PMFオーケストラ演奏会・プログラムB(メルクル&PMFコンダクティング・アカデミー)

PMF前半のウィ-ン・フィル、ベルリンフィル教授陣のアカデミー・メンバー指導が終わって、後半の指導はアメリカの教授陣が担当し始めた。オーケストラ・アカデミー・メンバーは90名であるが、他にコンダクティング・アカデミー・メンバーが3名選出されている。3人の指導は準・メルクルが行った。その成果の発表が23日のプログラムBで行われた。

2017年7月23日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演者〉 準・メルクル、PMFコンダクティング・アカデミー(指揮)
       PMFアメリカ(アメリカの主要オーケストラのメンバー12名) 
       PMFオーケストラ
〈PROGRAM〉
 リスト:交響詩「レ・プレリュード」(指揮:柳澤 謙)(日本・USA)
 ドビュッシー:管弦楽のための「映像」から「イベリア」(指揮:Su-Han Yang)(台湾)
 R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」(指揮:Dawid Runtz)(ポ-ランド) 
 バルトーク:管弦楽のための協奏曲(指揮:準・メルクル、PMFアメリカも参加)

先週のプログラムAに加えてプログラムBもPMF首席指揮者のメルクルがオーケストラを指導、前半の3曲はメルクルから個人指導を受けたアカデミー生が指揮の舞台に立った。

リストは交響詩の分野の先駆者として知られているが、「前奏曲」以外の交響詩は殆ど知らない。カラヤン&ベルリン・フィルのCDで聴くのみである。かなり以前に演奏会で聴いた記憶はある。「人生は死への前奏曲」として曲が綴られ、ドラマティックな展開で華やかなフィナーレとなり、演奏終了後にはブラヴォーの声も上がった。多分、親しい日本の友人たちの声援のように思えた。
出だしは緊張もあったのか、指揮もやや単調で金管楽器奏者も調子に乗りきれないようだった。次第にリズムを取り戻して後半はダイナミックな演奏を引き出した印象を受けた。

ドビュッシーには「映像」というピアノ作品が2集あるが、第3集に管弦楽作品があるのは初めて知った。「海」、「牧神の午後への前奏曲」、「夜想曲」以外で耳に出来て大変良かった。ドビュッシー独特の印象派音楽の世界に浸った。ピアノ曲より現代音楽の作曲家としての色彩の強い新しい試みの工夫がなされていて非常に興味深かった。打楽器やチェレスタの多用も興味を引いた。
安心して観ていられる指揮ぶりで新鮮な曲を楽しんだ。

交響詩を数多く書き残したリヒャルト・シュトラウス(*フランスのイベール同様に日本の紀元2600年奉祝記念にドイツ代表として作品を書いたことでも知られる偉大な作曲家)が最初に書いた交響詩「ドン・ファン」。ハンガリーの詩人レーナウの叙情詩に基づく曲。理想の女性を追い求めて女から女へと遍歴を続けて、最後には決闘に傷つき人生を終える悲劇の男性の物語。
ステージに登場した時点からオーケストラを自分のペースに引き込んだような指揮者。非常に手慣れた格好の良い指揮ぶりが最初から最後まで魅力的であった。演奏機会も多く、聴きなれたメロディも多かったが、20分近い曲が終るのが早く感じた。

指揮者も演奏者も全て若々しい音楽家の姿は生き生きとしていた。プロの演奏家のコンサートとは違う若さに満ち溢れたエネルギーを頼もしく思った。
札響の定期演奏会では必ずしも満足のいく最高の座席ではないので、PMFオーケストラ演奏会では自分が望む最高の座席(2階CB1-3列中央)から鑑賞している。Kitaraは一般的にはどの座席からでも音楽が楽しめる音響を備えているとはいえ、オーケストラ鑑賞ではステージ上の奏者が全て見渡せて、音を奏でる奏者が直ぐ判る座席は観る楽しみが増える。奏者の直接音が直ぐ伝わり、演奏の様子もより生き生きと伝わる。オーケストラの迫力ある音楽を楽しむのに最近、好んでいる座席である。(*指揮者に注目する時には廉価だということもあって、以前はP席を好んで買い求めた)。

