ハイレゾ・ストリームで楽しむ[ラトル指揮《シベリウス交響曲全集》]

PMFコンサート鑑賞もオーケストラ演奏会を2つ残すだけとなったので、その合間にデジタル・コンサートホールを楽しむ余裕ができた。ベルリン・フィルも夏の休暇に入って定期コンサートは無い。
昨日、自主レーベル「ベルリン・フィル・レコーディングズ」のタイトルをハイレゾ・ストリームで聴いた。前衛的作曲家として解釈するラトルの名盤をCDを超える超高音質で楽しんだ。

Sir Simon Rattle は「シベリウスは最もエキサイティングで独創的な作曲家のひとり」と語っている。7つの交響曲にはシベリウスの多様な美しさが込められている。一度に7曲全部を聴いたのは初めてだった。

シべリウスをLPレコードで聴いたのは45年前で「交響曲第5番」と「フィンランディア」。ジョールジュ・プレートル指揮ニュー・フィルハーモニア管の演奏(*プレートルは98年にパリ管を率いてKitaraに出演した時に名を知った。世界的なオペラ指揮者で、コンサート指揮には余り関わっていなくて日本での知名度は低かった。08年のウィ-ン・フィルのニューイヤーコンサートに出演した時はヨーロッパでも驚きをもって報じられた。世界の一流歌劇場で活躍してカラスとの共演も多く、私もオペラ全集に彼が指揮するCDがあるのに気づいたのは10年前)。
CDで聴き始めた頃の2000年にカラヤン指揮ベルリン・フィルの「交響曲第2番とフィンランディア」がシベリウスとの2度目の出会い。実質的にシベリウスの交響曲で一番身近なのはカラヤンの曲に親しんだ以降であった。この年のエジプト旅行の長時間の機内では偶々フィンランドの俊英指揮者ユッカ=ペッカ・サラステの音楽を何度も聴いた。その影響で彼のCDが目に留まり、帰国後にサラステ指揮フィンランド放送響の「交響曲第1番」、「交響曲第5・7番」を続けて聴くようになった。(*サラステとサロネンはほぼ同年代のフィンランド出身の世界的指揮者だが、現在は差がついたようである。)

その後にジョン・バルビローリやコリン・デイヴィスの輸入盤も手にして他の交響曲なども度々耳にした。ヴァイオリン協奏曲はもちろん数枚あり、お気に入りである。
シベリウスの生誕150年を祝う札響演奏会では当時の尾高忠明音楽監督が《シベリウス交響曲シリーズ》を年1回公演で3年掛けて達成した。それぞれ充実した演奏会となり、一気に連続しての公演とは違う味わいのあるツィクルスになっていたことを思い出す。その時のライヴ録音でのCD「第1・3番」、「第4・5番」の2枚のCDは記念に買い求めた。シベリウスが気に入って、その後、デイヴィス指揮ロンドン響の7CDがSONY MUSICから廉価版で発売されていて手にした。

それから2年余りが経ったが、丁度、今までにない新たな聴き方が出来た折に、長くなったが過去を振り返ってみた。

デジタル・コンサートでは音量の素晴らしさを味わうと同時に、演奏者の姿を観ながら鑑賞している。今回は音にだけ集中して聴くことになった。第1番と第2番はやはりフィンランド独立に向けてのフィンランド国民の気持ちに寄り添った音楽であった。シベリウスが40歳~60歳に掛けて作曲した第3番以降は作曲環境がガラリと変わっている。1904年にはヘルシンキでの生活の煩雑さを逃れて別荘を建てて生涯の隠遁生活に入った。第3番を書いたのは1907年で第7番の完成は1924年、29年以降、亡くなる57年まで筆を折ったと言われている。

第3番は内省的で楽章数も3つに減って、楽器編成も小さくなり、シンプルで明解になった。第4番は4楽章構成だが、室内楽的な雰囲気で、作曲家自身は“精神的交響曲”と呼んでいる。第5番はシベリウスの50歳を祝う国を挙げての記念演奏会のために作曲され、シベリウスの指揮で初演が行われた。北欧の壮大な自然を感じさせるスケールの大きさと華やかさを持った曲。第2番とともに人気のある作品。
第6番は宗教的な敬虔さが漂う曲。この曲は殆ど聴いたことがなくて札響演奏会で初めて耳にした感じだった。今回で3回目だろう。第7番は最初の3楽章の構想を変えて単一楽章となり、ほかのCDでもそうなっている。ところが、今回のハイレゾでの案内では4楽章のように配分されていた。①Adagio、②Vivacissimo Adagio、③Allegro molto moderato---Allegro moderato、④Vivace---Presto---Adagio---Largamente molto---Affettuoso。切れ目なく演奏されていたので、一般の楽章とは違うのだろうが、表記の仕方が普通とは違っていたので不思議に思った。いずれにしても第7番は伝統的な交響曲の楽章分割や、テーマのグループ分けや調の関係に従っていない。形式的には新しい試みを行った曲と思われる。

