藤村実穂子メゾソプラノリサイタル

[札幌コンサートホール開館20周年]
〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉

世界的なメゾソプラノ歌手として名高い藤村実穂子が4年ぶりにKitaraのステージに登場。前回はR.シュトラウスとマーラーの歌曲で対照的な味わいの妙が素人にも分かる圧倒的な歌唱だった。

2018年2月15日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール
〈出演〉メゾソプラノ/ 藤村 実穂子(Mihoko Fujimura)
ピアノ/ ヴォルフラム・リーガー(Wolfram Rieger)
〈Program〉
 シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン D118
 ワーグナー:ヴェーゼンドンクの詩による歌曲
 ブラームス:セレナーデ 作品106-1
 マーラー:リュッケルトの詩による歌曲

シューベルトの歌曲5つ。有名な曲でピアノ曲などでも知られている「糸を紡ぐグレートヒェン」。他は「ガニュメ-ト」、「ギリシャの神々」、「湖上にて」、「憩いなき愛」。シラーの詩「ギリシャの神々」のほかは、4曲共にゲーテの詩に曲を付けた。シューベルトが書き始めたドイツ・リートは胸を打つものが多い。
藤村が歌いだし始めた途端に心が高鳴った。やはり世界的な歌手の歌声は艶があるだけでなく、心の奥深くに届いてくる。

ワーグナーの歌曲集から5曲。「天使」、「止まれ!」、「温室で」、「痛み」、「夢」。先月の〈佐々木アンリ ソプラノ・リサイタル〉で歌われた歌曲。予め歌詞対訳を読んでいて、曲の内容が分かっていたので、歌に込められたヴェーゼンドンク夫人のワーグナーに寄せる想いも読み取れたように思った。オペラに書かれたメロディも入っている感じがして、さすがワーグナーらしい曲作り。第4曲に愛の喜びが力強く歌われていた。

ブラームスの歌曲5つ。「セレナーデ」、「日曜日」、「五月の夜」、「永遠の愛」、「私の愛は緑」。コンサートでブラームスの歌曲を聴くのは珍しい。第4曲は非常に情熱的な愛の歌。第5曲はクララに頼まれて、彼女の息子が書いた詩にブラームスが付曲したという。

マーラーの《リュッケルトの詩による歌曲》から5曲。「あなたが美しさゆえに愛するなら」、「私の歌を見ないで」、「私は優しい香りを吸い込んだ」、「真夜中に」、「私はこの世から姿を消した」。マーラーの交響曲のCDに第3曲「私は優しい香りを吸い込んだ」がオーケストラ伴奏で入っていたので、以前からこの歌曲集の名は知っていた。マーラーの《亡き児を偲ぶ歌》は同様な内容を持つ歌を用いた歌曲集で、何度かコンサートで聴いたことがある。一方、《リッケルトの詩による歌曲》は曲の雰囲気は互いに似ていても、内容に関連は無いようである。第3曲は菩提樹が歌詞に入っているので以前から、印象に残っていた。
「第4曲」はドラマティックな感じの歌。

シューベルトから時代を追って4人の作曲家の歌曲が選曲されてドイツ・リートの歴史の一端が分かった気がした。言葉がはっきりと解らなくても曲の良さは伝わってくるが、歌詞が理解できていると尚一層、心にしみるのだろうと思った。
世界の舞台で活躍を続ける藤村j実穂子の歌声をライヴで2回も聴くことが出来て満足であった。前半10曲、後半10曲と休憩をはさんで全20曲が一気に歌い上げられた。前回と同じ外国人ピアニストも情感豊かなピアノ伴奏で光を放った。彼は間のとり方が巧みで、特にアンコール曲歌唱後の余韻が印象的だった。盛大な拍手大喝采に応えたアンコール曲は「マーラー:原初の光」と「R.シュトラウス:明日!」。



 
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新進演奏家育成プロジェクト リサイタル・シリーズ(ソプラノ/佐々木アンリ)

10年前に[演連コンサートSAPPORO 5] を聴いたことがあった。当時、北海道二期会に所属して、札幌の音楽界で活躍していたソプラノ歌手のリサイタルだった。彼女が音楽大学に進学したのを知っていたので、その活躍ぶりを一見しておきたいと思った。札響とも共演し、多くのステージで活躍していることが判った。
新進演奏家育成プロジェクトのオーケストラ・シリーズ開催を2年前に知って聴き始めた。文化庁の支援事業なので名称を変えて継続されているコンサートだと解った。

今回のコンサートは[リサイタル・シリーズSAPPORO14] 《佐々木アンリ ソプラノ・リサイタル》。ソプラノ歌手の名は何となく知っていた感じがしていた。2年前のオーケストラ・シリーズに札響と共演していた演奏家で、オペラのアリアが凄く印象に残る歌手だったのを思い出した。ピアノの新堀聡子は札幌の音楽界で活躍している俊英ピアニスト。

2018年1月26日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール
〈Program〉
 ワーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲集 作品91
 プーランク:ルイ・アラゴンの2つの歌、愛の小径
 モーツァルト:オペラ《フィガロの結婚》より「愛の神よ、安らぎを与えてください」
 グノー:オペラ《ファウスト》より 宝石の歌「何と美しいこの姿」
 プッチーニ:オペラ《蝶々夫人》より 「ある晴れた日に」
         オペラ《トスカ》より「歌に生き、恋に生き」
 ヴェルディ:オペラ《運命の力》より 「神よ、平和を与えたまえ」

Anli Sasakiは札幌出身で東京藝術大学卒業。ライプツィヒ音楽大学を最優秀で卒業し、バイロイト音楽祭の奨学生に選抜され、ドイツの歌劇場で主役を演じて喝采を浴びた実績を誇る。帰国後、札響との共演も重ね、北海道二期会のオペラにも主役で出演している実力派の演奏家。
開場時から多くの人々がホールに駆け付け、期待の高さがうかがえた。コンサートの前半が歌曲、後半がオペラのアリア。ワーグナーの歌曲は耳にすることは珍しい。来月の藤村美穂子のリサイタルのプログラムで歌曲のタイトルを初めて知ったくらいである。プーランクの曲は「愛の小径」をピアノ曲で聴いたことがある。日本の歌曲やシューベルトなどの聴き慣れた歌曲は別にして、初めて耳にする歌曲の良さは簡単には解らない。白井光子や藤村美穂子などのドイツ・リートは先入観があって、その素晴らしさが味わえた。佐々木の声量も十分で、非凡さが表現されていたのは間違いないが、オペラのアリアに対する期待度が勝っていることもあって、感激するほどでもなかった。
後半のオペラのアリアは極めて有名で聴き慣れていて期待通りだった。オペラのドラマティックな雰囲気が良く出ている演唱となって素晴らしかった。最後の2曲は前回と同じアリアで、彼女が最も得意にしているようであった。《運命の力》は「序曲」を聴く機会は多くても、アリアは珍しい。コンサートの最後を飾るにふさわしいアリアで、佐々木の歌唱にブラヴォーの声がひときわ高く、何度も声が掛かって聴衆の大拍手を浴びた。新進演奏家のレヴェルを超えた卓越した歌手である。実力に加えて、風格も兼ね備えている音楽家のように思えた。