バルトークはハンガリーが生んだ最も有名な現代音楽作曲家で現今の世界中の演奏会で取り上げられる作品も数多い。1940年、バルトークは第ニ次世界大戦中にハンガリーからアメリカに亡命した。ハンガリーからアメリカに亡命して大成した指揮者は数多いが、彼はアメリカでは無名で作曲活動はストップしてしまった。彼は友人たちの尽力でボストン響のための新作を依頼され、1943年にこのユニークな作品を白血病の病床にありながら3ヶ月足らずで書き上げた。
「協奏曲」は独奏楽器とオーケストラによる作品というのが通例であるが、バルトークのこの作品では独奏者はオーケストラ全体を指す。様々な楽器にスポットが当てられるので、CDで聴いていてもある程度分るが、ライヴで観ていると極めて楽しい。

曲は5楽章構成。「序章」、「対の遊び」、「悲歌」、「中断された間奏曲」、「終曲」。
メルクル指揮でオーケストラにPMFアメリカの教授陣が加わった(*ハープはウィ-ン国立歌劇場のパップがプログラムAに続いてプログラムBにも参加)。アカデミー生が登場する前にPMF初参加の教授を含むファカルテイ数名がステージに現れて準備を始めて彼らの意気込みを感じた。ファゴット奏者のソロをアカデミー生が務めるのがこの時点で分った(*フィラデルフィア管首席のマツカワは昨年もソロをアカデミー生に担当させていたのを思い出した)。
第1楽章では金管楽器のカノンが楽しい。第2楽章では同種の管楽器が「対」になって音楽が進められた。ファゴット2本、オーボエ2本、クラリネット2本、フルート2本、トランペット2本が次々と対になって演奏される様子は観ていて非常に面白かった。曲想もユーモラスだった。第3楽章はエレジーで夜の音楽。第4楽章には民謡風の旋律が奏でられるが、ショスタコーヴィチの交響曲がバロディ化されるところも出てくる。第5楽章は、オーケストラのトッティで派手なフィナーレとなって勇壮であった。
打楽器、管楽器の活躍で色彩感あふれる音楽が展開されて聴きごたえのある楽しい曲。金管楽器が13本もあると迫力がある。現代音楽でこのような興味深い曲を作り上げたバルトークの偉大さを改めて感じた。

一昨年は札響で、昨年は名古屋フィルでライヴで聴いていてこの曲の良さを味わっているのであるが、まだまだ鑑賞力が足りずに
いた。オーケストラの各楽器担当の細かい観察ができて新たな発見をしたところもあった。
準・メルクルが指揮台に上がり、曲の要所をPMFアメリカが占めるので当然ながら曲が引き締まった、演奏終了後の鳴りやまぬ拍手とカーテンコールにメルクルも最後はコンマスの手を取って一緒に退場した。

2階CB最前列の席で鑑賞することは多くはない。その恩恵に浴した友人と妻にもオーケストラの醍醐味を味わってもらった。ホールを出ても公園内は暑い陽ざしが照りつけていたので、普段は通らない木陰が多い道を通って地下鉄駅に向かった。いつも同じ道を歩いているが、やはり女性の感覚は違うようである。ボートが行きかう菖蒲池の周りにはブルーのアジサイのほかに見慣れないピンクのアジサイの花を見つけた。周りの自然をもっと楽しむ余裕も生活の中に取り入れることも大切と気づいた。

夕食を取るには早い時間だったが、食事の準備も大変な妻のことを考えて外食をして帰宅した。自分は料理が出来ずに、食事の後片付けをするくらいなので偶にはと思って休養日にしてあげた。




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PMFオーケストラ演奏会・プログラムA[準・メルクル指揮《ダフニスとクロエ》]

2017年のPMFオーケストラ演奏会も3つのプログラムが用意されている。日本人を母に持つドイツ人指揮者の準・メルクルは05年、08年は客演指揮者として参加して、13年、15年は首席指揮者を務めPMFには5回目の参加。3つのプログラムは札幌ではそれぞれ2公演開催。