全7曲に北欧の自然が描かれていて、シベリウスらしい美しい旋律が多く、ヴァイオリンが得意な作曲家らしい面も感じ取れた。デジタル・コンサートホールの会員なので無料配信で聴けたが、珍しい体験をした。
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PMFオーケストラ演奏会・プログラムA[準・メルクル指揮《ダフニスとクロエ》]

2017年のPMFオーケストラ演奏会も3つのプログラムが用意されている。日本人を母に持つドイツ人指揮者の準・メルクルは05年、08年は客演指揮者として参加して、13年、15年は首席指揮者を務めPMFには5回目の参加。3つのプログラムは札幌ではそれぞれ2公演開催。

2017年7月16日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

〈出演者〉 j準・メルクル(指揮)、PMFヨーロッパ、 PMFオーケストラ
       (*PMFヨーロッパはウィ-ン・フィル、ベルリン・フィルの教授陣)
〈演奏曲目〉
 ベルリオーズ:序曲「海賊」 作品21
 細川 俊夫:夢を綴る
 ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」

ベルリオーズ(1803-69)の「幻想交響曲」はあまりにも有名で好んで聴くが、「海賊」は一度テレビで聴いた記憶がある程度の曲。
パリ音楽院在学中にローマ大賞を受賞して、イタリアに留学。この曲はローマ滞在中にバイロンの物語詩「海賊」に触発されて書いたという演奏会用序曲。フランスの作曲家らしい雰囲気のあるロマンティックな作品。2管編成だが、金管楽器が12本で管楽器の響きに特徴があった。10分程度の曲。

細川俊夫((1955- )は武満徹とともに日本現代音楽を代表する海外で人気の作曲家。この管弦楽曲は2010年ルツェルン音楽祭で初演された作品だそうで、もちろん初めて聴いた。日本を連想させる曲想が印象的で、打楽器が静かに奏でる音楽は神秘さを湛えている。海外で喜ばれる曲でもあり、現代曲の良さが伝わった。チェレスタをはじめ様々な打楽器の音色とそれを支える弦楽器の技法にも現代曲の工夫が見られた。15分程度の曲で聴衆の心を動かした作品。

ラヴェル(1875-1937)には輝かしいオペレーションを施した魅力的な作品が沢山ある。彼の代表作の一つ「ダフニスとクロエ」はコンサートでバレエ音楽の全曲を聴くのは初めてのような気がする。管弦楽曲として編まれた第2組曲を演奏会で何回か聴いている。15年にケント・ナガノ指揮モントリオール響、最近では昨年6月にスラットキン指揮フランス国立リヨン管の演奏を聴いた。やはりフランス系のオーケストラによる演奏は独特の味がある。バレエ音楽の全曲のCDは所有しているが、詳しいストーリーは分らずに聴いていてもライヴで音楽を直接に聴く迫力が伝わらない。

この作品はロシア・バレエ団の依頼で書かれた、3部から成るバレエ音楽。1909-12年に作曲。台本は2・3世紀のギリシャの小説家ロンギュスによる物語に基づく。牧人のダフニスと羊飼いの娘クロエが様々な障害を乗り越えて結ばれるストーリー。この健康的な賛歌をラヴェルが巨大な音楽のフレスコ画にした。恋物語の感情表現というより、古代の壁画から作り出された音の叙事詩といった方が良い作品。50分を越える大曲。
【第1部】“序奏と宗教的な踊り”、“全員の踊り”、“ダフニスの踊りとダルコンのグロテスクな踊り”、“ダフニスの優しくて軽やかな踊り”、“ヴェールの踊り~海賊の来襲”、“夜想曲とニンフの神秘的な踊り”
【第2部】“序奏”、“戦いの踊り”、“クロエの踊り”
【第3部】“夜明け”、“無言劇”、“全員の踊り”
 