アンコール曲は[プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」より“私のお父さん”].。





エディタ・グルベローヴァ オペラ名曲を歌う

半年前にグルベローヴァがKitaraのステージに登場するニュースを知ってビックリした。彼女は2015年での引退表明をしていた。思わぬ吉報に心も弾んでいち早くチケットを購入した。
20世紀のディーヴァ(歌姫)はマリア・カラス。オペラの主役(プリマ)を歌う女性(ドンナ)は数多く生まれるが、ディーヴァの称号を得る歌手は限られている。現在のディーヴァとして世界最高の評価を得ているソプラノ歌手はアンナ・ネトレプコと言えよう。一世代前のディーヴァとしてオペラ界の人気を得ていたのはエディタ・グルヴベローヴァだろう。70歳を迎えたグルベローヴァが現役として活躍を続けて、札幌を訪れてくれることは大きな喜びである。

今回の札幌公演が17年ぶりと判って、過去のことを思い出した。Kitaraが開館して5年ぐらいは世界のオーケストラや演奏家が大挙してKitaraにやってきた。ヨーロッパのオーケストラのいくつかのコンサートのチケットを既に買っていて、日程的に連続したのでグルベローヴァのデュオ・リサイタルは残念ながら聴かなかった(*デュオの相手の名を知らず、料金が高額だったことも聴かなかった一因)。
今月は世界的な指揮者、オーケストラ、演奏家の来札が続くので一層充実した音楽鑑賞が楽しめる。

2017年11月2日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

ソプラノ/ エデイタ・グルベローヴァ(Edita Gruberova)
指揮/ ペーター・ヴァレントヴィッチ(Peter Valentovich)
管弦楽/ 札幌交響楽団(Sapporo Symphony Orchestra)

〈Programme〉
 第1部
  モーツァルト:歌劇《後宮からの誘拐》序曲
  モーツァルト:歌劇《後宮からの誘拐》より コンスタンツェのアリア
            「悲しみが私の宿命となった~どんな拷問が待っていようとも」
  モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》序曲
  モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より ドンナ・アンナのアリア
            「ひどいですって? そんなことはおっしゃらないで」
  モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》序曲
  モーツァルト:歌劇《イドメネオ》より エレットラのアリア
            「オレステとアイアーチェの苦悩を」
 第2部
  ベッリーニ:歌劇「夢遊病の女」より アミーナのアリア
           「ああ、もし私があと一度でも~ああ、信じられないわ」
  ロッシー二:歌劇《セヴィリアの理髪師》序曲
  ドニゼッティ:歌劇《アンナ・ボレーナ》より アンナのアリア
           「あなた方は泣いているの?~あの場所に連れて行って~邪悪な夫婦よ」
  ロッシーニ:歌劇《泥棒かささぎ》序曲
  ドニゼッティ:歌劇《ロベルト・デヴリュー》より 最後のシーン

ヴァレントヴィッチは2004年スロヴァキア・フィル管を指揮して注目を浴び、スロヴァキア国立歌劇場にも登場、2013年のウィ-ンでのグルベローヴァとの共演以来、彼女との縁が深い。昨年、プラハ国立歌劇場の来日公演では彼女の出演公演すべてで指揮を担当したという。
オペラ公演に慣れていて、初共演となる札響を指揮して5曲の序曲の演奏でオペラの雰囲気を醸し出す役割を十分に果たしていた。

グルベローヴァがステージに登場すると大きな拍手とともに歓声も沸き上がった。大スターの貫録を感じた。
大ホールに入場する前に知らされていたが、第1曲の後半部分の有名な「どんな拷問が待っていようとも」がキャンセルされた。アリアのなかでも最も難しい曲とされるようだが、体調が思わしくなったのかも知れないと思った。聴きどころが聴けなかったのと、やはり年齢を感じさせる歌唱になって第一印象はこんなものかと少々落胆した。

ところが2曲目から見違えるように劇的なオペラに引き込まれる歌唱と演唱。
各曲の演唱終了後にはブラヴィー(*二人以上の男女混合の演奏者に贈られる絶賛の叫び)の声が多分、同一人物と思われる人から何回も続いた。ブラヴォーと叫ぼうとした人も声を出したくても出せなかったのかもしれない状況だったが、会場は盛大な拍手に包まれた。それくらい素晴らしい聴衆の心を打つ歌唱がプログラムの最後まで続いた。

《イドメネオ》や《ロベルト・デヴリュー》は昨年と今年にそれぞれMETビューイングで観ていたので、歌唱の場面が判ってより良い鑑賞ができた。
怒りのアリアや狂乱の場面をアリアに込める超絶技巧を駆使しての感情移入には凄い迫力を感じた。コロラトゥラ歌手として絶頂期の頃と比しての衰えはあっても、鮮やかな声質の転換や表情豊かな演唱は絶品であった。最後の曲まで彼女の熱唱は衰えなかった。まさにディーヴァの名に相応しい演唱であった。

6年前に札幌でドミンゴとパヴァロッティが主演したオペラ映画の上映会が4回あった。「トスカ」(1976)、「カルメン」(1983)、「リゴレット」(1982)、「オテロ」(1986)。「リゴレット」でマントヴァ公爵役がパヴァロッティ、ジルダ役がグルベローヴァだったが、エディタの映像を観たのがこれが最初だった。
今回、グルベローヴァの歌唱を聴けて物凄く感激した。ピアノ伴奏による歌唱とオーケストラをバックにした歌唱では迫力も違った。演奏終了後のホールの盛り上がりも凄かった。

絶賛の嵐に応えてアンコールに「プッチーニ:歌劇《ジャン二・スキッキ》より“私のお父さん”」。止まらない拍手大喝采に「ヨハン・シュトラウスⅡ:喜歌劇《こうもり》より“侯爵様、あなたのようなお方は”」も歌われた。

今月はハンガリー国立歌劇場の来日公演があり、グルベローヴァは9日の東京文化会館での「ランメルモールのルチア」に出演予定。この機会を利用して札幌と東京でコンサートが開かれたようである。彼女はデビュー50周年を迎える来年に正式引退する。
今回が札幌でのサヨナラ公演の意味もあって花束を捧げる人、感謝を告げる幕を用意する人もあって、会場は延々と止まらぬ拍手で最後は聴衆全員総立ちの拍手で別れを告げた。
先週のエリシュカの時と同じような感動的な音楽家との心の交流は記憶に残るだろう。グルベローヴァは旧チェコスロヴァキアのブラティスラバ生まれ、音楽を通してチェコ、スロヴァキア、ハンガリーと日本の繋がりを感じることが時折ある。

タリス・スコラーズ~モンティヴェルディ生誕450年記念~

コンサート鑑賞前に毎年開催される大学のゼミ仲間の会合が入っていた。道庁前のホテルで会食2時間の予定を途中で切り上げて地下鉄に乗り継いで急いで会場に駆け付けたがコンサート開始時間の直前に飛び込んだ感じになってしまった。レセプショニストにはお世話をおかけした。