2017年7月16日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

〈出演者〉 j準・メルクル(指揮)、PMFヨーロッパ、 PMFオーケストラ
       (*PMFヨーロッパはウィ-ン・フィル、ベルリン・フィルの教授陣)
〈演奏曲目〉
 ベルリオーズ:序曲「海賊」 作品21
 細川 俊夫:夢を綴る
 ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」

ベルリオーズ(1803-69)の「幻想交響曲」はあまりにも有名で好んで聴くが、「海賊」は一度テレビで聴いた記憶がある程度の曲。
パリ音楽院在学中にローマ大賞を受賞して、イタリアに留学。この曲はローマ滞在中にバイロンの物語詩「海賊」に触発されて書いたという演奏会用序曲。フランスの作曲家らしい雰囲気のあるロマンティックな作品。2管編成だが、金管楽器が12本で管楽器の響きに特徴があった。10分程度の曲。

細川俊夫((1955- )は武満徹とともに日本現代音楽を代表する海外で人気の作曲家。この管弦楽曲は2010年ルツェルン音楽祭で初演された作品だそうで、もちろん初めて聴いた。日本を連想させる曲想が印象的で、打楽器が静かに奏でる音楽は神秘さを湛えている。海外で喜ばれる曲でもあり、現代曲の良さが伝わった。チェレスタをはじめ様々な打楽器の音色とそれを支える弦楽器の技法にも現代曲の工夫が見られた。15分程度の曲で聴衆の心を動かした作品。

ラヴェル(1875-1937)には輝かしいオペレーションを施した魅力的な作品が沢山ある。彼の代表作の一つ「ダフニスとクロエ」はコンサートでバレエ音楽の全曲を聴くのは初めてのような気がする。管弦楽曲として編まれた第2組曲を演奏会で何回か聴いている。15年にケント・ナガノ指揮モントリオール響、最近では昨年6月にスラットキン指揮フランス国立リヨン管の演奏を聴いた。やはりフランス系のオーケストラによる演奏は独特の味がある。バレエ音楽の全曲のCDは所有しているが、詳しいストーリーは分らずに聴いていてもライヴで音楽を直接に聴く迫力が伝わらない。

この作品はロシア・バレエ団の依頼で書かれた、3部から成るバレエ音楽。1909-12年に作曲。台本は2・3世紀のギリシャの小説家ロンギュスによる物語に基づく。牧人のダフニスと羊飼いの娘クロエが様々な障害を乗り越えて結ばれるストーリー。この健康的な賛歌をラヴェルが巨大な音楽のフレスコ画にした。恋物語の感情表現というより、古代の壁画から作り出された音の叙事詩といった方が良い作品。50分を越える大曲。
【第1部】“序奏と宗教的な踊り”、“全員の踊り”、“ダフニスの踊りとダルコンのグロテスクな踊り”、“ダフニスの優しくて軽やかな踊り”、“ヴェールの踊り~海賊の来襲”、“夜想曲とニンフの神秘的な踊り”
【第2部】“序奏”、“戦いの踊り”、“クロエの踊り”
【第3部】“夜明け”、“無言劇”、“全員の踊り”
 
第1部の舞台は丘や洞窟を臨む野原。第2部は海賊の陣地。第3部の舞台は第1部と同じ。日が昇り、鳥がさえずる夜明けにダフニスは海賊たちにさらわれていたクロエと再会。ダフニスがクロエへの愛を誓い、若者たちが祝って賑やかに踊る。

指揮者のメルクルもリヨン管の音楽監督在任中には演奏機会が何度かあったと思う。彼はオペラの経験も豊富なのでバレエ音楽として「ダフニスとクロエ」は手中にあるようである。
PMFヨーロッパの14人の奏者がそれぞれのパートのソロを弾いて安定感を引き出していたように思った。特に第3部の夜明けでフルートの奏でる美しいメロディが魅力的であった。戦いの場面や踊りの場面でのオーケストラの盛り上がる演奏は聴きごたえがあった。オーケストラの魔術師と呼ばれたラヴェルならではの曲の盛り上げ方に心も弾んだ。
打楽器の種類も多くて奏者も大活躍、チェレスタはPMFピアニストが演奏していたのではないかと思った。