第1部の舞台は丘や洞窟を臨む野原。第2部は海賊の陣地。第3部の舞台は第1部と同じ。日が昇り、鳥がさえずる夜明けにダフニスは海賊たちにさらわれていたクロエと再会。ダフニスがクロエへの愛を誓い、若者たちが祝って賑やかに踊る。

指揮者のメルクルもリヨン管の音楽監督在任中には演奏機会が何度かあったと思う。彼はオペラの経験も豊富なのでバレエ音楽として「ダフニスとクロエ」は手中にあるようである。
PMFヨーロッパの14人の奏者がそれぞれのパートのソロを弾いて安定感を引き出していたように思った。特に第3部の夜明けでフルートの奏でる美しいメロディが魅力的であった。戦いの場面や踊りの場面でのオーケストラの盛り上がる演奏は聴きごたえがあった。オーケストラの魔術師と呼ばれたラヴェルならではの曲の盛り上げ方に心も弾んだ。
打楽器の種類も多くて奏者も大活躍、チェレスタはPMFピアニストが演奏していたのではないかと思った。

2階の正面席2列13.・14番の特等席からオーケストラの音を友人と一緒に観覧。時折、オペラグラスで演奏者の姿もハッキリ確認しながらコンサート全体を楽しんだ。前列や右側の数席が空いていたのは大雨の被害を受けたのか都合で来れない人がいたのは気の毒であった。

※PMFヨーロッパはメインプログラムだけの出演で、全体の演奏に加わるほかソロ・パートを受け持つのが通例でオーケストラの質を高めている。ところがホルン・ソロはサラでなく昨年に続いて今年もアカデミー・メンバーが行っていたようである。経験を積ませようとのサラ・ウィリスの配慮だと思った。

PMFウィ-ン演奏会2017

ここ数年【PMFウィーン演奏会】は期間中に同じプログラムで2日間にわたって開催されていたが、今回は「PMFウィーン弦楽四重奏演奏会」と「PMFウィーン演奏会」の2種類のコンサートが用意された。従来は弦楽四重奏曲だけだったので、今回は2重奏も入った演奏会を選んだ。

昨日の午前中はKitaraでのボランティア活動を午前中だけにして、夜のコンサートに備えた。昨年あたりから、午前、午後、夜と続く日程をこなすのが大変になってきたので、無理なスケジュールはできるだけ組まないようにしている。

2017年7月14日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈ARTISTS〉PMFウィ-ン(ウィ-ン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー)
  キュッヒル(violin)、フロシャウアー(violin)、オクセンホーファー(viola),、ノージュ(cello)、ブラーデラー(double bass)(*キュッヒルは前ウィ-ン・フィルのコンサートマスター、オクセンホーファーは前ウィ-ン・フィル奏者。PMFにはキュッヒルが10回目、オクセンホーファーは15回目、フロシャウアーは5回目で近年は連続して参加、ノージュは初参加。ロベルト・ノージュは今年のトヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ-ンでソリストを務めた。

〈PROGRAM〉
 ハイドン:弦楽四重奏曲 ニ長調 作品76-5「ラルゴ」
 モーツァルト:セレナード 第13番 ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハト・ムジ―ク」
 ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調
 ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第14番 変イ長調 作品105

ハイドン(1732-1809)は生涯に多くの弦楽四重奏曲を遺した。弦楽四重奏曲のホーボーケン番号は83まであるが、偽作と判明した作品もあってハイドンが書いた弦楽四重奏曲は全68曲とされている。その作品の多さには驚くばかりである。PMFウイーンは毎年のようにハイドンの曲を演奏している。ハイドンの弦楽四重奏曲の中で家で耳にするのは「雲雀」と「皇帝」だけである。
1797年に6曲セットで書かれた彼の最後の弦楽四重奏曲集は作品番号が76。作品76の第3番が「皇帝」。第5番が「ラルゴ」である。エルデーディ伯爵に贈られた作品76は〈エルデーディ四重奏曲〉の通称がある。
第5番は第2楽章がラルゴ・カンタービレで曲の美しさが際立ち「ラルゴ」と呼ばれる。当時の宮廷で華やかに着飾った貴族たちの前で演奏された様子が目に浮かんだ。