世界最高のア・カペラ合唱団と言われる《タリス・スコラーズ》は前回はKitaraリニューアル・オープン記念として開催され4ヶ月の休館後の最初のコンサート(2015年4月17日)で特別な印象が残る合唱団でもあった。2年ぶいとなるが、同合唱団にとっては3度目のKitaraのステージ。
指揮はピーター・フィリップス(Peter Phillips)。1973年にフィリップスが創立し。年間70回の演奏を教会やコンサートで行っている。今回が16度目の来日。来日メンバーの歌手は前回同様10名。ソプラノ4名、アルト2名、テノール2名、バス2名。(*メンバー5人は前回とは違うメンバー)

今回の公演は《モンティヴェルデイ生誕450年記念》と銘打って開催された。
モンティヴェルディ(1567-1643)はルネサンス音楽とバロック音楽の過渡期にあたるイタリアの作曲家。ヴェネツィア音楽の最も華やかな時代を作り上げた。音楽の様式に変革をもたらした改革者とされる。オペラの最初期の作品「オルフェオ」で知られる。

2017年6月6日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
 〈Program〉
  タリス:ミサ曲 “おさなごわれらに生まれ”(約25分)
  バード:“めでたし、真実なる御体”(約4分)、 “義人らの魂は”(約3分)、
       “聖所にて至高なる主を賛美もて祝え”(約6分)
  アレグリ:ミゼレーレ(約12分)
  モンティヴェルディ:無伴奏による4声のミサ(約22分)
  パレストリーナ:“しもべらよ、主をたたえよ”(約7分)

タリス(1505頃ー85)はヘンリ8世、エドワード6世、メアリ1世、エリザベス1世と4人の英国王に仕えて活動した。王室礼拝堂のために多くの教会音楽を書いた。この曲はメアリ1世時代の1554年作曲とみられる7声のミサ曲。
※この合唱団の名はこの作曲家に由来して正式名は“THE TALLIS SCHOLARS”.。

バード(1540頃ー1623)は1572年から女王エリザベス1世に仕えて王室礼拝堂の音楽家として活躍し、英語による教会音楽も書いたが、終生カトリックの信仰を持ち続けて伝統的なラテン語による教会音楽を数多く残した。
3曲共にラテン語で書かれた4声か5声のモテトゥス。今回初めて耳にした作曲家名。

ピアノ伴奏なしで聴く「ア・カペラ」は声の美しさが直接に伝わるので何とも心に染み入リ安らぎを覚えた。

プログラム前半はルネサンス時代に活躍したイングランドの2人の作曲家の宗教曲だったが、プログラム後半はルネサンス時代からバロック時代にかけてのイタリアの3人作曲家の宗教曲が歌われた。

アレグリ(1582-1652)は初期バロック時代のローマを代表する作曲家。《ミゼレーレ》はラテン語で「憐れみたまえ」という意味で、伝統的な手法で書かれたアレグリの代表作といわれ、5声合唱と4声合唱が交互に歌い合う2重合唱の形による9声曲。ステージに5名、オルガン演奏台前に1名(カウンターテナー、3階客席最後部に4名の歌手の配置。
合唱の掛け合いが面白くカウンター・テナーと後方から響き渡るソプラノの高音の歌声が素晴らしく特に心地良かった。前回はRA席で歌手全員の姿を見れたが、今回は真正面から声が聴きとれるように1階席にしたので、歌手の姿は退場の際に3階出口で確認できただけであった。ホールに響き渡るソプラノの歌声に魅了されて歌唱中に何度か3階後方を見渡す人もいたが、姿までは見えなかったようである。
タリス・スコラーズも何度も取り上げている代表曲で何度聴いても圧倒的で魅力的なア・カペラである。先月の札響定期でラトヴィア放送合唱団の「夕映えのなかで~マーラーのアダージェット」も絶品だったが、世界的な合唱団の無伴奏による合唱曲を続けて堪能できたのは幸運である。

モンテヴェルデイの名は知っていたが、教会音楽に関する知識は皆無である。彼が書いたオペラの方に関心がある。「音楽の友」6月号に彼のオペラ「ウリッセの帰還」について書かれた記事があった。モーツァルトの「イドメネオ」の父と子の再会は「ウリッセ」の父と子の再会と似ている。オペラの原型を作った音楽家とオペラの伝統を引き継いだ音楽家の話が繋がるような記事を読んで興味を覚えたのである。

パレストリーナ(1525頃ー94)は16世紀後半の最も重要な作曲家のひとり。教皇庁をはじめローマ各地で活動し、様々な種類の教会音楽を書き残した。前回は「教皇マルチェルスのミサ曲」が演奏された。

ローマ教皇庁聖歌隊のために書かれた《ミゼーレ》は教皇庁システィナ礼拝堂以外では演奏できない門外不出の秘曲とされてきた。14歳のモーツァルトが教皇庁でこの曲を聴いた後に記憶だけで楽譜に書き記したというエピソードでも名高い曲。1994年、システィナ礼拝堂の大修復が終わったことを記念するコンサートでタリス・スコラーズがこの曲を演奏しているという。私も2000年8月に訪れたバチカン市国にあるシスティナ礼拝堂のミケランジェロが書いた有名な天井画を思い出して再び曲の重みを感じた。
演奏曲は全体的に良かったが、何といっても《ミゼーレ》が断然素晴らしかった。

アンコール曲はモンティヴェルディの曲を含む2曲。演奏終了後にスタンディング・オヴェイションをする人があちこちで目立つほど聴衆に無伴奏合唱の素晴らしさが伝わった。ホワイエでCDを買い求めてサイン会に並ぶ人の多さにも演奏会に感動した人々の様子が見て取れた。

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森 麻季 ソプラノ・リサイタル

森麻季ソプラノ・リサイタルをKitaraで初めて聴いたのが2007年11月。森麻季はプラシド・ドミンゴ世界オペラコンテストのソプラノ部門で上位入賞を飾って類まれなコロラトゥラの美声と華やな容姿で一気に世界の注目を集めた。ドミンゴ、アラーニャなど一流オペラ歌手と共演。オペラ、オラトリオ、リートの分野で数多くの国際コンクール受賞を重ね日本の代表的なソプラノ歌手として確固とした地位を築いた。

待望のKitara初登場から10年近くが経って彼女のリサイタルを聴きたいと思っていた。今回はKitaraコンサート会場でチラシの案内は無く、“Kitara News”で「森麻季ソプラノ・リサイタル」公演を知った。〈札幌友の会〉主催の音楽会だったので前回より低料金で聴けた。(*《友の会》は羽仁もと子が創刊した雑誌「婦人乃友」の愛読者によって昭和5年に創立され全国各地に生まれた団体)。組織がしかっりしているので内部広報が中心で外部での宣伝活動は余り行なわないで公演が開催された。

2016年9月6日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
 
 札幌友の会 大人の音楽会
    森麻季 ソプラノ・リサイタル 
      ~愛と平和への祈りを込めて~    ピアノ/ 山岸茂人

《Program》
 菅野よう子:“花は咲く” ~NHK「明日へ」 東日本大震災復興支援ソング
 久石 譲:“Stand Alone” NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」メインテーマ
    〈ピアノソロ〉 シューベルト=リスト:「万霊節の祈禱」 
 モーツアルト:『レクイエム』より  「涙の日」
 ヴェルディ:『レクイエム』より  「涙の日」
 フォーレ:『レクイエム』より  「ピエ・イエス」   
    〈ピアノソロ〉 ドビュッシー:《映像第2集》より “葉末を渡る鐘の音”
 ヴェルディ:『レクイエム』より  「その日こそ怒りの日、災いの日、大いなる悲願の日~主よ、永遠の休息を彼らに与えたまえ~天地が震い動くその日、主よ、かの恐ろしい日に我を永遠の死から解放したまえ」