2階の正面席2列13.・14番の特等席からオーケストラの音を友人と一緒に観覧。時折、オペラグラスで演奏者の姿もハッキリ確認しながらコンサート全体を楽しんだ。前列や右側の数席が空いていたのは大雨の被害を受けたのか都合で来れない人がいたのは気の毒であった。

※PMFヨーロッパはメインプログラムだけの出演で、全体の演奏に加わるほかソロ・パートを受け持つのが通例でオーケストラの質を高めている。ところがホルン・ソロはサラでなく昨年に続いて今年もアカデミー・メンバーが行っていたようである。経験を積ませようとのサラ・ウィリスの配慮だと思った。

バーンスタイン・レガシー・コンサート

Bernstein Legacy Concert(バーンスタイン・レガシー・コンサート)には今まで行ったことが無かった。今回は2007年、パリで開催されたロン・テイボー国際コンクール優勝の田村響がピアニストとして出演するので聴くことにした。是非一度リサイサイタルを聴きたいピアニストであるが、オーケストラとの共演も待ち望んでいた。昨年Kitara小ホールで三浦文彰ヴァイオリンリサイタルのピアノ伴奏を務めていて、大ホールには初めての登場だと思う。

2017年7月11日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演者〉指揮/大山平一郎、 ピアノ/田村 響  管弦楽/PMFオーケストラ
      お話/田中 泰
〈演奏曲目〉
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15(ピアノ:田村 響)
 コープランド:市民のためのファンファーレ
 ミヨー:屋根の上の牛 作品58
 バーンスタイン:「ウエストサイド・ストーリー」から “シンフォニック・ダンス”

大山平一郎(Heiichiro Ohyama)は8日のPMFオープニング・コンサートでPMFに初参加して、バーンスタインの曲の演奏で経験豊かな指揮ぶりを見せた。大山はPMF芸術監督を務めたマイケル・テイルソン・トーマスとは一時期ロスアンゼルス・フィルで一緒だった。彼を通してPMFの情報を得ていた。また、バーンスタイン指揮による「シンフォニック・ダンス」のLPレコード収録にヴィオラ奏者として参加していた。
大山は九州響常任指揮者時代に園田高弘とベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲録音を残している。現在、米国サンタ・バーバラ室内管音楽監督・常任指揮者。

田村 響(Hibiki Tamura)は1986年、愛知県出身。愛知県立明和高等学校音楽科に学んでザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学に留学。2002年ピティナピアノ・コンペティション特級グランプリ、園田高弘ピアノ・コンクール第1位など目覚ましい活躍で03年のアリオン賞、06年出光音楽賞受賞と続き、ヨーロッパ、南米などでのリサイタルやオーケストラ共演で頭角を現す。07年のロン・ティボーコンクール優勝で一気に日本での知名度が高まった。09年ビシュコフ指揮ケルン放響のソリストとして日本ツアー。室内楽でもヴェンゲーロフ、堀米ゆず子、宮田大らと共演。2015年大阪音楽大学大学院修了。現在、京都市立芸術大学専任講師。

PMFは20世紀のクラシック音楽界を代表する指揮者・作曲家のレナード・バーンスタインが、1990年に札幌に創設した国際教育音楽祭。これまでPMFで学んだ若手音楽家は76ヵ国・地域から約3,300人、現在、修了生は200を超えるオーケストラで現役奏者として活躍しているという。
バーンスタイン・レガシー・コンサートは何年か前にPMFの恒例のコンサートなって開催されている。バーンスタインの楽曲と彼が愛した作品、まさにレガシー(遺産)を取り上げる特別企画である。

「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番」はバーンスタインがベートーヴェンの全5曲のピアノ協奏曲の中で最もお気に入りで何度も弾き振りしていた曲という。コンサートでは「第3・4・5番」が演奏される機会が多い。「第2番」は2005年にKitaraでバレンボイムが手兵のベルリン・シュターツカペレを弾き振りした時のことは覚えているが、「第1番」は今までコンサートで聴いた記憶は無かった。CDはギレリス、バレンボイム、ブロンフマンのCDがあって、昨日の午前中に聴いてみた。5・6年は聴いていないと思ったが、聴きなれたメロディが多くて、こんな名曲だったかと一層ベートーヴェンの偉大さが解った。ただ、内容がシンプルで深みがないので、演奏会で取り上げられることが殆どないのかなと思った。