モーツァルト(1756-91)の室内楽で最も親しまれて有名な曲が“Eine kleine Nachtmusik”。今回はコントラバスを含む弦楽五重奏曲として演奏された。チェロとコントラバスは同じパートを受け持つので、印象がセレナードというより弦楽四重奏に近い。しかし、コントラバスの響きが曲の魅力を増して、オーケストラ曲と思い違いをするくらいの曲になっている。馴染みのメロディが最初から最後まで続いて心も躍る気分であった。

ロッシーニ(1792-1868)はイタリアのオペラ作曲家として数々のヒット作を遺した。彼のオペラの作品は人気が高い。コンサートでは彼のオペラ作品の「序曲」が演奏される機会が多い。「序曲集」のCDを所有していて、時々聴く。PMF2017ではもうすでに編曲版ではあるが、彼の音楽を聴けた。
ところが、昨日の室内楽作品には驚いた。ロッシーニが32歳の時に書いた作品が、1968年に作品の献呈先で発見されるまで埋もれていたという。しかも、チェロとコントラバスという珍しい低音楽器の組み合わせ。第1楽章アレグロ、第2楽章アンダンテ、第3楽章アレグロの面白い曲で大いに楽しめた。ロッシーニならではの変化のある曲作りで、楽器の弾き方にも技巧が凝らされていて観ていても興味深かった。15分程度の作品。

ドヴォルザーク(1841-1904)は92年にナショナル音楽院院長就任のためアメリカに渡り、滞在中の93年に「新世界交響曲」と「弦楽四重奏曲第12番アメリカ」を書いて喝采を浴びた。95年に「チェロ協奏曲」を置き土産にし、音楽院との契約を破棄してアメリカを去った。プラハに戻って直ぐ書き上げた作品が「弦楽四重奏曲第14番」。
同じ年にもう1曲書いた記録があるが、実質的にこれが最後の弦楽四重奏曲で96年以降は交響詩とオペラ以外には目立った作品は書いていない。故郷に戻って、落ち着いた環境の中で作曲した様子がうかがえるようであった。約35分の曲。

PMF2017の2回のPMF演奏会は毎年チケットが完売で人気の演奏会。2階のバルコニー席も熱心な聴衆で埋まっていた。前半の3曲が終わった時点で、アカデミー生に用意されていた1階後方2列の席は殆ど空いた状態になったようである。勿体ない気がしたが止むを得ない。ただ残念だったのは通路に散らかっていたプログラムの紙。(*午前中のKitaraボランティア活動の際に、アーテイストが使用するエレベーター内がゴミだらけという話を耳にした。掃除担当の人たちからの情報らしい)。後半のスタート直前にスタッフが片付けたらしいが、こんな状況を初めて目にして嫌な感じがした。一部の国の人の行動であるが、音楽だけでなく日本のマナーも学んで欲しいと思った。

後半の曲を鑑賞するのに気持ちを入れ替えるのに少々時間を要した。

全曲が終って拍手の嵐。アカデミー生の大部分が帰っていて、嬌声は無かったが、アンコール曲にハープも加わって「J.シュトラウスⅡ:春の声」(*ハープ奏者はラディスラフ・パップ。Pappはウィーン国立歌劇場のハープ奏者及びウィ-ン・フィル常任ハープ客演ハープ奏者)。1曲で終わりかと思っていたら、2曲目に「観光列車」。この曲も聴いたことのある馴染みの曲で、オープニング・コンサートでも演奏されていたが、その時は曲名が分らなかった。ギャロップで非常にリズム感のある楽しい曲。前回のキュッヒルさんの楽しい仕草が再現された。会場に笑いが広がった。特にステージを下がって出ていく動作に思わず自分も笑いが止まらなかった。とても愉快だった。非常に素晴らしい雰囲気のうちに今年のPMFウィ-ンとPMFベルリンによる演奏会も終わった。

今回は妻と一緒に出掛けたので、帰りのエントランスホールで、妻と知り合いの元Kitaraボランティアの友人2人と会う機会を作った。ひとりは昨日に続いて帰路も地下鉄の札幌駅まで一緒で、コンサートのスケジュールの話で盛り上がった。





 