 べッリーニ:歌劇『清教徒』より  “ここであなたの優しい声が”
    〈ピアノソロ〉 ショパン:べッリーニの『清教徒』の行進曲による変奏曲
 べッリーニ:“激しい希求”、 “フィッレの悲しげな姿”、 “優雅な月よ”
 べッリーニ:歌劇『カプレーティ家とモンテッキ家』より “ああ、幾度か”
    〈ピアノソロ〉 ショパン:ノクターン第8番 変ニ長調 作品27-2
 べッリーニ:歌劇『夢遊病の女』より “あぁ、花よ、お前がこんなに早くしぼんでしまうなんて・・・”

開演20分前には会場に着いたがエントランスホールは入場中でも多くの客が列をなしていた。全席自由席なので1階席と2階正面CB席を求めて開場前から並んだ人々が予想以上に多いようだった。開演15分前には2階RA・LA以外はほぼ満席状態で1000名ぐらいは既に入場していた。5000円前後のコンサートが3000円で聴けると予想以上に客が集まる。(*今週末の大阪のコンサートは5000円。)

入場時に手渡されたプログラムは予想外だった。2部構成で前半は『レクイエム』、後半は『べッリーニ』。オペラのアリア、リート、日本の歌曲を予想していた。
始めにソプラノ歌手が台風で亡くなられた方々に哀悼の意を表し、被災者に見舞いの言葉を述べた。2011年の東日本大震災をはじめとする多くの災害に直面する社会で、彼女が《愛と平和への祈りをこめて》プログラミングをしたものと思われる。総花的な曲目にならずにポイントが絞られた演目になったのは評価できると思った。

「レクイエム」はそれほど好みでないので、普段は聴いていない。これらの作曲家の名高いレクイエムの曲はタイトルだけは知っている程度である。「モーツァルト:レクイエム」は今月の札響定期の演目になっているのでタイミングは良かった。
第1部のプログラムでの彼女の重量感のある衣装が豪華であった。曲の前にマイクを握って話す言葉がほとんど聴き取れないのが残念であった。

べッリーニ(1801-35)はロッシーニ、ドニゼッティと並ぶベルカント・オペラで有名なイタリアの作曲家。最大の傑作は「ノルマ」で「夢遊病の女」、「清教徒」、「カプレーティ家とモンテッキ家」なども良く知られた作品。彼のオペラをMETビューイングで一度は観てみたいと思っているのだが未だ機会は無い。「カプレーティ家とモンテッキ家」は藤原歌劇団によって今週末に東京で上演される。

べッリーニは長くてゆったりとして感情をこめて歌う旋律が多いと思った。透明感のある美しい歌声の連続で森麻季のコロラトゥラを駆使する歌唱の場面がなかったのが惜しまれた。第1曲『清教徒』での有名なアリアで聴かせる場面の歌の直後に“ブラボー”の力強い歓声が上がったが、“ブラヴァー”の方が相応しい場面だと個人的な感想を抱いた。いずれにせよ盛り上がりを見せたオペラ待望のアリアであった。

後半からRB席に移動していた。ショパンはべッリーニやロッシーニのオペラを観に足しげく劇場に通った話をピアニストがしてくれた。ショパンのピアノ曲も彼らの影響を受けたのだろうと思った。
山岸茂人(Shigeto Yamaginishi)は東京藝術大学卒業後、同大学院修了。声楽の伴奏者して活躍中。二期会イタリア研究会ピアニスト。
歌唱の合い間に入ったピア二ストの小品と彼のトーク。最小限の彼の話はハッキリ聴き取れて演奏とともに良かった。

1100名ほどの聴衆が集まったことで歌手も心をこめて全曲を歌い切ったが、ほっそりとした体形で十数曲も歌いこなすのはデビュー当時と違って大変なのだろうと思った。外国の歌手は男性・女性を問わず立派な体躯が必要とされているように思う。最後のアリアも名場面で素晴らしい演唱であったが、聴き慣れた曲でないと客の反応が十分でないのは止むを得ないところ。もちろん盛大な拍手がおくられた。

アンコール曲に①Rolf Lorland:You Raise Me Up.(*英語の曲で以前、ポップ歌手がアンコール曲に歌った。彼女の好きな曲でプラグラムには入れづらいので、アンコール曲として歌ったのかもと余計な想像をした。)
②グノー:歌劇『ロメオとジュリエット』より「私は夢に生きたい」。森麻季が使い切った喉の調子を心配しながら歌い切った曲。コロラトゥラを駆使した高音域の見事な歌唱で本日Kitaraに詰めかけた聴衆も大感激! 期待した大迫力の歌声が最後に聴けて聴衆の拍手喝采がしばらく鳴りやまなかった。








中村恵理ソプラノリサイタル

ヨーロッパを中心に世界の歌劇場で活躍を続けるソプラノ歌手、中村恵理がKitaraに初登場した。2008年より英国ロイヤル・オペラハウスに在籍して、ネトレプコの代役として「カプレーティ家とモンテッキ家」に出演する幸運を掴んで注目を集めた。10年以降、バイエルン国立歌劇場専属ソリストとして活躍中。

2016年6月2日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 シューベルト:ガニュメート、ます、糸を紡ぐグレートヒェン 
 C.シューマン:私はあなたの眼の中に、彼は雨と嵐のなかをやってきた、
          美しさゆえに愛するのなら
 R.シューマン:子供の情景 Op.15より トロイメライ(ピアノ・ソロ)
 R.シュトラウス:献呈、 薔薇のリボン、 ツェツィーリェ
 小山作之助:夏は来ぬ
 中田喜直:すずしきうなじ、 霧とはなした
 プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」より “私の大好きなお父さん“
 マスネ:歌劇「マノン」より “さようなら、私たちの小さなテーブルよ”
      歌劇「エロディア―ド」より “彼は優しい人”
 ヴェルデイ:歌劇「椿姫}より “ああ、そはかの人~花から花へ”

ドイツ・リート9曲、日本の歌曲3曲、オペラのアリア4曲。バラエティーに富んだ内容でバランスの良いプログラム。圧巻はオペラのアリアでヨーロッパの歌劇場専属歌手として活躍中の現役ソプラノ歌手の演唱を堪能した。

ドイツ・リートの中にピアノ五重奏曲に引用されたメロディがあって心地よく聴けた。ゲーテの「ファウスト」のグレートヒェンが歌う曲は歌のタイトルを知っていた程度。ピアニストとして有名だったクララ・シューマンがリュッケルトの詩につけた3曲の作品は新鮮に感じた。シューベルトは歌曲王と呼ばれ、R.シューマン、R.シュトラウスも歌曲をたくさん書いているが、ドイツ・リートの良さは簡単には解らないのが正直なところである。