田村も初めて演奏する曲だということで念入りに練習して臨んだようである。第1楽章の長いカデンツァも印象的だったし、オーケストラと溶け合って素晴らしい演奏を繰り広げた。若手の登竜門と言われる世界的なコンクールを20歳で制して、10年が過ぎた。順調に実績を積み重ねているようで何よりである。札幌は3度目と後で話したが、1回聴き逃したことになる。俊英ピアニストの今後の活躍が大いに期待される。
オーケストラではクラリネット奏者の美しいメロディが光った。

コープランド(1900-90)はバーンスタインが敬愛するアメリカが生んだ有名な作曲家。この曲は初めて聴くが、金管楽器と打楽器だけで演奏された音楽は勇壮であった。オリンピック・ファンファーレの先駆けになったそうである。

ミヨー(1892-1974)はフランスの作曲家で、小品は聴いたことがある。バーンスタインはミヨーと共にタングル音楽祭の教授を務めた。この作品は彼がブラジルで過ごした2年間を曲に綴ったもので、異国情緒が漂いつつ、フランスの洒落た音楽も入っている感じがした。

最後に取り上げたバーンスタインの傑作「ウエストサイド・ストーリー」はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を1950年代のニューーヨークに置き換えて作曲された作品。そのダンスナンバーを中心にオーケストラ用に編曲された「シンフォニック・ダンス」。
この曲はバーンスタインの代表作で様々なコンサートの演目になって親しまれている。
芸術の森で行われたオープニング・コンサートの盛り上がりとは違う雰囲気で聴くことになり、正直言って野外コンサートでの方が楽しめた。室内楽とオーケストラと対照的なプログラムであったし、コンサートの締めくくりとしてPMFオーケストラの登場は新鮮であった。
昨夜は9時近くに演奏が始まり、帰りの時間を気にする人の集中力も薄れていたかもしれない。演奏そのものは音響効果抜群のホールで、聴衆が堪能する曲だったことは間違いない。最後の曲をメインに聴きに来た人も多かっただろう。私自身は田村響の「ベートーヴェン第1番」を聴いて充分に満足していた。
指揮者も渾身の力を込めて指導に当たり全曲を振り終えて満足の様子であった。最後の演奏曲にベルリン・フィルのゼーガスもパーカッションのメンバーに加わって参加していたのは好感が持てた。PMFピアニストの佐久間晃子もピアノを担当していた。

※今朝パソコンを開いてブログランキングを見て驚いた。「ロシアの巨匠フェドセーエフ」と「PMF2017オープニング・コンサート」の記事が第1位と第2位を占めていた。先週の6日も「Kitaraのバースディ」と「時計台ボランティア活動2017」の記事が「第1位」と「第2位」だった。6月の記事は余り注目を浴びていなかったのだが自分のブログが評価されるのは嬉しい。





札響第601回定期演奏会~祝Kitara20周年こけら落とし指揮者とともに

1997年7月4日に札幌コンサートホールKitaraがオープンして20年になる。《こけら落としのコンサート》と《オープン記念コンサート》を指揮した当時の札響常任指揮者、秋山和慶を迎えての2017年7月定期演奏会。
土曜日公演の定期会員であるが、7日の土曜日はPMFオープニング・コンサートが札幌芸術の森で同時刻に開催されるために札響定期は金曜日に振り替えて鑑賞した。

2017年7月7日(金) 19:00開演  札幌コンサートKitara大ホール

指揮/ 秋山 和慶      ヴァイオリン/ 神尾 真由子

88年から札響定期会員だったこともあってマエストロ秋山の指揮は今回で22回目(*尾高は先日の指揮で51回、高関が30回)。
秋山和慶(Kazuyoshi Akiyama)はオープン記念コンサートでレスピーギのローマ三部作を指揮し、札響300回定期演奏会でも「ローマの松」を演奏した。札響を離れてからも客演の機会の多い指揮者で端正で品格のある指揮ぶりは定評がある。