PMFベルリン演奏会2017

【PMFベルリン】はベルリン・フィルの管楽器奏者たちの豪華メンバー。今シーズンはKitara2公演が同じプログラムで10日、13日の2日間にわたって開催された。

2017年7月13日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈ARTISTS〉PMF ベルリン(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー)
 ブラウ(flute)、ケリー(oboe),、バーダー(clarinet)、シュバイゲルト(basson)、ウィリス(horn)、ヴェレンツェイ(trumpet)、ソレンセン(trombone) (*7名のうち、ブラウは前べルリン・フィル首席奏者)
 佐久間晃子(piano)
〈PROGRAM〉
 J.S.バッハ(マリー・クレール・アラン編):カンタータ第205番からアリア
                                [トランペットとピアノ]
 ダンツィ:木管五重奏曲 ト短調 作品56 第2番
 シューマン(ソレンセン編):ロマンス 作品28から第2曲[トロンボーンとピアノ]
 J.ウイリアムズ:何人に対しても悪意を抱かず(映画「リンカーン」から)
                                [トランペットとピアノ]
 ロッシーニ(シェーファー編):歌劇「チェネレントラによるハルモニームジ―クから
                       “シンフォニア” 他4曲  [木管五重奏曲版]
 シューマン(ソレンセン編):歌曲集「詩人の恋」 作品48から
                      “美しい五月に” 他4曲 [トロンボーンとピアノ]
 ボザ:木管五重奏のためのスケルツォ 作品48
 イベール:木管五重奏のための3つ小品
 
木管楽器奏者5名と金管楽器奏者2名のベルリン・フィル・メンバーで曲を編成すると自ずから演奏曲が限定される。知らない曲が多いのは気にならなく、却って興味度が増した。
1月からデジタル・コンサート・ホールで演奏会をもう20回ほど観ているので、演奏者の姿がテレビを通してではなく目の前で見れるのが何とも嬉しかった。今までは特定のメンバーしか、顔と名前が一致しなかったが、今回は全員のメンバーが分かった。演奏の素晴らしさは言うまでもないが、アーティストをより身近な存在に受け取れるのが特別な嬉しさであった。木管楽器奏者のハーモニーは素晴らしくて惚れ惚れする演奏だった。

作曲家名で知らなかったのはボザ(1905-91)だけ。イタリア人とフランス人の両親のもとに生まれ、ほぼ全てのジャンルに作品と遺したという。コンサートの最後から2番目の曲だったが、他の曲とは趣の違う曲で変化があって面白かった。

第1曲目のオルガニストのアランの編曲は何回か聴いていたオルガンとトランペットのコンサートを思い起こさせた。鍵盤楽器とトランペットの相性の良さを感じた。前半のコンサートのスタートに相応しい優しい響きの音楽だと思った。

ダンツィ(1763-1826)はドイツの作曲家で「木管五重奏」が代表作と言われる。2年前のPMFベルリンで彼の別の作品を聴いたのを覚えている。4楽章から成る曲は抒情味あふれる曲で心地よく聴けた。

シューマンの曲を集中的に聴きだして10年にもなっていない。CDは交響曲、ピアノ曲、室内楽などまとめて所有している。今回のプログラムに入っていた「ロマンス」第2曲がピアノ曲にあった(*一度耳にしただけで覚えていない)。この機会に約4分の曲を聴いてみたが、クララへの甘美な儚い夢が香る抒情的な曲。トロンボーン用に編曲したソレンセン自らの演奏は凄く良かった。ピアノ曲をトロンボーン曲に編曲するアイディアが凄いと思った。ごく自然な味わいのある曲になっていた。

J.ウィリアムズ(1932ー )は映画音楽「スター・ウォーズ」で名高い。スピルバーグ監督による2012年のアメリカ映画「リンカーン」は観なかったので、初めて耳にするメロディ。トランペットの響きが印象的な演奏だった。

ロッシーニのオペラ「チェネレントラ」はシンデレラの物語。ロッシ―ニならではの美しいメロディに満ちたオペラの中から5曲が木管五重奏曲版として演奏された。 “シンフォニア”、“わが女系の後継ぎたちー何か分らぬ甘美なものが”、“ご主人様、一言だけ”、“そう、僕は誓って彼女を見つけ出す”、“終曲”。
オペラからの抜粋で特に曲の連続性はないが、全曲の演奏が終わるまで拍手は起こらないで聴衆は静聴していた。それぞれの曲に盛り上がりがあるので、先日の野外コンサートでは1曲ごとに拍手が起きたのとは対照的であった。