愛の歌が多かったが、中村が短い時間で歌に気持ちを投入して大きく口を開けて歌う発声が印象に残った。ドイツ語で言葉が明確に伝わる基本を大切にしている様子が伝わった。

「夏は来ぬ」は懐かしい唱歌で1番の歌詞が自然と出てきた。作詞家の佐々木信綱の名は知っていたが、“日本音楽教育の母”と呼ばれる小山作之助(1864-1927)という作曲家の名は知らなかった。中田喜直(1923-2000)は名曲の数々で有名であるが、歌われた2曲は知らない曲だった。

オペラ歌手の歌声が存分に楽しめたのが最後のプログラムのアリア。プッチーニとヴェルデイの有名なアリアはCDやライヴで聴く機会もたまにあり親しんでいる歌。マスネの歌劇「エロディア―ド」は初めて耳にした。「マノン」は数年前のMETビューイングで観た。マノン役がネトレプコだったので、中村とネトレプコの繋がりを知って更に興味深く聴けた。世界のディーヴァと渡り合うだけの実力を身に着けている中村恵理を一層頼もしく感じた。

歌劇「椿姫」は実演などでも数回見ているが、外国の歌手に劣らぬ歌唱ぶりであった。ヴィオレッタが歌い上げるアリアをピアノ伴奏だけのステージでオーラを放ちながら堂々と演唱する姿には心を揺さぶられた。
(*ピアノの木下志寿子は新国立劇場ピアニスト、同劇場オペラ研究所講師などとして活躍中。)

中村恵理は生まれ持って恵まれた声の持ち主だが、ドイツ語・フランス語・イタリア語で歌い分けながら演ずる今日までの努力は並大抵のものではないと改めて思った。彼女のプロフィールに「2014年NHKニューイヤーオペラコンサート出演」とあったので、当時の自分のブログを読み返すと、彼女の名があった。この頃には日本でも彼女のオペラ歌手としての名声は高まっていたようである。

割れんばかりの盛大な拍手に応えて、アンコール曲」が2曲。「プッチーニ:歌劇「つばめ」より “ドレッタの美しい夢”」と「岡野貞一:おぼろ月夜」。


アンネ・ソフィー・フォン・オッタ―&カミラ・ティリング in リサイタル

スウェ-デンが生んだ稀代のディ―ヴァ、アンネ・ソフィー・フォン・オッタ―がKitaraのステージに初めて登場。同じスウェーデン出身の新鋭カミラ・ティリングも一緒のステージに立った。

20世紀最大の歌姫といえばマリア・カラス。1950・60年代、他に活躍した世界的女性歌手でテバルディ、シュヴァルツコップ、シミオナートなどの名前が思い浮かぶが、その後の時代ではフレーニ、グルベローヴァぐらいしか名が浮かんでこない。最近ではネトレプコ、バルトリ、フリットリ、フレミングはオペラで馴染みである。数年前に映画館で始まったMETビューイングのお蔭で何人かの歌手の名を知るようになったとはいえ、オペラ歌手の知識は余りない。
今回来札したフォン・オッターの名もそれまで聞いたこともなかった。Kitaraのステージに登場したコッソット、ペーターゼン、ロストなどのディ―ヴァも実際に素晴らしい歌声を耳にして彼女たちが偉大な歌手であることを実感した次第である。

2015年9月28日(月) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

アンネ・ソフィー・フォン・オッタ― and カミラ・ティリング in リサイタル

Anne Sofie von Otter(メゾ・ソプラノ)はスウェーデン生まれ。ロンドンのギルドホール音楽大学で学び、1983年バーゼル歌劇場でオペラ界デビュー。メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座にも出演してキャリアを積み上げる。以後、世界一流のオーケストラや指揮者と共演。レパートリーは非常に広く、オペラのほか歌曲でもバロックから現代まで多彩な音楽を作り上げる世界最高峰のアーティストとして輝き続けている。来日は2006年以来、9年ぶり。

CamillaTilling(ソプラノ)はスウェ-デン生まれ。ロンドン王立音楽大学で学ぶ。1999年、ニューヨークでデビュー。2002年には英国ロイヤルオペラでデビュー。その後、メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座などで活躍。ラトル指揮ベルリン・フィルはじめ世界的な指揮者・オーケストラとの共演も多い。

ピアノのジュリアス・ドレイク(Julius Drake)は室内楽の専門家として世界の主要コンサートホールで共演を重ねている。

〈PROGRAM〉
 メンデルスゾーン:挨拶 Op.63-3 (デュエット)
 リンドブラ―ド:夏の日(ティリング)、警告(オッタ―)、少女の朝の瞑想(デュエット)
 グリーグ:6つの歌 Op.48 (デュエット)
        「挨拶」、「いつの日か、わが想いよ」、「世のならい」、
        「秘密を守るナイチンゲール」、「薔薇の季節に」、「夢」
 シューベルト:ます D.550 (オッタ―), 夕映えの中で D.799 (オッタ―)
        シルビアに D.891 (オッタ―)、  若き修道女 D.828 (オッタ―)
 メンデルスゾーン:渡り鳥の別れの歌 Op.63-2 (デュエット)
           すずらんと花々 Op.63-6 (デュエット)
 マイアベーア:シシリエンヌ(ティリング)、 来たれ、愛する人よ(オッタ―)、
          美しい漁夫の娘(オッター)
 マスネ:喜び!(デュエット)
 フォーレ:黄金の涙 Op.72 (デュエット)
 R.シュトラウス:憩え、わが魂よ op.27-1 (オッタ―)、たそがれの夢op.29-1(ティリング)
         どうして秘密にしておけようか op.19-4 (オッタ―)、
         ひそやかな誘い op.27-3{ティリング)、明日!op.27-1 (オッタ―)
         ツェツィ-リエ op.27-2 (ティリング)

プログラムで歌の名を知っているのは「ます」だけ。ソロがフォン・オットーが10曲、ティリングが11曲、デュエットが6曲。全部で27曲。
ステージに登場した時からフォン・オッターはオーラを発していた。背が高く美しい容姿は優雅で気品に満ちていた。最初に発した歌声は何とも形容し難い美しさ。ティリングの声量豊かで表現力のある歌声も若さに満ち溢れていた。最初のデュエットにはスッカリ聴き惚れた。
プログラムが進むにつれて、歌詞は解らなくても歌声からドラマ性も伝わってきた。ソリストが歌い終わった後にピアノが静かに曲を閉じる場面も結構多かったが、聴衆のフライイングが無かったのも良かった。落ち着いた静かな雰囲気で聴衆は素晴らしいリサイタルを堪能した。
小ホールでの声楽の楽しさをたっぷり味わえたコンサートで出演者も大満足の様子だった。アンコール曲は3曲もあった。
①オッフェンバック:舟歌 (《ホフマン物語》より)
②ブラームス:姉妹 
③フンパーテイング:「夜には私は眠りに行きたい」(《ヘンゼルとグレーテル》より)
          

佐々木典子ソプラノ・リサイタル

ふきのとうホールのオープニングフェスティバルに参加するのも26日が最後の予定であった。26日に5階のエレベーターを降りたところで声をかけられた。Kitara Club会員でKitaraボランティアとしても活動している顔見知りの女性であった。31日で終了する六花亭のコンサートに来る予定があるかと訊かれたが、6回も通ったので今日が最終回だと告げると、チケットを無駄にしたくないので良ければ使ってほしいとの話であった。“喜んで”と答えると、妻の分も含めて2枚頂くことになった。彼女の手元には事情があってチケットが何枚かあったようで、無駄になることを気にしていた様子であった。コンサートの開催日も押し迫って音楽好きの人に譲ろうとしていたように思えた。断るのは簡単だったが、遠慮なく頂いた方が良いと判断した。声楽のコンサートで以前にソリストとしてその歌声を聴いたことのある歌手が出演するコンサートだった。