神尾の演奏は2年ぶり4回目。神尾真由子(Mayuko Kamio)は2007年チャイコフスキー国際コンクール優勝以来、札幌での凱旋公演が09年3月の札響定期。ドイツ人指揮者、ハンス=マルティン・シュナイトとの協演で「ブラームス:ヴァイオリン協奏曲」。12年1月の札響定期はウィーン生まれのサーシャ・ゲッツェル指揮のもとで「ハチャトゥリアン::ヴァイオリン協奏曲」、15年はフィンランド人のオッコ・カム指揮ラハテイ響と「シベリウス:ヴァイオリン協奏曲」。過去3回の演奏の指揮者が外国人ばかりで、演奏曲も指揮者と関係のある国との選曲が目立った特徴。
彼女はロシア人ピアニストのクルティシェフと結婚してサンクトペテルブルクが本拠地なはずで、ヨーロッパをはじめ海外での活躍が多いようである。今度はリサイタルを聴きたいと思っている。プログラムによると札響とは2000年に初共演を果たしているから、札響との繋がりは深いようである。神尾は札響定期で集客力ナンバーワンのソリストだそうである。

〈Program〉
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
 ショスタコーヴィチ/交響曲第5番 ニ短調 作品47

クラシック音楽をLPレコードで聴き初めて最も親しんでいたヴァイオリン協奏曲と言えるチャイコフスキーの曲。ロシアの民族性にあふれたロマン派の名作。土曜日の昼公演より少なめの聴衆がヴァイオリンの逸材の演奏を聴こうと押しかけてホールの座席がかなり埋まった。
ステージに登場してから最初から最後まで神尾の圧倒的な演奏に聴衆の集中力の高まりも凄かった。
憂愁を帯びた第1主題を独奏ヴァイオリンが呈示して、楽想が展開され、物憂げで美しい第2主題が続く。第1主題が管弦楽の強奏で力強く歌われ、幻想的雰囲気を作って、長い華やかなカデンツァに入る。フルートが優美な旋律を奏でる。パッションとメランコリーの繰り返しのうちに力強い第1楽章が結ばれる。
第2楽章はカンツォネッタ、アンダンテ。管楽器だけの静かな序奏に伴って、弱音器を付けた独奏ヴァイオリンが切ない旋律を奏でる。“軽い気分の小歌曲”と言える緩徐楽章。
第3楽章はチャイコフスキーの民族主義的傾向が示されたフィナーレ。独奏ヴァイオリンがカプリッチョ風に歌いだし、ロシアの民俗舞曲トレパークの明るい第1主題。第2主題も民族舞曲風の旋律。ロシア風の魅力ある音楽つくりが見られる。イタリアの影響を受けた明るい曲調がうかがえる楽章。コーダが入って管弦楽の躍動的なフィナーレ。りかいしやすくて

神尾真由子のオーラを放ちながら演奏する姿は世界的なトップ・ヴァイオリニストとしての存在感を見せた。外国でのメジャー・オーケストラの共演やリサイタルを通して、確固たる地位を築いているのが実感できる演奏であった。演奏終了後の聴衆の反応は予想以上に凄いもので、感嘆を超えて余りに強烈な演奏に度肝を抜かれた感じであった。今、神尾はヴァイオリニストとして絶頂期を迎えているといっても過言ではないだろう。
アンコール曲は《パガニーニ:「24の奇想曲」より 「第24番」》。超絶技巧に満ちた素晴らしい演奏で、カーテンコールが続く普段に例を見ないくらいの聴衆の熱狂と感動ぶり。

ショスタコーヴィチの交響曲を札響定期で取り上げるのは4シーズン連続である。近年は「第15番」、「第10番」、「第8番」に続く演奏曲。「第5番」はショスタコーヴィチの全15曲の交響曲の中で最も人気のある交響曲である。
ショスタコーヴィチの音楽は鑑賞が難しいとされているが、この「第5番」は理解しやすくて人々に親しまれている。1937年の作曲で、曲の構成も変化があり、力強くて重厚な作品で面白さもある。