シューマンの歌曲集のCDは持っていないが、「ミルテの花」、「リーダークライス」、「詩人の恋」などの一部の歌曲が収められたものがある。「詩人の恋」は16曲から成る。第1曲“美しい五月に”、第7曲“恨みはしない”の2曲が入っていたので聴いておいた。
1940年、クララと結婚できたシューマンの〈歌曲の年〉に書かれた130余りの歌曲のなかで傑作とされる。愛の喜び、失恋、回想の流れで描かれている。歌詞はハイネ。
“美しい五月に”、“ばらに、百合に、鳩に、太陽”、“心を潜めよう” “恨みはしない”、“恋人の歌を聞くとき”。1曲が1・2分程度の短い曲。明るい季節への複雑な想いを綴った第1曲と、恋人の裏切りへの切なくやるせない想いを歌った第7曲の2曲は特にCDについていた歌詞を読んでいたので演奏を聴く参考になった。
ロマンチストのシューマンならではの作品が意外な編曲で聴いて味わい深かった。

イベール(1890-1962)はパリ生まれの作曲家。日本建国2600年記念奉祝曲の依頼を受けて「祝典序曲」を作曲したことでも知られる。ローマ大賞を受けてイタリアに留学。交響組曲「寄港地」が彼の代表作。吹奏楽でも人気の作曲家のようである。
フランスの作曲家特有の洒落たセンスが音楽にも表れていた。

各曲の終了後の外国人聴衆(アカデミー・メンバー)の反応が日本人と違うのはいつもと同じである。外国人のアカデミー・メンバーが鑑賞していると、指導している教授陣に対する称賛の表し方が一段と強い。口笛も飛んだり、歓声の上げ方も日本人のおとなしさとは違う。特に陽気なホルン奏者のサラ・ウィリスの個性に彼らは敏感に反応する。

全ての演奏が終って、サラは“拍手有難うございます。PMFはとても大切な音楽祭です”と日本語で挨拶して、アンコール曲に「ディーク:ホラ・スタッカート」を演奏。“盛大な拍手を頂ければ、私の日本語が上達したことになる”と言って拍手を煽る仕草。最後に馴染みの曲「アヴレウ:ティコティコ」を3人のパーカッション担当のアカデミー生を加えて演奏。嬌声や珍しく手拍子の拍手が起るなか楽しい雰囲気のうちにPMFベルリン演奏会が締めくくられた。

バーンスタイン・レガシー・コンサート

Bernstein Legacy Concert(バーンスタイン・レガシー・コンサート)には今まで行ったことが無かった。今回は2007年、パリで開催されたロン・テイボー国際コンクール優勝の田村響がピアニストとして出演するので聴くことにした。是非一度リサイサイタルを聴きたいピアニストであるが、オーケストラとの共演も待ち望んでいた。昨年Kitara小ホールで三浦文彰ヴァイオリンリサイタルのピアノ伴奏を務めていて、大ホールには初めての登場だと思う。

2017年7月11日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演者〉指揮/大山平一郎、 ピアノ/田村 響  管弦楽/PMFオーケストラ
      お話/田中 泰
〈演奏曲目〉
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15(ピアノ:田村 響)
 コープランド:市民のためのファンファーレ
 ミヨー:屋根の上の牛 作品58
 バーンスタイン:「ウエストサイド・ストーリー」から “シンフォニック・ダンス”

大山平一郎(Heiichiro Ohyama)は8日のPMFオープニング・コンサートでPMFに初参加して、バーンスタインの曲の演奏で経験豊かな指揮ぶりを見せた。大山はPMF芸術監督を務めたマイケル・テイルソン・トーマスとは一時期ロスアンゼルス・フィルで一緒だった。彼を通してPMFの情報を得ていた。また、バーンスタイン指揮による「シンフォニック・ダンス」のLPレコード収録にヴィオラ奏者として参加していた。
大山は九州響常任指揮者時代に園田高弘とベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲録音を残している。現在、米国サンタ・バーバラ室内管音楽監督・常任指揮者。

田村 響(Hibiki Tamura)は1986年、愛知県出身。愛知県立明和高等学校音楽科に学んでザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学に留学。2002年ピティナピアノ・コンペティション特級グランプリ、園田高弘ピアノ・コンクール第1位など目覚ましい活躍で03年のアリオン賞、06年出光音楽賞受賞と続き、ヨーロッパ、南米などでのリサイタルやオーケストラ共演で頭角を現す。07年のロン・ティボーコンクール優勝で一気に日本での知名度が高まった。09年ビシュコフ指揮ケルン放響のソリストとして日本ツアー。室内楽でもヴェンゲーロフ、堀米ゆず子、宮田大らと共演。2015年大阪音楽大学大学院修了。現在、京都市立芸術大学専任講師。