2015年7月30日(木) 開演時間 19:00

佐々木典子  R.シュトラウスを歌う

佐々木典子(Noriko Sasaki)は熊本県出身。武蔵野音楽大学を卒業後、モーツァルテウム芸術大学オペラ科を首席で修了。その後、ウィ-ン国立歌劇場オペラ研修所を経て、同歌劇場専属歌手(1986-91)として活躍。ウィ-ンを始めヨーロッパ各地の劇場に出演の他、マーラーやR.シュトラウスなどのコンサートにも数多く出演。帰国後は二期会などで活躍。特に、R.シュトラウスの作品で傑出した演唱で高い評価が定着。現在、東京藝術大学教授。東京二期会会員。

2009年2月、佐々木典子は天羽明恵の代役としてピアノの仲道郁代とデュオ・コンサートに出演した。その時の彼女の話で鮮明に記憶していることがある。指揮者やオーケストラと共演するピアニスト、ヴァイオリニストなどと違って、歌手の場合は公演契約時から代役が決まっているということである。世界中のどこでも同じ慣習であると伺った。
その後、彼女は12年5月の札響定期演奏会のプログラム「ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス」でソプラノのソリストとして出演していた。生で彼女の歌声を聴くのは今回が三度目になる。

野平一郎(Ichiro Nodaira) は1953年、東京生まれ。東京藝術大学、同大学院修士課程作曲家修了後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院で作曲とピアノ伴奏法を学ぶ。ソリストとして内外の著名オーケストラと共演し、室内楽奏者としても多くの演奏会に出演。間宮芳生や日本の作曲家の作品の世界初演、リゲティの「ピアノ協奏曲」の日本初演など多彩な活動で芸術選奨文部大臣賞など受賞も数多い。2005年より静岡音楽館AOI芸術監督。現在、東京藝術大学教授。
彼のピアノは今回が3回目。98年は渡辺玲子ヴァイオリン・リサイタルのピアノ伴奏を担当。08年は「メシアン生誕100年記念プログラム」で藤井一興との共演におけるピアノ連弾、2台ピアノでの演奏は記憶に残る演奏会だった。

Richard Strauss 歌曲の夕べ  R. Strauss Program

「夜」Die Nacht, op.10-3 作詞:H.v.ギルム
「万霊節」Allerseelen, op.10-8 作詞:H.v.ギルム
「思いの全ては」All mein Gedanken, op.21-1 作詞:F.ダーン
「私の心の王冠」Du meines Herzens Kronelein, op.21-2 作詞:F.ダーン
「矢車菊」Kornblumen, op.22-1 作詞:F.ダーン
「ばらの花冠」Das Rosenband, op.36-1 作詞:F.G.クロプシュトック
「ツェチーリエ」Cacilie, op.27-2 作詞:J.ハルト
「献呈」Zueignung, op.10-1 作詞:H.v.ギルム
「あすの朝」Morgen, op.27-4 作詞:J.H.マッケイ(独奏ヴァイオリン付き)

★歌劇《ばらの騎士》より 「元帥夫人のモノローグ
 Marschallin's Monologue from “Der Rosenkavalier”

★四つの最後の歌 Vier letzte Lieder
1.「春」 Fruhling 作詞:H.ヘッセ
2.「九月」 September 作詞:H.ヘッセ
3.「眠りゆくとき」 Beim Schlafengehen 作詞:H..ヘッセ
4.「夕映え」 Im Abendrot  作詞:J.v.アイヒェンドルフ

歌曲の分野ではシューベルトの曲は親しむ機会はあったが、シューマンやR.シュトラウス、ラフマニノフなどは多くの作品を作っていることは判っても聴く機会がない。それでもR.シュトラウスやマーラーの作品を最近は聴く機会がでてきた。
木の香りの漂う新しいホール。30年も寝かせていた乾燥材が使われているそうである。木の温もりも伝わってくるホールは何とも心地よい。

Richard Strauss(1864-1949)はシューベルトが作り上げた芸術歌曲を高度なドイツ歌曲に発展させた作曲家として知られる。彼は生涯を通して歌曲を作ったが、今回選ばれた曲目は彼の20代の若い頃の作品が主である。プログラムに載っている詩を演奏中に目を通すことも出来た。(プログラムをめくる音を立てる人は周囲にはいないのが幸いであった。読みやすい大きな字で書かれた歌詞とともに曲をより良く鑑賞できた)。自然やごく平凡な日常生活での出来事や恋心を何気なく描いている詩を選んでの曲つくり。

佐々木は8曲を一気に歌い上げた。1曲目からホールに響き渡る歌声に聴き惚れたが、歌手は聴衆の拍手が入る中断を好まずに8曲を通して歌った。歌手が歌に集中できる環境を用意してあげるのも聴衆の役割でないかと思った。誰一人歌手の邪魔をする人がいなかったのは好ましかった。拍手したくなる場面が何度かあったが、1曲ごとの拍手はプログラムによっては相応しくないと常々思っている。歌曲ではR.シュトラウスを得意として世界のホールで活躍してきた佐々木が格調高く、見事な演唱を繰り広げた。

8曲目の「献呈」が終って拍手大喝采。聴衆はそれまで抑えていた感情を大拍手で表現。野平一郎のピアノ伴奏も超一流だった。ピアノはベーゼンドルファー。(*ピアノは今までのコンサートでスタインウェイも使われていたが、ヤマハも用意されているのかなと余計なことも気になった。)

9曲目のヴァイオリン独奏はエーリッヒ・へーバルト(Erich Hobarth)。今回のオープニング・フェスティバルで「モザイク・カルテット」の一員として三夜に亘って出演の予定があったが今夜は特別出演。「モザイク・カルテット」はニコラウス・アーノンクールが主宰するウィ-ン・コンツェルトゥス・ムジクスのソリストやメンバー。古楽器による弦楽四重奏団では世界最高のひとつとされる。アーノンクール率いるウィ-ン・コンツェルトゥス・ムジクスは06年にKitaraで公演。へーバルトはこのオーケストラのコンサートマスターも務めている。彼を含むカルテットのメンバーも客席でコンサートを楽しんでいた。

後半はオペラ用の衣装で登場。《ばらの騎士》は1911年ドレスデンで上演されて大成功を収め、ウィ-ンからドレスデンまで特別列車が走ったというエピソードがあり、今日でも人気の演目。おそらく、佐々木はウィ-ン国立歌劇場を始め他の歌劇場で何度もステージに立ち演じたと思われる役の曲だったのではないかと思った。

