲。7分程度の小品。チャイコフスキーにも影響を与えたことが感じられるイタリアで学んだヨーロッパ音楽の雰囲気があった。

本日演奏の4曲とも〈2台のピアノのための4手版〉で2年前のコンサートでも意外に思ったのだが、2台ピアノ版はごく普通に作曲されていたことを再確認した。当時の音楽界では当たり前のことだったようである。

チェコ国民音楽の祖、スメタナ(1824-84)については書くまでもない。オーストリア支配下の祖国でチェコ独自の音楽を作り上げ、代表作《連作交響詩「わが祖国」》の第2曲「モルダウ」は最も有名な作品として演奏される機会が極めて多い。原曲はオーケストラ曲で、2台ピアノ版はアシュケナージ編曲かなと想像していたら、何とスメタナ自身の作曲というから驚いた。メロディは耳慣れていても違う曲のように聴ける新鮮さがあった。

フランスとスペインの国境近くのバスク地方に生まれたラヴェル(1875-1938)はスペインの異国情緒が漂う独特な曲作りで知られる。スペインの民族音楽をそのまま使うのではなく独自の創造性を出している。彼の大部分の管弦楽曲はピアノ曲からの編曲であり、オリジナルの管弦楽曲にもピアノ版がある。ラヴェルの創作活動の特徴だと思う。「スペイン狂詩曲」はケント・ナガノ指揮ロンドン響とインバル指揮フランス国立管のCDを持っているが、メロディが浮かんでくる程には曲に親しんでいない。1908年完成の曲はラヴェルの最初の本格的なオーケストラのための作品。全体は4曲構成で17分程度の作品。第3曲の「ハバネラ」は1895年に2台ピアノ用に書かれた。残る3曲は1907~08年に先ず2台ピアノ用に書かれたという。本日の演奏は勿論2台ピアノ版による。

ラフマニノフ(1873-1943)の「交響的舞曲」は昨年10月の札響定期で広上淳一指揮による演奏をコンサートで初めて聴いて面白いと思った曲。この作品もピアノ版があるとは知らなかった。亡命したアメリカに滞在中の1940年に先ず2台ピアノ版が完成し、彼の自宅でラフマニノフ自身とホロヴィッツによって私的に初演されたという。オーケストラ版は翌年オーマンディ指揮フィラデルフィア管が初演だそうである。晩年になって悩みから解放されたのか自由な曲作り。若い時の自作の引用もあり、祖国への郷愁も表現されている感じもした。ワルツも幻想的で、ラフマニノフ独特の魅惑的な音楽を楽しめた。

今日は安い席のRAから鑑賞したが上手のピアノでヴォフカが使うiPadの楽譜が目を引いた。2年前にはステージ正面からiPadが見えて面白いと思った。今回は画面も見えて譜めくリストの手の動きも観察できて興味深かかった。

アンコール曲は「シューマン:カノン形式の練習曲」。前半、後半ともに40分程度の演奏。終了時間はいつものコンサートより早めの時間だった。帰りのサイン会には長蛇の列で聴衆の数に比しては多い人の群れはアシュケナージの人気の高さが窺がえた。私自身は12年前にサインをもらっていたこともあって長蛇の列に並ぶのを控えた。3週間程の間を置いてのKitaraでのコンサート。体調も漸く回復して、これからは週2回のペースでコンサートを楽しめそうである。
プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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