PMFは20世紀のクラシック音楽界を代表する指揮者・作曲家のレナード・バーンスタインが、1990年に札幌に創設した国際教育音楽祭。これまでPMFで学んだ若手音楽家は76ヵ国・地域から約3,300人、現在、修了生は200を超えるオーケストラで現役奏者として活躍しているという。
バーンスタイン・レガシー・コンサートは何年か前にPMFの恒例のコンサートなって開催されている。バーンスタインの楽曲と彼が愛した作品、まさにレガシー(遺産)を取り上げる特別企画である。

「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番」はバーンスタインがベートーヴェンの全5曲のピアノ協奏曲の中で最もお気に入りで何度も弾き振りしていた曲という。コンサートでは「第3・4・5番」が演奏される機会が多い。「第2番」は2005年にKitaraでバレンボイムが手兵のベルリン・シュターツカペレを弾き振りした時のことは覚えているが、「第1番」は今までコンサートで聴いた記憶は無かった。CDはギレリス、バレンボイム、ブロンフマンのCDがあって、昨日の午前中に聴いてみた。5・6年は聴いていないと思ったが、聴きなれたメロディが多くて、こんな名曲だったかと一層ベートーヴェンの偉大さが解った。ただ、内容がシンプルで深みがないので、演奏会で取り上げられることが殆どないのかなと思った。

田村も初めて演奏する曲だということで念入りに練習して臨んだようである。第1楽章の長いカデンツァも印象的だったし、オーケストラと溶け合って素晴らしい演奏を繰り広げた。若手の登竜門と言われる世界的なコンクールを20歳で制して、10年が過ぎた。順調に実績を積み重ねているようで何よりである。札幌は3度目と後で話したが、1回聴き逃したことになる。俊英ピアニストの今後の活躍が大いに期待される。
オーケストラではクラリネット奏者の美しいメロディが光った。

コープランド(1900-90)はバーンスタインが敬愛するアメリカが生んだ有名な作曲家。この曲は初めて聴くが、金管楽器と打楽器だけで演奏された音楽は勇壮であった。オリンピック・ファンファーレの先駆けになったそうである。

ミヨー(1892-1974)はフランスの作曲家で、小品は聴いたことがある。バーンスタインはミヨーと共にタングル音楽祭の教授を務めた。この作品は彼がブラジルで過ごした2年間を曲に綴ったもので、異国情緒が漂いつつ、フランスの洒落た音楽も入っている感じがした。

最後に取り上げたバーンスタインの傑作「ウエストサイド・ストーリー」はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を1950年代のニューーヨークに置き換えて作曲された作品。そのダンスナンバーを中心にオーケストラ用に編曲された「シンフォニック・ダンス」。
この曲はバーンスタインの代表作で様々なコンサートの演目になって親しまれている。
芸術の森で行われたオープニング・コンサートの盛り上がりとは違う雰囲気で聴くことになり、正直言って野外コンサートでの方が楽しめた。室内楽とオーケストラと対照的なプログラムであったし、コンサートの締めくくりとしてPMFオーケストラの登場は新鮮であった。
昨夜は9時近くに演奏が始まり、帰りの時間を気にする人の集中力も薄れていたかもしれない。演奏そのものは音響効果抜群のホールで、聴衆が堪能する曲だったことは間違いない。最後の曲をメインに聴きに来た人も多かっただろう。私自身は田村響の「ベートーヴェン第1番」を聴いて充分に満足していた。
指揮者も渾身の力を込めて指導に当たり全曲を振り終えて満足の様子であった。最後の演奏曲にベルリン・フィルのゼーガスもパーカッションのメンバーに加わって参加していたのは好感が持てた。PMFピアニストの佐久間晃子もピアノを担当していた。

※今朝パソコンを開いてブログランキングを見て驚いた。「ロシアの巨匠フェドセーエフ」と「PMF2017オープニング・コンサート」の記事が第1位と第2位を占めていた。先週の6日も「Kitaraのバースディ」と「時計台ボランティア活動2017」の記事が「第1位」と「第2位」だった。6月の記事は余り注目を浴びていなかったのだが自分のブログが評価されるのは嬉しい。





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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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