「四つの最後の歌」はR.シュトラウスの死の前年1948年に書かれた曲で演奏会での演目になることが多い。以前、生で日本人歌手でも森麻季、昨年はテレビで藤村実穂子の歌声を聴いた。(昨年3月、藤村がKitaraでリサイタルを開いてR.シュトラウスを歌った。)ソプラノ、メゾ・ソプラノで声の種類が何通りかあるようで、詳しくは判らない。同じソプラノでも、イタリアものが似合う歌手、ドイツものが似合う歌手がいるような気がする。佐々木典子はどちらかと言えば重厚なドイツものに向いている感じがした。 

全ての曲が終ってステージに再登場した時に、彼女は“アンコール曲は用意していない”と言ったが、盛大な拍手に応えて、前半で歌った「献呈」を想いを込めて熱唱した。

小ホールでも収容人数が200~500ぐらいのものまで様々であるが、「ふきのとうホール」は響きの良さ、交通の利便性、適正な収容人数などの観点から開催可能なコンサートも絞られるだろう。月2回程度の常設のコンサートが開催されるようである。しばらく聴いていない「天満敦子のリサイタル」(11月14日)は一応計画に入れてある。

今月は新設された「ふきのとうホール」で7回、Kitaraで7回と月14回のコンサート鑑賞は13年7月の13回を超える新記録であった。歩くのに支障が出たり、病院通いも続く状況で無事に7月も過ぎ去る。趣味が高じて道楽になった感が無いでもないが、いつまでも続くわけではない。ただ8月(5)、9月(8)、10月(8)、11月(5)、12月(3)のチケットは購入済みで数回は増える見込み。大きな病気をしないようにと願っている。予定が狂った時はそれまでと達観している。

 

ミニコンサート(by 中江早希)in Steinway Studio

旭川出身のソプラノ歌手、中江早希は昨年6月のオルガンサマーナイトコンサートで第16代札幌コンサートホール専属オルガニスト、オクタヴィアン・ソニエと共演した。 その時の彼女の歌声が素晴らしかったので、身近に感じれるホールで聴いてみようと思った。

ピアニスト新堀聡子と株式会社井関楽器の企画によるミニコンサートが二年半前に始まった。月一の企画で今回が30回目という。私が初めてスタインウェイスタジオでのミニコンサートに出かけたのが昨年2月の下司貴大(*現在イタリア留学中)のバリトンのコンサート。凄く近い距離で、音をすべて聞き取れるので迫力のある美声を楽しめた。2度目は先月のヴァイオリニスト鎌田泉のコンサートでサロン風な雰囲気で他のホールとは違った趣があるのが良かった。それに続いて今回が3度目である。

2015年3月29日(日) 14:00~14:45  井関楽器札幌3F スタインウェイスタジオ

中江早希(Nakae Saki)は旭川出身。今まで数々の音楽コンクールで入賞し、第12回中田喜直記念コンクールで大賞、第25回ハイメス音楽コンクール声楽部門で第1位、第11回東京音楽コンクール声楽部門第3位(1位なし)。現在、東京藝術大学大学院博士後期課程に在籍。東京芸大の各種コンサートで高関健や湯浅卓雄などと共演。オペラでの活躍が目立つ。東京・札幌・旭川でリサイタルや室内楽などでも活躍中で将来を嘱望される若手ソプラノ歌手。

[PRPGRAM]
すべてリヒャルト・シュトラウスの作品。
~香り漂う花の歌曲~
 ○バラのリボン  ○矢車菊  ○ポピー
~オペラチック歌曲~
 ○セレナード  ○言われたことは それでおしまいではない ○15ペニヒで ○アモール
 
◎4つの最後の歌
 1.春  2.九月  3.眠りにつこうとして 4.夕映えの中で

R,シュトラウス(1864-1949)はドイツの作曲家。交響詩の作品が多くて有名であるが、昨年は彼の生誕150周年に当って各地で演奏される機会が多かった。「家庭交響曲」「アルプス交響曲」などの交響曲も書いているが4楽章から成る伝統的な交響曲は知られていない。偉大な作曲家で、歌曲は160曲以上も作品を残している。「2つの歌」、「3つの歌」、「4つの歌」、「5つの歌」、「6つの歌」、「8つの歌」と一まとめにして数多くの作品を書いた。

プログラム最初のテーマは「花」。配布された〈ちょこっと解説〉によると、「矢車菊」は4月に咲く青い花。「ポピー」は夏に咲く花。花のカラー写真も載せられていた。
次はオペラ風の4曲。中江はオペラの曲が似合う。歌詞の日本語訳も見ながら聞いたが表情豊かな演唱で面白かった。
“Amor”は「愛」の歌。[ソプラノのための3つの賛歌]がオーケストラと独唱付きで1921年の作品にあるので、その3曲目かなと思った。(*帰宅して調べて判った。)
コロラトゥーラの技巧が愛の神様キューピットのケラケラ笑いや飛び回る様子などが描かれる。超絶技巧が駆使された曲。簡単に披露できる曲ではない、彼女ならではの曲。改めて素晴らしい声の持ち主だと感心するばかり。

[4つの最後の歌]はシュトラウスが亡くなる前の1948年の文字通り、「4つの最後の歌」。ヘルマン・ヘッセの詞に曲をつけた。私は歌曲は余り知らないし、シュトラウスの歌で聴いたことがあり、曲名を知っている唯一の歌。「4つの歌」をたくさん書いているので《最後》のと付いている理由が今回初めて判った。今まで森麻季や藤村実穂子の歌で聴いたことはあるが、タイトルは知っていてもメロディなどには親しんでいない。一流の歌手が歌う難曲だという認識はあった。オーケストラを伴う曲なので、歌い甲斐のある作品なのだろうと思う。

ピアニストの新堀聡子も大したもの。普通のピアノ伴奏とは訳が違う。オーケストラのパートをピアノで表現するのは大変だったと思う。井関楽器ピアノ講師としての仕事よりも大変だったのではないかと勝手に想像した。でも、これが彼女の成長にも繋がると素人ながら思った次第。

[4つの最後の歌]は大曲である。博士課程リサイタルの曲目だったかも知れないと最後にふと思った。中江の将来を見据えた通過点なのだろう。とにかく素晴らしい歌声が聴けて楽しかった。80席ほどのホールで歌声を聴くと臨場感が得れる利点がある。
アンコールに「明日」を熱唱。また、いつの日か彼女の歌声を耳にしたい。近い将来に日本を代表するソプラノ歌手になっていることを願う。


松井亜樹ソプラノリサイタル~ロシアオペラの夕べ~

 先月20日(金)に朝日カルチャーセンター札幌主催の公開講座があった。札幌大学教授でピアニストでもある高橋健一郎氏が定期的に講座を開いているが、彼の講座「ラフマニノフと祖国ロシア」を受講した。講師自身のピアノ演奏やCD, DVDの鑑賞を交えながらの講座は興味深かったが、話の最後に「松井亜樹ソプラノリサイタル」の案内があった。25名ほどの講座参加者の中に彼女の姿もあった。
実は2008年の「時計台コンサート」で二人が出演するコンサートを聴いていた。「歌とピアノで伝えるロシアの息吹」と題して行われたコンサート。高橋君は私の高校時代の教え子。彼が2年生の時に担当しただけだが、札幌北高校時代で英語の総合力は断然トップであった。当時から北海道ショパン学生ピアノコンクールでも優秀な成績を残していた。高1までは東京芸大を目指していたようだが、数学、物理に興味を持ち東大理Ⅰに進学した。大学では文系に転向。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。ロシア語学とロシア音楽が専門。