第1楽章は低音弦楽器と高音弦楽器の印象的な対話で始まる。前半は深刻な悲劇的な気分が漂う。ヴァイオリン、オーボエ、フルートによる応答主題は美しい。途中から勇壮な行進曲となり、最後はフルートのメロディも入って静かに終わる。
第2楽章は伝統的なスケルツォ。ブラック・ユーモアが入って、おどけた楽章。
第3楽章は金管は無く、弦楽器と木管、ハープ、チェレスタ、鐘だけでの演奏。深い悲しみを讃え、情緒に溢れた楽章。
第4楽章は「暗」から「明」への歓喜の楽章ともされる。それまでの暗い雰囲気を一掃するような金管とティンパニの力強い行進曲で始まる。力強いフィナーレ。

曲の発表時にはソヴィエトでは大成功をおさめたが、当時の社会情勢でいろいろな解釈が行われている。ショスタコーヴィチの社会体制への批判とも受け取られる解釈もされているが、いろんな解釈が可能な作品ではある。
個人的には悲劇的な要素を中心に鑑賞することが多いが、今回は白紙に戻って先入観の無い聴き方をした。

秋山はこれまでに札響共演が119回にもなるが、ショスタコーヴィチの第5番は初めての指揮だったようである。曲に変化もあるせいか、いつもより大きな指揮ぶりのように思えた。
演奏終了後にブラヴォーの声があちこちから飛び、感動した聴衆の様子がホール中に広がって大声援が巻き起こった。端正な指揮ぶりで、終了後も礼儀正しい拍手喝采で終わる印象が今回は違った。

興奮が冷めない帰りのホワイエには神尾のサインを貰おうと並ぶ人々の列が続いていた。




Kitaraのバースディ~札幌コンサートホール開館20周年記念

Kitaraのバースディは札幌コンサートホールのシンボルであるオルガンにスポットを当てて開催されてきた。今年はKitara開館20周年を記念して1997年7月4日に行われた落成記念式典&記念演奏を核にしたプログラムで開催された。パイプオルガンとオーケストラ、ソプラノ、そして札幌市内の中学生たちによる吹奏楽の演奏。

〈出演〉指揮/尾高 忠明   オルガン/ダヴィデ・マリアーノ   ソプラノ/針生 美智子
     管弦楽/札幌交響楽団   吹奏楽/Kitara20周年記念バンド(指揮/鹿討 譲二)
〈PROGRAM 〉
 【オルガン・ソロ】
  三善 晃(マリアーノ編):札幌コンサートホール開館記念ファンファーレ~23の金管のための
 【ソプラノとオルガン】
  フランク:天使の糧
  モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」より “アレルヤ”
  ヘンデル:「メサイア」より “シオンの娘たちよ、大いに喜べ”
 【吹奏楽】
  ショスタコーヴィチ(ハンスバーガー編):祝典序曲 作品96
  内藤淳一:式典のための行進曲「栄光をたたえて」
  ワーグナー(カイリェ編):歌劇「ローエングリン」より “エルザの大聖堂への行列”
 【管弦楽】
  プーランク:オルガン、管弦楽とティンパニのための協奏曲
  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
 
Kitaraホール落成記念式典の冒頭では原曲が札響の23名の金管奏者によってステージ上と客席両側に分かれて三方向から演奏された。オルガンでは残念ながら20年前の迫力は伝わらなかった。

ソプラノの針生(Hariu)は小樽出身でKitara開館の記念演奏の「第九」にも出演し、以来、何度もKitaraのステージに登場している。二期会会員で活躍を続けているが、北海道を代表するソプラノ歌手。札響との共演では「カルミナ・ブラーナ」(2008年)の熱唱が特に印象に残っていた。
オルガン伴奏での歌唱もオーケストラやピアノとは違った味が出ていた。フランクはヴァイオリン・ソナタで親しんでいるが、オルガン曲も偶に耳にする。彼の歌曲は初めて聴くような気がした。「神を褒め称えよ」という意味の「アレルヤ」を繰り返す歌は馴染みであり、明るく華やかな雰囲気が技巧的な歌唱に良く出ていた。ヘンデルの曲もイエスの生誕を喜ぶ人々の様子が歌われているそうで快活なアリアとして楽しく聴けた。3曲とも祝典にふさわしい曲とされる。