08年のコンサートではロシアの歌曲の他に、チャイコフスキー、ラフマニノフ、メトネルなどのピアノの小品も演奏された。松井さんは北海道教育大学札幌校芸術文化課程を卒業した後、ロシアで修業を積んでいた頃だったようである。新進の歌手としてスタートを切った初々しい感じがしていた。

昨年、音楽雑誌「音楽の友」で彼女の東京での活躍ぶりを知った。2月の朝日カルチャーセンターでの出会いで、リサイタル開催を知った。実は高橋君と言葉を交わしたのは彼の高校卒業以来初めてであった。25年ぶり。(彼が高3の折に札幌北高校を会場にノーベル賞受賞者のフォーラムが開かれ、彼が歓迎の辞を英語で述べることになった。その時の彼が用意したスピーチ原稿の内容はレベルの高い素晴らしいものだった。私は彼のスピーチの指導をすることになっていたが、フランス人の文学賞受賞者が日本の各地で英語ばかりがフォーラムで使われることに苦情をはさんだことで、当事者の突然の変更通知によって高橋君は日本語で挨拶することとなった。当日の同時通訳の英語は当初のスピーチの内容と比べて、格調の高さが欠けてしまった。本人が一番残念だったと思うが、私にも悔しくてたまらない出来事であった。)

前置きが長くなってしまった。いよいよリサイタルの開催である。

平成27年3月6日(金)19時開演。 ザ・ルーテルホール

出演:松井 亜樹(ソプラノ)、高橋健一郎(ピアノ)
 [ 賛助出演 ] 今野博之(バリトン)、中添由美子(ピアノソロ)、坂田朋優、國谷聖香(ピアノ連弾)、藪 淳一(ナレーション)

PROGRAM
[ 第一部 ]
 グリンカ:オペラ『ルスランとリュドミラ』から
         序曲(連弾) (坂田、國谷)
         リュドミラのアリア「ああ、運命よ、私のつらい運命よ!(松井、高橋)
 リムスキー・コルサコフ:オペラ『皇帝の花嫁』から
          グリャズノイのアリア「あの美しい人が忘れられない」(今野、高橋)
 ムソルグスキー:オペラ『ソローチンツィの定期市』から
          ハラ―シャのドゥムカ「悲しまないで、愛しい人よ」(松井、高橋)
          コバック(ラフマニノフ編)(ピアノソロ:中添) 
 ストラヴィンスキー:オペラ「放蕩者の遍歴」から
         アンのアリアとカバレッタ「トムからは何も便りがないーーーかれのところへ行こう」(松井、高橋)

[ 第Ⅱ部 ]
  チャイコフスキー:オペラ『イオランタ』から
              イオランタのアリオーソ
                「なぜ私は前には知らなかったのかしら」(松井、高橋)
        :オペラ『スペードの女王』から
            リーザのアリア「この涙はどこから」(松井、高橋)
            エレツキーのアリア「私はあなたを愛しております」(今野、高橋)
            リーザのアリオーソ「もう真夜中に近い」(松井, 高橋)
        :オペラ『エヴゲニ―・オネーギン」から
            ポロネーズ(連弾)(坂田、國谷)
            オネーギンとタチアナの二重唱「ああ、なんて苦しいの! 再びオネーギンが私の前に現れる」(松井、今野、高橋)

第一部の作曲家の管弦楽曲は知っていても、オペラのタイトルで知っているのは「ルスランとリュドミラ」だけである。といっても序曲だけで、演奏会でアンコール曲として聴く程度である。活気に満ち溢れた曲がピアノ連弾で流れた。

コンサートのナレーションを元HBCアナウンサーを務めていた方(*どこかで見た顔だと思っていたら当時テレビで見ていた)が担当して、オペラのストーリーを話したうえでコンサートが進められた。
最初のオペラは悪魔に奪われたリュドミラを求婚者ルスランが救出するという民話に基づくオペラ。囚われの身になったリュドミラが魔術師には決して従わないと力強く歌い上げるアリア。

ストーリーの展開に沿って、音楽に変化を持たせてピアノを奏でる高橋の演奏は最初から素晴らしい技量を発揮。松井も透明感のある歌声でリュドミラの清らかな心と精神の強さを表現した。

R.コルサコフ、ムソルグスキーは19世紀後半、ストラヴィンスキーは20世紀に活躍したロシアの作曲家で偉大な作品を残しているが、オペラのタイトルは初めて耳にするものばかりである。
賛助出演したバリトンの今野は北海道二期会での活躍が目立ち舞台経験が豊富な様子が歌唱だけでなく舞台での振る舞いにも表れていた。

第二部は全てチャイコフスキーの作品で親近感が持てた。ただし、オペラは他のジャンルに比べて親しんでいない。「スペードの女王」は小澤征爾得意のオペラだと思うが観たこともなく、何の知識もない。「イオランタ」は先月にMET上演があったばかりで鑑賞を予定している。「エヴゲニ―・オネーギン」は13年11月のMETビューイングを観たので印象深い。(その時の模様は次のブログに書いてある。http://teruoblog687.blog.fc2.com/blog-entry-151.html)。

後半に松井は赤のドレスで登場。会場が一瞬華やかな雰囲気に包まれた。年頃になったイオランタが淡い気持ちを乳母に訴える歌。前半のプログラムでは舞台の立ち位置を変えずに歌っていたのが、オペラのシーンに合った状況で可憐な表情で歌い上げたのは良かった。

「スペードの女王」から3曲が歌われたが、ストーリーの内容が良く解らずに集中力が欠けたのかボヤケタ印象になってしまった。鑑賞の仕方がまずかったようである。

「ポロネーズ」はオペラだけでなく演奏会で単独で演奏されるが、昨年もKitaraで聴いた覚えがある。舞踏会の華麗な音楽が、ピアノ連弾で演奏された。率直に言って、グリンカの曲での演奏より心地よく聴けた。
オネーギンとタチアーナの二重唱はタチアーナがオネーギンの告白に動揺しながら、申し出を断り別れを告げる場面はオペラの実際の場面が浮き上がって聴衆の心を動かした。会場に感動の声が湧きあがった。1年半前に観たオペラの場面が蘇って良かった。リサイタルにバリトン歌手の客演があって最後の二重唱で盛り上がった。

最初から最後までピアノの演奏も素晴らしかった。ただ単なる伴奏の域を超えて、全体的に音楽を深く理解した上でのピアノ伴奏だったと思った。短い曲の中で曲調の変化や音の強弱に応じて巧みに鍵盤を操る所作にも凄さを感じ取ったのは私だけであろうか。プロとしてピアノリサイタルを聴いてみたいものである。

松井亜樹はロシア歌曲を得意としていると思うが、アンコールにロシアの歌曲を2曲歌った。1曲は「ラフマニノフ:春の流れ」。もう1曲の曲名は聞き逃した。
最後に出演者と聴衆が一緒に「カチューシャ」を歌って終了。ホールの1回ロビーで、バリトン歌手、ピアニスト、ソプラノ歌手に感想を述べて外へ出た。余韻を楽しむために音楽を大音量で聴けマスターと話ができるBARへと足が向いていた。


     
プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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