20年前の記念演奏ではファンファーレに続いて小林英之によるオルガン演奏があったのはハッキリ記憶しているが、中学生による吹奏楽演奏があったことは忘れていた。その日に演奏されたショスタコーヴィチとワーグナーを当時と同じ指揮者を迎えて、市内4つの中学校から選抜されたメンバー(72名)に当時の中学生4名も参加したWind Ensembleによる演奏が、今回も行われた。
ソ連の革命記念日のために書かれたオーケストラ曲が原曲だが、作品完成の1954年当初から吹奏楽にアレンジされて盛んに演奏されていたといわれる。演奏終了後にブラヴォーの声が上がって会場は盛大な拍手に包まれた。
内藤の作品は2001年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲だったという。式典にふさわしい堂々とした曲。トランペットとトロンボーンのファンファーレでは20年前のメンバーが活躍した様子がうかがえた。
1965年に結成された札幌市中学校吹奏楽部協議会も50年もの歴史を持ち、中学生の実力も年を追うごとに向上しているようである。今回の演奏ではメンバーの大部分が女生徒でチョット驚いたが演奏技術は高くて、心地よく聴けた。
ワーグナーの曲はフィラデルフィア管のクラリネット奏者だったカイリェが吹奏楽用にアレンジしたそうだが、前2曲に比して壮大さとハーモニーの点で今一歩という感じがした。
総合的な印象では中学生の演奏がここまで向上しているのかと感心した。

フランスのエスプリを表現した魅力的なピアノ曲を通して知っている程度のプーランク。管弦楽の作品は余り知らない。楽器編成が弦5部とティンパニとオルガンという「オルガン協奏曲」と言える曲を聴いて凄く感動した。オルガンが管楽器の役割を果たしていた。フルート管やトランペット管などの音を出せることは知っていても、木管や金管のソロ・パートが単独で見事に演奏される様は正に圧巻であった。弦楽器と対する演奏も絶妙であった。協奏曲としてオルガンの魅力がふんだんに発揮される様に魅了された。初演がデュリュフレというのは理解できたが、プーランクはオルガンの名手でもあったのだろうか。
第18代Kitara専属オルガニストDavide Marianoのコンサートは昨年10月以来、何度か聴いているが、いつも素晴らしい。

尾高のベートーヴェン・ツィクルスは2011年に聴いているが、「第7番」は13年のサロネン指揮フィルハーモニア管の演奏が強烈な印象を残した。日本でも超人気の交響曲となった第7番は4楽章のすべてが魅力的。類例を見ないほどリズミカルで躍動感に溢れる作品。第1楽章ヴィヴァーチェ、第2楽章アレグレット、第3楽章プレスト、第4楽章アレグロという速さ。
オルガン協奏曲に集中しすぎて、余りにも定番の曲で良い曲、良い演奏でも、何となく聞き流した感じになってしまった。

演奏終了後にアンコールという声が沸き起こって、マエストロ尾高からKitaraホールの素晴らしさに感謝の言葉。Kitaraホールの音響担当者Toyotaは世界中の音楽ホールの音響設計を委嘱されて自動車会社と同じくらいに有名になっている。尾高札響名誉音楽監督は“Kitaraは一番上手くいった”と彼が語っていたと話した。いつの発言かは分からないが、現在でも世界の名だたるホールの地位にあることは間違いない。
アンコール曲に「エルガー:威風堂々 第1番」。祝典の最後を飾るに相応しい曲であった。

目の前の座席に若い外国人の男女が座っていたので、帰り際に話しかけてみた。ドイツから休暇を利用して札幌コンサートホールに駆け付けたという。Kitaraの音響の評判を聞いてコンサートを聴きに来た様子だった。詳しい話はできなかったが、音響の素晴らしさに感動して満足していた。また、PMFコンサート5枚のチケットを買ってあげて一緒に鑑賞する友人にホワイエで偶然に会えたのも良かった。










 
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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